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第二項 燃ゆる街(第100話)

第一部 新世界の産声編 第六章 英雄達の邂逅 第二節 救助活動


 このままでは文字通りに街が火の海になるという事で、リンとシルフィーネに消火活動を任せて我は火元の調査と原因の排除に動き出した。


 燃ゆる街の中からその元凶を探し出すのは、さほど苦にはならなかった。


「貴様が原因か。気配が無さすぎて逆に怪しいとは、随分と間抜けな賊も居たものだな」


「なんで見え――っ! だ、誰でしょうか? 賊と言われましても、私には何の心当たりもありません」


 火元より見つけた不審な魔力を追ってきた結果、外套を目深に羽織った、あからさまに怪しい者が居たので声を掛けたのだが、どうやら惚けて逃れるつもりらしい。平時であれば泳がせても良かったのだが、少々気になる点がある為、ここで逃がすつもりはない。


「我は面倒なやり取りは好かぬ。直ちに降伏して洗いざらい吐け。我に目を付けられた以上は逃亡は不可能で自害も無駄だ。そうしたところで情報が漏れるのが少しばかり遅れる程度だが、所詮は誤差に過ぎぬ」


「それは……その物言いは間違いなく龍王――! は、はははは! まさか本当に転生していたとは!」


 ……我の事を知っているという事は同じ世界の者か? 残念ながら我は覚えて居らぬが。


 しかし、こうして話すまで気づかぬ辺り、大した実力者では――いや、そうか。


「む? 何を――ああ、今の我は少しばかり弱体化しているのであったな」


 それに外見も少しばかり若返っているため、気付かぬのも無理はないか。


「少し? 少しだと!? 自らがどれほど弱体化しているのか解っていないのか!? はははは! これは傑作だ! そしてなんという僥倖か! 我ら魔王教団が龍王たった一人に壊滅させられてから五千年以上の苦節を重ねてきたが、ようやく私にもツキが回ってきたようだ。今のきさま゛っ!?」


「口上が長い」


 うっかり手が出てしまったではないか。


 しかし、魔王教団とは? 我が壊滅させた組織のようであるが……五千年以上の苦節などと言っていたな。それほど前ともなると、辛うじてスキルやらなんやらが残っていた時代か。この様子だと、当時の生き残りか? スキルの類いは自称女神の消滅と共に消え、厄介なスキル持ち諸共も滅んだはずだが、スキル消失の反動に耐えたのか。良く生き残れたものだ。


「う、ぐ、ま、前より弱体化している筈なのに……」


 何者か――ひとまず放火魔としよう。放火魔は我に殴られた腹を押さえながら、よろよろと立ち上がった。


 目深に被っていた外套が捲れて、その顔が露になったが――駄目だな。まったく見覚えがない。


 顔立ちは妖精族のように整っており、額には鬼族に似た角が一本。肌の色は幽鬼の如く病的に白く、瞳の色としてはやや珍しい赤銅色の瞳か。そして髪の色は炎の精霊のような鮮やかな赤い色となると――太古の時代、人族に滅ぼされた魔族。その氏族の一つにこのような特徴を持った者達が居たはずだ。人族の行いであったので生き残りが居るのであろうなと思ってはいたが、よもやこの時代になって見つかるとはな。しかし、だ。


「貴様、魔族の癖に恐ろしく弱いな。軽く小突いただけだというのに」


 それも、五千年生きてこの様か。嘆かわしい。我の知っている魔族とは比較するのもおこがましい。


「肉弾戦は――苦手なのよ! 奴を喰らえ! 炎獣!」


「む」


 放火魔の口調が崩れた。大物ぶっていたようだがこちらが素か。おまけにそこそこの威力の魔法を使用してきた。それも炎獣とは、なんとも懐かしい。


 放火魔の掛け声と共に現れたのは総身に炎を纏った獣だった。これは自称女神が世に放った勇者の一人が好んで使用していた魔法だ。奴の事はよく覚えている。


「ほう、炎獣の五段階目か。それなりに使い込んでいるようだな」


 この魔法は自称女神が現れるより以前に我の知人が創り出した魔法で、術者の習熟度合いによって成長していく魔法として生み出された物なのだが、少々の難がある魔法でもあった。


