藤原妹紅
どうも、何故か幽々子様より先に妹紅話を書き終えてしまった長良です。……というわけで、これは繋ぎ。次こそちゃんと幽々子様書きます。
あと一応断っておくなら、この話は妹紅と慧音先生の話にはよくある、いわゆる「別離モノ」です。死というものの描写にはオリジナリティを求めたかったので、ある程度は僕っぽさが出ていると自負しますが…やはりこの様な描写が苦手な方もいらっしゃると思うので、そういう方は戻るボタンをぽちっとな、でお願い致します。
……別に、批判に対する保険なんかじゃないんだからね?
あと、あえて「まえがき」として書かせて頂くことが、もう一つあります。
この間、僕の飼っていた猫がとうとう限界を迎え、天に召されました。詳しいことは割愛致しますが、重い病気で、最終的に意識も戻ることは無く。
それに触発されて半ば衝動的に書いたのが、この短編です。
看取る側のやり場のない感情や、苦しみを共有してやれない無念…そういったものもありますが、何より僕が書きたかったのは、この世の『理不尽さ』。
誰もが知識として理解してはいつつも、繰り返し経験しては薄れてゆく、その感覚。その煮え立つ様な感情が冷めてしまわないうちになるたけ鮮明に記録しようと思い立って、これを書きました。
と言っても、もう書き始めてから三週間も経っているので、かなり炎は小さくなっているのですが…あの時の絶望を一パーセントでも多く表現したく、可能な限り力を入れて書きました。
先ほどの言葉とは真逆の台詞になってしまいますが…どうか、不快に思っても、せめて最後まで読んでやって下さい。
『紫銀の歴史と悔悟の記、月夜に照らさる人の生』
「ねえ、慧音」
「何だ、妹紅。…今宵は満月だ、気が立ってるのはわかるだろう」
「そう言わないでよ。ちょっと、訊きたいことがあるの」
「はぁ…何だ?手短に頼むぞ」
「慧音のそういうところ、私は好きよ。
……あのさ、慧音ってさ。あと何年くらい、生きていられそう?」
「………それは、どういう意味だ」
「言葉通りの意味ね。たかだか半妖の慧音と、一方でもう人間やめてる私…いつか別れが来るのはわかってるつもりよ。だからこれは、いずれ来たる『その時』に向けての覚悟を決める、そのための質問」
「……全く、お前は」
「何よ、そんな顔して。…まあ答えづらいならいつでも良いから、今のところは執筆に集中なさいな」
「そうさせて貰うよ。今日はこれから大仕事だ」
「あっ、そう。それじゃあ私はそろそろ…」
「あぁ、そうだ妹紅」
「……何?帰り際に呼び止めるとは」
「ふふっ、そう言ってくれるなよ。
……あのな、妹紅。仮に私が死ぬ時、お前が私のために泣いてくれるなら…私にとって、それ程嬉しいことは無いんだぞ?」
「………ッ、勝手な事を」
「言うな、か?それこそこっちの台詞だ、別れが悲しいのはお前だけじゃないんだからな」
「あぁ、はいはい、それに関してはわかってるつもりよ。……それじゃ、今度こそ行くから。またしばらくしたら来るわ」
「おう、達者でな」
「それはこっちの台詞よ。蓬莱人たる私に、健康以外なんてあり得ないのだもの。……私を人間扱いするのなんて、人里の中でも貴女くらい」
「それもそうだな…それじゃあ、私は息災でやっていくつもりだよ。だからまた、それを確認しにうちまで来い」
「ちぇっ、上手いこと言いやがる…わかった、今日のところはおさらばよ。
それじゃあ、また今度」
「おう、また今度」
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
そんな会話をしたのは、果たして何年前だっただろうか。
その後返ってきた返事は、「恐らく、残り三百五十年程度」というものだった。今の身体の年齢(あくまで推測ではあるが)と実際の歳から逆算して、身体年齢的に六十歳へ至るまでに必要な年数らしい。
長いような短いような、微妙な年数だなと、その時は思った。
にっくき輝夜の後を追って『死ん』でから、はや千年が経つ。今の私を二十歳の乙女に例えるなら、三百五十年などたったの七年に過ぎない。
心の準備をしろと言うには、あまりに短すぎる時間である。
慧音という名の友人ができた頃、私は特に荒れていた。
いい加減生きるのが面倒になってきたというのもあった。それに夜な夜な輝夜を殺し、そして彼女に殺される生活にうんざりもしていた。
…端的に言うなら、自暴自棄になっていたのだろう。どうせ終わりの無い生、何処ともわからない地で発狂して心だけ無くなるのなら、何故こんな心が有るのかと。
