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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第5話「彼の素顔ってヤツですか?」
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01・メッセージ

秀君の悩みを聞いた次の日。

俺はつい朝からそわそわとしてしまっていた。


結局それは午前中に解消される事はなく、午後に持ち越した。その時には大分落ち着いてはいたけど、修ちゃんにはたぶんバレてて、どうしたのかは聞かれなかったけど不思議がられてはいたと思う。


とうとう放課後になって、割り振られたコースの巡回の為に修ちゃんと二人で風紀室から出て廊下を歩き出した時だ。まだ遠いが向かいの生徒会室から会長が書類を持ってやって来るのが見えた。俺はそれに内心大きく反応する。


(会長…!)


俺が朝からそわそわしていた理由。

別にする必要もないし、会長は気にしないだろうけど、俺はどうしても昨日の事を会長に報告というか、お礼が言いたくて仕方なかったのだ。


(でもタイミング悪いな…)


朝から隙を見ては何度か変装を崩して歩き回ったりはしていたんだけど、会長は生徒会室に篭りきりだったのか全然会えなかった。そして今やっと会えたと思ったら残念ながら今度は俺が変装中。内心とてつもなく話し掛けたくて仕方ないのだけど、俺はそれを表に出す事は出来なかった。


「こんにちは、会長様。風紀室に書類を届けに来たのですか?」


「…まぁな」


距離が近づいて来ると、修ちゃんがそう話し掛けた。会長は一言だけで答えて通り過ぎようとする。ちょっと素っ気ない。忙しいのかな。ついじっと見ていると、横目でチラリとこちらを見た会長と目が合った。


「…なんだよ」


「なんだ、とは?」


「見てたじゃねぇか」


「君が僕の視界に勝手に入ってきただけだろう」


「は?」


「まぁまぁ、お二人とも。仲が良いのはわかりますが、今日最初の対面でいきなりこんな廊下で戯れ合わないでくださいよ」


「戯れ合!?…ッどうしたらそう見えんだよ!」


「悪魔、貴様は相変わらず目が悪いな。くり抜いて捨てたらどうだ?」


いつものやり取り。風紀室では秀君と委員長以外には怯えられてるから、最初は楽しくても常にとなると、風紀委員二日目にして既にこの空気がちょっと恋しく感じてしまっている。


一時的とはいえ、生徒会と風紀、立ち場が違うだけでこんなにも遠いもんなんだ。二年に上がって秀君と寮の部屋が分かれた時でそれは分かってたつもりだったんだけど、改めてそう感じた。今日みたいに仕事の為に生徒会室に篭られちゃうと、会長ともこんなにも会えないもんなんだな。


「永代君?どうしたんですか」


「!」


気付けば俺の隣には修ちゃんしかいなかった。振り向くと会長が丁度風紀室に入る所で。


「何でもない。行くぞ」


(…行っちゃったか)


まぁ仕方ないよね。巡回が終わったらこの後調理室行こうかな。そこでちょっと待ってみよ。もしかしたら息抜きとかで来てくれるかもしれないし。


それにしても本当に短い邂逅だった。

いつも不意打ちで会長から声を掛けてくる事はあるのに、逆に俺が会いたいって思った時にはうまく会えないのは一体なんでなんだろうね。アレかな?これが所謂、物欲センサーってやつ。…いや違うか。ランダムなアイテムとかグッズじゃないんだから。


「なぁハル。朝からなんかそわそわしてたのって、もしかして会長に会いたかったからか?」


「……も、黙秘します」


で、やっぱり修ちゃんには気付かれてた。

そして完全にバレた!!


俺はニヤニヤしているだろう幼馴染の視線から逃れるように追い越して、ひたすら前を歩いた。


+++


巡回後。風紀委員としての今日の仕事を終えると、俺は変装を解いた状態で調理室にいた。しかし、いくら待っても会長は来ない。約束をしている訳ではないから仕方ないんだけど、ちょっと落ち込む。窓から見える空の色が薄暗くなってきた頃に、俺は良い加減寮に帰る事にした。


(ん?)


丁度校舎から出たタイミングで、ポケットに入れていた携帯が震える。確認するとそれは修ちゃんからのメッセージで、なんと今日は修ちゃんの部屋に夕飯のお呼ばれだ。最近夕飯作ってくれる頻度が高くて嬉しい。即了承の返事をした。


そして、俺はそこではっと気づいて自分自身に呆れた。


(折角会長に連絡先交換してもらえたんだから、会えなかったのならメッセージを送れば良かったんだ!)


