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第4話 異変

「結局、邪神の居場所はわからない内に朝になっちゃったわね。」

「いや、本当に悪い。しかし、この俺がガセネタを掴まされるなんてな・・・」

 それについては私も驚いているの。

 今までオトナシの持ってくる情報は100%真実のみだったから。

 軽い口調で言ってるけど、オトナシも内心煮えくり返っているはずよ。

 それがわかっているから、私も泣くまで殴るだけで許してあげたのよ。

「か、かなり理不尽な事言われているような気がするんだけど・・・」

「気のせいよ。」

「あ、そうですか・・・。しかし、実際どうする?俺のほうでもいろいろ試してみたが、お手上げだよ。使える人材がほとんど操られている。どうやら、神の干渉に抵抗力が弱い人間がどんどんMCされているようだね。」

 全ての人間には神様の力に対する抵抗力が存在するわ。

 まあ、例えが悪いけど人間が体内の病原菌にワクチンを作るのに似ているかしら?

 それは個人差があるのだけど、一般的には神様の近くに長い間いると抵抗力が高い人間になれるわね。

「距離は?どのくらいの範囲の人間に影響が出ているの?」

「・・・ほぼ日本全土・・・」

「うお!?それはマジかの!?」

 ヤミと同じくらい、私も驚いているわ。

 八百万の神様が存在するこの日本では、彼らは常に自分の住んでいる地域を見守っているんだもの。

 異変があれば、その原因を取り除くはずだし、それとは別に<神会>のようにトラブルを解決して回る人間のグループや組織も数え切れないほど存在するの。

 日本全土が異変に巻き込まれていて未だに解決されないのは、彼らが気付かないほどに巧妙なのか、それとも彼らの力でもどうしようも出来ないか・・・。

 後者っていうのはあまり考えたくはないけどね。

「私たちが何とかするって言っても、邪神の居場所すらわからないからどうすることも出来ないし・・・」

 どうしよう・・・と3人で唸っている時、家のチャイムが押されたの。

「りっちゃんには昨日、学校には行かないっていってあるし、誰かしら・・・?」

 すぐに1階に下りて、ドアを開けてみる。

「亜津子さん、お久しぶりです!今日もお美しいですね!」

「帰って。」

 バタンとドアを閉め、チェーンロックも付けて私は部屋に戻ろうとしたんだけど・・・

「いや、何で閉めるんですか!?お願い開けてー。首相からの依頼書を持ってきたんですよー!政府からの直々のお仕事ですよー!」

 あまりに五月蝿いからドアを開けると、そこには黒いスーツを着た20代位の男が。

「近所迷惑なんですけど。それに、『政府から』なんて大声で言わないでくれる?そういうの秘密にしてるの知ってるでしょ?」

 玄関に引っ張りこんで説教タイムに入るんだけど、こいつ話を聞いてないわね・・・。

「憧れの亜津子さんの家に入ってしまいました。いい匂いがします。」

 何て言って変態的な行動を始めるもんだから、

「殺すわ。」

 私は何の躊躇いもなく『私の影』から取り出した闇切を振るったの。

「あぶな!あ、危ないじゃないですか亜津子さん!何を怒っているんですか?」

 今回は昨日の神様の時のように手加減なんてしないで、完全に殺すつもりで振ったんだけどな。

 やっぱりこいつ、侮れないわね。

「いいえ、何でもないわ。それで、何で<神会>ナンバー2のあなたが直接私の所に来るのよ?」

 こいつは雨竜海斗うりゅうかいとという人間よ。

 ヘラヘラしてるくせに<神会>のナンバー2を勤めていたり、私の攻撃をアッサリ避けたり、中々に油断出来ない人間ね。

 3年前、初めて<神会>と仕事が被ったとき以来、こうして度々私の所に来ては愛の告白をしてくるのよ。

 まあ、ただ私の美しさに心を奪われたっていうのならもう少し優しくしてやってもいいんだけど、どこか信用出来ない胡散臭さがあるのよね。

「あなたに仕事の依頼をすることになって、自分から説明役に立候補したんですよ!当たり前じゃないですか!」

「ああ、それで。まあ、他の連中よりマシか・・・」

「ああ、ずっとあなたとこうして話していたいのですが、残念ながら時間がありません。早速、お仕事の内容に移らせていただきます。よろしいですか?」

「え、ええ。いいわ。」

 いきなりテンション変わるから驚いたわ。

 仕事の顔になると、キリっとした顔つきになるのよね。

 ちょっとかっこいい、かも・・・?

