1月の出来事
「もしもし、御神楽圭一です。母上、お忙しい所お電話させて頂き申し訳ありません」
制服に袖を通してキチンと身なりを整え、正座をしながら僕は埼玉にある実家に電話を掛ける。
「圭一ですか、圭一自身から電話を掛けてくるなんてこれが初めてですね。お体の調子は大丈夫ですか?」
「……」
母の軽い応答に僕は無言で返す。
「……どうしましたか? 何かお答えになって下さると嬉しいのですが」
すると母は深刻さを察知したのか少し声のトーンを抑える。
「はい、実は……」
僕は用件を伝えようとしたところで声が出なくなる。
母に対する申し訳なさと自分の惨めさが僕を襲い、一言も話せなくなってしまった。
「急に沈黙しましたけど何かありましたか?」
大ありだ。
僕はまだ17年生きてきた中で最大の出来事と言っても過言でない。
まさか自分がこうなろうとは。
一瞬間前の自分であってもこの展開は予想できなかっただろうな。
「魔力がほとんど無くなりました」
僕は意を決して言葉を続ける。
「え?」
母が息を呑む音が聞こえる。
まあ、そうだろうと思う。
母からすればこの出来事は青天の霹靂。
当事者である僕でさえ理解が追い付いていないのに、部外者の母が容易に把握できるはずが無い。
「夢宮学園は魔法使いを養成する学校。つまり魔力が無ければいる意味がありません」
僕はここで深呼吸して息を整えて。
「僕は夢宮学園を……退学しようと思います」