私は常に苛々として、出会った妖怪相手に当たり散らしていた。今考えてみれば、迷惑もいいところだったろう。
そんな時に出会ったのが、人里のリーダー・上白沢慧音である。
長い上にぐだぐだと面倒臭くなるので、出会いの瞬間は割愛しよう。唯一言うべきは、あの頃の私は彼奴に、事あるごとに絡まれていたのだという事実のみである。
まず、「お前の目からは歴史を感じる」とか変な事を言われた。そして次に、「トンボ玉の様な、澄んで空っぽな瞳だ」と心配された。
歴史を感じるのに空っぽとは、よくわからない事もあったものだ。当時の私はそう思って、その言葉を適当に聞き流していたように思う。事実、心配などされても、という気持ちがあったのも否定はすまい。
だが、今になって考える。慧音の言っていた『空っぽ』というのは、瞳でも、もちろん私の歴史でもなく、私が人として生きていく上で最も必要なもの……生きるための欲や覇気といったものが欠如している、そう言いたかったのではないかと。
それは、ある意味で正鵠を射ていた。実際、私は私自身に生きるつもりなど無くとも、自らの意思などお構いなしに生きていける。それが蓬莱の呪いであり、生きながらにして死ぬということだ。
最初のうち、私はこの事を慧音に話すことに抵抗を覚えていた。言ってしまえば、それによって彼女が離れていくのが怖かったのである。ようやく仲良くなれた人間と、そんな下らない理由で別れたくはなかった。
だが…付き合いを重ねていくうちに、思うようになったのだ。
この少女なら私の体質など関係なく、打ち明けた後も変わらず接してくれるのではないか、と。
そしてその後、それはある意味間違いだったのだと思い知る。
全てを打ち明けた後、私は慧音から全力の頭突きを一発だけ食らわされ(とても痛かった)、それで手打ちとされた。隠していた罰、との事。
だが、驚いたのはそこから先…なんとそれを機に、彼女の態度が明らかに軟化し始めたのだ。
私がそれについて尋ねた時、慧音は、「お前がちゃんと話してくれて、なんだか心の中に蟠っていたものが取れた気がしたんだ」と言っていた。……私が隠し事をしていると、薄々ではあるが気付いていたそうだ。流石の洞察力と言うべきか。
だがそれと同時に、私はふとした瞬間、彼女の整った顔に陰が差すのを度々見る様になった。そして未だ確かめられていないが、もし私の自惚れでないのなら、その理由は明白である。
私が不死であることを打ち明けてしまった所為で、慧音は気付いてしまったのだろう。いずれ来る、『別れ』の時に。
それに関して私は罪悪感を覚えこそすれ、あまり深くは考えなかった。今更意識するには、それはあまりに親しいものだったから。
そして、それから何年か経った後。
私は、あの優しき少女が考えているのは自らの死そのものでは無いと、まさかあの輝夜から聞く羽目になった。
こともあろうに慧音は、自分という友に先立たれ一人残る私を、誰より心配しているのだと。そしてそんな私への手向けとして、自分が死ぬより前に、何とかして私を『殺す』薬を作って欲しいと薬師を訪ねて来たのだと。
……いつも通りの殺し合いを終えた後に、そんな事を泣きながら伝えられたのだ。あの時、輝夜の目に浮かんでいた嫉妬、羨望…その他諸々の感情に撃ち抜かれ、私はその場に立ち尽くすことしかできなかった。
結果、あれ以来、私と輝夜は殺し合いをしていない。するにしても軽い運動としての弾幕ごっこだけになったし、今では縁側でお茶を飲みながら語り合える程度には仲良くなった。昔の私達からすれば、それは信じられない程の腑抜けっぷりである。
そしてそれらは、どれもこれも、全て慧音によってもたらされた平穏。
彼女がいなければ、今の私は存在していないだろう。気付けばそう断言できる程に、慧音の存在は私にとって大きなものとなっていた。
だからこそ、思うのだ。もし彼女が死んだ時、今度はどんな風に、私は『死』というものを意識するのだろう、と。
話を戻そう。
慧音は、自分にはあと三百五十年の時間が残されていると、そう言った。私もそれを信じて、少なめに見積もっても慧音とはあと三百年強、一緒に『生きて』いけるのだと思っていた。
「ーーーそれが、このざまかい」
私の前に敷いてある、一組の布団。私は、その敷き布団と毛布の間に挟まって、苦しげに唸っている少女…他でもない上白沢慧音を見下ろして、どこか冷めた心境で呟いた。
あの会話から、はたして何年経ったのか。そんな事すら、最早どうでも良い。……だって、まだ三百年どころか百年すら、一緒に過ごしてなどいないのだから!
