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魔族軍進撃

「さて……」


 今日はいよいよ砦に攻めに行くんだったな。

 しかも良い事にディノニス軍の本隊はこの砦に集まってるからここを落とせば……この国は魔族のものだ。


「いよいよっすね、ジョーカーさん」

「ああ、というか二日酔いじゃないんだな、まあそっちの方が助かるが」

「当たり前じゃないっすか……この作戦が終わったら戦勝会やるっすよ……!」


 死亡フラグじゃないよな……?大丈夫だよな?


「どうしたんっすか?不安そうっすよ?」

「いや、大丈夫だ、問題無い」


 まあ大丈夫だろう……敵は小国の様だし四天王が二人も居るんだ……成功する確率の方が高いだろう……今の俺の発言が死亡フラグっぽいが大丈夫だと信じたい。


「よし、部隊はどう分ける?一応この街に残しておく必要があるだろう?」

「そうっすね……第十一部隊から後の部隊はここに残るように言っておくっす」

「ああ、そうした方がいいだろう……一応この街に即戻れる転移用の魔道具を持っておいた方が良いな」

「そうっすね」


 もしこの街を奪還しようと軍隊が動けば戦力的に厳しいだろうしな。まあ無いと思うけど。


「じゃ、そろそろ行こうか」



 俺たちは砦へと進軍していった。

 しかしジャックは一体どれほど強いんだろうか?武器は槍の様だが……。

 四天王で唯一戦い方が読めないな。

 メビウスは闇の炎だったか?それを駆使して戦うらしい。

 サリエウムも確かに分からないが……鞭を武器にしてるから多分……。


「いやいやそれは無いか」

「どうしたのですか?」

「何でもないぞランティス」


 俺の脳内には敵を縛り付けて鞭で叩きつける高笑いした彼女が映る。

 中々に似合う光景だがさすがにそれは無いだろう……多分……。そう思いたい。

 じゃなきゃ、一気にギャグ展開にいきそうな気がする。


「ジョーカー様、砦が見えてきましたよ」


 魔族は飛んでいるからとはいえかなり早く着いたな。やはり近いからなんだろうが。


「いいか?なるべく綺麗に殺すんだ……死体が使えなくなるからな」

「…となるとあまり威力の高い魔法は使えませんね」


 そこが面倒くさい所だ。もしそれを気にしないなら街からでもあの砦を消滅させるほどの魔法を俺は放てるからな。

 まあ実はというと俺の能力を駆使すればこの砦の兵士たちをただ死なせることはできなくはない。

 傷も付かないし綺麗な死体が出来上がる……しかしこれでは俺しか働いていないしそうなればこれからの戦いで俺に頼るだけになってしまう……それはさすがにマズイ。

 

 俺一人では出来る事は限られるんだ……。そう、いくら俺がチートな能力を持っていても……な。

 

 だから俺は指揮と兵士のサポートを重点的にやって行こうと思っている。

 あとそれに……簡単に勝ってしまっては面白くないだろう?これは些か外道な発言だが俺はこういうファンタジー世界に来れた事が内心嬉しく思っている……天道と同じなのは腹が立つが俺もあいつも多分刺激を求めているんだ……元の世界には無い……刺激を。



「敵もこちらに気づいて出てきたな」

「ジャック様の部隊はもう交戦状態に入ったようです」

「ああ、俺たちも行くぞ」

「了解しました」


 さて……俺は上手く手加減しないとな……魔剣は威力が高すぎるし能力は……敵に死を植え付けるしか良い方法が思いつかないな……。

 ちなみに弱点がどうかは分からないがマジックイマジネーションというチートが使える代わりに俺は普通の魔法が使えないようだ。勿論過去の勇者は能力と魔法どっちも使える……たぶんあいつらもだろう。

 だから威力の弱い魔法でチマチマ削ることも出来ない……そうイメージすれば良いじゃないかと思うかもしれないがそういう微妙な威力の魔法を作るのは結構な集中力が必要だ。そこは不便だな。


