98 : 秘密
太陽が地球の影に隠れて夜となる。
襲来した魔物は全て倒され、久しぶりの魔物のいない夜となっていた。
今日は月が出ていない新月。
いつもよりも光は弱く、闇夜となっている。
今までは夜でも光に溢れ、至る所で声が聞こえていたが、今では光もなく、声は聞こえない。
光の途絶えた暗闇の中で何かが動いていた。
「……………」
何かは空へと飛び上がり、闇の中へと消えていく。
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エルは妖精の力を使い、周りの時空間が歪ませる。エルの目の前が歪み、色が何も無い空間が見える。
その中にエルが入ると入口は消え、何も無い空間でエルはひとりとなる。
魔法陣が浮かび上がると複数の光る玉が現れる。
それらは光りながらも円周状に並んでおり、周りに色を飛ばしている。
「あと3つ」
エルの小さな手から緑色の光の玉が出てくると、円周状に並んだ光の隙間に緑色の玉を丁寧に並べる。
緑色の玉を並べると玉の間に白い線が伸び、並べていた玉が繋がる。
並べた玉の中心地からは虹色の強い光になって留まっている。
禍々しくもあり神々しくもある光。
エルが小さな手を伸ばそうとしてやめる。
「危ない危ない。今はまだ使っちゃいけないんだよ」
エルが魔力を込めると何重にも重なった魔法陣が現れる。
魔法陣が並べられた玉に触れると光は消えて色の無い空間へと戻った。
エルの後ろの空間が歪み、元いた世界が見える。
エルは歪みの中に入ると歪みが消え、エルは元の世界へと戻る。
世界から隔離されたこの場所は誰にも干渉されない。
エルは誰にも知られないようにしながら魔女を倒す機会を伺っていた。
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日は高くあがり、太陽が地面を照らす。
戦いにより、建物は亀裂が入っている。
「アースウォール」
ミナトは魔法を使い建物を修復しながら空を見上げる。空は分厚い黒い雲に覆われており、すぐにでも雨が降りそうだった。
雨が降ると雨漏りするかもしれない。
周りを見渡すとまだまだ壊れた建物が残っている。他の魔法使い達も懸命に修復している。
ミナトは素早く修復して次へと向かう。
「これで終わればいいんだけどね」
つい、弱音がこぼれてしまう。平和な街は崩れ去っている。生まれ住んだ街は見る影もない。
戦いの中心地で無いこの場所ですらこの惨劇。戦いの中心地は建物すら残っていない人間の住めない場所になっている。
「終わるわけがないか」
建物を直して次へと進む。
ミナトが出来る仕事は今はこれしか出来ない。
「終焉の魔女か…頑張れよ、麻里奈」
妖精や一部の魔法使いしか知らないはずの言葉を呟き、ミナトは仕事を終える。
ミナトの担当の地域の修復は終わった。周りの魔法使いの進捗も良く、無事に雨が降る前に終わりそうだった。
ミナトは仕事を終えるとその場から歩いて離れる。
慣れ親しんだ道を進み、マリナが住んでいた家へと向かう。
そこには誰も居ない、時間の止まったような家。
マリナの父親からもしもの為にと言われて預かっていた鍵を使い中に入る。
「こっちだったよな…」
知っている家の中を進み、ドアを開ける。
中は整理整頓されているが、1冊の手帳が机の上に置かれている。
置かれていた本を手帳に取り、中を見る。
手帳はマリナの父親のものであった。
「………」
中に書かれていた内容はミナトが否定したい内容であった。
「俺は…信じない!麻里奈は人間なんだよ…」
ミナトは家から外に飛び出る。
外は早くも小雨が降っているが、ミナトはそんな事に構うことなく、雨の中を走り抜ける。
思いを振り払うように、見たことを忘れるようにと先へ先へと走り抜けていき、河原だったところに出る。
周りには何も無い。青かった草原も土がめくれて茶色となり、川は土で黒く汚れていた。
景色が目に入るとミナトは冷静になり、足が止まり、空を見上げる。
「麻里奈は何処にいる」
何か呟くようにも聞こえ、誰かに伝えるようにも聞こえるような声でミナトは空に問いかける。
「あっちだな」
ミナトは先程とは向きを変えて走り始める。
その後ろ、ミナトからは見えない位置に何者かが現れ、ミナトを尾行する。