「ねぇ、慧音、慧音…貴女は、こんな終わり方で良いの」
最後のあたりは掠れてしまって、最早声としての体を成していなかった。
今も慧音が苦しんでいるのかと思うと、どうしても喉が乾く。しかし飲み物を取りに行っている間に、この少女がどこかへ行ってしまいそうで……恐ろしくて、目を離すことすらもできない。
この病気を診た薬師は、慧音がもう一度目を覚ますことはまず無いだろうと言った。
体内に毒素が溜まりすぎて、昏睡状態に陥っているらしい。完治は勿論のこと、意識の回復すらも難しい程に、著しく衰弱しているのだそうだ。
「外見は、普段と全然変わらないのにねぇ」
口を半開きにして必死に呼吸する慧音は、少し顔色が悪いことを除けばまるでいつも通りの彼女だった。なんの比喩でもなく、今にも目を開きそうな、それは美しい寝顔だった。
先程まで部屋中にひしめいていた人間達は、気付けば一人もいなくなっていた。
薄情者共めとも思ったが、私と違って暇ではないのだろう。仕事もあれば、養わなければならない家族もいる。……いや、もしかしたら、周りが目に入っていなかった私に、気を使ってくれたのかもしれないけれど。
一人になった部屋で私は、せめて最期は綺麗な姿で迎えられるように、慧音の美しい髪を手櫛で丁寧に梳かしてやった。そして濡れた手拭いで定期的に顔の汗を拭いつつ、空いた手で頭を撫でてやる。
いつだったか、ふざけて撫でた時と全く同じ、柔らかくて心地の良い手触りがした。
同時に慧音との思い出が蘇るようで、気付けばぱたりと、私の膝に一粒の雫が落ちていた。
まだ、もっとやる事がある。
もっと、やりたい事があった。
しかし現実は、清々しい位に非情で、容赦がなくて。
私は、服の袖を噛みながら泣いた。
音を聞きつけて人が来ても困るため、必死に声を押し殺して、ただ時間の許す限り涙を流した。
目の前で横たわる慧音の、それでも動かない表情を見つめながら。
「………はっ」
自らの頭が落ちる感覚で、目が醒める。どうやら、軽く眠ってしまっていたらしい。
「慧音は、っ……あぁ、良かった」
僅かだが、胸が上下している。もしかしたら私が寝ている間にと思ったが、そうでは無かった様だ。そんな状況では無いけれど、思わず安堵の吐息が漏れた。
相変わらず眉をひそめたままの、苦しそうな寝顔。その瞳から一筋の涙が流れ落ちていることに、私は今、気が付いた。
「慧音……」
夢でも見ているのかしらと思いながら、早くも乾き始めているそれを、そっと指で拭ってやる。
触れた頰の冷たさに、ぞっとした。
「え、ちょっと…慧音!?」
慌てて、呼吸を確認する。
私は手で胸の上下を確かめ、口元に耳をやる。……呼吸が明らかに弱く、細くなってきていた。びくびくと、手足には微かに痙攣も見られる。
そのくせ、顔は先程より穏やかな表情を浮かべているのだ…脳裏を駆けたある予感に、背筋が粟立った。
立ち上がった私は、急いで玄関まで駆ける。そして戸を開き、里中に聞こえるように大声で叫んだ。
「誰か!誰かぁッ!迷いの竹林に行って、薬師の八意永琳を連れてきてくれ!慧音が…慧音が危篤だ!」
瞬間、静まり返る里。まだ日も高いというのに、その一瞬だけはまるで夜のように静かになった。
そして数秒経ち、にわかに里がざわめき始める。
『おい、今の声は妹紅の姉御か?』『先生が危篤だとよ』『あそこには妖怪が出る、徒党を組んで行くしかあるめえ』
ざわざわと、里中に波が伝播してゆく。
