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魔法学校の中の刀使い  作者: シェイフォン
第二章 我が道を行く
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各々の道

 生徒会室を出た僕は荷物を取りに戻るため教室へと歩を進める。


 入学式は午後から行われ、さらに会長からの引き留めを振り切るのに結構な時間を使ったせいか、すでに外は黄昏色だった。


「全く、会長のしつこさには感心するよな」


 先刻の状況を思い起こしながら僕は呟く。


 用件も済ましたので帰ろうとした僕を、良いお茶が入ったやら少し疲れていないかやらで何が何でも留意させようとする姿勢は怒りを通り越して感動すら覚える。


 もう会長が就任してから現在まで出二ケタ以上も断っているはずなのに会長はまるで意に介さず勧誘してくる。


 ああいう人間こそが世をは幅を利かせていくのだなと納得してしまった。


「お疲れ、御神楽君」


「ありがとさん」


 教室には神崎さんが先客として待っている。


「悪かったわね、雑用を頼んで」


 どうやらそれを伝えたいがためにわざわざ残ってくれたようだ。


 その律儀さに僕は苦笑を隠せない。


「気にしなくて良い、何せこんな雑用など他に頼めないし」


 別の風紀委員に事のあらましを説明するのは骨が折れるに加え、会長が立花さん達に対してますます興味を持たせるわけにはいかず、かといって神崎さん自身が生徒会室に赴くのも端から見ておかしな話。


 だからフリーである僕が会長に釘をさす人物として適任だった。


「ねえ、御神楽君」


 机の脇に置いてある鞄を取った僕に神崎さんが声を掛ける。


「風紀委員に戻る気はないの?」


 照れを隠すためか頬をかきながらそう告げる。


「魔力の戻った今の御神楽君なら風紀委員会に認められるわよ。それに私としても……戻ってほしいし」


 嬉しいことを言ってくれる。


 まさか神崎さんからそのような言葉を聞ける日が来るとは思わなかったな。


 いやあ、本当に学校を辞めずに良かった。


 あのまま退学していれば神崎さんは僕のことを忘れていただろうね。


 しかし……


「ごめん、神崎さん」


 僕は眼を伏せながら辞退の意を伝える。


「僕はもうどこの組織にも属さないと決めたんだ」


 僕の魔力の根源――それは孤独から来る切断。


 確かに同じ場所にいる神崎さんと共にいることは心が安らぐけど、そこにいると僕は弱くなってしまう。


「僕は納得できるまで魔法使いの道を究めようと思う」


 目指すは宮坂先生が持っている特級指定魔法使い。


 神崎さんを救う際に使用し、しばらく魔力を失ってしまう元凶となったあの因果を切り裂く魔法を自在に扱うことが出来たのなら高確率で指名を受けられるだろう。


 自分の魂が求める通りに思うがまま生きることが出来る。


 それはとても素晴らしいことのように思えた。


「……そっか」


 神崎さんは微笑む。


 分かってはいたけれども、実際断られると寂しさを感じた類の笑みだ。


「あーあ、振られちゃったか」


 何とでも感じていないを装うために伸びをする姿勢が痛ましく映る。


 が、僕は謝らないし前言を翻すこともしない。


 そんなことをすれば神崎さんに対しても去年の僕に対しても侮辱になるだろう。


「しかし、今回の様に人に任せられないことが起きてしまったのなら僕に相談してほしい」


 僕は続ける。


「僕と神崎さんは別々の道を進むとはいえ友人であることは変わりない。出来る範囲で力にならせてもらうよ……まあ、僕の根源は斬ることだからボディーガードとか守る類の相談は無理だぞ?」


 湿っぽくなった空気を取り払うために茶目っ気たっぷりにそう言い含めると。


「アハハ、残念」


 神崎さんが屈託なく笑ったので僕はいくらか救われた気がした。

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