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ミスティア・ローレライ

今回は、かねてより楽しみにしていたみすちー回です。

……結局、好きなキャラだから云々とか言っても、それなり以上に時間がかかってしまいました。すみません…

ミスティア編



「この両手から、溢れそうな程〜♪」


迷いの竹林、入り口付近。

夕日に照らされながら陽気に歌う、夜雀の少女ーーミスティア・ローレライは、生活の要となっている八目鰻屋の屋台を組み立てていた。

彼女曰く『全ての鳥肉を撲滅』すべく始めたその屋台は、八目鰻という珍しい品目と酒類、そして豊富かつ新鮮なつまみの影響もあってか、本来被捕食者となるべき人里の者達からも中々と言っていい評価を得ていた。


だが、しかし。


今の生活の維持や金儲け等が目的なのだとしたら、ミスティアの商売は十分に成功を収めたものと言えた。

けれど如何せん彼女が屋台を経営している真の目的は、鳥肉の完全な撲滅なのである。……それを達成する為には、一人ではいささか心許ないのも確か。


ミスティアは組み立てる手を一瞬止め、

「……仲間、欲しいなぁ……」

ぼそりと、そう呟いた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「よし、終わった!」

五分ほどの後、ミスティアの前には見事に組み立てられた屋台があった。

それには既に火がくべられていて、炭が焼けて爆ぜるぱちぱちという小気味良い音が周囲に響いていた。

「よーし、鰻鰻っと!」

そしてミスティアは桶の中から新鮮な八目鰻を取り出し、火に翳した。

軽く炙って周囲に匂いを拡げる事で、集客を狙うのである。


そして、ミスティアの究極集客術(言いづらい)・その2。…と言うより寧ろこちらがメインなのだが。

それは歌で人を狂わす、そして鳥目にする程度の能力。

ミスティアは、自分の歌を他人に聴かせる事で相手の判断能力を奪ったり、夜盲症を患わせたりといった芸当が可能なのである。


つまりなんとこの夜雀、自らの歌で鳥目にした人に八目鰻(鳥目に対する効能を持つ)を振る舞う事で復活させ、リピーター効果を狙うという実にあくどい商売をしているのだ。

これだけなら例の紅白巫女に退治されても文句は言えない筈なのだが、何とまあ当の本人がミスティアの店の常連なのだから救えない。


そんな訳で、今日も今日とて歌声を響かせようと息を吸い込んだ、その時。


「や、いい匂いね。一杯良いかしら?」


ーー匂いに誘われてやって来た黒い狼耳の女性が、どうやら今日のお客様第一号の様である。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


