115 : 雷魔法
「雷牙」
轟音と共に剣が炎を斬る。斬った炎とレオンの炎がぶつかり合い、相殺される。
相殺された炎は灰となり、空へと魔力となって消えていく。
レオンが剣を振る度に血が飛び、レオンの腕を壊していく。レオンの左腕は皮膚が裂け、感覚もなくなっている。それでも剣を落とさずに魔法を使う。
「百雷」
レオンの魔法により空から雷の束が落ち、イレイアに直撃するが、イレイアは炎を纏ってダメージはない。
イレイアが剣を構えると炎が立ち上がり、視界を炎で埋め尽くす。
「炎狼」
レオンも炎を纏いながら剣と剣が衝突する。
「これで終わりか?」
イレイアが更に力を加える。剣から炎が巻き上がり2人を包む。
第3覚醒とフランの力によって強化された炎魔法ですらイレイアの炎魔法には敵わない。
炎が全てを焼き尽くしていく。
強烈な威力のイレイアの剣はレオンの剣を押し込んでいく。
レオンの左手は力が入らない。全快状態ですら力負けをしてしまったイレイアに右手だけでは相手にならない。
「雷装」
レオンは雷魔法を使い、筋力を強化する。人間の中にあるリミッターを解除し、通常の何倍もの力を使う。ブチブチと筋肉が切れる音を立てながらレオンの剣はイレイアの剣を押し返す。
「おぉぉおおおお!!!」
加速し、イレイアの剣を下から斬りあげるように振る。イレイアの剣は弾き飛ばす。足で地面を蹴り上げ、イレイアへと更に接近する。
力を加えるがイレイアは剣を離さない。
「陣風」
「…ッ!?」
イレイアの剣が弾かれる。
レオンの風魔法がイレイアの剣を攻撃する。雷魔法で加えた力とは違う方向から風魔法で1点に力を入れる。
力で正面からぶつかってきていたレオンの攻撃から突如風魔法を使う機転にイレイアは一瞬迷いが生じる。
「蒼炎」
風魔法を後押しする炎魔法。風に乗った炎は蒼く燃え、イレイアの左手を焼く。
「雷撃」
イレイアの手の力が少し弱まる。レオンの雷魔法はイレイアの胴体に直撃する。普通の魔物であれば一瞬で消し炭になるような攻撃であるが、炎によって護られているイレイアには致命傷とまではならない。
イレイアは変幻自在な攻撃に対処が遅れる。一瞬であるが、レオンにとっては大きな隙となり、更なる連撃が加えられる。
「風狼」
イレイアの手に風が迫る。喰らいつくような風魔法はイレイアの手を切り刻む。
右手は炎によって護られているが、レオンにより焼かれた左手は風魔法により斬られる。
指が空を巻い、イレイアの剣の力が抜ける。レオンは一気に優勢となる。
レオンは剣を押し上げ、力を上へと誘導させる。
イレイアの剣が空を舞う。
レオンは右手に持っている剣でイレイアへと迫る。
剣が迫る中でもイレイアに迷いは無い。
イレイアは指が無くなった左腕を壁としてレオンの剣を受ける。
炎を纏っているイレイアの腕はレオンの剣を受けながら威力を減衰させていく。
レオンの剣はイレイアの腕を斬り落としながらも更に進むが、更なる炎の魔力により、イレイアの身体に剣が通ることはなく、弾かれる。
レオンは片膝を付きながら荒く息をする。
度重なる雷魔法はレオンの筋肉を破壊しており、常人には耐えられない痛みとなっている。
それでもレオンは獰猛にイレイアを見る。
立ち上がることすらも激痛が走る。
それでも立ち上がり、剣を構える。
レオンの捨て身の攻撃でイレイアは片腕を落とされた。だが、レオンからは血は流れ、痛みにより感覚も鈍っている。
レオンは満身創痍であり、身体を動かすこともやっとの事であった。
イレイアはその姿を見ながらも警戒を緩めない。
この男は獰猛な獣。
噛み付くためなら死んでも構わないような気迫すらも感じる。
その姿にイレイアは敬意を払う。
飛ばされた剣を拾い、魔力を込める。
剣は赤く輝きながら熱が籠る。
レオンは動けない。
荒く呼吸を乱し、片膝を立てている。
それでもレオンの瞳は死んでいない。
絶望的な状態ながらもイレイアを倒す術を探している。
「さらばだ、勇者よ」
イレイアがレオンに迫る。
イレイアは魔力を使い身体を強化させ、剣までも強化されている。
この状態であればレオンには万に一つも勝つ可能性は無い。
確実に殺す。
イレイアはレオンに最後の一撃を加えるために最高の一撃を繰り出す。
「終わりか…」
雷魔法によって酷使された身体は痛みすらも感じなくなってきた。
剣が迫ってきている。
身体がすぐには動かない。数瞬遅れ、痛みを感じながらも動き出すが、相手の剣を受け切ることは出来なさそうだ。
(最後に強い奴と戦えたから満足だろ?)
(まあな。勝ちたかったがな)
こいつには誰も勝てない。
いや、もしかしたらあいつらなら勝てるのかもな。
「フ…」
最後なのに少し後悔もある。
あいつの底知れない魔力。あれが使い切れるようになってから戦ってみたかった。
剣が迫る。俺の腕は動き始めているが、剣を防ぐのは間に合わない。
俺の人生は………
………そこそこ楽しかったな
じゃあな………
「させない」
「………っ!?」
魔法で強化されていたはずの思考速度や反応速度が元に戻る。数瞬が長く感じていたはずだったが、感覚が通常時へと戻っている。
血が地面へと垂れる。血は垂れるが数滴のみ垂れただけだった。
まるで傷が塞がっているみたいだ。
「…まさか」
そして痛みのあったはずの身体の感覚が戻っていき懐かしい魔力に包まれていく。




