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魔法学校の中の刀使い  作者: シェイフォン
1章 彷徨う者
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週末テスト

「はい、では全員に用紙とペンが行き渡りましたね?」


 教師が僕達を見まわしながらそう問う。


 問題数は五問。


 試験範囲はこの一週間で習った内容。


 全て記述式であるこのテストは毎週週末に行われている。


 今、この教室には二種類の人間がいた。


 本気を出すを出す必要がないといわんばかりに微笑むなど喧嘩を売っているように見える勝ち組生徒。


 そして僕のように崖っぷちに立たされ、神に祈ったり何やら暗誦を繰り返している負け組生徒だった。


「……大丈夫だ、試験範囲は全て説明できるほど理解しているはず」


 僕は横に立てかけてある千変万化を握りしめながらそう念じる。


 前々回は七十三点と高得点だったものの、それに甘えてしまって前回は五十八という点数を取ってしまった。


 今回は落とすわけにいかない。


「必ず六十点を超えてやる」


 僕は小さくそう呟いた。


 毎週週末に行われるのはテストという名の振るい落とし。


 もし六十点以下を三回連続で取ってしまえば問答無用で退学という厳しい試練である。


 現にこのテストによって泣く泣く学園を去った生徒は僕らの学年だけで二ケタに上っている。


 夢宮学園を卒業する生徒は平均して入学の半分以下というのだから恐ろしいことこの上ない。


 しかし、それでもこの夢宮学園に入学する生徒が後を絶たないことから、この制度が学園レベルの維持に必要なのか分かるだろう。


 ……受ける生徒からすれば堪ったものではないが。


 


「はい、始めて下さい」 


 教師のその言葉によって全員が一斉に配布されたペンを握った。


 通常なら用紙に問題が書いており、その答えをペンで記すのだが、ここは魔法使い養成所の夢宮学園。


 単なるテストの訳がなかった。


 どう違うのかというと、まず用紙が白紙でありそしてペンもインクが切れている。


 これが一般の学校なら不備ということで済まされるが、夢宮学園はこれがスタンダート。


 問題が書いてあったりインクが切れていない方が不備とさせられる。


 じゃあ、どうやればいいのかというと、そこはやはり魔法使いらしく魔力を使う。


 魔力を集中させた手で用紙を持てば、問題文が浮き上がってくるという方式だ。


「……これぐらい込めれば十分かな」


 僕は問題文の中盤まで浮かび上がらせて止める。


 この用紙は特殊な素材でできており、魔力を込めれば込めるほど隠されていた文が浮き彫りになってくる。


 問題というのは基本的に情報量が大きいほど正解に近づくので、全ての文を浮かび上がらせた方が有利と言えば有利だが生憎と僕は魔力が少ないので無駄遣いは出来なかった。


 魔力の多い生徒は問題文全てを知ることができるので、まずここで魔力の多い生徒と少ない生徒で差がつく。


 どういった趣向の答えを予想しているのか、大体理解した僕はペンを握る。


 早く、正確にそして簡潔にを意識しなければならない。


 何故なら、このペンに込められた魔力が少ないとあまり書けないどころか時間が経つと文字が消えていく。


 だからこのテストに制限時間などない理由が、あまりもたもたしていると文字が全て消えるためである。  


 僕のように魔力が少ない生徒は余計な修飾文や理由を付け加えることができなかった。


 ちなみに回数をこなすごとに込めなけらればならない魔力量は上がっている。


 つまり勉強だけしていても駄目だということだった。


「……よし、これで良いかな」


 読み込み二〇分、思考三〇分、記述一〇分という配分でテスト終わらせた僕は急いで用紙を教師に持っていく。


 理由は、教師が持っているファイルに挟むとこれ以上文字が消えなくなるから。


 一刻も早くファイルに挟んでほしかった。


「御神楽君、帰ってもよろしい」


 受け取ったのを確認した教師は僕にそう言い渡す。


 テストの結果が出るのは週明け。


 その時に僕がまだ学園にいて良いのか判明する。


「ふう、六〇点以下は免れたか」


 しかし、僕としてはどれぐらいできたのか大体見当が付いているので確認するまでもない。


「よし、帰るか」


 明日があることを安堵した僕は教室を見渡す。


 早い人は二〇分も掛からないけど、遅い人は二時間かけてもまだ教室にいる。


 まあ、二時間も経って残っている生徒というのは大体が劣等生で、しかも今回が三回目という生徒である。


「今回は大丈夫そうだな」


 僕の他に後一〇人程度だけど、全員がペンを走らせている。


 瞳に光がある様子から、切羽詰まっているわけではあるまい。


「これで安堵せず、さらに精進を重ねるか」


 油断大敵。


 合格したからといって安心している暇は今の僕にあるはずがなかった。

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