そして、その女性の来店から約半刻程経って。


「ふう、食べた食べた。……ってあれ、もうこれだけ?」

桶の中でつるつるぬるぬると元気にぬめっていた八目鰻達は、皆仲良く女性の胃の中に収まっていた。

「あんたどれだけ食べてるのよ!今日の分完売しちゃったじゃないの!!」

嬉しい悲鳴などといった雰囲気は微塵も無い、文字通りの怒鳴り声を発するミスティア。互いの、お客と店員という立場は早々に崩れてしまった様だ。

みすちーの八目鰻屋、超大食漢(漢なのか?)の来店により速攻で営業終了。

実にご愁傷様である。

「まぁまぁ、余りが出なくて良かったじゃない。私もお腹いっぱ……八分目位にはなれて幸せだし、これぞ一石二鳥、いや一挙両得って奴よね。」

「ええそうですね!今後ともご贔屓にぃ!!って言うかこれで八分目なんだ!凄いね!!!」

半ばヤケクソ気味に叫ぶ、哀れな夜雀の少女。……いや、売り上げは寧ろこれ以上無い程に出ているので、哀れと呼ぶには幸せが過ぎるだろうが。

幸中(こうちゅう)の不幸いとでも呼ぶべきか、この状況は。


「……で、あんたちゃんとお金持ってるんでしょうね?これで足りませんでしたとか言ったら、本当に怒るよ?」

既に額に青筋を浮かべながら言ってもあまり説得力は無かったが、一応理性は保てているらしいミスティアはとっとと勘定に移ることにした。

どうにもこの狼にはペースを崩される。このまま話をしていたら、今度こそ目の前の女性を鳥目にしてしまいそうだった。

「大丈夫大丈夫〜。こんな事もあろうかと今日はちゃんと…………」

恐らくお代を取り出そうとしたのだろう、その細い腕をするりと懐に入れたところで女性の動きが止まった。いや、固まった。

「今日はちゃんと………?」

嫌な予感を覚えたミスティアは、その言葉を反芻する。

「ちゃん、と………」

ちゃんと、ちゃんと……と、うわ言の様にぶつぶつと呟きながら、懐をまさぐる女性。

控えめに言ってもそれなりに綺麗な女性が涙目で自分の身体に手を這わせている(様に見える)様は、ミスティアをして、もうこれ目の保養になったからお代いいかなーと思わせてしまうものだった。

「……っていやいや、何考えてるんだ私…」

勢い良く首を横に振り、ピンク色の思考を掻き消すミスティア。

そんな彼女の不審な動作にも気付く事無く、女性は未だ見つからぬお金を探している。

そんな彼女を見て、ミスティアは流石に声を掛けずにはいられなかった。

ジト目で女性を一瞥し、頭を抱えてため息をつきながら尋ねる。

「……ねぇ。もしかして、お金…無いの?」

彼女がそう問うと、女性はゆっくりと顔を上げ、

「……………そう、みたい……」

顔を真っ赤にして縮こまりながら、涙目のままじっ…とミスティアを見つめる。攻守が逆転した瞬間である。

そんじょそこらの男ならそれだけで堕ちてしまいそうな表情だったが、生憎と今のミスティアの頭はチルノよりも冷え切っていた。

いや、まあチルノ自身の頭はいつも春っぽいのだけれども。

暫くの間氷の様な目で女性を見ていたミスティアは、何かを思い付いた様な真面目な顔で手を打ち、こう言い放った。


「………こりゃあ、身体で払って貰うしか無いかな。」


「ひぅッ!?」

予想外の台詞に、思わず後ずさる女性。

「……あぁ、いやいや。誤解しないでね?ちょっと前から、従業員がもう一人欲しいなーって思ってたところだったからさ。こいつはいい拾い物をしたよ、うん。」

「あ、なんだそういう事ね。それなら、寧ろそれで許してくれるのなら、喜んで!」

私は頼りになるわよーと胸を叩いて豪語する女性。

どん、という音の一つも響けばまだ頼りになりそうではあったが、如何せん擬音とするなら、それはぽふっ、若しくはぽよんとでも言ったものだった。

頼れるとか頼れないだとか、そんな事以前の問題である。


嫉妬に染まった血の涙を心の中で流しながら、それでもミスティアは表情を変えずに女性へと向き直る。

大した商売人根性、とでも言うべきなのだろう。

彼女は普段から、本来他の妖怪が持っているのと同じ食人衝動を抱えながら、抑えながら接客をしているのだ。そのメンタルは、並の妖怪では及びもつかないレベルにまで鍛えられている。

……え、外見不相応?いえいえ何の事でしょう。



「私はミスティア・ローレライ。見ての通りの夜雀よ。短い付き合いだろうけど、これから宜しくね。」

「私の名前は今泉 影狼(かげろう)よ。狼女……って奴なのかしら。

こちらこそ、どうぞお手柔らかにお願いするわ。店長さん。」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


その三日後。ミスティア達は、再び竹林の入り口で屋台を出していた。

ミスティアは調理・歌・接客担当で、影狼は会計。

担当している役の数からして、影狼さんほんとに役に立ってるのかと疑問に思わなくも無いだろうが、他の仕事をこなしながら会計をするというのは意外と神経を使うものなのである。ミスティアは正直な所、会計は影狼に全託しても良いかと思っていた。

