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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第3話「修復可能ってヤツですか?」
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04・会議前

「ねぇ君、一人?もし良かったらなんだけど、これから俺と一緒に遊ばない?」


俺は今、噴水の前に設置されたベンチに一人で座っていた。実はあの後、会長の携帯が鳴って会長は家に呼び戻されてしまった。どうやら勝手に途中で抜け出してきたらしく、わざわざ迎えが来て会長は機嫌悪く帰って行った。黒いベンツが俺達の前に止まった時はちょっと吃驚したよね。


「いやいや、こんな奴より俺っちと遊ぼうよぉ」


「…はぁ」


で、今。

なんか知らない人達に絡まれている。どうしてこうなった。


「つかまたおめぇかよぉ。この子は俺っちが先に目ぇ付けてたんだけど。ひっこんでくんねぇ?」


「ぁ"あ"?話し掛けたのは俺が先だろうが!」


「うわ何それうっざ。おめぇさっきまで女狙いだったじゃん。中途半端なナンパしてんなよ。ぶち殺すよ?」


「ウザイのはてめぇだ!それだってさっきからてめぇが邪魔してくるせいで逃げられてんだよ!まじ泣かすぞ!?」


「はぁ?人のせいにしないでくんね?ただおめぇがモテねぇだけだべ」


「なんだとてめぇ!それはてめぇもじゃねぇか!!」


「はぁ!?」


「あ"あ"!?」


なんか目の前で勝手に争いが始まったんだけど。まじでどうしてこうなった。


「やぁ君、はじめまして。俺、あの山浦学園の生徒なんだけど、奢るから二人でどっか行かない?」


ギャアギャア言い争う二人を眺めていると、こそこそとまた別の人が話し掛けてきた。


え、同じ山浦学園の生徒なの?こんなとこで何やってんの。そもそもなんで知らない人とどっか行かなきゃならないんだ。ほんとさっきから訳が分からない。


「いや、ごめんなさい。待ち合わせしてるんで結構です」


「待ち合わせ?」


「はい」


目を合わせないように正面を見据えたまま答える。それに相手が何か言おうとする気配を感じたけど、それを遮る声が現れた。


「俺と待ち合わせてたんだよな、ハル?」


「え?」


「あ、修ちゃん」


声の方を向くと、修ちゃんがベンチの真横に立っていた。全然気付かなかった。いつの間に…。


修ちゃんの登場に、周りで騒いでいた二人と一人が一瞬にして黙り込んで固まる。今度はどうした。


「い…」


い?


「「「イケメンなんて滅びちまえ!!!」」」


「えぇっ!?」


「あっはは!なんだあいつら」


意味不明な事を叫びながら彼等はどこかへ走り去っていく。結局何がしたかったんだ。


「ハルは罪な男だなぁ」


「え?」


「周りに綺麗な女の人結構いるのにな」


「なに、どういう意味?」


「罪作りだ…」


「…いや、もういいです」


顔は真面目でうんうん頷いてるけど、ちょっと嬉しそうな気配がするから。


「あー…それより、修ちゃん随分遅かったね。用事って何だったの?」


俺も少し時間より遅れて到着したのに、珍しく修ちゃんが来てなくてちょっと心配した。しかし修ちゃんは、大した事のないように答える。


「なんか小向兄が不良っぽい奴らに絡まれてたからよ、助けてた」


「………は?」


「だから、小向兄が絡まれてたから…」


「いや、ちゃんと聞こえてはいたよ!?」


「?そうか」


キョトンと。

変な所で鈍感にならないでよ。


それにしても、小向兄って普通に空の事だよね?緒方が来てるんだから別に空がいても可笑しくはない。可笑しくはないんだけど…。


「修ちゃん」


「ん?」


「絡まれていたのを助けてたってどういう事?空って確か会長のチームに入ってて、喧嘩強いんじゃないの?」


それが気になった。


「…ああ、それか。なんか小向兄は情報収集担当らしくて喧嘩は全く出来ないそうだ」


「…へ、へぇ。よく知ってるねぇ」


「いやぁそれがさ、俺も喧嘩出来るもんかと思って最初は陰で傍観してたんだよ。でもそん時に絡んでた不良共がニヤケながら暴露してくれたもんだからさ、仕方なく割り込んでやった」


修ちゃんにとっては笑って話せる些細な出来事だったようだ。俺は少し驚いたのに。


「後で本人にその事確認したら肯定されたしな」


「本人にも聞いちゃったんだ!?」


修ちゃん、恐ろしい子!


「で、小向兄にはものすげぇ警戒された」


「だろうね…」


「ハルとの待ち合わせもあったし、さっさとその場を去ろうとしたらな、名前を聞かれたんだ」


「…え?あ、うん」


「“情報屋なら自力で探してみろよ”って言ってみた」


携帯でブクマしてるサイトのBL小説で見た台詞なんだけどよ、一回言ってみたかったんだ。そう言って笑う修ちゃんに、俺の方は乾いた笑いしか返せなかった。楽しんでいるようで何よりだよ…。それで正体がバレないといいけど。


取り敢えず俺達はそこでこの話題は終わりにして、残った時間をエンジョイする事に戻った。服を見たり、アクセを見たり、本屋へ寄ったり。映画も見て、十分楽しんでから帰りのバスに乗った。明日もまだ休みだけど、俺達は仕事を再開しなくてはいけない。そして明後日の会議に挑む。そこで今後の俺達の居場所が決まるんだ。


