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稗田阿求

気付けば一月も経っていた……(驚愕

遅れて申し訳ありません、今回はあっきゅん編です!


今回は阿求の宿命と、阿礼乙女というものの存在を上手く描ければと思いながら書きました。

どうぞ、お楽しみ下さい!

阿求編


草木も眠る丑三つ時……から大体二刻程前の、微妙な時間帯のお話。

眠っているのは一部の人間と、動物達。起きているのは動物、妖怪、そして…一部の、人間達だけ。



「御当主様、そろそろお疲れでしょう。本日の執筆はこの辺りになさっては?」

その部屋には、三つの影があった。

一つは小さな文机に向き合って筆を走らせる、矮躯の少女。一つはその少女に話しかけている、侍女と思しき妙齢の女性。そしてもう一つは…ただの、影。

この場合の『影』という表現には、前の二つと三つ目とでは少し違いがある。前者は人影としての影、後者は光を遮る何かによって投影された、言わば実態を持たない影そのものである。

三つ目の影の存在には、部屋にいる二人は気付いていない様に見えた。

「いえ、まだ良いわ。どうしても、今日中に書き留めておきたい事があるの。」

どこか真剣な、しかし顔にそのまま貼り付けた様な表情で話す少女。

その少女の背中に、影がそろそろと音も立てずに忍び寄ってゆく。

まるで、少女を自分達の世界に引き摺り込もうとでもしているかの様に…

「あっ。」

唐突に、少女が声を上げた。ぴたりと停止する影。

「何か御入用でございますか、御当主様?」

「どうやら、私に来客の様ね。(たえ)さん、お茶をお願いできるかしら……戸棚の奥にある、一番上等なのを。」

相変わらず少し目を伏せたまま、命令を下す少女。言葉面は穏やかだが、それは言外に『席を外せ』と言われているのと同じ事だった。

「……畏まりました、直ぐにお持ち致します。」

少しの疑問を向けながらも、あくまで従順に去ってゆく女性…妙、と呼ばれていたか。

比べる事自体が既に馬鹿馬鹿しい様なものだが、その所作は紅魔館の瀟洒なメイドとは比べものにならないものである。


「……さて、と。」

一人になった部屋で、溜息を零す少女…稗田阿求(ひえだのあきゅう)

「そこに、いるのでしょう?勿体ぶらないで姿を現したらどうかしら…妖怪の賢者殿。」

阿求がそう言った時、影の足元にずるりと亀裂が走り…まるで、穴でも開けたかの様な空間の切断面を露わにして、金髪妙齢の妖艶な女性が姿を現した。

女性…八雲紫は得体の知れない笑みを浮かべながら、平然と言い放つ。

「まさか看破されるとは夢にも思いませんでしたわ。貴女、人間よね?」

「もう、既に片足を踏み外している様なものよ。……で、幻想郷の管理者ともあろうお方が一体、どんな野暮用で現れたのかしら。あと私みたいな小娘にその言葉遣い、疲れないの?」

「口調に関してはこのままで流させて頂きますわ。『稗田阿求』としての貴女は確かにまだ年端もいかない少女だけれど、貴女の魂は私よりも遥かに長く生きている。」

「………………」

「貴女『達』のその在り方と、私の幻想郷への、献身と言っても差し支えない程の貢献に対して敬意を払っているからこそのこの口調ですわ。貴女には窮屈かも知れませんが、堪えて下さいな。」