ただ、出会い方が出会い方だったので金銭面での信用度は当然ながらゼロ。帳簿等は仕事が終わった後にミスティアが全て付けていた。

影狼の仕事は、お客からお金を受け取り貯めるだけ。だが、ミスティアとしてはやはり仕事が減るのはありがたいものだ。


因みに、あの後我に返った影狼は家から金を持ってきて払うからタダ働きだけは勘弁してくれと主張したが、ミスティアは「その場で払えないお前が悪い」と言って、彼女の主張を頑として聞き入れようとしなかった。

こちらはこちらで、相当仲間が欲しかったのだと思われる。



そして、開店して二刻も経たない内に、八目鰻は完売した。

そして、もう今日のところは用済みとなった屋台を二人で片付けている途中。

影狼が、とある話題を振った。

「ねえ、店長。」

屋台でバイト…もといタダ働きをする様になってから、影狼はミスティアの事を店長と呼ぶようになっている。

本人は柄じゃないとばかりに断ったのだが、形を大切にすべきという影狼に圧される形で、なし崩し的に彼女の立場は『影狼の雇い主&監視役』から『店長』へと変わったのであった。

「……なぁに?あっという間に売り切れたのがそんなに意外だった?」

「いや、そうじゃないの。店長ってさ、どうして八目鰻なんか売ってるのよ?やっぱり能力の関係?」

「あー…うん、それもあるんだけどね……」

言い淀むミスティア。

『鳥肉を撲滅する為』等と言っても、どうせ鼻で笑われるに違い無いと思ったのだ。

だが、その考えに辿り着いた後もミスティアは思考を続ける。

(……いやいや、この程度で踏みとどまっていてどうするミスティア!大きな目的は大きな犠牲を払ってこそ実現するものなのよ!この場で笑われる位、私の鋼の精神力を持ってすれば……!)

