クーデター
「よく眠れたな」
俺は魔王城にある四天王用の豪華な部屋で一夜を過ごした。
まあ、当たり前だがボーギャンが元々居た部屋だからか……獣臭い。
だが、ベッドとその付近は新品に入れ替えてくれたのか、気持よく眠れたな。
「ジョーカー様、朝食の用意が整っております」
「ああ、分かった」
メイドっぽいものまで……良い身分になったものだ。
「場所は……」
「転移で行くからいい」
俺の転移は場所が分からなくともイメージできれば飛べるからな。まあ、実物とほぼ同じのをイメージしないといけないが。というか、昨日魔王城を散策してたし場所わかるから何も問題は無い。
俺は転移で食堂へと向かった。
「ちょっと!いきなり現れないでよ!」
いきなり魔王の目の前に転移したからか……驚かせてしまったか。
「申し訳ありません、魔王様」
「はあ……別にいいわ、では食べましょう」
ちなみに食事は宴会とか無い限り時間が決っていて、最初に魔王と四天王、その次に地位の高い順からどんどん食べていく方式だ。メニューは魔王や四天王のものは豪勢なものだ。
「ふむ、美味そうだな」
テーブルに出された料理は豪勢なもので、見ただけで美味そうと分かるものだった……が。
俺はその料理を鑑定する。イメージすればできない事ではない……。
こんなことをするのは失礼かもしれないが毒が入っている可能性も否定できんからな。
「……っ?」
毒が入っている……やっぱ信用されていなかったか……。
そう思い、異論を言おうとしたが……。
「……これはどういうことかしら?」
「魔王様、何の事で?」
魔王がコックに問い詰めてきた。
「ふざけないで、何故、アタシとジョーカーの料理に毒が入っているのかしら?」
なっ……魔王のものにまで……?
「チッ……お前の時代はここで終わりだ!」
コックは頬を膨らますと、魔王に向かって巨大な光線を放った。
「させるか!」
俺は魔王を守るため結界を張る。
「この……にんげ……」
そう言い終わる前に、他の四天王がコックに攻撃を加えた。
「魔王様、大丈夫っすか?」
確か……ジャックだったか?四天王の一人だが……チャラ男っぽい感じがする。
「全く、どうなっているのかしらねぇ?」
四天王の一人、サリエウムも疑問に思っているようだ。どうしてもその巨乳に目が行くのはなんでだろうな?
「一旦、メイを安全な場所へ……」
メビウスがそう言おうとしたときだろうか。魔王城が大きく揺れた。
「何だ!?」
急いで外に出て確認してみる。するとそこには……。
「我等は今こそ革命のとき!」
「今の魔王は信用ならん!それに……人間を味方にするなど!」
これは……所謂あれだ……クーデターってやつだろう。
「ボーギャン様の敵!討たせてもらうぞ!」
あんな横暴そうな奴にも人望はあったんだな。
「まさか……そんな事……」
「魔王様?」
やはりメンタル面では見た目通りの少女といったところか?これだけの数から裏切りにあうのはさすがにきついんだろう……今にも泣きそうなんだが。
「ヤバいっすよ!これ」
「そおねぇ…魔族軍の七割くらいが敵対してるんじゃないかしらぁ?」
「七割!?」
マジか……大ピンチじゃないか……幸いなのは四天王は全員味方だということくらいか。
「そんな…アタシは……」
「メイ…」
「魔王様……命令を」
「え?ジョーカー、アンタ一体……?」
「反乱軍殲滅の許可を……」
ここで魔王には堂々としてもらわないと……こちらの士気に関わる。
「でも……どうせ……」
「失礼、魔王様……」
「え?」
「いい加減にしろ!いつまでウジウジしてんだ!魔王なら……もっと堂々と構えてろ!」
「ジョーカー!?いきなりメイになんて口を……」
俺はメビウスを無視してさらに話す。というかお前もメイにタメ口だろう。
「お前がそんなんじゃ、こっちの士気がダダ下がりなんだよ!悔しかったら反論するか……言うとおりにしろ!」
ふう……これで効いたか……?