その台詞を聞いた阿求は一転して厳しい顔付きになり、紫の顔を睨み付けた。

「私も、一応は阿礼の一族に名を連ねる者の一人よ。皆の記憶を受け継ぎ、次の代へと繋ぐ者。……餓鬼扱いは勘弁して欲しいものね。」

しかし対する紫は、こうも剥き出しの敵意をぶつけられているにも関わらず、その胡散臭い笑みを絶やす事なく、淡々と言葉を紡いでゆく。

「了解しましたわ。稗田家、現当主殿。……ところで、私が今夜ここにお邪魔致しました理由なのですけれど。」

紫がそこまで口にしたところで、阿求は気付いた。

その切れ長の目の奥にある闇が、今にもこちらに襲いかからんと渦巻いている事に。

「………っ、何の、用なの?」

「貴女が先程おっしゃった『阿礼の一族』。」

「それが…何か?」



「貴女を、その運命…もとい呪縛から、解放して差し上げようか、と。」



場の空気が、変わる音がした。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「稗田家の女は、今までその全てが夭折(ようせつ)しています。そして、それには理由がある。」

「………理由?」

「賽の河原。」

「ッ!?」

「その特異な魂より、稗田の女は親より先に死ぬ事があってはいけません。しかし、世の中何が起こるかわからないものですわ。それなら……親が、先に死んでしまえば良い。」


親に先立って死んだ子供は、賽の河原で石積みの刑を課せられると言われている。それは三途の川縁(かわべり)に位置し、そこでは鬼が、子供達が積んだ石をわざわざ崩しにやって来ると言う。