 この魔法を解読して蘇らせた当時の勇者は、その功績を称えられて炎極の勇者という称号を貰っていたな。


 確か、当時の奴の段階は――


「そうよ! 炎極の勇者が三段階だったところを二段階上回る私の炎獣なら、たとえ神が来ようと喰らい尽くして見せる!」


「そうか」


 神を喰らうか。本物が相手では一息で消し飛ばされるであろうな。あの自称女神であれば喰い尽くせるやもしれぬが。


 この魔法は自称女神程度であれば始末できるというだけあって、五段階目ともなれば炎獣の強さはそれなりだ。


 だが先述の通り、この魔法には少々の難がある。それは魔法の性質上、制御が難しいという点だ。


 その性質というのが――


「さあ! 奴を喰らい尽くしなさい!」


『……あかん。無理や』


「……は?」


『あんなバケモンの相手とか無理やて。堪忍してや。ワイは死にとうない』


「ま、待ちなさい! そもそもあなた喋れ――」


『ほなさいなら』


 炎獣が一瞬燃え上がるように火の手を上げると、そのまま音もなく消えた。


 ――我の思っていたものとは少々違ったが、自我があるという性質から、各上が相手だと使用者を見限るという難のある魔法だからだ。


 ちなみに、炎極の勇者は自らの生み出した炎獣に貪り喰われるというあまりにも無様な最期を迎えていたので、よく覚えていたというわけだ。あの絵面はなかなかに衝撃的であったな。


「……それで、どうするのだ? 我は放火魔を逃すつもりはないぞ」


「え、あっ、スゥ――くっ!」


 いっそ清々しいほどに全力で逃げ出そうとするが、残念ながら我から逃げることは不可能だ。


「逃がさん」


「あっ! くそっ! 龍王っ! お前が魔王様の復活を阻止しなければ……!」


「魔王の復活だと? なんのことだ?」


 そのようなことができるなら、当時の我は喜んで協力したと思うのだがな?


「惚けるな! 五千年前のあの日! お前達があの女神を斃さなければ今頃は……!」


 我らのせいだと……? ああ、そう言えば自称女神とやらは勇者共が倒した魔王を封印させていたな。


「ふむ、我々が奴とやりあっている最中に魔王を復活させる算段であったか。それは悪い事をしたな。しかし、そのような計画など、我は聞かされておらぬがな。そもそも、貴様ら魔族が生きていた事すら知らなんだ。しかし、そうなると疑問が残るのだが?」


「なに?」


「むしろ、我らがあの女を倒したからこそ、魔王は復活してもおかしくないのではないか? 我の記憶が正しければ、奴は勇者共に倒されたのちに封印されたという事だが、その封印があの女由来の物であるならば、自らの力で復活しているはずだ」


 あの女に奪われた力はスキルやらが失われた際に本来の主の元へ戻っているはずだからな。


「……確かに。で、では、魔王様はなぜ私達に姿を見せてくれないの?」


「知らん。だが、奴とて我らのように不滅とまではいかぬまでも、封印された程度であれば現在は既に復活はしているはずだ。今も世界のどこかで生きているのではないか?」


 それでも姿を見せていないという事は、そういう事なのであろう。


 魔王の事はよく知らぬが、王の責務から逃げ出したくなる気持ちは分かる。何せ面倒だからな。


「そ、そんな……だったら、私は何のためにこのようなことを……」


「ああ、それだ。そもそも貴様、何の目的があってこのような放火をしておったのだ?」


「それは――」


 放火魔が事情を口にしようとすると、何処から妙な形の刃が飛んできた。


「むっ」


 まあ、我の手にかかれば問題なく防げるわけだが。


 そして、刃の飛んできた先へと視線をやると――これまた妙な格好をした者が居た。


 黒装束とでも言えばよいのか、とにかく動きやすそうな格好に顔の見えない覆面を被っている。


「なっ、今のは……裏切ったの!?」


 放火魔が激高して相手に食って掛かるが、それはお門違いという物ではなかろうか?


