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マジックイマジネーション

「……ん?ああ、確か異世界に召喚されたんだったな……」


 俺は昨日、魔王を倒す勇者として、他三名と共に異世界に召喚された。

 そして昨夜は城の客室で休む事になったんだったな。


「王が呼んでおります」


 メイドっぽい人が部屋へ入り話しかけてきたので。


「ああ、すぐ準備する」


 俺は準備を整え、玉座へと向かった。



「昨日はよく眠れたか?」

「はい、素晴らしい部屋を提供してくれた事、感謝します」


 玉座に着くと、天道と腰巾着が既に居た。

 しばらくすると、彩香さんも来て、王様が本題を話し始めた。


「うむ、では今日は能力について話そう」

「ああ、俺も聞きたかったとこだ」

「和馬君、王様の前なんだから敬語を……」


 うるさいな。そもそもお前も猫かぶってるだけじゃないか。


「テンドウ殿、良い……能力とは、勇者が持つ特別な魔法だ」

「魔法……例えばどんなのがあるんです?」

「うむ、個人個人で千差万別だから一概に言えぬが、通常の魔法より、効果が強力だったりするのが多い」

「で、能力って分かるものなのですか?」

「頭で念じれば分かると言われてる、ただし、使えるなら……だが」


 最初から使える訳では無い……というわけか……?


「最初から使える者とそうでない者といるからの……使えるようになったら分かるが」


 とりあえず念じてみるか。


「……っ!」


 次の瞬間、脳に莫大な情報が流れてきた……なになに?

 マジックイマジネーション、効果は……。

 俺は自分の能力を見て、思わずチート過ぎると思ってしまった。


「どうだ?分かったのか?」

「いえ……」


 天道は王様の問いに否定したが……あの顔は嘘をついてるな。

 嫌いな奴ほどよく観察してしまうもので、表情から嘘か本当か見抜けてしまう。そしてこいつは今、嘘をついた……つまり自分の能力を見つけたのだろう。

 厄介な能力に目覚めてなければいいが。


「アライ殿は?」

「おれはこれだぜ」


 そう言って腰巾着は目の前と少し離れたところにブラックホールみたいなものを発生させる。

 その内の一つに飛びこむと、もう一つの方から出てきた。


「おれは自分と他の人が遠くに行けるワープホールを作り出す能力だ」

「他の者も…便利な能力だ……他の二人は……?」

「何も……」

「俺もだ」


 本当の事を言えば面倒な事になりそうだ。だからあいつも黙っているんだろう。

 彩香さんは分からないが腰巾着はバカだな。堂々と能力をばらすなんて。


「うむ、なら次の話に移させてもらう」


 そう言い、王様が話し始める。


「勿論、戦いは能力だけではない……やはり武器を使った直接戦闘も出来なければならん」


 王様がそう言い、部下に武器を持って来させる。


「ここから本題だ、ここから好きな武器を選び、実際に外で魔物や魔獣を倒してきてほしい」

「いきなり…ですか?」

「報酬はだそう……それに保険にこれもだ」


 そう言って小さい宝石みたいなのが渡される。


「これは?」

「うむ、これは転移玉と言って使えばこの場所に戻れるようになっておる……そしてこれを使わずに目的を果たしてくれば……報酬を上乗せしよう」

「……了解です…ではどのようにして行けばいいにでしょう?全員一緒に?それとも各自自由で?」

「それは任せよう……あと、金は出すから防具は城下町で適当なものを選べばよい」


 良かった。こいつと一緒に居るのなんて嫌だからな。

 


「いらっしゃい」


 俺は城下町にある防具屋に入って行った。


「お客さん、もしかして勇者かい?」

「分かるのか?……この服でか?」

「ああ、その服は異世界製と見た」


 まあ、学生服だけどこの世界じゃ珍しいだろうな。

 不意に、壁に貼ってあったポスターを見る。

 この世界に来て思ったが見たこと無い文字なのに読めるな。会話も日本語に聞こえるし……勇者補正ってやつか?

