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第五十七弾 黄泉の国から2025秋 ⑤ 改行

第5話 改行が守る読みやすさ


 深夜二時――黄泉の静寂の中、エリックは原稿と格闘していた。今回の学びは、改行。


 エリック

「よし……ここで、主人公が立ち上がる」


(画面に映る原稿)



 改行なしバージョン


 ナタルは立ち上がった。空気が震え、誰かの祈りが遠くに消えた。彼女は静かに剣を握りしめる。しかしそのとき、闇にひそむ蹄の音が鳴り響いた。デュラハン先生が、鎧の音を鳴らしながら出現。



(画面が赤く光り、警報音)


 デュラハン(雷鳴と共に登場)

「改行を怠ったな、エリック!」


 エリック

「ひぃっ! ま、また来た! 今度は何の地獄ですかっ!?」


 デュラハン

「改行審判だ!」


(床に定規を叩きつけると、光のラインがページを走る)


 デュラハン

「改行とは――段落を示す道標。話者が変われば改め、地の文とセリフは分けよ。でなければ読者は混乱し、誰の声かも見失う!」



 改行ありバージョン


 ナタルは立ち上がった。

 空気が震え、誰かの祈りが遠くに消えた。

 彼女は静かに剣を握りしめる。


 そのとき――闇にひそむ蹄の音が鳴り響く。

 鎧の音を鳴らしながら、デュラハン先生が出現した。



 デュラハン

「これが、読みやすさの形だ。読者の呼吸を導く改行こそ、文の秩序!」


 エリック

「うっ……でも行数が増えてスカスカになっちゃうし……」


 デュラハン

「スカスカこそ美! 余白は、沈黙の音楽だ!」


(光が走り、改行が整列していく。画面の文字が整然と輝く)


 エリック

「わあ……読みやすい! 会話がちゃんと浮き上がってる!」


 デュラハン

「それでよい。改行は秩序、余白は美学。乱す者には――我がハンマーが下るッ!」


(雷鳴一閃、そしてデュラハンは光の中に消える)


 エリック

「……もう、改行は絶対サボらない……」


 エリックは、またひとつ学んだのであった。


 しかし突如、低音ビートが空間を揺らす。


(ドゥルドゥルッ……ツクツク……!)


 ???

「Yo〜 Yo〜…夜の原稿、独りの戦場

エリックくん、キミに届ける半角フロー……」


 エリック

「で、出た!? 半角魔人!」


(パーカーに金チェーン、片手にスマホ、ビートボックスしながら登場)


 半角魔人

「改行? 余白? そんなんより

 俺は推すぜ、半角ストーリー!

 文字と文字、距離を空け、イン踏むみたいに half-space決め!」


(フッ……と指で半角幅を作り、カメラ目線)


 半角魔人

「Yo! 行頭空けるより行中ノンストップ、リズムで攻めろ! 彼女は立つ―そして走る、半角Hypeで読者も乗るゥ!」


 エリック

「変なフローで惑わせないで!? 今、改行に目覚めたのに!」


 半角魔人

「Wake up文士! Breakだ常識! 全角勢にも半角Kick!――ベタ打ち文章? もう古典! 隙間の美学が俺の宗教スタンス!」


(最後、ターンテーブルを擦る真似)


「Half space… we bless… Yo……」


(霧になって消える)


 エリック

「やめろぉぉぉ! 僕の集中力返してぇぇぇ!」




 見守る者たち


 五朗

「……改行とHIPHOP、どう繋がるんだ?」


 ホタル

「でも、ちょっとノれちゃった……」


 ぽん吉

「半角魔人、急にバイブス乗ってきたな……。次来たらターンテーブル持ってくるでアレ」


(背景で半角魔人の声)


 半角魔人(遠くから)

「Yo〜……行頭全角も respect……でも忘れんな、半角はビートの隙間……Peace……」


 三人「ヒィィィィ!!」



 エンディング


 プロデューサー鬼(腕を組んで)

「――改行は秩序。だが時に、余白はビートとなる。……とはいえ、初心者はまず改行からをおすすめする」


(スタッフ、ほっとする)


 ……だが次の瞬間。


(BGM:ドゥン、ドゥン、カッ!)


 プロデューサー鬼

「Yo! 黄泉TV代表、プロデューサー鬼ッ! リズム刻んで文を磨く! 改行チェケラ、句読点バランス!」


 エリック

「ちょっ、プロデューサー? まさか乗ってる!?」


 スタッフ(焦り)

「止めろ止めろ! マイク離せ!」


 プロデューサー鬼(完全にノリノリ)

「Yo〜Yo〜! 地獄のフロアで全角も踊る! 余白こそビート、句点がドロップ! 読点スクラッチ、読者をロック!」


(カメラがぐるぐる回転、観客の鬼たちが手を上げる)


 観客

「改行! 改行! イェェェェェ!!」


(照明が爆発、エリックが叫ぶ)


 エリック

「もう何の番組か分かんないよぉぉぉ!!」




 次回予告

   第6話 カギカッコの裁き


 言葉は、語られるだけでは力を持たない。

 誰が言ったかが物語を動かす。


 しかし――カギカッコを誤れば、声は濁り、意味は迷い、ときに登場人物すら、境界を失う。


 エリックは学ぶ。

 セリフは魂の軌跡だと。


 次回、言葉に形を与える儀式が始まる。  

 地獄に響く、真実の声――。




 提供


『文頭空白保存協会』~その一文字、守ります~

『余白神社』~改行前に、心のスペースを~

『句読点ホイホイ協会』~多すぎる読点、今日も捕獲中~

『未練バンクYOMI支店』~後悔の貯蓄は計画的に~

+『黄泉サイファー連盟』 ~半角魔人、次回ビート募集中~



 

 番組終了後――。

 半角魔人ファンクラブの会員は、なぜか3名から4名に増加したという。


(スタジオの隅、ひとりの影がこっそりポーズを取る)


 プロデューサー鬼(小声で)

「……ビート、うん! 悪くないな。次は、私も乗るか……Yo……」


 スタッフ一同

「やめてくださいってばァァァ!!」




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