「……おーい、店長ー?」

「うきゃあ!?」

「うわっ!……全く、どうしたのよぼーっとしちゃって。」

気付けば、影狼の顔がミスティアの至近距離にあった。

どうやら考え事に熱中し過ぎて、周りが見えなくなっていたらしい。

「しかし可愛い悲鳴を上げるわね。もっと啼かせてあげたくな「鳥目にするわよ。」遠慮させて頂きます……」

ミスティアの一言で、見事にしょげ返る影狼。

鶴の一声とはよく言ったものである。雀だけど。

「笑わないでね?」

「笑ったりなんかしないわよ。……で、どうなの?」


「あのね、私……幻想郷から、ゆくゆくは外の世界からも、鳥肉というものを無くしたいと思ってるの。」

「………………ふぁ?」


三回、影狼は大きくまばたきをして、そしてこれまた大きく深呼吸をして……その場に座り込んだ。

「あ、そこ地面……」

「え?ああ、そうだったわね。」

慌てて立ち上がる。

そうして立ち上がった後、また大きく溜息をつき、顔に手を当てた。……まるでどうしようもない、とでも言いたげに。

「……何よ?」

その様子を見たミスティアが、からかわれると思ったのか訝しげに影狼を見やる。

「んー…いや、別に止めようとかそういう訳じゃないのよ。でも、何というか……」

「何というか?」

「その考え、さ。……少し、人間に似てるわよね。」

「…………………」


しばしの沈黙。


「……どの、辺が?」

寄せた眉根を直そうともせず、ミスティアは影狼に問いかけた。

対する影狼は、そんなミスティアの反応を予想していなかったらしく、少し戸惑った様子である。

「あれ?怒られるかと思ったんだけど。」

「怒るか怒らないかは、この後の発言と私の機嫌次第ね。」

「……成る、程。うーん、何と言ったら良いのやら……ねぇ店長、店長が鳥肉の撲滅を目的に掲げてるのは、店長自身が雀だからなんでしょう?」

影狼は少し困った様な素振りを見せて、

「つまり鳥としての同族を護ろうとしたのよね?……それって、私達にはあまり無い感情だと思わない?」

と、表情と同じく少し困惑した声音で、そう言った。

聴き手であるミスティアの無反応も相まって、その様子は、会話というよりもまるで彼女の独り言の様に見える。

それはあまりにも不思議で、歪な光景だった。

「私達妖怪は、どんな時も基本的には個人プレーよ…あ、勿論天狗とか河童、あと例外的に鬼は除いてね。当然ながら、そこには仲間を守ろう、ましてや救おうだなんて感情は存在し得ないわ。」

そして、影狼は続ける。

「なのに姿も見えない相手に情を向け、慈しむ。店長……貴女の精神は、かなり人間に近いんじゃないかしら。」

(とど)めとなる、一言を。




影狼の奇妙な『独り言』が終わり、その場に静寂が戻って来た。

影狼は黙ってミスティアを見つめ、対するミスティアは下を向いてただ沈黙している。

と、その時。


「……………っ。」

「!?」


ミスティアの細い肩が、小刻みに震え始めた。

それは怒りか、或いは悲しみによるものか。…どちらだったにせよ、元凶とも言える影狼がそれを黙って見ている筈は無いのだが。

「て…店長。ごめん、悪かったよ…流石に言い過ぎ、ってうわぁ!?」

彼女が慌てて謝ろうとした時、ミスティアが突然顔を上げた。

その顔に浮かんでいたのは……満面の笑み。

「そっかそっか!私、人間に似てるのかぁ…!」

「…………えぃ?」

影狼、絶句。

一瞬だが、壊れてしまったのかという予想が彼女の脳裏をよぎった……が、しかし。それは彼女の目を見た影狼自身によって即座に否定された。

「……今の、どの辺が嬉しかったのよ?」

「え?だってさ。人間に似てるって事は、距離的な意味で人間に近付きやすいっていう事でしょ?人間相手に商売する上で、これほど嬉しい事は無いじゃない!」

ミスティアは、今にも走り出してしいそうなテンションで影狼に笑いかけた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


ミスティアの最終目的……『鳥肉の撲滅』。それはつまり、今を生きている人間の認識そのものを変えるという事に直結する。


唐突な様だが、人間の生は短い。

皮肉にも他ならぬ人間達自身がそれを一番理解しており、だからこそ人間という種族は、妖怪に比べて保守的になりがちな傾向がある。

短い生であるからこそ、方向性を急に変更する事に躊躇いを感じるのだ。


ミスティアの目的は、それに真っ向から反している。本気でそれを目指しているのなら、それは恐らく相当な負担を彼女に強いるだろう。


だからこそ、影狼はこの話を切り出す時、内心凄まじい葛藤を抱えていた。このまま告げても良いものか。恐らくこいつは気付いていないぞ、と。

だが、まだ短い付き合いとは言え、自分を同僚と慕ってくれているミスティアを放って置くと言うのも、彼女としては流石に躊躇われるものがあった。

だから彼女は、自分が思った事を告げた。思った通りに、ミスティアへ。


当然だが、その場で怒鳴り散らされる覚悟もできていた(と言うより、寧ろそれが普通の反応と言える)。それ程までに、人間と妖怪という二つの存在は相容れないものなのである。


だがミスティアの反応は、彼女の予想を大きく上回り、尚且(なおか)つ大幅に下回るものであった。


影狼はそんなミスティアを不気味に思うと同時に、これでいいのだ、という不思議な納得の様なものが自分の奥深くに生まれるのを感じた。……そして、彼女はある決意をする事になる。


