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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第4話「彼等が正義ってヤツですか?」
46/54

13・好きすぎる

「あの、例えばの話なんですけど…」


「あ?“例えば”なんて言葉使ってんじゃねぇぞ。俺は今“お前”の話を聞いてやってんだからよ」


「っ…」


(うぐっ、今のはちょっと…!)


さらっと素で言っちゃうんだもんな。

ホント、そういう所だよ!


「わ、分かりました…」


俺はぎゅっと指に力を入れて椅子の縁を掴んだ。


「ちょっと、友達の事で悩んでて…」


「………友達?」


「はい」


会長が頬杖をやめて、前屈みになって近寄ってきた。再び近付いた距離に内心慌てる。


だから、あんまり近寄らないで!挙動不審になるよ!?俺が!!


「お前に友達なんかいたのか」


「酷い!」


ドキドキを必死で抑えている俺に、会長は真顔で言った。色んな意味でショックなんだけど。


「冗談だ」


「…」


「で?その友達とやらの何に悩んでんだよ」


会長が元の体勢に戻る。俺は拗ねたように唇を尖らせながら答えた。


「友達がなんか悩んでるみたいで…」


「?」


「どうしたら…どう声を掛けたら俺に相談してきてくれるか、それで悩んでるんです」


「………………」


「……」


「………………」


「……?」


あ、あの…。

何か言って下さい。

この状況で沈黙ってちょっと辛い。


「……………………………はぁーー、くっだらねぇ!」


「えっ」


「お前、んな事でグチグチ悩んでたのかよ」


「うっ」


「…………はぁ」


あの会長が怒りもせず、呆れたように溜め息!?


「シロ」


「ッは、はい!」


再びショックを受ける俺に、しかしそんなこちらの様子に気づいた様子のない会長は、ふと窓の方を向いた。


「放っておけよ」


「…え?」


「そいつだって子供(がき)じゃねぇんだ。一人で解決くらいできんだろ」


「そ、それはっ…」


それは俺だって思ったよ。秀君は俺よりもしっかりしているし。でも、俺以外にも秀君を心配している人がいる。それに何より、秀君自身が辛そうに見えたから。だから、俺は力になりたいと思ったんだ。


俺がショボンとしている事に気付いたのだろう、会長が視線をこちらに戻しながら面倒臭そうに言い放った。


「はぁ…。だったら、待てば良いだけだろうが」


「待つ、ですか?」


「もし本当に解決できねぇってなったら、あっちからてめぇに言ってくんじゃねぇのか?無理矢理聞き出すってのが意味分かんねぇ。それは只のお節介ってやつだ。時にはありがた迷惑だぞ。…だったら後は、待つしかねぇんじゃねぇのか」


「…」


俺は会長の顔をこっそり見つめた。会長は口調通り、いかにも面倒臭そうな表情で、そんなに深くは考えずに口走ったような感じだったけれど、俺はそれでも何かストンときた感じがした。


「…えへへ」


「あ?何笑ってんだよ」


思わず笑ってしまう。

なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだろう。無理に相談を聞かなくても、話してくれるのを待つのも友達ってもんだよね。放っておくのでもなく、待つ。


「ありがとうございます。なんかストンと来ました」


「?そうかよ」


会長は怪訝顔で見返してきたけど、俺はそれでも笑顔を崩さない。


あ。


「そういえば先輩」


「…なんだよ」


俺は、視線をそらした会長の横顔に向けて聞いてみた。


「先輩のはお節介に入らないんですか?」


「は?何言…………、!」


「俺は迷惑だとは思わなかったですけどね」


「っー…」


「て、あれ?」


会長黙っちゃったな。


不思議に思ってちょっとだけ顔を覗き込もうとすると、しかしそんな俺よりも早く会長が勢い良く立ち上がった。


「それは!!」


「わっ!?」


だからいきなりはやめて!

俺はまたもや仰反って会長を見上げる。

ビシッと間近で指差された。


「てめぇが目の前でグダグダ悩んでっからだろうが!俺の前で悩むなんて百万年早ぇんだよ!俺はそれがウザかっただけだ!」


「っ……」


そのままふんっと腕を組み、見下ろしてくる。


「俺、そんなウザかったですか…」


そんな彼に、胸がギュッとなってつい苦笑いを浮かべる。他の人には何を言われても全然気にならないんだけど、会長の言葉は冗談でも、本気じゃなくても結構クるモノがあるんだよね…。


「なっ!…っあ"ぁ、クソッ!」


「えっ今度は糞ですか!?俺が!?」


「ちっげぇよ!!…お前マジ調子狂う」


「え。…それは、ありがとうございます?」


「褒めてねぇ!」


あれ?


「チッ…はぁ、チッ!おいシロ」


会長今二回も舌打ちした。


「なんですか」


「携帯寄越せ」


「へ?」


そう言って不機嫌そうに手を差し出してくる会長に俺は固まった。


何故(なにゆえ)


「早くしろよ」


「い、いや…でも、それは、あの…」


俺、またなんかヘマしちゃった感じ?

それで会長は携帯を押収して中身を探り、俺の正体を暴こうとしているとか?


