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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第3話「修復可能ってヤツですか?」
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07・チャンス

「それで?永代、水上、てめぇらはなんで俺に黙ってあんな約束をした?」


「仕事をサボっていた君達のせいだろう」


「……チッ、まぁそうかもな」


(あれ?)


いつもみたいに怒鳴り返してこない。


「でも君は、風紀室でのあの時、部屋の外から聞いていたんだろう?」


俺はいつもと違う会長に戸惑いながらも、ほぼ確信のある事を聞いた。あの日、委員長達と約束を交わした後、風紀室を出ようとしたら扉が少し開いている事に気付いたんだ。


今ならその理由も分かる。


会長がいたんだ。あの時、俺達が出ていくまでの数分の間。あの扉の向こうに。じゃなかったら今の会長が、自分だけの分でなく皆の分の書類や資料を持ってこられる訳がない。


「…」


でも、なんで四人に“伝える”事をしなかったんだろう。


「おい海道」


会長は答えずに、視線を委員長の方に向けた。


「海道先輩又は海道委員長と呼べ。…なんだ」


「全員揃ったぞ。資料も書類もある。約束はどうなるんだ」


「会長」


俺は首を横に振る。


会長、駄目なんだよ。


「あのなぁ。書類準備出来たからって、会議終盤の今更来たって意味ねぇだろうが。おめぇらは間に合わなかったんだよ。約束通り、二人には風紀に入ってもらう」


「あ゛ぁ"!?この会議の本題は、今後の行事についての方だろうが!それに出てれば十分じゃねぇか」


「てめぇは馬鹿か。そういう問題じゃねぇんだよ。仕事舐めんのも大概にしろよ?これはお前が、お前らが転校生の二堂楓にうつつを抜かしていやがったのがそもそも悪いんじゃねえか。どんだけ周りに迷惑掛けたか分かってねぇのか?」


「はぁ!?誰が楓にうつつを抜かしてたってんだよ。俺はあいつにそこまでの執着はねぇ!」


「!」


え?そうなの?

思わず会長に視線を戻す。


会長は気付かずに委員長を睨んでいた。しかし、俺は会長のその台詞が聞けただけで、もういいかなって気持ちになってしまった。実際、会長が転校生に向ける感情がなんなのかは分からないけど、今回は俺と修ちゃんの為に隈を作ってまで頑張ってくれた。だから俺も、会長の近くにいられなくても頑張れる。なんの根拠もないけれど。


「会長」


「あ゛あ゛!?」


呼び掛けたらそのまま睨まれた。ちょっと怖いよ?


「もう良い」


「…は?てめぇは何言って…」


「そこまでだ」


じっと真っ直ぐ瞳を見つめると、会長は目を見開き、チッと視線をそらして大人しくなった。


「悪魔」


「はい、永代君。私も構いませんよ」


修ちゃんにも確認を取ってから、俺は委員長に視線を向ける。そして、


「約束通り、僕と悪魔は風紀に入ります」


そうはっきり告げた。


「そんな!永代先輩っ」


「俺が仕事、サボったからァ?」


「俺達が、ですっ」


「永代、水上、生徒会、やめる…?」


「…俺は、んな事認めねぇからな」


俺の発言に騒ぎ出す生徒会メンバー。

俺達って思っていたより、皆に好かれていたんだ。不謹慎だけど、今はそれが嬉しかった。


「委員長様、荷物は今日中にまとめておけばよろしいでしょうか?」


「ああ、そうだな。明日には全て風紀室に運ばせるから、まとめておけ」


「はい、分かりました」


修ちゃんが早速そんな事を委員長と話している。俺は兎も角、修ちゃんは全く生徒会に未練はないのかな。


「…待てよ」


「あ?今度はなんだ結城会長」


話しは終わったとばかりに委員長がさっさと席に戻ろうとすると、さっきまで騒いでいた五人が真剣な表情で見ていた。


「頼む」


(え?)


「チャンスをくれ」


会長の台詞に他の四人が揃って頭を下げた。これには委員長も、代表達も皆驚いている。


この学園の、最もプライドの高い生徒会メンバーが頭を下げている。こんな姿見た事がないだろう。


「俺達はもう同じ過ちは犯さねぇ。てめぇらにも、もう迷惑は掛けない。だから、チャンスをくれ」


「チャンス?」


「ああ。今溜まっている仕事は永代と水上以外の俺達五人で一週間以内に終わらせる」


(え!?)