「……ははっ。店長も、大概変わり者ね。」

影狼はいつの間にか、人間と妖怪の事などどうでも良くなっていた。少なくともここにいる妖怪の前で、そんなものは何の拘束力も持たないのだ、と。

「えぇ!酷くない!?今までそんなの言われた事、無………あ、あったね普通に。」

「あったのか……」

「いやー、私鳥頭だからね。自分で自分が鳥頭だって事自体忘れてたわ。」

てへり、と舌を出して笑むミスティア。

その顔には、恐らくこれから体験する事になるであろう苦労に対する不安などは全く見えず。そしてそれがまた、影狼の不安を煽る。

……と言っても、彼女のそれが単なる楽観なのか、それとも達観なのかは、まだ付き合いの浅い影狼には考察する余地すら無かったが。


「……はぁ。」

大きくため息をつく影狼。

その顔には、うんざりした様な色が濃く浮かんでいた。

「ん?どしたの影狼ちゃん。」

「影狼ちゃん!?……ま、良いか。

ところで店長さ。仕事仲間…いないんでしょう?」

「うぐ、っ……」

「え、どうしたの店長!?」

ミスティアは胸を押さえて、倒れ込む様なジェスチャーをする。

どうやら、仕事仲間がいないというのを他人に突っ込まれるのは、本人としてもかなり精神的に痛かったらしい。

「くっ…いや、何でもない。何でもないよ。で、それがどうかしたの?」

「いや、あのね……」

影狼はミスティアから目を逸らし、少し紅の差した頬を指で掻く。

そして彼女は、


「……私で良ければ、タダ働きが終わった後も呼んでくれて構わないのよ…?」


依然目は逸らしたまま、しかし先程よりも遥かに頬を朱くしながら、早口でそう言い切った。


「……………………」

「か、影狼ちゃん……」

「…………っっ!!」

言った後から恥ずかしさがこみ上げて来たのだろう。影狼は一度ちらりとミスティアの様子を伺い、そして彼女が自分と同じ様に顔を真っ赤にしているの確認すると、思わずその場にしゃがみ込んだ。

「あ、そこ地面……」

「えっ?あ、あぁ。そうね。」

恐らく途中から狙っていたのだろうと思われる、先程と同じ様なやりとりをもう一度繰り返した後、影狼はミスティアを強く見つめて、

「…ま、そういう事だから。いつでも呼んでよね!」

と一声叫び、一目散に走り出した。

後ろから呼び止める声が微かに聞こえた気もするが、構わずひたすら走る走る。

まぁ、影狼自身、少なくともそんな事を気にする余地も無い程度には頭の中が沸騰していたのだろう。



(もう、馬鹿か私!何でこんな恥ずかしい事言ってるのよ!そもそも明後日にはまた屋台に顔出さなきゃいけないしっ…!ああぁ駄目だ、顔熱い……)


屋台の灯りが見えない位の距離まで離れられた所で、影狼はほっと息をついた。その拍子に、もう一度地面に尻餅をついてしまう。

だが、それを注意してくれる影はもう近くにいない。

その事実に、妙に感傷的になってしまった影狼。だが、また明後日になれば顔を見られるのだと自分に言い聞かせ、三度(みたび)立ち上がる。


「……よーし。明後日を楽しみにしながら、過ごすとでもしましょうかね。」


彼女の心の中に根を張っているのは果たして友愛か情愛か、はたまた別の何かなのか。

少なくともそれは、今の所は本人も含めて誰も知らないもの。そして皮肉な事に、その答えに一番遠いところにいるのが、他ならぬ影狼本人なのである。



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「………影狼ちゃん、どうしたんだろう……」

ミスティアは、同僚(呼ばれ方こそミスティアが上司だが、少なくとも彼女自身の感覚としては影狼は同僚なのである)が顔を真っ赤にして走り去って行った方向を、心配そうに見つめた。