俺は会長達を信じてる。


「「ただいまー」」


「うわっ」


「お、お帰り!」


帰ったら管理人室に寄るように言われていたから約束通り寄ってみると、扉を開いたすぐ目の前で、キスを交わす新さんと公さんが立っていて、俺は思わず固まった。隣の修ちゃんは大興奮だ。


「っ…っ…」


頬とか手とかじゃなくて、唇同士を重ねるキスを生で見るのは生まれて初めての事だった。


+++


ピピピピ…


「んっ…」


朝、目覚ましの音で目が覚める。

昨日は仕事のノルマがなかなか終わらず、遅くまで起きていた為ものすごく眠い。


「とうとう今日かぁ…」


今日は約束の会議の日だ。

授業が全て終了後、会議室に全委員会代表と数人の教師陣が集合する事になっている。そこで俺と修ちゃん以外の生徒会役員全員が集まらなければ、俺達は風紀に入る事となる。


ある意味、運命の日だ。


会長の側にいられなくなるかもしれない。


「あ…」


ボーとしながらベッドを降りようとすると、右手に何かを握りしめている。開くと、一昨日買ったばかりの目覚まし時計のダーツの方だった。なんかネジとか飛び出てる。ちゃんと起きれるように、夜目覚ましを二つセットしていたんだけど、一つがこうしてお亡くなりになった。ちなみに昨日も左手で握っていた。あと一つしか生き残っていない。


飛んで行く機能…駄目じゃん。


顔などを洗い、着替える。ネクタイをシュッと締めて、髪をワックスで整えた。忘れずにコンタクトも装着してから眼鏡を掛ける。


副会長の永代春斗の完成だ。


「さて…」


スッと表情を無くす。幼い頃、修ちゃん達と出会う前の俺の表情。笑い方が分からなかった。頭では色々思っていても、それは表に出る事はなかった。話す事もなんだか面倒で、あの頃は無口無表情な子供だった。そんな俺が今の俺になれたのはやっぱり、修ちゃんとあの人のお陰だな。


「…って、余計な事考えてないで出るか」


文化祭にあの人が来るっていうから、なんか思い出しちゃった。今はそれより会議の事を考えなくちゃいけないのに。


空、陸、緒方、久山、そして――、


「…会長」


俺、本当に信じているんだよ?


「おはようございます、永代君」


生徒会室に行こうと廊下を歩いていると、後ろから修ちゃんに挨拶をされた。


「…悪魔か。何の用だ」


俺はすぐ様そう返す。登校時間で賑わっていたその場が、途端にシンと静まり返ってしまった。


「おやおや。永代君は挨拶も出来ないような愚かな人間なのでしょうか?」


「はっ!何を言っているんだ。貴様なんぞに僕が挨拶する義理はないだろう」


「ふふふ。挨拶に義理も何もないかと思いますが」


「貴様には、僕がわざわざ挨拶を返す価値などないと言っているんだ。そんな事さえも通じなかったのか、愚か者」


お互いナチュラルにブリザードを背負っていると、どこからかヒィーという悲鳴が聞こえた気がする。


「おやおや。私に向かって愚か者、ですか。……まぁ、いいでしょう。今日の私は優しいので見逃してあげますよ。ところで永代君、今から生徒会室に行かれるのですか?」


俺的にはもう少し続けても良かったけど、修ちゃんが爽やかな笑みを浮かべながら話題をかえてきたのでそれに乗る。でも、修ちゃんの質問に内心首を傾げた。なんでそんな事聞くんだろう。修ちゃんも今日は朝から生徒会室に行くって昨日言ってたのに。


「そうだが、それがどうした」


「ふふふ」


(?修ちゃん…?)


「なんだ」


「いや、なんでもないですよ。…ただ、今日の会議で生徒会役員が全員揃わなければ、とうとう私と永代君は明日から生徒会室ではなく風紀室の住人になるのだと思うと、なかなか感慨深くなりましてねぇ」


「!」


何を言い出すんだこんなところで。それを今、こんな人の多い廊下で言ったら…!


『え?今のどういう事?』


『永代様と水上様が…?』


予想通り、ざわりと騒がしくなる廊下。


「悪魔」


「なんでしょう、永代君?」


俺が咎めるように見つめると、修ちゃんには会計の微笑みで返された。


「…これは、ルール違反じゃないのか」


「はい?何がですか。私は永代君とお話しをしていただけですけど。おや何やら周りが騒がしいですねぇ。どうしたのでしょう」


「…」


とぼけた物言いに俺は考える。これは、何か考えがあるっぽいな。


(…仕方ない)


それじゃあ俺も、乗らなきゃいけないよね。


「…ふん、相変わらずの腹黒め。僕らの周りが騒がしいのはいつもの事だろう。そもそも貴様に、感慨深くなる程の思い入れがあったなんて初耳だな。僕は別にどちらでもいい。生徒会だろうと風紀だろうと関係ない。僕は何も変わらない」


「そうですか。…ふふ、いや、そうですね」


俺と修ちゃんは、自分達の発言でいつも以上に騒がしくなった廊下を放置して、生徒会室に向かって歩みを再開させた。


噂が広まるのは早いだろう。

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