大抵の場合、子供は親が追い付くまでそこで石を積み続けるのだが、地域によっては男子よりも女子の方が罪(積み)は重いという伝承も存在しているそうだ。


「……何という、事を…ッ!」

自らの祖先に対しての理不尽に過ぎる仕打ちに、怒りを滾らせた視線で目の前の妖怪を睨む阿求。

紫は少し慌てた様子を見せて、

「ちょ、ちょっと待って下さいな。それは私の所為ではありませんわ。」

「…じゃあ、一体誰の仕業だって言うのよ。」

「貴女の、魂そのものです。

課せられし使命の為に、転生すべき次なる魂の為に、そして何より自らと同じく、早くして死する娘の為に。それは、魂が取った自己防衛の為の機構なのですよ。」

「……………」


無意識の内に乗り出していた身体を引っ込め、礼儀正しい正座の姿勢に戻りながら、一つ深呼吸をして阿求は尋ねた。

「……では何故突然に、その様な事を?」

待っていたと言わんばかりに、紫の口の端が歪んだ。

「そう、問題はそこなのです。」

「……?」

「歴史の編纂者は、人里に二人いる。一人は『表』の編纂者、上白沢慧音。そしてもう一人は『裏』の編纂者……稗田家当主、稗田阿求。」

「それは知っているわ。」


上白沢慧音…『表』の歴史を綴る者。

彼女は人里に伝わる歴史の真偽を突き止め、正しいモノのみを後世に残す為の能力を持っている。勿論、それは人間達の紡いで来た歴史だ。


それに対して、稗田が綴るは妖怪の歴史。この幻想郷にだけ未だ息づく妖怪達の、生きた証を遺すのが彼女の役目であり、使命である。

何かと陰口を叩かれる事も多いが、阿求はこの仕事に不満を持っている訳では無い。寧ろ、あの姦しくも力強い者らの事を人間以上に愛してさえいるのだ。



「近頃、異変が減って来ていると思いませんこと?」

と、紫は考え事をしている阿求の顔を見つめながら、唐突に口を開いた。

本当に、ころころと話題の変わる妖怪である。勿論、何の考えも無しという訳では絶対にないだろうが。

「え?……うーん、どうかしらね。私はあまり外に出ないし、今までの私達も、それは言わずもがなよ。貴女達が隠匿しているものも含めれば…わからないわ。」

「隠匿だなんてそんな。その様な事、する筈がありませんわ。」

「……………(んな訳、無いでしょうに……)」


少し前。阿求の使っている筆記用具が、勝手に動き出した事があった。

それは紫や霊夢達、つまり異変に直接関わった者たちが言うところの輝針城異変の副産物だったのだが…当然、彼女はそれを知らない。

駆け付けた紫に只の憑藻神だと言われ、古い道具も多い事だしとそれを頭から信じてしまったのである。


そして、運の悪い(?)事がもう一つ。

阿求は、鈴奈庵に行く時位しか全く外へ出ない生活を続けていた。その所為で、他の家でも同じ事が起きているという事実に気付く事が出来なかったのである。

と言っても、それは侍女なり何なり、誰かしらを使いに遣れば造作もなく調べられた事柄だ。つまり、間接的に阿求の不手際、調査不足となる。


「……ま、それは良いわ。じゃあそろそろ私の質問に…答えて、貰えないかしら?」

阿求は紫を真っ直ぐに見つめ、問うと言うよりは最早懇願に近い口調で詰め寄る。

対する紫はばつが悪そうに阿求から目を逸らし、ぼそぼそと言い訳する様に話しはじめた。

「…全く、そんな目で見ないで下さいな。叱られている橙を思い出してしまいます。」

「じゃあ、早く教えて?」

賢者と謳われる大妖怪の、意外な弱点に気付いた阿求。

彼女は内心ニヤニヤしながらもその表情を崩さず、正座のまま器用に距離を詰めていく。

「ちょ、何ですか急に!……あぁもう、わかりましたわ…全く。包み隠さず答えますから、少し離れて下さる?落ち着きませんので。」

既に、登場時のカリスマは完全に崩壊してしまった紫。

これ以上擦り寄っても大した効果は無いであろう事を察した阿求は、素直に元の位置へと戻って行った。

そして、満面の笑みで問う。

「じゃあ、教えて頂戴?……何故今の幻想郷は、妖怪の歴史を編纂する存在を不要と見做しているのか。」

はぁ、と溜息を吐いて呆れた顔をする紫。

「……もう、答えはとっくに口にしていますわ。」

「どういう、事?」

「異変…少なくとも、次の世代に遺すだけの歴史的価値がある異変は、恐らくもう無いでしょう。あったとしても例えば、レジスタンスを気取った天邪鬼の暴走程度ですわ。」

「……………」

やはり、自分の知らない所で何かがあったのだと確信する阿求。

だがそれを調べようとしたところで、恐らく彼女一人では真相に辿り着く事は出来ないだろう。目の前の妖怪…幻想郷の管理者たる紫が、それを隠蔽しようとしているのだから。



「喜んで下さい、稗田家当主殿。貴女はもう…死に続ける必要は無いのです。」



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「おーい阿求君。墨の補充そろそろだろう…って、おや。どうしたんだい?元気が無い様だが。」

「あ、香霖さん。いえ……昨日、少し色々あって。」

紫からの『御誘い』を受けた次の日のこと。


考え事をしていた阿求に対して断りも無しに、部屋へずかずかと上がり込んで来た、灰色の髪の青年。

名を、森近 霖之助(りんのすけ)と云う。

基本的にアクティブな少女達で固められている阿求の周囲に於いて、会った事も無いアリスとやらを除きほぼ唯一と言って良い文系、しかも男子。


阿求は言わば超が付くほどの箱入りお嬢様であるが、彼女も勿論一人の女の子だ。頻繁に訪ねてくる霖之助に対して胸の高鳴りを憶えた事も一度では無い、一時期はそれを恋と勘違いした事もあった程だ。

