第2章 やはりすべてが眩しかった
タイプの顔をした担当ホストが、WATASHIのなかで二重の瞳がいちばん可愛いといってくれた。それからアイメイクが、いちばん重要なチェック項目になった。
その頃、WATASHIは、市内の中心部にある担当ホストの自宅マンションに頻繁に通うようになっていた。昼は大学に通い夜はデリバリーヘルスの仕事をつづけていたため、かなり時間に追われる生活を余儀なくし、やがて妊娠検査薬の陽性反応が間違いだったのではないかと都合良く考えるようになった。しかし、体調を崩して産婦人科を受診すると、医師から即座にこういわれた。
──周囲の人と相談する必要がある!
すでに中絶可能な22週目が過ぎていた。
すべてが真っ白になった。
WATASHIはとても細身だったため、裸になってもまだ担当ホストに気づかれていなかった。マンションのマルチストライプのカーテンを開けると、夜の窓ガラスに映るWATASHIの裸身は充分に均整のとれたものだった。コンドームなしで彼とセックスをしながら、彼の精子がWATASHIの懐妊を洗い流してくれることを望んだが、現実にそんなことが起こるわけもなく現実逃避がひどくなっていった。
11月に入り、まだ就職が決まっていなかった。WATASHIは、とても大切な企業面接を受けるため国内線飛行機に乗って東京へ向かった。離陸後しばらくすると激しい陣痛がはじまり、歪んだ表情を悟られないため顔を伏せたままじっと痛みに耐えつづけた。予定日はまだ1ヶ月先だったはずなのに……
空港に到着すると、すぐに空港ターミナルの多目的トイレに駆けこんだ。
すべてが真っ白だった。
しかし不思議なことに多目的トイレから出ると、すべてが眩しかった。
両手に、CHANELのやや大きめのバッグと少し《オモタイ》手さげ紙袋を持っていた。その少し《オモタイ》ものは、たったいま多目的トイレで出産したへその緒がついたままのWATASHIの女の赤ちゃんだった。
WATASHIの強い意志によって、もう赤ちゃんは呼吸をしていない少し《オモタイ》ものになっていた。
お腹が空いたため、午後の日差しが反射する大きな窓を備えた通路を進み、迷わずオシャレなカフェに入った。
あまり目立ちたくなかったので、いちばん奥の席へ腰かけ、アップルパイとチョコレートのスムージーを注文した。すぐにCHANELのコンパクトミラーでメークのチェックをする。とくにアイメイクがWATASHIの重要チェック項目。
滑走路や待機中の旅客機が見渡せる大きな窓から陽光が店内を豊潤に満たし、少し離れた席ではピンクオレンジにマッシュボブの若い母親が、乳児にミルクを与えていた。薄いピンクのベビー服を着ているから女の子だろう。とても愛らしかった。
アップルパイとチョコレートのスムージーがくるとInstagramのリール動画を投稿するため、スマートフォンで食べている様子をしっかり自撮りした。とても美味しく満足できた。
席から立ち上がる際、手さげの紙袋がやはり少し《オモタイ》と感じた。
今までになかったような感覚で、やはりすべてが眩しかった。