自分の携帯に会長の連絡先が登録されているという事が嬉しすぎて、逆にそれを利用するという考えに至らなかった。まじでマヌケ過ぎる。


俺は再びそわそわが再発するが、早速文面を考えた。あまりグダグダ打っても会長が嫌がるかもだからシンプルに。


『こんばんは』


『昨日早速友達が相談してきてくれました』


『先輩が待てば良いって言ってくれたお陰で俺も心に余裕を持って話を聞けました。ありがとうございます!』


寮に帰り、修ちゃんの部屋にお邪魔してからもちょっと迷って結局そう送信した。会長の事だから、読んではくれても返事はないかもしれないけど、俺はそれでも良かった。自己満足かもだけど、兎に角会長にお礼が言いたかっただけだから。


「ハル、飯出来たから皿取ってくれるか?」


「あ、はーい」


目的は一応達成出来たからスッキリした。ルンルンとした気分でキッチンに向かうこの時の俺は、この後昨日より多い衣装に着せ替えられる事になるとは微塵も思っていなかったのである。


+++


翌朝。

ちょっと魘されて起きた。昨晩修ちゃんが自分の部屋を提供してきたのは、俺に色んなパターンの衣装を試着させる為だった。途中から俺の心は『無』だったね。だから既にあまり記憶にない。


そういえば、結局ミスコス本番に何を着る事になるのか教えて貰ってない。昨日の衣装の数からして、まだ悩んでいるのだろうか。まぁ俺は言われた衣装に着替えるだけなんだけど、本番になっていきなり際どい物を着せられない事を祈る。


(ふぁ〜。それにしても今日はちょっと早く起きちゃったな)


外がまだ薄暗い。朝に弱い俺にとってはあまり見る事のない景色だ。うむ、ここは二度寝かな。次にちゃんと起きれるかは賭けだけど。


時間を確認しようと、携帯を手に取る。明るくなった画面に、俺の指は止まった。メッセージアプリのアイコンに通知の知らせがある。


(………いやいや、まさかね。きっと修ちゃんとかだ)


来ないと思っていても、俺はやはり期待してしまっているんだ。ないないと心で否定しながらそのアイコンをタップする。


「っ…」


一瞬、これ夢かもと思った。


トーク一覧の一番上に『俺様』が来てる。

その下にメッセージの内容が出てたけど、俺はそれを読む前に咄嗟にトーク画面を開いていた。


『そうかよ』


その5分後に


『良かったな』


二つの吹き出し。俺は思わず枕に顔を埋めた。

素っ気ない返事に、その後悩んだのか時間が開いての追撃。


やばい。にやにやしてしまう。

嬉しいのと、なんだか会長が可愛すぎる。

これを打つ会長の姿を想像するだけでばたつきたくて仕方がない。


え?まじでこれ夢じゃないよね??

何度も何度も繰り返しその二つの吹き出しを読み返す。


(…もう、思い残す事もないのじゃ…)


仰向けになり、携帯を大事に胸の前に添える。幸せな気持ちで目を閉じていると、俺はそのままスヤリと自然に二度寝した。


その後何度見ても会長からのメッセージはある。俺はそれにちょっと調子に乗ってしまった。それ以降既読スルーが多くて落ち込む事もあったけど、嫌だったら会長からそう言って来るだろうと開き直って、二日に一回とか、三日に一回とかの頻度で、身近に起きた出来事とか、風景写真とかを会長とのトーク画面に送信し始めた。


その間は、変装時以外だと会長本人とは会えなかったが、たまに作ったお菓子の写真を送って「差し入れです。良かったら食べてください」と送って調理室に置いておくと次の日には必ず消えているのでまだ迷惑にはなっていないだろうと安心した。


しかし結局、それも文化祭の準備が本格的になるまでの事だった。俺も風紀委員として当日巡回の打ち合わせ会議が増えたり、生徒会のサポートとして全クラスの要望の為に動いたりと。そのせいで会長に日常のメッセージを送る余裕なんてなく、もちろんお菓子作りなんてしてる暇もなくなった。全く出来ない訳ではないが、生徒会なんて今の俺より忙しいだろうし、そんな状態の会長にメッセージを送るなんて余計に出来なかった。


忙しい毎日のせいで時間が経つのはあっという間で、気付くと文化祭の本番前日となっていた。

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