「いや、裏切ろうとしたのは貴女でしょう?」


 まったくもって正論である。


「それもそうだな。が、そのようなことはどうでもよい。この頭の足りぬ魔族をかどわかしたのは貴様か? おかげで面倒なことに巻き込まれたではないか。我の貴重な時間を潰しおって、どうしてくれようか」


「あ、頭が足りないですって!?」


「貴様は黙ってろ」「あなたは黙っていてください」


「……はい」


「さて、邪魔が入ったが率直に行こうではないか。貴様の目的はなんだ? 事情によっては見逃してやろう」


「平和の為ですね。信じなくても構いませんが」


「……ふむ、嘘をついているわけではないのか。この阿呆の放火にも理由があると?」


「そうですね。世界の脅威を文字通り焙り出すのに必要でしたので」


「……それは木っ端共の事か?」


 言われてみれば、火の手が上がってから木っ端共の数が増えていったな。まるで湧き出るように出てきたが……この街に潜伏していたのか?


「ご想像にお任せしますよ。こちらも次の仕事がありますので、そろそろお暇してもよろしいでしょうか?」


「……まあ良かろう。ただし、これは置いて行って貰うぞ」


 我が放火魔を摘まみ上げて言うと、奴はすんなりと頷いた。


「構いませんよ。差し上げます。別に仲間でもありませんし。では――」


 む、消えたか。気配が急速に遠のいているから、魔法とは異なる何らかの移動手段か。


「あ、あのぅ。私はどうしたら……?」


 蓋を開けてみれば、こ奴はただの利用された愚か者でしかなかったな。


 魔王復活の為に動いていたようだが、どうしたものか。


「これから木っ端共の掃討及び街の消火活動と人命救助を行う。貴様の働き次第で見逃してやろう。ついでに魔王の魔力を探知してやっても良いぞ。仲間達にも教えてやると良い」


「ま、魔王様の!? 皆が喜びます! 何でもやります! 頑張ります!」


 ……軽くかまを掛けたら仲間がいることをあっさり暴露したぞ。本当に大丈夫なのか、こ奴は。


 居場所を知られるのは魔王からしてみれば余計な世話であろうが、我が被った迷惑に対する報復――いや、礼として是非とも受け取って欲しいものだな。



 放火魔改め魔族の女はよく働いてくれた。


 正確には、奴が使用する炎獣が良い仕事をしていた。というのも、炎獣は木っ端共にとって天敵と言える程に相性が悪いようで、街の各所で暴れていた小型の木っ端共は炎獣によって綺麗に掃討されていったのだ。


 また、炎獣には炎を喰らうという性質もあり、消火活動にも貢献していた。幾らかは自前で着けたものであろうが、それでも放置されたままであるよりはマシであろう。


 そうして街の火災や木っ端共による破壊活動が落ち着いた頃、魔族の女は炎獣の酷使によってぐったりと倒れ伏していた。魔力切れによる疲労が原因だな。今のところ息はあるので問題は無かろう。


 あとは――ん? この気配は――


「よっ、と! そっちは……あー、なんか色々あったみたいね?」


「あなた、この方は……えっ、まさか、魔族ですか?」


 リンとシルフィーネが箒に乗ってやってきた。なぜ箒なのだ?


「こちらも色々と言いたいことはあるが、まずは現状把握を優先すべきであるな。街の方は火災が終息、木っ端共の脅威も残りわずかだが、掃討側が優勢のまま終わるだろう。非戦闘員の方は落ち着きを取り戻して居るようだが、死傷者はどうなっているかわかるか? 建物の損壊はそれなりだが、生き埋めになっている者は今のところ確認出来て居らんのだ」


「結構早い段階で避難が始まっていたからか、今のところ死者は居ないみたいね。怪我人は数名ってところだけど、避難中に転んだとかで、重症者は居ないみたい。もしかしたら今後増えるかもだけど。今拾える情報はこんなもんね」


 魔力の動きから判断するに、風の魔法によって街中の話を拾い集めていたらしいリンがそのようにまとめた。なかなか便利な魔法を使っているな。随分と繊細な魔力の動きなので我には難しそうだが。


「私の方は避難民の手助けをしながら秘密結社の動向を追って居ました。私の所に来ていた怪人以外にも数体の怪人を確認しましたが、なんらかの戦闘従事者と思われる方々に退治されているようでした」