「政府では今回の邪神事件に対して、第1種警戒態勢を取ることに決まりました。」

 その発言は、流石の私でも驚くなんてことじゃすまなかったわ。

「え、嘘でしょ!?この状態でそんなことしたら、一体どんなことになるのかわからないハズないでしょ!?最悪の場合、本当に神様と人間の戦争が始まるわよ!?それもわからないほど今の政府は無能なわけ!?」

 第1種警戒態勢とは、つまり敵対勢力に兵器の使用を全面的に許可するってこと。

 操られている人間や神様に、武器を向けるってことなの。

 そんなことをしたら、この事件が終わったとき残るのはお互いに対する憎悪だけよ。

 人間は『神様に操られたから攻撃された』、神様は『操られていただけなのに攻撃された』ってお互いを憎み合って、そしてそれは言葉の応酬だけでは済まされなくなる。

 神様の力は強大だけど、人間も負けてはいない。

 最後に残るのは荒廃した大地と死体、なんて漫画みたいな事が現実になるかもしれないわ。

「それがわかっててそんなことを許可したの!?だったらそいつら今すぐ死ぬべきよ!いいえ、私が殺すわ!」

「落ち着いてください。僕らも今回の決定は変だと思ってるんです。もしかすると、政府は既に邪神に操られているのかもしれません。」

「あっ・・・そうか、その可能性を考えて無かった・・・。」

「やっぱり、あの邪神の能力については既にわかっているんですね?人を操る能力・・・」

「いえ、あの邪神の能力は、<神の立場を貶める>事よ。その結果に繋がることなら何でも出来る。」

「・・・なるほど、その考えはありませんでした。その情報はどこから?」

「生みの親たち。」

「なら間違いないですか。しかし、そうなるともっとややこしい事になってきますね。神と人間の戦争なんて、それこそ神の立場を決定的に落とすことに繋がる。あの邪神の最終的な目的は戦争だと見て間違いないでしょうね。」

「何てやっかいな邪神なの、あの白猫。見つけたら問答無用で殺すわ。」

「とにかく、これで政府が操られているのは確定的だと言っていいでしょう。ところで依頼の話ですが、さっきは政府からの依頼と言いましたが、実は違うんですよ。」

「そうなの?」

「ええ、これは僕個人からの依頼です。」

「いいわ、言ってみて。」

「僕も、事件解決に協力させてください。」

「・・・はい?」

「もちろんお金は払います。戦闘能力には自身がありますし、雑用でも何でもやらせていただきます。僕を、亜津子さんのグループに入れて欲しいんです。」

「え、何で<神会>じゃなくて私の所なのよ?お金を払って雑用やってまで、私たちの所に来たい理由は何?」

「おそらく<神会>ではあの邪神にたどり着くことすらも出来ないでしょう。邪神の居場所は既にわかっておりますが、純粋に戦闘能力の差です。彼らでは無理だ。」

「私たちなら倒せると?」

「ええ。私の知る中で最強であるあなたなら。逆に、亜津子さんたちが無理ならばこの世の誰にも不可能だと確信していますので。」

 やっぱりこいつは侮れないわね。

 何らかの情報を知っているのか、それとも特殊な能力を持っているか。

 こいつにだけは気を許さないようにしないと。

「わかったわ。あなたも来なさい。ただし、私がリーダーだから、その辺わきまえてよね。」

「わかっていますよ。僕があなたに逆らうわけが無いじゃないですか。」

「ならいいのよ。」

「時間がありません。今は指揮系統が混乱していて第1種警戒態勢のことは一部の人間しか知りませんが、一般市民に知れれば大変な騒ぎになります。猶予はあと24時間といったところでしょうか。」

「は?何でそんなに時間があるのよ?」

 緊急時に使う命令なんだから、直ぐに国中に伝わらないと無意味でしょうに。

「フフっ。ちょっとした細工をしてきましたので。」

「あっそ。何をしたのかは聞かないでおくわ・・・」

「聞いてくれてもいいのに・・・」

 私はその言葉を無視してオトナシが待つ2階へ上がって行った。

「待ってくださいよー!」

 ともあれこれで情報ゲットね。

 待っていなさい邪神(しろねこ)、私がキツイおしおきしてあげる。

「フフフフフ・・・」


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