113 : 強者の瞳
強大な魔力を感じたレオンは魔法局へと急いで向かっていた。
魔法を使い、常人離れした速度で向かったところで何者かに弾き返された。
「あなたがレオン?」
「そうだが、お前は何者だ?」
レオンは大きな剣をもった女と向かい合い。笑みを浮かべる。
「私は………イレイアだ。ここから先は通さない」
レオンの問いかけに対し、イレイアは少し悩んだ素振りを見せるが、すぐに剣を構える。
「そうかそうか。まあ、いいだろう。お前もかなり強そうだしな」
レオンの瞳はイレイアを見る。先程感じた強大な魔力と同じくらい強い魔力。それがイレイアからも溢れ出てきている。
「死ぬぞ?」
「やってみろ」
レオンは魔力を使い加速する。一瞬で距離が詰まるが、イレイアはレオンの足を掴んでそのままぶん投げる。
「疾風」
吹き飛ばされたレオンは壁に激突しそうになるが、足が壁に接触した瞬間に魔法を使う。風魔法によって一気に壁に力が入り、壁が吹き飛ぶが、レオンは音速でイレイアへと接近し、双剣で首を狙う。
「やる気なの?」
双剣を剣で防ぎ、イレイアはため息を付く。イレイアがレオンの腹を蹴るとレオンは蹴りを喰らいながら離れさせられる。
「ああ。お前を倒す」
レオンはすぐに立ち上がり、そして、笑みを浮かべる。
イレイアはレオンを脅威と思っていない。そのためレオンを殺すような反撃をしなかった。
追い払うような蹴り。殺すつもりで攻撃したレオンはそのような反撃をされただけだった。
大きな力の差をレオンは感じているが、恐怖はなくただただ歓喜していた。
今の自分でも勝てない相手、そして未来永劫現れないであろう強大な相手。それに相手をしてもらえている。これほど嬉しい事はなかった。
レオンは第2覚醒、さらには第3覚醒へと切り替わる。
レオンの爆発的に上昇する魔力に対してもイレイアは特に警戒もしない。油断とも言えるが、レオンの第3覚醒ですらイレイアの強さに劣っているためレオンの変化に気にしてすら居ない。
「双炎双嵐」
魔力が渦巻き風の道をつくる。風魔法により加速し、両手の剣が赤く光りながらイレイアに斬り掛かる。剣の軌道には炎の魔力が残り、熱を持つ。剣での攻撃と残った魔力での攻撃。避けたところも攻撃範囲となり、任意での魔法を行使できる。剣と残っている魔力を注意していれば攻撃は回避出来る。ただし、レオンは剣を両手に持っているため、通常の剣士の倍の意識を向けなければならなかった。
「………なるほど…な?」
そう思っていたイレイアは剣の起動からは避けていたが意識外からの炎の攻撃に一瞬視線を向ける。
風魔法での軌道に残っている魔力の位置を変え、目で見える剣筋のみではなく、魔法による死角からの攻撃を行っていた。
イレイアが炎に飲まれるが、飲み込まれる瞬間にレオンの炎は爆散する。
爆散する炎は火の粉となり空を舞うがレオンはこの攻撃が防がれる事は想定済みだった。
「風牙」
音速を超え、鋭く風を斬る一閃がイレイアに迫る。火の粉となった炎はレオンの魔力を持っており、魔力に紛れた攻撃はレオンの追撃を隠している。
殺れる
風魔法での音速の一撃。イレイアへとあと数センチ、数ミリと迫っていく中でイレイアは動いてすらいなかった。
「遅いな」
イレイア瞳がレオンの剣を捉える。数ミリと迫った攻撃をイレイアはふわりと飛ぶように避ける
レオンの剣は止まることなく空を斬り裂く。
一瞬の出来事。熱風と衝撃波が周りの景色を一変させる。瓦礫は砕け散り、炎が舞い、轟音が鳴る。
「あれでダメなのか」
獰猛な笑みをレオンは浮かべる。格が違うのが分かる。風魔法の最速ですら捉えられない相手。強敵の存在にレオンは昂る。
「このくらい速くないと私には当たらないぞ?」
レオンの目の前にはイレイアの剣が振り上げられている。レオンも反応しきれていない。気付いた時には剣はレオンに斬りかかっていた。
振り下ろされて来る剣をレオンは両手の剣を交差させて受け止める。
「オオオオオッ!」
威力の乗った剣はレオンの剣を押し込み、レオンも力を入れる。
レオンは足から受けた力を逃すと地面に大きくヒビが入り、地面が揺れる。
「意外だな。避けられないと思ったが…でもこれで終わりだ」
イレイアが力を加えると剣からは炎が出てきてレオンの剣を燃やす。
「あっぶね…」
レオンは自分の魔力を剣に流し込み剣を守り、力の軸をずらし、イレイアの剣から離すようにして距離を取る。
両手に持つ剣は赤く染まりながらもレオンの魔力で燃えていく。
「あなた……………そういうことか」
イレイアは自分の魔力を上書きされたレオンの剣を見ながら頷く。
「気が変わった。本気で殺してあげる」
イレイアの雰囲気が変わる。今まで興味も無さそうだったイレイアはレオンを見る。初めてイレイアの瞳にレオンが映る。
レオンもイレイアの瞳を見る。その瞳には優しさはひとつも無い。獲物を狩る強者の瞳となっていた。