 シルフィーネの方は避難民を助けながら情報収集にあたっていたようだが、気になる点が一つ。


「何らかの戦闘従事者だと?」


 確かに木っ端共や怪人らしき者等と戦っている者は居たようだが、戦闘従事者が一般人に紛れ込んでいたのか。


 この街に来てからそれらしき者には会った事が無かったため、少しばかり驚いてしまった。


「おそらくですが、企業戦士か人民軍あたりでしょうね。生身で怪人を倒していたのは驚きましたが」


 ああ、企業戦士とやらか。以前に聞いた覚えがあるが、それなりの力はあるようだな。


「生身で怪人を? そちらの人族はそれほどに精強なのか?」


 怪人の強さは我の目測だと中型の魔物程度とみているので、一般人には脅威だと思ったのだが。


「その理屈だと怪人化したらより精強なんじゃないの? 怪人って元は人なんだし」


「それもそうか。だとするなら、何らかの技術……もしや、あのよくわからぬ技術か?」


「あー、それはあるかもしれないわね。いかにも生身の人間が使いそうな技術だし」


「ふむ……確かに、力ではなく技でねじ伏せるのはまさにそれだな。スキルが存在しなかった頃に居た人種の武芸者たちがその部類であったな」


「あー、あったあった。魔闘法だったかしら? 言われてみたら似てるわね」


「魔闘法か……力を失っていた頃に我も使用していたな」


 少ない力で格上の相手を斃す為の技術か。今一度、学び直す価値がありそうだな。


「あっ、それとロボットの戦い見た!? あれにはびっくりしちゃった!」


「私は何も見ていませんが、何かあったんですか?」


「信じられないかもしれないけど、ロボットが魔法を使ったのよ! それで怪獣を一発で倒しちゃってね。まさに必殺技って感じでさ。いやー、良い物見れたわー。なんて思ってたら、中から魔法少女が出てきてね? それが有名な魔法少女でさらに驚きだったのよ」


「魔法少女がロボットに……? お母様の世界にもロボットが?」


「それはないわね。ただまあ、その魔法少女がクレアっていう超金持ちだから、ロボットなんてものを持っててもおかしくないってのがまた面倒な所ではあるんだけどね? それでも一切情報が入ってこなかったから、世界が融合してからの関わりなのは間違いないはずよ」


「ふむ、クレア……? クレア=パトラックのことか?」


「あれ? まさか知り合い?」


「いや、最近、商業雑誌で目にした名前だったのでな。確か、世界有数の大富豪だったか?」


「そうそう。天から二物も三物も与えられた女って言われてるわ。魔術回路の開発者としても有名ね」


「ほう、魔術回路とな」「魔術回路ですか、それは面白そうな技術ですね」


 我とシルフィーネの言葉が被った。


「あんた達ってホントに似たもの夫婦ね……」


 我らの様子にリンが呆れていると、倒れていた魔族の女がもぞもぞと動き出した。


 そう言えば居たな。こやつの存在をすっかり忘れていた。


「うぅ……ようやく魔力が回復してきた……っ、誰!?」


「うわぁ! びっくりしたぁ! そう言えば居たわね。すっかり忘れてたわ」


「私も忘れていました……それで、あなた? この方はどこの何方ですか?」


「見ての通り、滅んだと思われていた魔族だ。名は我も知らぬ。あと街に放火していたのはこいつだ」


「あー、炎獣使ってたのってこいつ? よくもまあ、あんな面倒な物を使ってるわね」


「自分で火をつけて自分で消火ですか。どういう狙いでそのようなことを?」


「りゅ、龍王! なんなのよこいつら!」


「我の妻とその母親だ。シルフィーネ、待て。殺そうとするな」


 我を盾にするように背後に隠れる魔族の女に対して無言になったシルフィーネが何か物騒な物を取り出して構えたので、慌てて止めた。見たことのない武器だが、何か殺傷性の高そうな気配がしたぞ。