しかし、それも昔の話。月日が経つにつれ年の差・種族の差もある事に気付いてしまい、終ぞ特別な感情を抱くには至らなかった。

しかし、こと学術的な話題になるとまた話は変わってくる。今の彼女にとって霖之助とは、見地の違う論争を繰り広げる事の出来る、掛け替えの無い同志だった。


「魔理沙といい君といい、何でその香霖ってあだ名で呼ぶのだろうね。僕としては、呼び名は霖之助さんの方が落ち着く訳だが…」

訳がわからないよ、と呆れ顔で言う香霖…もとい霖之助。

「あらあら、可愛い女の子達から愛称まで付けられる程に親しまれているのでしょう?そこは喜びこそすれ、ため息を吐く場面ではないと思いますけど。」

「一日で十分だ、僕と立場を交換してみると良い。……魔理沙を、女として見る事が出来なくなるぞ。」

「…………」

阿求は、引きつった虚ろな笑顔を浮かべる事しか出来なかった。理由は勿論、心当たりがあり過ぎたからである。

「僕自身、小さいとは言え店を経営している身だからわかるよ。アレは無邪気だから尚、性質(たち)の悪い……言わば、商売人の敵だ。」

「あは、は……」

恐らくもう何度も煮え湯を飲まされて来たのだろう、諦観の入り混じった笑顔で話す様はどことなく哀れを誘うものだった。

「ま、まぁほら、そんなに落ち込まないで下さい!私は霖之助さんの事大好きですから!」

「あぁ、ありがとう。僕の周りにいる女の子の中でも、君がほぼ唯一の癒しだからね……」

阿求の言い回しは、考えようによってはどうとでも取れるものだったのだが、流石そこは霖之助。子供が恋愛対象にならない健全なオニーサンだった様だ。

「まぁ、それでも嫌いになりきれない不思議な魅力を魔理沙が持っているのは確かだろうね。どこぞの小悪魔などよりも、よっぽど悪魔的だ。」

「そうかも知れませんね……確かに、魔理沙さんに関してはいい噂をあまり聞きませんもの。それでも里の皆と上手くやれているというのは、ある意味一種の才能の様なものを感じます。」

例えば紅魔館での本泥棒とか、妖怪の山に単身踏み込んでストレス解消に天狗達を蹴散らして来たとか、香霖堂の道具を度々持って行くとか。

噂では博麗神社のお賽銭に手を出そうとして、巫女にこっぴどくやられたという話もあった。……そもそも、盗めるお賽銭自体あったのかが疑問だが。


「そう言えば、魔理沙は霊夢と少し似た所がある様に思えないかな?類は友を何とやらだ。」

霖之助が、ふと何かを思い付いた様に眼鏡を持ち上げた。

そして学者根性丸出しの少年の様な瞳で、阿求に問いかける。

「……まぁ、性格は正反対ですけれどね。対称的と言うなら、正に線対称な二人だと思います。」

「線対称………?面白い例えだね、そのココロは一体?」

首を傾げる霖之助を横目に、阿求は少し得意げな面持ちで、かけてもいない眼鏡をくいっと持ち上げる仕草などしながら解説を始めた。

「y軸に対して線対称な座標は、x軸から見れば正負は入れ替わっていません。それは勿論、逆も然り……見方によれば正反対な二つも、視点を変えれば実は同じ世界で生きているのかも知れませんね。」

「成る程……上手いね。座布団を一枚進呈しよう。」

パチパチと手を叩きながら、眼鏡(勿論、本物である)を持ち上げる霖之助。

「座布団…?何故ですか?」

当然何のことやらわからない阿求は、首を傾げて問い掛けた。

「この前こちらに来た少年が言っていてね。向こうでは、何か上手い洒落を言った相手に座布団を渡す習慣があるそうだ。」

「へぇ…外の世界は不思議がいっぱいですね。いつか行ってみたいなぁ……!」

「あぁ…まだまだ自分の知らない技術が向こうにあるのだと思うと、こう、身体の奥がむず痒くなって来る様だよ!」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


