一項 やけくそバカンス(第9話)
第一部 新世界の産声編
一章 交差する世界
一節 オアシスにて
なんでこんなめんどくさい分け方したんだ。(後悔)
大気圏突入からの敵機の残骸を利用してどうにか不時着に成功したのはいいんだが――
「あっちぃ……どこなんだぁ、ここはよう?」
不時着した先は、辺り一面砂だらけだった。
正確には、砂漠の真っただ中にあるオアシスの近くだった。
あの状況で落ちる場所なんて選べるわけもなかったから仕方がないとはいえ、こいつはきついな。
「まあ、居住圏に落ちなかっただけましか」
海でもやばかったかもしれねぇな。
相棒諸共、沈んで海の藻屑になる所だった。
「それにしても、ここはどこだ?」
こんなに大きな砂漠地帯と言ったらいくつか思い当たるが、こんなオアシスがあるようなところだったか?
それに、落下中になんか妙な感じがした気がするんだよなぁ。
「……いや、あっちいな! 少し頭でも冷やすか」
ちょうど近くに水場もあることだし、ひとまず落ち着けるように環境を整えるか。
水場で涼んだ後、オアシスの散策と相棒の軽い修理を終えた所で、すっかり日が暮れちまった。
成分分析の結果、水場の水は煮沸せずとも飲める程度の純度。
オアシスに生え茂っている植物の中には食べられる物がいくつかあった。
ついでに周辺に住んでいる生き物も食う分には問題のなさそうなものを多数確認した。
相棒の外部機器は大半がいかれている中、太陽光発電機が生きていた為、内部の機器を動かすことができた。
生憎と通信はどこにも繋がらなかったが、空調等が問題なく作動したのは助かった。
救難信号も出しちゃいるが、この調子だと、どこぞに届いているとも思えない。
「はっ、こりゃぁ、ちょっとしたバカンスだな」
半分冗談、半分本気で呟いてみた。
そう思わないとやってられねぇってのはあるが、化け物共と戦い続けて来た俺にとっちゃ久しぶりの休暇だった。
救助は期待できない以上、自力で脱出するしかない。
幸いにも水は豊富で食い物もある、何なら相棒に積んであった糧食もあるから、しばらく暮らしていけるだろう。
相棒を修理する為の部品は一緒に落ちて来た機体からかっぱらえば良い。
こちとら本業は軍属のメカニックだ。
若い頃は化け物共との野戦で一年近く戦い続けたことだってある。
時間はかかるだろうが、やってやれねぇことはねぇはずだ。
「お、寒くなってきやがったな」
そろそろ相棒の中に戻るか。
すっかり日も落ちて、気温が下がってきたようだ。
なんとなしに空を見上げると、夜空には満天の星空が広がっていた。
「……ま、こういうバカンスも悪かねぇな」
しばらく短めの話が続きます
これを書いている頃はとにかく書いて先に進めることを優先してました