表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文才無くても小説を書くスレ参加作品

戦士の世代

 文才がなくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:一人の兵士、不感症、デパ地下

 かつて、企業戦士と呼ばれる人達がいた。

 それは数多くの勤め人が生み出した経済成長を褒め称える言葉と同時に、数多くの人達が文字通り命を賭け時には死んでいった事実を暗喩する言葉であった。

 大戦の敗者側だったとは到底思えない経済成長は確かにあった。

 だが、その言葉は経済復興後、日本も米国も当初はそこに至るとは予想だにしなかったプラザ合意を果たした後の、後にバブルと呼ばれる破滅に至る上辺での経済成長を見せている頃に言われだした言葉である。

 外需から内需への転換を米国に指し示されるままに受け入れてしまった事が悪いのか、農閑期の収入を減らしてまで一芸専門の業種を生み続け政策転換が叶わなくする手法が駄目だったのか、はたまた投資と言うものの本質は額面価の上昇ではなく産業基盤の構築を意味することを大多数が知らなかった、または知っていても無視し続けていたのがそもそも不適切だったのか。

 そのどれもが、かつて命を賭し、そして散っていった者達に告げるには酷に過ぎる内容ではあるのだろう。

 けれど、彼らは誇り高き戦士だった。

 価値観の多様化とは聞こえがいいが、言い換えれば普遍的な価値が忘れ去られただけの頃に、人と価値を結びつけて仕事と成す、答えの無い中で道を切り開く、戦士と呼べる存在であったことに違いは無い。

 豊かな世の中とは何なのか、マルクスの幻想が崩れたのは何もそれを用いた国家のほとんどが外道揃いであった事だけが理由とは限らない。

 なんとなれば、マルクスは生活に無価値なものが幾重にも幻想を重ねて社会に必須と妄信されるとは予想していなかったのだから。貨幣を概念と位置づけたにもかかわらず、娯楽と言う概念が更なる勢いを増すということを埒外に置き、高度な産業的発展を遂げた社会での理想的な分配に拘り過ぎた。

 彼が日本で生まれ育ったのなら、かつて安土桃山時代で茶器がその流れを生み出したという前例を知り得ただろう。だが彼は、己ら以外の豊かな文明圏、またはフロンティアからの収奪以外で経済発展を知りえない地域で生まれ、なまじそこの金融面を理解する民族であったから、それが唯一の答えだろうという狭窄に陥ってしまったのだろう。

 ゆえに、資本論では企業戦士は救えなかったのもむべなるかな。マルクスは不足による貧困に喘ぐ人達を想定はしても、産業の発達によりいずれ物資は必要なだけ揃うと予見できていても、貨幣以外の更なる幻想に翻弄される彼らの嘆きは想定していなかったのだから。

 失われた十年。失われた十数年。かつての栄光を知る人は今をそう呼ぶが、何が失われたのでもない。それが本来の姿で、彼らの栄光も挫折も……夢の中のことだっただけのこと。

 製品の性能は上がった、

 だがそれが流通する経済の実態は、高度経済成長が終わり必要な物資がいきわたった時の当時の誰もが薄々と感じていたであろう、崩壊の引き金として土建バブルが始まるその心理的な要因でもある、社会に不足している産業構造の不在というプラザ合意当時の経済そのままである。

 もう、新たな概念の産業が生まれて経済が一回り大きくなることはない。だから人口増と消費増こそが、それに裏打ちされた禁断の果実である金融商品の額面価の上昇こそが、経済なのだと誰もが思ってしまったあの頃と何も変わっていない。

 もし国家主導で経済を発展させようと思ったなら、ある一つのハードルさえクリアできれば、よほどの痴政で国が傾いていない限りは、容易に実行可能だろう。

 それは、鉄道網がなかったこの国に鉄道が引かれ、それを国中に伸ばす使命を帯びたかつての国鉄であり。各家庭に電話網を配備する使命を持ったかつての電電公社である。また、市民側から生まれたかつての数多の電力会社のことである。

 今この現代に無く、未来に必要な産業構造を見い出せて、それに投資する余裕があり、その利益が投資を上回ると言うのなら、いつでも経済回復は可能である。

 が、そんなものはない。

 プラザ合意の頃と一緒なのだ。

 誰かが生み出した産業構造の上っ面を変えて、顧客を奪い合うに終始する社会であり、その社会に生きる限りはそれに終始せざるを得ない業を背負う。

 誰もが未来が欲しいと願う。

 だが、誰も未来を想像できない。

 それ以前から伝わっていた情報がより早く伝わることはイメージできても、今ある製品の品質が向上することはイメージできても、生産、流通、消費を様変わりさせるような存在が出てくるとは誰も考えない。

 電気に変わるエネルギーが生まれても、それは電力会社のパイを奪うだけに終わり、経済的にはなにも前進しない。

 バブルの頃に誰もが夢想した、人の増加による経済成長という夢を信じさせる糧になるだけに過ぎない。

 巷で騒がれている三本の矢。三本も必要などとは馬鹿らしい限りだ。

 最初の二本は、すでに日本を除く先進国の大半が実施して成果が出ている、やってて当然、してなきゃ無能、一言ごねたらただのカス程度の、この地球経済上で生きて行こうと思ったならごく当然の、ヒト科の生き物で言うなら直立二足歩行程度の処世術に過ぎない。