「……貴女は何者ですか。所属と名を名乗りなさい。あと、私の夫から離れなさい」


「ひゃいっ! ま、魔王教団の幹部の一人、炎魔のリシェルスです……」


「魔王教団ですか……以前の私を殺した暗殺者を仕向けて来た者達ですね」


「ああ、奴らか。我が滅ぼしたのはシルフィーネの暗殺に関与した者等だけだが……」


「わ、私は関わってないです! シルフィーネ様暗殺の件は別の幹部の派閥です! なんでしたら奴らの情報も差し出しますぅ!」


「こ奴、あっさりと仲間を裏切ったぞ」


「えぐいほどに一瞬だったわね……」


「恥ずかしい生き物ですね」


 リンとシルフィーネが手厳しい言葉を放つが、正直我も同じ感想である。


「私達は魔王様の復活を共通の目的としただけの集団なので、互いに仲間意識はほとんどないんです。どこかしらの派閥が魔王様を復活させられるのであれば、それでいいみたいな……」


「魔王を信奉する集団なのに内部はバチギスって……魔王が可哀想になって来たわ」


「どこかしらの派閥が――とか言ってますけど、どの派閥も絶対に自分達の所が――とか思ってそうですよね。きっと陰で足の引っ張り合いもして……いえ、絶対にやってますね」


「二人とも、その辺にしておけ。図星を指されて苦しんでおる」


「う、ぐ……わ、私だって好きで幹部をやってるわけじゃ……」


「あー、ごめんごめん。でもまあ、話を聞いてると滅ぶべくして滅んだって感じよね。魔族って」


「なんですって!?」


「私達も眠りに就いた後のことなので詳細までは分かりませんが、人族がスキルを得てから真っ先に滅ぼされた辺り、何らかの問題があったのは間違いはないかと」


「人族なんて家畜も同然でしょう!?」


「あー、はいはい。そう言う所ね。テンプレ魔族じゃん。そりゃ魔王も愛想を尽かすわけね」


「ふむ……リシェルスと言ったか。貴様には魔王の居所を教えるという約束だったが、もうしばらく働いてもらうぞ」


「そ、そんな! 約束が違うわ!」


「まあ、そう言うな。どうせ貴様らでは逃げ続ける奴の足取りは追えまい」


「逃げ続ける? 魔王様が? なんでよ!」


「さてな。貴様らのそう言う所が原因なのかもしれぬが、我は魔王ではないのでわからん。ただ、今のまま貴様らが魔王と再会したところで、また逃げられるであろうからな。だから、まずは貴様が変われ」


「変われって言われても……なにをしたらいいの?」


「貴様には人族の子供の世話をしてもらう。ちょうど子供の世話係が欲しかったのだ」


「こ、子供の世話ですって!? それも人族の!?」


「あたし達も世話をしてるんだけど、今は色々と忙しいのよね」


「私もお店の方で忙しいので、ちょうど良かったです」


「我も同じく多忙な身でな。子供の面倒を見ている暇が無いのだ。どうだ? 子供の世話をするだけで魔王の居所が解るのだぞ? 期限は半年ほどで良いのだ」


「半年も!?」


「ああ、何も付きっ切りでいろというわけでもない。世話自体はリンとシルフィーネも手伝ってくれる」


「子供の世話は大変よぉ? あんたも魔族とは言え女なんだし、子育ては覚えておいて損はないと思うけど?」


「それに、人族とはいえちょっと特殊な子なので、頑丈なお世話役が欲しかったんですよね」


「待って、子供の世話なのに頑丈って言葉が出てくるのは流石に私でもおかしいと解るわ!?」


「大丈夫だ。死にはしない。かといって子供に重大な危害を加えたら殺すがな」


「命懸けの子育て!? ま、待って、まだやると決めたわけじゃ……」


「そうなると魔王から遠のくわけだが、この絶好の機会を逃すというのか? ここだけの話、魔王の復活は確認済みだ。この情報だけでも貴様らにとっては十分な成果であろうが、魔王の居所がが解れば貴様らの悲願は達成したも同然ではないか?」


「う、うぅ……や、やりますぅ……」


 我が言うのもなんだが、こ奴、本当に組織の幹部なのであろうか? 魔族の人手不足は深刻だな。

100話目ですが特に記念とかはないです。

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