本来なら、万全を期して私が駆けるのが最善なのだろう…だが私は、あえて里の皆を動かす方を選んだ。今の慧音から目を離したら、彼女の死に目に会えない様な、そんな予感がしたから。
それは暗に『永琳達が到着する前に慧音が●●』のだと示していたが、後々考えるなら、私はあえてそれから目を逸らしていたのだと思う。
せめて彼女の死に際くらいはちゃんとしていようと、そう思ったから。
外からようやく聞こえだした、人の駆ける音。死神の足音と呼ぶには落ち着きがなさ過ぎるそれは、不思議とこの場のBGMとして合っている気がした。
恐らくこの少女は、最後まで里の喧騒に包まれながら往くのだろう。
「そうだろ、慧音?」
私は再び浮かんできた涙を拭い、返事をしない彼女へと話しかけ続ける。
「……だってなぁ。だって貴女、何だって、こんな、時に……っ」
泣いてんのよ。
横隔膜の痙攣に遮られて、私がその言葉を声にすることは叶わなかった。
先程まで穏やかな表情を浮かべていたその頰には、拭った筈の涙がまた流れてきていて…それを指で掬うと、まだ仄かに温かくて。
「あったかい……まだ、あったかいよ、慧音ッ」
自分でもよくわからない感情の奔流が、知らず知らずにごちゃごちゃと考えていた心の内の、あらゆる覚悟を押し流していく。気付けば私は、真っ白になった慧音の手を、両手で強く握り締めていた。
後から後から、とめどなく涙が溢れてくる。
………そうだ。慧音は、もうすぐ死ぬ。
その一言が、改めて心に刻まれる音がした。
いつだっただろう…慧音が、人生というものは、死に際の一瞬にこそ全てが凝縮されるものだ、という様なことを言っていた。そして、それはある意味、実に正鵠を射た考え方なのだろうと思う。
だがそれでも尚、『お前が私のために泣いてくれるなら、私にとってそれ程嬉しいことは無い』ーーーそう言った彼女の気持ちを、あの時の私は理解することができなかった。そしてそれは、今も変わらない。
結局のところ、私は一体なんなのだろう。
輝夜を呪い続けるために生き延びて、そして今やその気概も消え失せ…挙げ句の果てに、そのきっかけを作ってくれた当人を今、まさに喪おうとしている。
人を呪わば穴二つと云うが、私の場合、掘るべきは自分のものでも、ましてや輝夜のものでもない。二つどころではなく私が生きたその数だけ、私と輝夜の周りには無数の墓穴が空き、そして埋まっていくのだ。
なんという、恐ろしい業であろうか。自らの生の代償として、私は周囲の死を受け入れ、見届けなくてはならない。
……そんな人の道を外れた化け物を、この少女だけは、『人間』とーーそう呼んでくれた。
「あぁ、そうだよ、慧音……私は、人間だ。だから、私なんかよりよっぽど人間らしい貴女だって…ッ、貴女だって、人間だったのよ」
鼓動の止まったその胸に、私はそっと手を乗せながら、とめどなく涙を流した。
慧音がーー私の一番の友人が、死んだ。
その言葉が胸に、すとん、と、やけにあっさりと落ちてくる。
もし…もし、慧音の言っていたことが本当だとするなら。死に際の一瞬にこそ人生は凝縮されるという、あの言葉が真ならば。
「……貴女の人生の中には、私しかいなかったの?慧音」
私は、白粉も塗らないのに真っ白くなった、美しい顔に問いかける。
……そんな筈はない。慧音は博麗の巫女とも仲が良かったし、魔理沙と霧雨商店との仲を取り持とうと必死に奔走してもいた。
同じ歴史の編纂者として、稗田家の娘達とも通じるものがあったようだし、何より寺子屋に通う子供達の行く末を、誰より深く心配していたのも慧音だった。
そんな慧音の人生が凝縮されて…そして残ったのが、私だけ?