 それを成せなかった愚かしさに羞恥の念を覚えて、どこかで誰かが恥ずかしさのあまり自ら命を絶っても別段驚くべきことではないくらいの世界レベルの白痴っぷりを晒していただけの話であり、本来はその二本すらいまさら放つものでもない。

 二本の矢が効果が出ているように見えるのは、それ以前がどうしようもなく腐ってマイナスに突っ込んでいただけであり、決して経済成長を期待させるようなプラスの影響などは出ていない。

 必要なのは三本目の矢であり、三本目の矢とはつまり先ほど挙げたような新たな経済概念の創出であり、だからこそ三本目の矢は放たれない。

 1985年の9月22日以前より、そんなものは誰の心にも存在してはいないのだ。

 だから、彼らの未来である我々は彼らに向けて何も言えない。

 彼らがその命を賭して守り続けた経済成長は、それが崩壊する以前と同様に、次世代の心に未来を残さなかったのだから。

 誰が言えよう。今なおもバブルの残滓を掻き集めて利益を享受している輩に対してなどではなく、かつての企業戦士達に。あの修羅道の如き人道を死する時まで歩き切った方々に。

 結局、その先に未来は無かったなどとは。

 結果として、バブルは崩壊したのだ。その名の通り、実態経済などではない、膨れ上がった無価値な価値観に踊らされた泡沫の夢として。

 多くの地方都市が借金に喘ぎ、数多くの大企業が崩れ、更に多くの地方経済が失速しはした。もはや数えるのも困難なほど商店街は崩壊するものと相場が決まった。

 好景気の夢を見る管理者がいるばかりで、末端の労働者のほとんどは豊かな未来が訪れるなど、心のどこかでそれを期待したいと願う思いはあっても、心底から希望を抱けることは無いだろう。

 誰もがわかっている。日は沈んだのだ。

 あらゆる情報が説明している。これから長い夜が来るのだと。

 矢折れ刀尽きるまで戦った彼らが、死んでまでやり続けたそれは、敗戦だったのだ。

 だがそれでも、経済は死に絶えてはいなかった。

 まだデパ地下のマーケットは盛況だ。

 もし彼らがまさしく企業戦士だったとするなら。ビジネスに生きるビジネスマンだったとするならば、まだ生きている。

 かつての企業戦士達が生み出した、多様な価値観に挑戦する為の、ライバルを飲み込んで己の特色をも売り込む多彩な出店計画は今も定番となって現代に息づいている。

 だがそこにも戦士の姿は失われて久しい。

 安定した職場。つまり社会に必要とされる実際的な仕事として。実際的な仕事。つまりすでに社会に需要と供給が存在しているありきたりな仕事がそこにある。

 永遠に広がってそうな夢をも見れた未開の地で、ドラゴンの如き夢幻と一人戦う戦士の姿はそこには無い。

 個を尊重する風潮は確かに世に満ちている。挑戦しているつもりの者はいるだろう。

 だがそれは社会のオーダーにしたがって戦う一介の、一人の兵士としての挑戦でしかない。

 彼が勝てば誰か負ける、限られた戦いの場で人相手に戦う者がそこにいる。

 兵士世代の気持ちなど戦士の世代には分からない。戦士の世代の気持ちなど兵士の世代には分からない。

 お互いに不干渉で、お互いが不感症かのように思って相手を見る。

 兵士の側からは、戦士は皆平等に分かち合う為に、もう夢など見ずに今あるものを大事に守るべき感覚がないのかと。

 戦士の側からは、兵士は己の為に例え幻想かもしれなくても一人で勝ち取ろうとする感覚がないのかと。

 そういう意味で、今いる者たちは戦士ではない。

 ゆえにこそ、かつての彼らは企業戦士だったのだ。

 誰か任せでは無い。市民の側からの電力会社があったように。

 国とつながり腐敗する以前にあったかつての希望の光のように。

 放言の為ではない、未来の為の三本目の矢が矢が放たれることがあるのなら、その時まで。

 今度は夢ではない、本物の未来のために戦う戦士が生まれるその瞬間まで、企業戦士の魂は今もデパ地下に残っているのだ。

 失わせない為に戦う、何人もの一人の兵士達に守られて。



 スレでの彼(彼女?)の一言に、感謝を。 

 読んでくれた方々に歓迎の意を。

 お題をくれた方々にお礼を。


 そして、英雄達に黙祷を。


------------------------------------


205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/02(金) 17:31:44.59 ID:UCZfDqvl0

お題なにか下さい

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/02(金) 18:22:24.74 ID:IdDTmV1Oo

>>205

一人の兵士

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/03(土) 08:27:38.99 ID:t52uBnFn0

>>206

把握


210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 12:38:40.86 ID:t52uBnFn0

別のお題下さい

211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 12:46:23.21 ID:Zn/sXvoAO

>>210

不感症

215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 18:44:03.09 ID:t52uBnFn0

>>211

把握


216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 21:57:19.86 ID:t52uBnFn0

も一つお題下さい

217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 21:59:34.53 ID:qeFX6/GNo

>>216

デパ地下

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 22:11:38.26 ID:t52uBnFn0

>>217

把握


219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/04(日) 01:56:05.41 ID:93hh+k+AO

一人の兵士、不感症、デパ地下


こうなったら全部まとめてくれよww

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