110 : 私の答え
ダンタリオンと旅を始め、かなりの時間が経った。
旅の中で複数の世界の終わりを見てしまった。
私達は多少なりにも介入したが、終わることは変わらなかった。
ある世界は戦争によって滅亡した。戦い合う両陣営が殲滅兵器を完成させた。殲滅兵器を撃ち合いあらゆるものを破壊した。
破壊した後には何も残っていない。人も何も全て息絶えていた。
私達のような勇者や聖女は突出した力を持つ者はその世界にはいなかった。
それでも世界は滅亡した。
私達のような存在が居なくても、力を作り出してしまう。
私達は本当に必要な存在だったのかな…?
ある世界は平和だった。私達と同じ力を持った存在が指導者として世界を纏めていた。
だが、平和は長くは続かなかった。平和であったことで人が爆増した。人が増えると食料はどんどん少なくなって行った。
少なくなった食料の奪い合いが発生した。
力を持った存在は争いを辞めさせようとするが、空腹となった人々に囲まれ、殺されてしまう。
指導者が居なくなった世界は更に争い、戦争へと変わっていく。
戦争は大地を焼き付くし、食べるものが無くなった。
食べるものが無くなった人は人を食べ始める。
残っていた人は人を喰い、生き延びようとするがそれも長くは続かなかった。
全てが焼け果てた世界には何も残らなかった。
平和だったはずなのに、人は自分たちで地獄へと向かっていった。
力を持っていても他人を信じたのが間違いだった。過去の私みたいに…
ある世界は人の争いは何も無く、平和だった。私達はこの世界に期待を持っていたが、世界は滅亡してしまった。
そこは人工知能によって世界を支配され、人はただそこにいるだけの世界だった。人工知能はやがて劣化し、壊れてしまった。
ただ居ただけの人はお互いに主張し合い、やがて戦争となり滅亡した。
沢山の世界を見たが、どれも変わらない。人は自ら争い合い、やがて死ぬ。
1人では生きられないのに他人を攻撃する不可解な存在。
平和だと思っても長くは続かない。
争いのない平和な世界なんて存在しない。
平和がないなら私の選択は間違っていない。こんな未来を迎えるなら、私の手で殺したので正解だった。
正解だった…はずだ。
………でも
私は…
「俺は…今まで何のために生きてたんだろうな」
何のために生きていたのか。
私は聖女として、ダンタリオンは勇者として、常に争いの中に居た。
争いの先に平和があると信じていた。
それはまやかしの平和であり、世界は約束された終焉へと向かっていってる事を知る。
「もう十分だ」
「ダンタリ…………オン?」
ダンタリオンが目を瞑ると、その目は永遠に開くことが無かった。
寿命だった。私とは違い、彼は生身の人。何千年も生きた彼は安らかに目を瞑る。
彼の瞑った目からは涙が1粒だけ落ちていき、涙と一緒に彼の魂が肉体から離れていく。
生物の輪廻は今の私でも止めることはできない。
私は咄嗟に魔法を使い、彼の魂を保護した。
「私ももう…………」
この世界をみて変わらなければもう辞めよう。そう思いながら次の世界を見てしまった。
それが私の分岐点だった。
最後と思って見た世界は争いが無かった。
科学も発展し、食料も大量にある。互いの国同士で手を取り合い、共に歩んでいた。
ここ理想郷だと思い、心が弾んだが、それは表面上のお話だった。蓋を開ければ、ここはどの世界よりも地獄だった。
人は生まれながらにして不平等。それがこの世界がこの世界である由縁であった。
この世界の人は産まれた瞬間に1/2を迫られる。片方は普通の人の生活ができるが、もう片方は奴隷となる。
人体実験は奴隷を使い、食料不足となれば奴隷に餌を与えないようにし、心的疲労は奴隷で解消する。
奴隷は人ではなく物として扱われ、大人になるまでに死ぬことがほとんどだった。
奴隷が居ることにより心的余裕も生まれる事で世界は平和となっていた。
人は愚かだった。力でしか己を誇示出来ない存在だった。
私は奴隷として生きてきた少女に力を与えた。心も身体も死にかけていた少女は力を受け取ると、奴隷以外を全員殺した。血の海の中で、生き残っているのは世界の人口の1/10にも満たない子供だけの世界となった。子供だが、様々な仕事を叩き込まれている。この子達なら世界を再編成することもできるだろう。
そう思っていた。
少女は皆を集めると魔法を使う。
空気が揺れ、生き残っていた子供達は全てその場に倒れる。
痛みを感じさせないように一瞬で殺した少女は空へと浮かぶ。
少女は魔法を使うと空から赤い雫が落ちていく。
地面に接触すると地面は赤く染まり、そのまま世界は崩壊していく。
少女はそのまま空から落ち、赤くなった大地へと沈んでいく。
少女は自らも死を選び、その世界は滅亡してしまった。
赤くなった大地は熱く燃え盛り、赤く、熱く光を放つ。
少女の魂であり、明るく暖かな未来を願った光。
少女の願いは私とは違った。あの絶望を体験した彼女はどのような選択をするのかと思っていた。
私と同じように憎しみで世界を破壊するものだと思っていた。
彼女が絶望の先で願ったのは安らぎだった。少女は自分と同じ苦しみを味わせないような平穏を願っていた。
私の瞳から何千年振りかの涙が落ちる。
「………私がその願いを………」
少女の願いである平穏な世界。争いというものはなく、苦しみも悲しみも存在しない世界。私の心に深く突き刺さった。
「全てを終わらせて理想郷を作る」
歪んだ世界は私が終わらせる。人は醜く、欲望にまみれた存在だ。そんなものは私の理想郷には必要ない。
私こそが終焉の魔女。
願いが叶えられれば私は幸せになれる。
色々と思うところはありますけど1ページで抑え込みました。
今年中にあと1ページ投稿する予定です。




