真実
~立花 愛華side~
陽葵君と別れた私は一凜と八神の3人で帰っていた。
「そういや陽葵と席が隣同士だったんだってな」
陽葵君と別れた直後八神がそんなことを言ってきた。
「え? それ本当?」
驚いた様子の一凜。
「そうなんだよ〜、学校が同じだけでも凄い偶然なのに同じクラスで席が隣なんて運命的だよね」
「そう言うってことは本当なんだ。ていうか偶然とか運命的とかよくそんな嘘がつけるね」
どこか疲れた様子でいう一凛。
「嘘って何? 陽葵君と高校がたまたま一緒になったんだよ。これこそ運命的じゃない」
「よく言うぜ。陽葵の志望校を知ってそうな友人を片っ端から脅して聞き回ったくせに」
「脅したなんて人聞き悪いなぁ。私は教えてってお願いしただけだよ。ただそのお願いをする前に彼らの知られたくないであろう秘密を少し話しただけ。そしたら皆快く教えてくれたの。別々に聞いたのに皆同じ高校を答えたから間違いないって確信も得られたし」
「……はは、そうだね」
一凜は乾いた笑みで呆れたようにそう言う。
それが伝わった私はむぅと不満そうな雰囲気になる。
「私が陽葵君の志望校を知ってたことも考慮してもお互いに受かるのって結構凄いことだと思うんだけどなぁ……。でもクラスが一緒で席まで隣なんてこれは誰がどう見ても運命的だよね」
「まぁ中学3年間に引き続き、高校1年目でも同じクラスでその上席が隣同士なのは確かに運命的って言えなくもないけど、あんたのことだから何か裏を引いてるとしか思えないんだよね」
彼女は何か根拠があってそう思ったわけではないが、長年友人として接してきたが故の直感に近い感覚が裏があると警報を鳴らしていた。
そして彼も同じような感覚を感じていた。
そして奇しくも2人のそれは見事に的中していた。
「そんなことないよ~」
軽くはぐらかそうとしながら彼女はある出来事を思い出していた。
#####
「すみませ~ん、月皇高校の校長である桜井さんですよね」
私は40前後の男性に満面の笑みで話しかける。
「……そうだが」
その男性はいきなり話しかけられたからか、それとも初対面なのに名前や役職を当てられたからかは分からないが警戒した様子で答える。
「そんなに警戒しないでください。ちょっとお話ししたいだけなんで」
この言葉により一層警戒心が強まった。
いきなり初対面の人に話がしたいと言われて警戒しない馬鹿はいない。
この結果は当然だろう。
「話って?」
「えー、こんなところで話して良いんですか?」
そう言って私はスマホの画面に1枚の写真を出す。
それを見た瞬間、彼は顔色を変える。
「ど、どうしてその写真を……」
慌てた様子でそう言う男性。
その言葉の後には『持っているんだ』と続くのだろう。
「どうしてなんでしょうね? でも何故私がこれを持っているのかなんてどうでも良くないですか? 大切なのは私がこれを持っているという現実でしょう? すぐそこにカラオケボックスがあるのでそこで話しませんか?」
先ほどとは違い素直に付いてくる男性。
しかし、その顔には不安があるのが丸わかりだった。
カラオケボックスに入った私は彼に提案する。
「お互いに無駄なことに時間は使いたくないと思いますので、手っ取り早く本題に入りましょう。私今年、貴方が校長として勤めている高校を受験します。そこでやってほしいことがあるんです」
「無条件で合格させろとかいうつもりか」
「あははは、そんなの必要ないです。私は偏差値で言えば70はありますので」
私が受ける予定の高校は偏差値50前後、まず落ちることはないだろう。
「……ではなにをしろと」
「私と陽葵君を同じクラスかつ席が隣同士になるようにしてほしいんです。陽葵君っていうのは、本名春風 陽葵。私と同じく月皇高校を受ける男子中学生です。あっ! 私の合否の操作は必要ありませんけど、陽葵君の方はお願いします。といっても必要ないとは思いますけど」
陽葵君もこんなことしないでも受かるとは思う。
でも念のための保険って大切だよね。
「つ、つまり君はその子と席が隣同士になるためだけに、そんなことのためだけにこんな脅迫まがいのことをしてるのか」
校長は驚きや弱みを握られているという危機感などを一切合切忘れて、彼女のあり方に恐怖を覚えていた。
「脅迫なんて人聞きが悪いこと言わないでください。これはお願いです」
満面の笑みを浮かべながらそう言う彼女は絶世の美少女と言っても差し支えないのに恐怖の感情以外湧き出るものがなかった。
そして、その後さらなる地獄へと引きずり込まれる。
「後、そんなことだって?」
明るい雰囲気から一変して病んでるような、どこかへばり付くような人に拭えない嫌悪感を植え付けるような雰囲気へと変貌した。
「私が陽葵君と同じクラスでないとどの女が近づいてきたのかも確認できないし、隣にならなきゃ私と陽葵君との時間が減るでしょ。何より陽葵君と同じ空間にいるのに私以外の女と話している姿を見たらその売女を殺したくなるし、そんな光景を見続けるなんて拷問私には耐えられない。貴方も既婚者ならわかるよね、ねぇ」
男は恐怖で体を震えさせることしか出来なかった。
「私のお願い聞いてくれますよね?」
闇属性から光属性に戻った彼女が言う。
しかし、彼には人殺しよりもおぞましい何かに手を貸すような感じがして、二の足を踏む思いだった。
「…………断ると言ったら」
「えっ!? この写真をばらまかれても良いんですか」
そう言って私は最初に見せた写真を見せる。
そして追撃する形で写真を別のやつに切り替える。
「それに写真を1枚だけじゃないんですよ。貴方が未成年とラブホテルに入ったり出たり姿が写ったこの写真が世間に出たらどうなりますかね。良くて懲戒免職、悪ければ刑務所行きですね」
私は彼に近づき、耳元で囁く。
「こんなところで人生を不意にしたくはないでしょ」
私がそう言うと意気消沈したように暗い雰囲気になり、頭を垂れる。
「……分かった、要望通りにする」
「分かって頂けたようで幸いです。私と陽葵君のラブストーリーのためによろしくお願いします」
私は今日イチの笑みでそう答えた。
#####
そういやそんなやり取りがあったなと思う。
こんなやり取りがあったのなら運命的とは思わないのが普通だ。
しかし、彼女の思考回路は常人のそれとは一線を画していた。
校長にお願い(脅迫)して隣の席になった。
↓
校長を数ヶ月観察するだけでお願い(脅迫)材料を獲得できた。
↓
これを使って彼と隣の席になれという運命のお導き。
↓
つまり彼と隣の席になったのは運命的。
「やっぱり私が陽葵君と隣の席になったのは運命的だよ」
「本当に?」
「本当かよ、嘘くせぇな」
疑わしい目で見てくる一凜と八神。
「ほんと♪ほんと♪」
私はステップでも踏み出しそうな上機嫌さで答えた。
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