「ーーーそんな訳、無いわよね」
そう…結局、慧音は『妖怪であること』を捨てられなかったのだ。何の努力もしない私が、簡単に人間をやめられてしまったというのに。
慧音が人里へ溶け込むのに最も高い壁として立ちはだかったのは、案の定彼女の種族だった。それを近くで見てきた私は、彼女の懊悩、内に溜め込んだ鬱屈した感情を、痛いほどによく知っている。
『自分が半妖などでさえなければ』、彼女のそんな愚痴も、もう三桁に届こうかという回数、聞いていた。
そして…そんな慧音が『人間』としての死を迎えることは、終ぞ叶わなかったのだ。
「だから、慧音……私は、貴女のことを人間と呼び続けるわ。百年経っても、千年経っても。私の心が朽ち果てて消えるまで、貴女は、私の中では人間だったのよ」
夕陽に染まった人里の上を、紫に色づいた細い雲が、静かに、ゆっくりと流れていった。
幻想郷歴×××年、一月七日。
上白沢慧音、人間の里にて、その人生を全うす。
霊夢「慧音がッ、慧音が死んだーーーー!?慧音が」
魔理沙「落ち着け霊夢、別の世界の出来事だ」
霊「慧音がッ…ぜえ、ぜえ……ふぅ」
魔「落ち着いたか?」
霊「すー、はー……ええ。まさかほのぼのラブ(?)コメを謳った作品で、躊躇無くキャラクターを殺しに来るとは思わなかったわ」
魔「お互い様だ。作者としては、それなりにいい経験になったそうだぜ」
霊「まぁた勝手な事を…」
魔「本人が書いてる途中に泣くくらいだからな。そんなに辛いならやめろってんだ」
霊「どうせまた、『ここで書かなきゃ物書き失格』とか偉そうな口利いてたんでしょ?」
魔「さっすが霊夢、大正解…てか実はここだけの話、大体後ろ半分の文章は一日で書いたんだとよ。突然、まさに天から降って湧いたようにアイデアが浮かんできたんだそうな」
霊「ええッ、合計三週間もかけといてそんなオチ!?」
魔「そうだ。しかもその間は本筋で連載してる方は言うに及ばず、幽々子の話すらも全く手を付けていないという徹底ぶり」
霊「どんだけもこけね大好きなのよ……」
魔「というより、最近は『死』ということそのものをテーマにした小説を書きたがってるみたいだぜ。死体ラヴな主人公のオリジナル短編なんざ書いてるくらいだし、そういう意味で言うなら、次の幽々子話も期待はできそうだな」
霊「本格的に病み始めたのか、それとも物書きの卵として何かに目覚めたのか…どっちかしらね?」
魔「作者としては前者の方が良いみたいだがな」
霊「へ?何でよ、普通は自らの成長を望むモンでしょ?」
魔「いや、なんか『最初から病んでた方がいい小説を書けそうな気がする』だとさ。こいつぁ筋金入りだぜ」
霊「うわー…なんか変な方向に目覚めちゃってるわよ、この作者。そのうち私達のSAN値が削られ始めたりしないでしょうね」
魔「この短編を見る限り、今のところ問題は無さそうだけどな」
霊「それもそうか……じゃあ、次回の紹介ね」
魔「おう、任せとけ!どぅるるるる」
霊「それはもう良いッ!」
魔「ちぇっ」
霊「全く、油断も隙もない。……っていうか、次は普通に幽々子のお話よね?今思い出したけど」
魔「あぁ、そういやそうだな…あれ?私達が紹介するもの無くないか?」
霊「無いわね」
魔「無いな」
霊「…………よし、帰ろ」
魔「全くだ。最近寒くなってきたからなぁ」
霊&魔「「それでは、次回をお楽しみに〜」」
作者あとがき
実を言うと今回の短編、もっと救いようの無い終わり方にするつもりでした。もちろんあえてバッドエンドにしようという訳ではありませんでしたが、それでもやはり、綺麗な終わり方にだけはすまいと。
今回のこれも、決してすっきりする感じの終わり方ではありませんが…本来ならもっと長く、だらだらと妹紅の絶望を描くつもりだったのです。というか途中までそんな感じで書いてました。
ですが、そのパートを半分くらいまで書いたところで、ふと思ったのです。これで良いのか、と。
そう思ってしまったら、あとは止まるだけですよね(笑)。
構想を練っては消し、練っては消しを繰り返して、どんどんマイルドな終わり方に近付いているのを感じて、訳のわからない焦燥に駆られました。これでは自分の書きたかったものではなくなってしまうと。
そして本格的に、この短編そのものをボツにするかと考え始めたのが、二週間目の辺りでした。そしてそこからは、ようやく書き終えた昨日まで、一切の筆が進みませんでした。
しかし、昨日。唐突にアイデアが降ってきたのです。これなら妹紅と慧音を最もいい形に導きつつ、それでも僕自身の書きたかったものを失わせずに終わらせることができる、そんなラストが。
そして書き終わったのが、『これ』です。
自分でも驚きました、まさか書いている途中に自分で泣くとは。それだけ魂やら何やらを込めることができたのだと考えれば、決して悪い気持ちはしないのですが。
さて、今更ながらこれを読んでくださった皆様方。このような駄文を最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。
感想、もしくはアドバイス等ございましたら、コメントの欄にお願い致します。