俺は慌てて椅子から立ち上がり、会長から距離を取った。


「なんで離れる」


むっつりとした表情で離れた分だけ近付いてくる会長。それに混乱して後退して行ったら、背中が壁にぶつかった。タンと、顔の横に軽く片手をつかれる。


(これ、俺でも知ってる!壁ドンってやつ!)


本人は絶対思ってないし意識もしてないだろうけど、こういうの得意分野ですって感じに似合うよね!!


「チッ、一丁前に指紋認証ロック掛けてやがる」


「へ?……あっ!」


気付くと会長の手には俺の携帯が。

堂々と盗まれた!?


「先輩!流石にそれはっ…!」


「ん」


携帯を奪い返そうとする俺の手を、会長はそっと取る。俺よりも少し大きな手。長い指が俺の指を掴んだ。


「って、勝手にロック解除しようとしないでください!」


「チッ」


危なかったぁあああ。

てか今日はサービス過多過ぎない!?


俺は会長の脇を抜けて再び距離を取る。携帯も咄嗟に取り戻せた。


「はぁ、面倒くせぇな。じゃあ、てめぇが自分で操作しろ」


「え?」


ぽかんとする俺に、会長が11桁の番号を口にする。


(えっ?えっ?)


「おい、何ボケっとしてんだ。早く入れろや」


「先輩、でも、え、今の番号って…」


「…くだらねぇ事で連絡してきたらぶっ飛ばすからな」


俺の問いには答えずにそう言って背を向ける会長に、色んな衝動を抑えて必死に先程の番号を思い出す。


(っ…!っ…!)


震える手でまずアドレス帳に加える。そして、メッセージアプリを開いて番号検索を掛けた。


『俺様』


ひとつだけそう表示された名前。

会長、アプリにそう登録してるんだ。


思わず笑ってしまう。緊張が一気に解けた。


「何笑ってんだよ。さっさと何かこっちに送ってこい」


「あっ、は、はい!」


俺、会長にメッセ送っちゃうの!?

生徒会では話題に一切上がった事ないから番号交換はしていない。たぶん俺と修ちゃんを除いた彼らではしてると思うけど。


先程以上にドキドキしながら、とりあえず「よろしくお願いします」とスタンプを押した。


「お、送りました!」


「遅ぇ」


ブブッとバイブ音がして、会長の携帯に俺からのメッセージが届いた事を知らせる。俺は思わず、携帯を確認する会長の動作をじっと見つめてしまった。


「あ?なんだよ」


「あっい、いえ…」


バレた。

会長はふんっと息を吐いて再び携帯に視線を戻す。しかし、眉間に皺を寄せ、すぐにまた戻ってきた。


「つかお前…この名前」


「え」


そう言われてハッとする。

会長が『俺様』と登録してるのがこちらに表示されてるのと同じで、俺の名前もあちらに表示される。混乱とそして浮かれ過ぎてその事がすっかり抜けていた。


「あっ…」


「『チョコタルト』って正気か?」


「!」


……いや、そうだった。

俺、本名で登録してなかった。自分の名前ってあんま確認しないからすっかり忘れてた。


「『俺様』で登録してる先輩には言われたくないです」


(またもや、危なかったぁあああ!!)


「るせぇ。嫌なら適当に変えとけ」


「いえ、そのままにしときますね」


過去の俺GJ。

ちなみに、今まで誰にもツッコまれた事はない。何故に?


「……」


危機は去った。

俺はほっとして、改めて会長とのトーク画面を見る。まだ俺のスタンプしかないけど、既読の文字だけでなんだか浮かれてしまう。


「先輩、ありがとう。嬉しいです」


だから思わず本音がポロリ。顔が熱くなってきて、俺は慌てて背を向ける。


「プリン冷やしてきますっ!」


そう言ってプリンが置かれたままのテーブルに戻ろうとして、瞬間、頭を上から押さえ付けられるようにして掴まれた。


「わ!?」


何!何事!?


「…たかが番号交換したくらいで何浮かれてんだよ」


続いて聞こえた低い声に、俺はそっと頭に手を伸ばす。


会長の手がある。

今度は俺から触れた。


「たかが番号交換したくらいでも、相手によってはすげぇ嬉しいんですよ」


まだ赤いだろう俺の顔。

そのまま振り向き、微笑んだ。


「…」


会長からの返事はない。掴んだままだった会長の手を離した途端、ぐわしっと再び頭を押さえつけられる。


「ちょっ、何!?先輩痛い!痛いです!」


そして、ぐしゃぐしゃー!と激しく髪を掻き回された。このままだと禿げちゃう!そう抗議する前には解放され、痛みに涙目になった状態で睨み上げると、しかし目の前には、逆手の甲で鼻と口元を隠して顔を背ける会長の姿があって。


「っ…クッソ」


……え?


「超お手軽野郎かよ…」


待って。会長の耳…。


「マジうぜぇ…」


なんか、赤くない?


「っ…」


俺はその光景が信じられなくて言葉が出ない。

自分のせいでそんな風になっている彼。


(あ、ヤバイ…)


俺、やっぱり会長の事好きだ。


好きすぎる。

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