その後も一刻程、探究心に目を輝かせながら会話を続けていた二人。

と、霖之助がふと思い出した様に阿求に尋ねた。

「……あ、そう言えば阿求君。」

「はい、何ですか?」

「最近、自分の持っている道具が、勝手に動き出したりはしなかったかい?」

「えっ………」

心当たりは、嫌になる程あった。

「一月前位前に、ありました……それが、一体?」

取り乱す阿求を前に、霖之助は静かな雰囲気で語りかける。

「それに関して、紫は何か言っていたり…しなかったかな?」

「………ッ!」


彼女は瞬時に理解した。自分は、今までこの半妖を侮っていたのだと。

霖之助は阿求が思っていたよりも遥かに聡明で、頭の回転も早く、そして何より友達思いな…言わば、お節介な男だったのである。

「……確かに、紫さんの干渉は受けました。ただの憑藻神だって。でも、とてもそうとは…思えなかったです。」

「そうだろうね。それは、霊夢達が『輝針城異変』と呼んでいるモノだ。」

「輝針、城?」

彼女は、その名前に聞き覚えがあった。

「確か、小人達の秘宝である魔術要塞…でしたっけ?かなり古い文献ですけれど、見た事があります。」

「本当かい!?」

案の定と言うべきか、霖之助は物凄い勢いで食いついて来た。その剣幕に少し怯む阿求。

「え、ええと…今も第27の棚の上から5番目、右から12冊目の所に置いてありますけど。そんなに貴重な物なんですか?」

「小人族の事を綴った書は、種族そのものの知名度に反して非常に少ないんだよ。一昔前までは無文字文化説まであった位にね……いや流石は稗田の書庫だ、幻想郷の歴史が集約されていると言っても過言ではないだろう。今度見せて頂いても宜しいかな?」

「ええ、これからでもお好きにどうぞ。」

阿求のその言葉を、果たして霖之助は最後まで聴いていたのか否か。彼女がそれを言い終わらないうちに、霖之助は嬉々として書庫へと走っていった。

家主を相手にして失礼と言えばあまりに失礼な態度ではあったが、阿求自身熱中すると目の前の事が見えなくなる性格なので、気持ちはよく理解できた。



「ふぅ……」

静かになった部屋で、一人溜息を吐く阿求。

考えていたのは、先程の霖之助の言葉だった。


『流石は稗田の書庫だ、幻想郷の歴史が集約されていると言っても過言ではないだろうね。』


「………稗田の、書庫ね。」

稗田一族、阿礼乙女(あれいのおとめ)

妖怪の歴史を紡ぐ者。


「難儀なものねぇ、同情するわ。」

「……いつから居たのよ?」

気が付けば阿求のすぐ横には、いつの間にか一人の妖怪が座っていた。

いつもニヤニヤ貴女の隣に擦り寄る妖怪、八雲紫……毎度お馴染み、神出鬼没のスキマ妖怪である。

「で、どうなの?貴女の中で、答えは無事に出せたかしら?」

口元を扇子で隠しながら、いつになく感情の読めない笑顔で問う紫。

「ああ、ちょうど今決まったところよ。って…口調、丁寧語が消えてるけど?」

「今、私は『貴女達』ではない…稗田阿求、貴女一人と話をしているのよ。こんな乳臭い小娘相手に、丁寧語など必要無いわ。」

前日会った時の会話を、未だに根に持っているらしい。

相変わらずあっさりしているのか執念深いのか、よくわからない妖怪である。

「……わかったわ。で、答えだけれど。」

「ええ、貴女がどちらの答えを出したとしても…私はただ、それを遂行するだけよ。選択するのは貴女の仕事。」

「そう言って貰えて安心した。


……では、妖怪の賢者にして、この幻想郷における唯一の管理者、八雲紫殿。」

「はいはい、何で御座いましょうか?稗田家現当主、稗田阿求殿。」


阿求は礼儀正しく正座し、手を床に付けて深々と頭を下げた。

「折角の御誘い、誠に有難い限りです。ですが……不肖この稗田阿求、まだこの仕事を続けて行きたい思いで御座いますので、謹んでお断りさせて頂きたく存じます。」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「……ふーん。てかさ、お前はそれで良かったのかよ?」

