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魔法学校の中の刀使い  作者: シェイフォン
第二章 我が道を行く
18/29

現状

gdgdだったため心機一転を目的として第二章へと進めます。

「ふう……」


 先程の始業式のあいさつを終えた私――南条香恋は生徒会室で一息をつく。


「やれやれ、本当に新入生の瞳は希望に満ち溢れていること」


 世界においても屈指の魔法使い養成高校と評判の夢宮学園に入学出来た誇りからなのか、壇上にいる私を見つめる視線が凄かった。


「けど、あれが一ヶ月後には十分の一が消えているよね」


 目的と手段が入れ替わってしまってこの夢宮学園に入学することを目的とした新入生も少なくない。


 そういった生徒は毎年一割ほどいるのが現実ね。


「まあ、そんな新入生なんて必要ないからどうでも良いわ」


 けど、私はそんなことなど気にも留めない。


 簡単に脱落してしまう者を味方に引き入れた所で足を引っ張るだけだし。


「見込みのある生徒はあのショートカットの元気な子と控えめな生徒を含めて数人か」


 確か立花柚と仙道千華だったわね。


 去年の末、風紀委員の不始末による被害者だったから面識があるわ。


「うーん、どうやって生徒会に引き込もうかしらね」


 一人でも優秀な手駒が欲しい私は彼女達を味方にする方法を考え始めるのだけど。


「――学園の代表である生徒会長にあるまじき発言だな」


 そんな思考を打ち切る鋭い一声が生徒会室の隅から投げかけられる。


「生徒会長はあくまで公正であるべき。一部の生徒を厚遇するなんて許されないぞ」


 壁にもたれた姿勢のまま鋭い眼光を光らせる彼は只者でない様に思えるけど、実際は私と同じ二年生。


「圭一君、相変わらず固いわねえ」


「下の名前で呼ぶな。僕と会長はそこまで親しい関係でないだろう」


 ドア付近で腕を組み、佇んでいる人物は御神楽圭一――一時期魔力を失いつつも復活し、それどころか大きく成長した彼は現在私が最も信頼するに値する存在よ。


「けど、近いうちに生徒会へ入るわけだから良いじゃない。圭一君も私を香恋と呼んでも構わないわよ」


「勝手な事実を作らないでくれ。僕は生徒会に入る予定はない」


「あらあら」


 生徒会室で私を待っていたにも拘らずそんな態度を取るのよね。


 素直じゃないんだから。


 けど、こうしてゆっくりと口説き落とすというのも悪くはないわね。


 圭一君がデレた様子を想像するだけでご飯が三杯いけるわ。


「何か良からぬことを考えているな」


 私の考えを見抜いたのか圭一君はじっと私を見つめてくる。


「いえ、何でもないわよ」


 圭一君は鋭い所があるので私は焦る。


 これ以上詮索されては困るので私は話題を変えることにしたわ。


「ところで圭一君は何の用?」


 これは効果があったわね。


 圭一君は私から視線を外し、何かを思い出すのように少し目を瞑った後に口を開いて。


「神崎さんからの伝言だ。立花さんと仙道さんは生徒会に入らないとのこと」


「あら、そうなの?」


 開口一番そう伝える圭一君に私は手を口に当てる。


「いくら何でも早過ぎない? この私でさえ生徒に目星を付ける程度なのに、神崎さんはもうスカウトに乗り出しているの?」


 私は神崎さんと新入生二人の接点は何なのか考えていると去年の出来事が思い浮かんでくる。


 二月の中旬に圭一君が魔力を取り戻すきっかけとなった事件があったけど、それが関係しているのかしら。


「もしかして風紀委員は不祥事を目の当たりにした二人をお詫びの意味も兼ねて風紀委員へ入れるつもりじゃないでしょうね」


 過去の汚点を揉み消すために二人を引き込む――この行為の弾劾をちらつかせて風紀委員を操ろうかと目論むけど。


「責めても向こうは生徒会の言葉に聞く耳持たないぞ」


「……一応私は生徒の代表の生徒会長で、生徒会は風紀委員より上の組織なんだけど」


 私は恨みがましい言葉に対して圭一君は。


「残念ながら風紀委員を始めとした各委員は生徒会の言葉など聞かない」


 厳しい現実を思い知らせてきたわ。


「……本当にこの学園は何なのかしら」


 各委員を統括する立場である生徒会に逆らうなんて他の高校じゃ絶対にありえないわよ。


「夢宮学園独特の風潮だな。学園は外部との交流を積極的に推進しているから、その影響で各委員も外部と提携している」


 美化委員なら清掃業者と、保険委員なら病院関係といったように各委員は内部でなく、外部である社会と結ばれているのが夢宮学園の特徴。


 一応風紀委員長同士での話し合いの場は設けられているものの、その時の力関係はどれだけ社会で活躍したかで決まっているので、腹立たしいことに社会と繋がっていない生徒会の立場は最低なのよ。


「政治家と結びついてやろうかしら」


 生徒会らしく立法に関わろうかとポツリと漏らすけど圭一君が一言で否定する。


「残念ながら生徒会は外部と関われないんだよな」


「じゃあどうしろって言うのよ!」


 生徒会だけが社会と関われない事実に憤慨した私は机を叩く。


「学校校則第三条、生徒会は各委員および各部活の調整役のみ専念する――本当に酷過ぎない! 力のない生徒会にどうやって皆を纏めろっていうのよ!?」


「僕に怒鳴ってもどうしようもないが」


 私のヒステリックな叫びを前にしても圭一君は表情を変えないまま。


「生徒会は皆の象徴、一言で言うとお飾りだ。その辺を認めた方が楽だぞ?」


「いいえ」


 圭一君の言葉に対して私は即座に却下する。


「私は単なるお飾りで終わるつもりは毛頭ないわ。必ず名実共に学園の支配者として君臨するのよ!」


 夢宮家を始めとした上の連中から一目置かれるためにも私は夢宮学園を支配下に置かなければならない。


 どこの目にも引っかからずに卒業してしまえば私は大奥に放り込まれるでしょうね。


 あいつらは自分の地位を脅かすものに対しては苛烈なまでに弾劾を加えてくるから、淡い希望なんて持たない方が賢明よ。


「その表情は誰にも見せない方が良いな」


 あらいけない。


 思わず本性が出てしまっていたわ。

今回だけ南条視点です。

次話から御神楽視点に戻ります。

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