「凄い勢いだったから、転ばないと良いけど…」

心配する部分がどこかずれている様な気がするのは、恐らく気のせいだろう。


「……最後の影狼ちゃん、可愛かったなぁ……」

ぽっ、と赤くなった頬を抑えるミスティア。

その口の端が意図せずつり上がっている事に、本人は気付いていない。

「それにしても…明後日、か。」

頬に手を当てたまま、ミスティアは自分にしか聞こえない声でぼそりと呟く。


「……全く、変な子だよ。」


そしてミスティアは初めて感じた温もりを胸に、ゆっくり帰路へと就くのであった。


魔理沙「さあさあ、今回も私達が呼び出されたぜ!お馴染み霧雨魔理沙と、」

霊夢「博麗霊夢よ。……もう良いんじゃないかしらこの冒頭。いい加減いらないと思うのだけど。」

魔「まあ、そう言うなって。……さて、今回はおかみすちーことミスティア・ローレライ(屋台の女将ver.)がメインキャラとして据えられていた訳だ。」

霊「屋台の女将って日本語的にどうなの、というか女将という言葉に対して失礼じゃないかしら…」

魔「私は別に女将について詳しい訳じゃないからわからんが…ま、女将と言っても案外ピンキリなんじゃないか?」

霊「また適当な事を……」

魔「こんなもんだろ。」

霊「こんなもんかしらね。」

魔「そうそう。……で、いい加減に今回の反省&次回予告へと移りたい訳だが。」

霊「散々引き伸ばしてたのは誰なのよ!ねぇ!!」

魔「ま、まぁ待て待て。私の手の甲の皮を引き伸ばしても良い事無いぜ痛たたたた!わかった!わかったから放せって!」

霊「全く、前回の夢想封印で懲りたかと思ったら…油断も隙も無いわね。」

魔「……というか、さっき引き伸ばされてた理由は霊夢の『屋台の女将って日本語的に(略』が原因だった気がするんだが……」

霊「…………」

魔「お、おーけー。お札と針を仕舞え、話せばわかるさ。あと私のデコに刺さってる針を抜いてくれ。」

霊「そのまま後書きが終わるまで刺しときなさい。」

魔「せ、殺生な……」

霊「もう面倒だから私が次回予告やるわね……なになに、次回のメインキャラクターは『稗田阿求』ですって。」

魔「阿求って…あぁ、人里にいるアレか。九代目のサヴァンだっけ?」

霊「多分それで合ってるわ。……と言うか、ちょっと本気でロリコンじみて来たわねこのチョイス。」

魔「それを言ってやるなよ…多分色々と事情があるんだろうさ、多分。」

霊「その一言で一気に信用が無くなったわ。……で?今回のキャラクター選別には何か理由とかはあったりするのかしら?」

魔「んー……今回は特に無いそうだぜ。強いて理由を言うとするなら、ここに書いてある通り『あえてなんの理由も無く選んだ』ってとこだな。」

霊「……今度こそ殴りに行って良い、ってサインよねこれは。いえそうに違いないわ。」

魔「えーと……れ、霊夢さん黒いオーラ出てますよー……?」

霊「……ま、駄目っぽかったのをなんとか書き上げた前例もある事だし、今回は赦してあげるわよ。もう…」

魔「駄目っぽかったの?……あぁ、今回のか。確かに前回の後書きも色々あったなそう言えば。お前も散々に言ってたろ?」

霊「ええ。……正直な話、私は今回の出来には期待してなかったのよ。」

魔「ほほう…で、結果は?」

霊「予想以上ではあったわ。…でも、期待してなくて良かったとも思ったわね。」

魔「中々に辛口だな……」

霊「そんなもんよ。さ、長くなり過ぎても申し訳無いし、とっとと終わりにしましょ?」

魔「で、ここで私が『もう十分長くなってるけどな』って言う。前回のラストと同じ構図だぜ……」

霊「気にしたら終わりよ。」

魔「その考え方が既に終わってる気がするのは私だけなのか?……ま、でも確かに冗長になりつつあるな。そろそろ終わりにするかね。」

霊「それでは、この回を読んで下さった皆様。」


霊&魔「ありがとうございました、そして次回をお楽しみに!」

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