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魔道具店夢乃屋  作者: 青崎衣里
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第11話 言霊の壺・前編①

ここは魔道具専門店――――

魔道具店夢乃屋の店主となった雫川琴音は、言葉が話せる不思議な黒猫と共に、

さまざまな世界からのお客様をお迎えいたします。


しかし、時には琴音と同じ「ごく普通の現代社会」で暮らす人が

何も知らずに迷い込んでしまうこともあるようで…………



 魔道具店夢乃屋、営業三日目。


 この日は朝から少し曇っていた。

 天気予報によると、このあと次第に下り坂となり、週末には雨が降るらしい。


「明日とあさっては雨か。買い物、面倒だなぁ」


 冷蔵庫の中の食材を思い返しながら数日分の献立を考える。

「よし、今夜はクリームシチューにしよう。まだ鶏肉が残ってるし」


 私は朝食で使った皿を片づけると、そのまま野菜を切り始めた。

 ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ。ブロッコリーも入れよう。鶏肉はひと口大に切って、まずは鍋で軽く炒める。ブロッコリー以外の野菜も入れて、全体にある程度火を通したら水を注ぎ、灰汁を取りながらしばらく煮込む。


 適当なところで一旦火を止めて、下茹でしたブロッコリーと市販のルゥと牛乳を追加したら、もう一度軽く煮込んで、はい出来上がり。簡単なのにあったか美味しいシチューは冷凍保存も可能だし、次の日にアレンジして消費することもできるから、とってもありがたい一品だ。


 キッチンに漂う匂いを嗅いで、クロがしっぽを揺らしている。

「いい匂いだね」

「でしょ? これで明日は買い物に行かなくて済むよ」


 仕事終わりの夕飯も温め直せばすぐ食べられる。

「煮込み料理、最強」


 私はご機嫌で開店準備を始めた。



※  ※   ※   ※   ※



「いらっしゃ……」

 だんだん慣れてはきたものの、店のドアベルが鳴る度にまだ緊張が走る。


「待って待って」

「ホントに入るのぉ!?」


 けれども、その日の夕方、賑やかなおしゃべりと共に入ってきた客たちのようすに、私は緊張よりも戸惑いを感じて、挨拶の言葉を最後まで口にすることができなかった。


「へぇ、中はこんな感じなんだぁ」

「なんか映画のセットみたいだね。魔法使いとか出てきそう」

「それよりジブリっぽくない?」

「外から見てもなんのお店か全然わかんなかったもんね」

「…………」


 入ってきたのは五名。全員、近所の高校の制服を着た女子生徒だ。


 この店は外観だけでなく内装も洒落た欧州風なので、修学旅行でUSJに遊びにきた学生がショップではしゃいでいるような感じになるのは、まぁ無理もないかもしれない。ごく普通の現代人ならば。


(……あ、ヤバいかも)

 咄嗟にそう思った。


 この店の顧客は、ほとんどが見知らぬよその世界から訪れる人々だ。稀に、この世界に紛れて暮らしている術者や魔物の来訪もある(確かにそれっぽい人もいた)ようだけど、店主になる前の私みたいなごく普通の社会人や学生が間違って入ってくることはまずないのだという。


「大抵の一般人は無意識にここを敬遠するんだ。得体の知れない胡散臭さを感じるみたいだね」と初日の夜、クロが言っていた。

 きっと本能が何かを察知して回避するのだろう。それで大正解だ。


 また、たとえ好奇心に駆られて入ろうとしても、ある程度魔力がないと営業時間内であってもここの扉は開けられないらしい。店主である私以外は。


 ということは、つまり。


 この五人の学生たちの中に少なくとも誰か一人、強い魔力を持っている子がいるか、あるいは人に交ざってこの世界で暮らしている魔物か術者が含まれているということだ。


(つっても紛れて住み着いてるタイプだったら、わざわざ他の人間と一緒に入ってこないだろうし)

 ――――おそらくこの中に、強い魔力を保持している子がいる。自覚のないままに。




読んでくださってありがとうございます。

今回のお話は少し長いので前後編です。

続きも何卒よろしくお願いいたします。

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