「フフフ……随分と舐めた口を利くわね……ジョーカー?」
「あれ?魔王様?」
分かり切っていたけど言いすぎたか……?
「それは……申し訳ありませんとしか……」
「一回くたばれええええ!」
「おわあ!?」
思い切り踵落としを喰らわされた……痛い。
「……それと」
「な、何です?」
「い、一応感謝しておくわ!感謝した事に感謝なさい!」
やっと元気になってくれたようだ。
「……ありがとうございます」
「コホン……では」
魔王は手を上げ、振りおろし命令を下す。
「反乱軍を鎮圧なさい!投降しないで抵抗するものは容赦なく抹殺!」
魔王の指示の下、俺たちは一斉に動き出す。
「ジョーカー様」
「お前は確か、ランティスだったか?」
まあ、問題が起こったから砦から帰ってきたのだろう。
「まさか四天王になるとは予想できませんでしたよ」
「俺だってまさか四天王になれるとは予想してなかったよ」
というか元々ボーギャンの部下のはずだ……。
「私は元ボーギャン様の部下ですがだからと言って反乱軍に加わる理由になりませんよ」
「へえ、あいつの部下は全員裏切ったと思っていたが」
「まあ、私以外は裏切っているでしょうね」
つまり敵の戦力はボーギャンの部隊(一名を除く)と各四天王の部隊からもかなりの数の裏切りが出たらしいからそいつらと……そりゃ七割にも達するわけだな。
「一応、私はあなたの補佐という事で」
「ああ、分かった」
俺とランティスは敵の群生へ飛び込んでいった。
「噂の人間だ!殺っちまええ!」
「さて、これでどうだ?」
俺は敵に向かって能力で作った光線を放った。
「グワアアアアアア!」
「ふん、ザコ共め」
「全く…素晴らしい能力……ですね!」
そう言いながら向かってきた敵を易々剣で斬り捨てていく。
「やはり有能なようだな」
「お褒めに預かり光栄です……では」
「ああ、一気に片を付ける!」
俺たちは周囲の敵を凄まじい勢いで倒していく。
その時だった。
「覚悟しろ!人間!」
頭上から声が聞こえた途端、剣が振りおろされてくる。
「なっ……」
「どうしたランティス?」
「何故……魔剣ハーデスがそんな所にあるのです!?」
魔剣?俺は奴の剣を見てみる。
「確かに普通の剣ではないな」
そいつが持っている剣は、柄から刀身までまるで影のように真っ黒だった。
「それは魔王城の地下深くに封印されていたはずです!どうしてここにあるんですか!?」
「ボーギャン様が持ち出してくれたのだ……いつかの切り札として……!」
そう言って魔剣を振りまわしてくる。
しかしあまり凄いものに思えない。
「ランティス、本当に魔剣なのか?あれ」
「一回、封印されているものを見た事があります…それに見た目が普通の剣とは違うでしょう」
「凄い剣なのか?」
「正直に言うと…分かりません」
分からないのか?あんだけ警戒しているのに。
「封印されていたんですよ、厳重に……それが表に出た……どんなものか分からないですが……」
「何が起きるか分からない……か」
だが見る限りだと何の恐怖も感じない……普通の剣の様に感じる。見た目は十分変だが。
一応、剣で受け止めてみるが、こっちの剣が破壊されたり、刀身が擦りぬけたりすることも無い。
剣としても、それほど良いものにも見えない。軽いし、切れ味も良いのか悪いのか……。
「クソッ!なんで勝てねえ!?」
もしかして……偽物か?まあ、そもそも魔剣がどのくらいの能力があるかも知らないがな……。
「一応、気を付けてください……魔剣ですからね?」
「警戒しすぎじゃないか?」
「いえ、これくらいが普通です……魔族では伝説の剣とも言われてるのですよ?」
伝説の剣……これが……か?
だが俺はこの魔剣の能力を十分に理解していなかった。




