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魔法学校の中の刀使い  作者: シェイフォン
1章 彷徨う者
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北風と太陽

しばらく御神楽と紅音だけになります。

炎を扱う魔法使いというのは特段珍しいものではなく夢宮学園にも多数いる。


しかし、炎を扱う魔法使いというのは熱血系が多く、性格がさっぱりしているので威力こそ高いもののほとんどが単発でしかも直線上の動きしかしない。


ゆえに炎を扱う魔法使いの力を存分に発揮させるにはサポートする魔法使いが必須であり、1人だとこれほど戦いやすい相手はいないというのが通例である。


しかし……


「御神楽君、用意は良いかしら」


神崎さんはその通例に当てはまらない炎を扱う魔法使い。

 

真っ赤な蒲公英――この魔法の凶悪な所は例え外してもホーミングして相手を追いかける特徴を付け加えることが出来、しかもそれは一見しただけで追尾性が付属しているか否か分からないこと。


只でさえ威力が高い炎に追尾性が付属されるとなればそれはもう悪夢でしかないだろう。


「戦わないという選択肢はないのか?」


 僕は顔を引き攣らせて尋ねる。


「以前の僕でさえ互角だったのに、今はさらに弱くなっているから負けるのは確実だと思う。そして敗北が分かり切っているから戦う意味はないと思うが」


 神崎さんは僕と戦う理由に、僕の心を完全に折るためと言っていた。


 しかし、こんな状態で戦っても僕の心は折れず、たた僕の体が辛いだけで終わる。



「僕からすれば負ければ退学になるにも拘らず勝ったところで得られるものは少ない。ハイリスクローリターンなこの勝負を受ける意味は?」


 神崎さんからすれば僕をどこかへ追いやれる良い機会かもしれないけど、僕は「はい、そうですか」と受けるわけにはいかない。


「へえ、逃げるんだ」


「何とでも」


 神崎さんの挑発に肩を竦める僕。


「ただ今を生きるのに必死なんだ。だから余計な誇りとか自尊心とかは遠くの方へ追いやったよ」


 まあ、例え以前の僕であったとしてもこの勝負を受けていなかったな。


 相手にするだけ面倒だったし。


 そして僕は立会人である彼女に向き直って。


「聞いたように僕は戦うのに反対だ。お互いの同意が取れていない以上、決闘は無効となるけどそれでよろしいかな?」


「はい、別に問題ありません」


 この時ばかりはいくら同じ風紀委員で、しかも一方が委員長だったとしても立会人は中立の立場であることが助かる。


 やはり公平さは大切だよなと心から安堵した。


「じゃあ、もう用が無いのだったら僕はもう去るよ」


 今、この場に留まっていても何の利益もないどころか、神崎さんが暴発しそうな予感がするので足早に出口へと向かう。


 そして扉に手を掛けると同時に背中に声をかけられる。


「御神楽君、今のままじゃ進級試験に合格できないのは分かっているわよね?」


 神崎さんの言葉に手が止まる僕。


 確かに今の僕は毎週行われているテストに合格しているが、それは決められた課題をこなしているからこそ。


 進級試験は入学時や去年の自分と比べ、以前より上回っていなければ合格することが出来ない。


「去年の御神楽君と今の御神楽君、どちらが強いのでしょうね?」


 そんなこと問われるまでもない。


 どう贔屓目に見ても魔力があった昔の自分の方が強いに決まっている。


「……だから早く辞めろと?」


 僕はゆっくりとした動作で振り返る。


「どう足掻いても無駄だから諦めた方が早いと言いたいのか?」


「違うわよ、御神楽君」


 が、神崎さんは首を振って僕の思惑を邪推と断ずる。


「言い方が悪かったわね、決闘というのはこれ一回きりじゃない。何度も戦い、どちらかの心が折れた方が負けというルール」


「はい、そのように伺っております」


 立会人の白川さんが頷く。


「御神楽君が負ければ学校を辞めなければならないけど、もし勝てば御神楽君は失った魔力を取り戻せるかもしれないわよ。それなら戦う理由には十分じゃない?」


「一体どんな心境の変化だ?」


 つい先日までは口を開けば学校を辞めろだったのに、突然親身になって付き合ってくれる。


 何か隠しごとでもしていないかと勘ぐるのだけど。


「北風と太陽といえばお分かりかしら?」


「……なるほどね」


 脱帽するしかない表現の巧さに僕は納得した。


おかしいなぁ、予定では立花柚と仙道千華が登場してもおかしくなかったのに、いつの間にか時期が2月とまだ2人が入学していない時の話が進んでいる……

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