平和の国のタイタン王
ある国の港町には、町の人から「タイタン」と呼ばれている大きな体をした心優しい漁師がいました。タイタンとは神話で言い伝えられているとても大きな神様の名前です。
タイタンと呼ばれるその男は町に住む大人の男よりも一回りも二回りも大きな体をしており、みんな首が痛くなるほどに上を見上げなければタイタンの顔さえよく見えません。
そんなタイタンとの生活はとても大変でした。タイタンの大きすぎる体は、船に乗れば沈んでしまいそうになり、ついつい仲間の漁師を押しのけて海に落としてしまうこともありました。そのうえ、タイタンは他の男たちよりもいっぱいごはんを食べます。実際、漁師たちが捕まえたほとんどの魚はいつもタイタンが食べてしまうため、市場に出回る魚の数はいつも少なかったのでした。
ですがタイタンはとても力持ちでした。大の男が5人がかりで引き上げられない大物の魚をたった一人で軽く引き上げてみせたり、転覆してしまった船をいとも簡単に元の向きへ直してしまったりしています。
さらにタイタンは、自分のせいでみんなの分の魚の数が減っていることをわかっていたため、誰よりも必死で働いていました。時には漁師でありながら、山へ獣を狩りに行くこともありました。
そのため、町の人達はみんなタイタンのことが大好きでした。町の人達はむしろタイタンに対して進んで食料を分けていたほどです。
ですがそんなタイタンに対し、横暴な王様が追放の命令を下してしまいました。王様のもとに届けられる町の特産物である魚が少ないのはタイタンのせいだというのです。
タイタンは命令に従って国を離れようとしますが、町の人達は大反対でした。みんな口を揃えて「タイタンは悪くない」「あの王様は前からわがままだったんだ」と不満を漏らしていきます。やがてその不満は町全体に広がり、遂に王様のお城へ町の人全員で命令を撤回するように言いに行きました。
これに対し王様は大怒りです。自分に逆らった港町の人達全員を兵士に命令してその場で処刑させようとしました。そして、目の前でたくさんの大切な仲間を失ったタイタンは怒りに身を任せ、自慢の体格と力を活かして瞬く間に兵士を蹴散らし、悪い王様をやっつけてしまいました。
タイタンは思いました。二度とこんな横暴な王様が現れてはいけないと。そのためにタイタン自身が新しい王様となり、生き残った仲間と一緒に国を立て直していきました。
特にタイタンは優しい心を持っていたため、国中の人達が喜んでタイタンに従いました。しかし、それでも悪いことをする人は完全にはいなくなりませんでした。タイタンは二度とあのような悲劇が起こらないよう、悪い人は絶対に許しませんでした。悪い人達が集まってタイタンに逆らおうとしても、タイタンの力にはとても敵いませんでした。
やがて時は流れ、タイタンが立て直した国は「平和の国」として世界中に知れ渡りました。この国ではもう悪いことをする人はいません。悪いことをする人はみんなタイタンがやっつけてしまうのです。国中にはタイタンを信頼する兵士たちが悪い人がいないかいつも目を光らせています。兵士たちは大好きなタイタンに気に入られるために悪い人を一人でも多く見つけ出そうといつもみんなを見張っています。
平和の国は今日も何も起こらない平和な一日でした。明日も、明後日も何も起こらず、永遠に平和であり続けるのです。
2021年9月20日 作