「良かったのよ。確かにこれから生まれてくる私の子孫の事を思えば、少しは申し訳ない気持ちにもなるけれど…」

「けれど?」

「それは、考えるだけ無駄な事だわ。」

「はっきり言ったなあおい…」

「だってそうじゃない?人間、いつも最善の選択を出来る訳じゃあないわ。それを悔やんで今の自分の境遇を自分で哀れむっていうのは、唯の逃避と同じだと思うの。」

「手厳しいねぇ。……ま、確かに私も家を出てきた事は後悔してない訳じゃ無いからな。お前の言いたい事も、わからないでもないぜ?」

「へぇ、それこそ意外ね。自由奔放、天衣無縫に手足と首が生えて歩いてるみたいな貴女が?」

「お前は…私の事をどんな目で見たらそうなるんだ?こんな類稀な美少女、探してもそうそういないぜ?」

「顔は関係無いでしょうよ……あ、そうそう。」

「ん、何だ?」

「香霖さんが貴女の事、魔性の女だって。」

「はぁ!?香霖の奴…後で覚えてろよ!」

「そんな事ばっかりしてるから女として見て貰えないのよ……ってあぁ、行っちゃった…」


「………(たえ)さーん、お茶頂戴ー?」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


※夭折…早死にすること。


霊夢「はーい、毎度お馴染み博麗霊夢とー。」

リリー「どうも、リリーホワイトです。」


霊&リ「「……えっ?」」


霊「……………あれ、魔理沙は?」

リ「何やら作者の命令により、今回はお休みだそうで。多分ですけど、少しとは言え本編に登場したからじゃないでしょうか?」

霊「なーる程…つまり今回、あいつは来ないと。」

リ「そういう事ですね。さぁ、無駄話もこれ位にしてちゃちゃっと次回予告…いってみよー!」

霊「……あれ、あんたこんなに元気なキャラだったっけ?」

リ「春ですから。」

霊「あっ、そ……」

リ「春ですよーーーー!!!!」

霊「うるさぁぁあぁああぁい!?」


〜十分後〜


霊「……ぜー、ぜー…」

リ「……は、春「まだ言うか」すみませんでしたスペルだけはご勘弁を!」

霊「……ったく、普段大人しい奴が元気になった時ってのがここまで面倒臭いとは……まぁ良いわ、さっさと次回予告済ませちゃいましょ。」

リ「それもそうですね…なんかどっと疲れた気分です。」

霊「自業自得としか言いようが無い気がするのだけど…」

リ「さて、次回のメインキャラクターは……どぅるるるるる……」

霊「あんたもそれやるの!?……じ、じゃーん……」

リ「おお!照れながらのじゃーん、ご馳走様でした!」

霊「………もう反応する気力すら湧かない……」

リ「あれま…ちょ、ちょっと無理させ過ぎましたかね?

えー、次回のメインキャラクターは『風見幽香』………って、ええぇ!?」

霊「幽香ぁ!?」

リ「向日葵って事は……もう夏ですか!?」

霊「あ、まずソコなのね。」

リ「うぅ…やっと春が来たかと思えばもう夏……えぇいこうなったら向日葵の花びらに夏を」

霊「それ以上言ったら駄目よ!」

リ「おっと、危ない危ない……危うく去年の冬と同じ悲劇が起こるところでした…」

霊「目が据わってるのがまた怖いわね……あんたがラスボスとか洒落にしかならないから、悪い事言わないからやめときなさい。」

リ「だいぶばっさり切りましたね!?酷いッ!?」

霊「弱いのは事実よ。」

リ「そうですけども……ま、それは良いです。」

霊「良いのか…」

リ「良いんです!…じゃ、気を取り直して。毎度お馴染み、作者の正気を疑うコーナー!」

霊「………あながち間違いでは無いわね。」

リ「でしょう?さて、今回のキャラ選に関する作者の弁明を聞きましょうか。」

霊「えーと…なになに、『阿求を書いてる途中、何故か幽香のストーリーが脳裏に浮かんできた』ですって。」

リ「普段に比べればマシな方なんでしょうかね、これ?」

霊「そうね、私からも特に反対意見は無いわ。」

リ「おぉ、それなら今回は早く終わりそうですね!」

霊「そうね、じゃあ皆さん。」


霊&リ「「ありがとうございました、また次回!」」

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