内心驚く。


五人いるとはいえ、あの量を一週間でっていうのは無理があると思う。そのくらい溜まっているのだ。会長は積まれている書類の量をちゃんと確認したのかと疑ってしまう。それに、今後は文化祭の準備も始まるから余計に忙しくなる筈だ。


「そっちから条件を出してもらっても構わねぇ。…だから」


会長が委員長の返事を待つ。委員長は何か考えているようだった。


「海道君」


厳しい表情で考え込んでいる委員長に、今まで黙って見守っていた教師の一人が声を掛けた。皆の視線が一斉にその人に向けられる。


「ああまで言ってるんです。僕は、もう一度だけチャンスをあげても良いと思いますよ」


途端に室内がざわっとした。しかし、すぐに同調するように、代表の人達からも次々と委員長に向けて発言される。


「俺達もチャンスくらい与えても良いと思います」


「俺もそう思いまーす」


「一番の被害者である副会長が許してんなら、俺達がこれ以上怒っててもダサいだけだしな」


「俺はまだ許せねぇけど、チャンスを与えるくらいは許してやっても良いぞ!」


どうやらいつもと違って素直に反省する生徒会メンバーに少し絆されたみたいだ。


「海道委員長、俺からもお願いします。結城会長達にもう一度だけチャンスを」


極めつけが秀君のすがるような声。ざわめきに紛れていたけど、俺と修ちゃんには聞き取れた。修ちゃんが興奮する気配を察知。


「っ…」


そんな秀君に、委員長がうっとたじろいだ。なんか頬が微妙に赤いかも。


「…~っだぁあああ!わーったよ!チャンスをやれば良いんだろ!?これじゃあ俺が悪者みたいじゃねぇか!」


「海道委員長っ…!」


委員長のその発言に、秀君が心底尊敬致します!と言いたげなキラキラとした瞳で見上げた。委員長はそれに少し嬉しそうにしながら会長と向き合った。


「皆が優しくて助かったな結城会長。仕方ねぇからチャンスをやる。但し、こちらからも条件を出させてもらうぜ」


「…ああ。感謝する」


会長は少しほっとしたような表情になる。それは他のメンバーも同じで。素直に感謝する会長に俺は少し驚いてしまったけど。


「で、その条件だが」


委員長はニヤリと口端を上げながら言った。


「文化祭を盛り上げろ」


「っ…!」


俺は、委員長を尊敬する秀君の気持ちが少し分かった気がする。


「ただ、約束は約束だ。正式な風紀入りは保留として、文化祭が終わるまで副会長と会計の二人には風紀委員として仕事をしてもらう。いいよな?」


周りが何故か盛り上がってくる中、委員長がそんな事を言った。


まぁ、それくらいはしないと駄目だよね。迷惑掛けまくったし。


「僕はそれで良いです」


「はい。私も良いですよ」


返事をしながら気付いたけど、さっきは自分達の事だったのに俺達何も発言しなかったな。


「結城会長達も良いよな」


「…ああ、仕方ねぇな」


「俺達、仕事も文化祭も頑張るもん☆」


「文化祭盛り上げんのは俺がやるしィ」


「陸、文化祭だけじゃなくて仕事もきちんとやってくださいね」


「頑張、る…!」


あ、なんか皆いつもの調子に戻ってる。


「では会議を再開しましょう。会長達も座れ」


俺は取り合えず、仕切るように皆に声を掛けて、会長達にも席に座るよう指示を出した。


「おい永代」


「…なんだ」


皆がガタガタと準備をしている間に会長に声を掛けられる。


「…別に今回のはてめぇの為って訳じゃねぇからな」


視線を合わせようとしないまま言われた。


「?…ああ、言われなくてもそんな事当然分かっている。そもそもこれは君達が」


「……ただ、張り合う相手がいなくなると俺が落ち着かねぇだけだ。今度は勝手な事すんなよな」


「は?」


会長は言いたい事だけ言って、ふんっと指定の席に座ってしまった。


「…」


あれ?なんか今の、


「ツンデレっぽかったな」


「っ」


耳元で修ちゃんにボソッと囁かれてビビった。いつの間に。


「良かったな」


俺だけに聞こえるように言って、ウィンクされた。


「…うん」


なんかちょっと肩の荷が下りた感じ。生徒会はもう大丈夫そうだな。でも彼等は今後、転校生との関係をどう続けていく気なんだろう。それだけが気がかりだ。


まぁ今は会議に集中しなくちゃね。


俺も席に座って、はじめに文化祭についての説明を始めた。


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