「魔族よ!覚悟するんだな!」


 兵士が飛び出してきたので試しに殴ってみた。


「ガッ……!」


 胸に良いのを貰ったのかそいつは倒れて動かなくなった……死んでないみたいだから心臓でも刺して止めを刺しておこう。


「ってこれが一番良い方法じゃないか」


 俺は魔族化の影響で素手でも兵士を戦闘不能にできる。殺せはしないが意識を失っているうちに止めを刺せば何の問題も無い。

 良い方法だ。他の魔族に俺をあまり頼らないようにしようと言ったが俺にもそれは言えることだな。

 俺自身能力に頼り切ってしまえば……例えば魔法を無効化するフィールドがあったとしたら……俺の能力は一切役に立たなくなる……出来るだけ能力は使わない方がいいな。


「ジョーカー様、ジャック様達が砦に侵入いたしました」

「ああ、砦自体はあいつらに任せておいて俺たちはここに居る兵士たちを倒すぞ」

「了解です」


 さて、ここに居ると言ったがあいつらは俺たちに気づいてすらない。

 気配を消すようにイメージをしたからな。ランティスにも。

 能力に頼らないとは言ったが使うべき場面で出し惜しみして劣勢になるなんてアホみたいだしな。


「さてランティス、行くぞ」

「はい」


 俺たちは奴らの前に姿を見せ、突撃する。


「なっ!?魔族!?」

「怯むな!二人だけだろうが!」


 ちなみに俺は魔人の姿に化けている。あまり俺が元勇者だとバレるのは避けたい事だからな。

 まああいつらが見たら一発で気付かれそうだ。角生やして、羽生やして、耳を尖らせただけだからな。

 しかし警戒心薄いな。ここに居るのは四天王と第一部隊隊長だぞ?小国の軍隊なんか本当は一瞬で全滅させられるんだぞ?まあ俺の能力は今は使わないが……だがそれでもお前らに勝ち目は無い。


「ジョーカー様、効率のみを考えますがよろしいですか?」

「ん?」

「ここまで集まってしまっては傷を殆ど無しに殺すのは不可能です……なので」


 そう言ってランティスは向かってきた兵士一人の首を刎ねる。


「首が無くてもゾンビ兵士は作れますよ?」

「……意外に怖い事言うなお前」

「ははは、それほどでも」

「褒めたつもりは無いが別に良いだろう、こっちの方が早く終わりそうだ」


 それに後で俺の能力とか使えばくっ付けられそうだな……。


 

 それから俺たちは兵士たちを順調に倒していった。


「砦の方に魔族の旗が揚がったな、あっちも終わった……ということか?」

「どうやらそのようですね……ジャック様達と合流したのち、街へ帰還しましょう」


 それからしばらくしてジャックたちが来て、街へと帰る事にした。


「何してるんっすか?」

「ん?ああ、帰る前にこの死体どもを砦の中に一先ず入れておかないと野獣に喰われるからな」


 俺の転移は物や人を飛ばす事も出来る。まあイメージすれば大抵の事は出来る能力だがな。


「それよりも帰ったら戦勝会をやるっすよ!今回はクインティーも参加するんだぞ?」

「え?わたしは……!」

「さすがにみんな楽しんでる中一人静かにするのはおれのプライドが許さないからな……安心しろ、人間になるべく会わせないようにしてやるからな、な?」

「……わかりました」


 しかし、クインティーを参加させた事を俺たちは後悔するのだった……どちらかというと俺が……だがな。



「メイ、こっちは終わった、明日、人間共をゾンビ兵にして砦に待機させておく」

「わかったわ、それよりもそっち何か騒がしくない?」

「あ、ああ、今戦勝会をやっているからな」


 俺は戦勝会の合間を縫って通信用の魔道具でメイと話しをしている。


「そう、しかし驚いたわ、まさか近くの街も占領するなんて」

「まあ俺が居ればこんなもん……」


 そう言おうとした時だった。


「うへへぇ…ジョーカー様、良い匂いがするニャあ……」

「ちょっとカズマ!?今アンタの近くにクイ」


 俺は通信を切った。うん……マズイな。後で色々叱られる……というか……。


「ちょっとクインティーさん?あなたキャラ変わってますよ!?というか離れろ!」

「そんなぁ……酷いニャあ……」


 まさかクインティーが酒に酔ったら……こんな醜態を晒すようになるとは……。


「もういいニャ……ジャック様に慰めて貰うニャあ」


 ……やっと離れたくれたか……あの状態のクインティーは可愛いとは思うが……メイに変な勘違いをさせてしまうからな……。


「ジョーカーさんも飲むっすよー!」


 おい!こっちに来るな!じゃないと……


「ジャック様~!」

「おっとクインティー、どうしたんだい?」


 抱き付いてきたクインティーをジャックは優しく受け止める……もしかしてこいつはこの状態のクインティーを見た事でもあるのか?妙に扱いなれてる気がする。


「ジョーカーさん、クインティーをあまり苛めないでくれっすよ……それとも魔王様と話ししてる時に来られたんっすか?」

「鋭いな、その通りだ」

「じゃあジョーカーさんは悪くないっすね……もちろんクインティーも悪気があったわけではないから許してくれっす」

「ああ、別に構わん」

「感謝するっす、じゃあクインティーおれと一緒にあっちで飲もうか」


 そう言って優しく彼女の頭を優しく撫でながら向こうへと行く……まだ飲ます気か。

 というかあの状態だけ見るとカップルに見えなくもないな。


「ジョーカー様、飲まないのですか?」

「ランティスか?いや、少しずつ飲んでるよ」


 この世界は何歳から酒を飲んでいいかは知らんが魔族だし関係無いだろう。それにクインティーは確か十六歳だったはずだ……彼女が飲んでるんなら別に良いだろう。


 しかし仕事の後の酒は美味いな。特にエール……所謂ビールだが大人たちの気持ちが分かるような気がする。

 そんな事を思いながら、俺もこの戦勝会を楽しむのだった。




 

 





 

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