 まあ、これ以上考える意味もあまり無いので、さっさと防具を選び、店を出た。

 ちなみに俺の装備はプロテクターみたいな胸当てに、グローブ、ブーツ、マントで、どれも革製のものを使っている。ちなみに武器は剣。あいつと被ってしまったのがイラつくが。

 ちなみに腰巾着は斧、彩香さんは槍だそうだ。


「さて…行ってみるか」


 俺は早速、外の平原に出てみた。あいつらは先に行ったか?まあ、ぼっちで構わんがな。

 ちなみにこの王都周辺ってのは平原と森、山に囲まれた地形だ。



「あれは……スライムか?」


 平原に出てすぐに、一匹のスライムを見つけた。

 早速スライムに剣を振ってみる。


「――――――!」


 ゼリーを切った感触がし、でスライムは空気に溶けて消えていった。


「意外に呆気ないな」


 と思ったが今度はかなりの数のスライムが襲いかかってきた。


「今度はあれを試してみるか」


 俺はスライム共を見据えて、頭の中にあるものをイメージする。

 次の瞬間、スライムの居た地面から、炎が上がり、スライムを一掃した。


「凄いな……」


 俺の能力、マジックイマジネーションは文字通り、頭でイメージした事を実際に起こすものだ。


「次は……」


 今度は遠くの森を眺め、念じる。

 すると今度はその森へとワープした。


「中々便利な能力だ」


 しかもだ、それでいて魔力を使った気がしないくらい、燃費も良いらしい。

 俺は森の中で、ゴブリンやオーク等の敵を、どんどん屠っていった。


「ガッ―――――!」


 本当にチートだ……今オークに対して、見えない何かに潰される状況をイメージしただけで目の前のオーク共が潰れてく潰れてく。

 しかしグロい光景だ。まあ、慣れていくしかないんだろうが。


「ここまでやっておけば良いだろう、転移で城に……」


 そこまで言って止めた。転移を使ったら俺の能力ばれそうだな。転移玉使って無いし。

 俺は城下町の近くの平原までワープし、そこから城に戻っていった。



「素晴らしい……今回の勇者は優秀なものばかりだ!」


 城に帰って、暫くすると、あいつらも帰って来た。そしてどうやらこの結果に王様も随分上機嫌の様子だ。


 この日の夜、俺たちは勇者の歓迎会的なものに参加させられた。

 あまり賑やかなのは好かなかったが、料理が美味しかったので良しとしよう。


 宴が終わり、部屋に帰る途中、ある部屋から王様とその側近の声が聞こえてきた。


「聞きとりづらいな……なら」


 俺は能力を使い気配を消し、透明化もして、部屋の中に転移した。


「今回の勇者召喚は大成功だな」

「ですが王、優秀過ぎると相打ちにならず戻って来るのでは?特に今回の魔王だとなおさら……」

「ふん、どうせ勇者共も疲弊しているだろう……そこを殺せばよい」

「そうですな」

「ああ、魔王を殺せば魔族は士気を下げられ、近い内に滅ぶだろう……そしてそうなれば……世界は我らアルカイン王国のものだ……ククク…ハハハ…ハーハッハッハッハ!」


 うわあ……分かりやすいクズだ。俺たちは捨て駒かよ。

 全く……こんな奴らの為に戦うなんて俺は嫌だ。というか人間を守る意味なんてあるのかとさえ思えてくるな。

 それに天道とは一緒に行動したくないし……うん。俺は決めたぞ。


 俺は城の庭へと転移し、庭に巨大な爆発を起こした。


「何だ!?」


 あのクズ共を爆殺しようとも思ったが、もっと追い詰めてから殺した方が良いし、とりあえず庭を爆発させた。


「なにしてるんだ?」


 気付くと天道が俺の背後で剣を構えながら立っていた。

 俺は奴から離れつつ、振りかえる。


「この爆発はお前の仕業だろ?」

「鋭いな」

「一体何の能力かは知らないが……やはりな」

「んで?」

「お前、何のつもりだ?」


 明確な殺気を放って言ってやがる。


「そうだな……天道、王に伝えておけ、俺は……魔族側に味方する」

「は?お前、何言ってん……」

「じゃあな」


 俺は転移し、天道の目の前から消えた。



「まさかこのような事が……」

「いかがなさいますか?」


 王様と天道が、俺の処遇について話してるようだ。

 ちなみに俺は透明化を使って玉座に居たりする。このクズの考えを知る為にな。


「もし、道中で会ったら説得を……」


 意外に甘いな……いや、良い王様を演じてるだけか。


「それで聞かない場合は……殺すしかあるまい」


 俺はその時の天道の顔を見逃しはしなかった。

 俺を殺してもいいと言った瞬間、奴が一瞬悪そうな笑みを浮かべた。

 あいつ……本気で俺を殺そうとしてきやがるな……いい加減にしろよと言いたくなってくる。


 まあこれ以上居ても仕方ないな。

 俺は転移し、今度こそこの国を出ていった。




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