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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第2話「恋のライバルってヤツですか?」
24/54

11・割り込み

「あの…先輩?」


ブンブン手を振ってみるが離れない。


「俺がなんで年下のお前に追い出されなきゃなんねぇんだよ。俺を誰だと思ってんだ。…つー事でお前も来い」


「へ?」


「おら、モタモタすんな」


「えっ!?わっ、ちょ待っ…先輩!?」


引っ張られる!

なんで?なんでー?


「お、俺っ!まだ用事がありますから!ね!?」


このまま一緒に寮までってなったら部屋でバレちゃう。


「あ?用事ってなんだよ」


「え?あ、ほら!後片付け…とか!」


「俺には十分片付いているように見えるけどな」


「あ」


そうだ。会長が寝てる間に済ませてたんだ。


「それともなんだ?俺と一緒だと都合悪い事でもあんのか?」


ギクリ!


「え、いやぁ…そんな事は…」


「なら行くぞ。荷物纏めてさっさと来い」


「あはは、…はぁい」


一緒に帰れるのは確かに嬉しいけど、会長一人で帰ればいいのに。


+++


「あ、あのー」


「あ?」


真っ赤になった空の下。電灯があるとはいえ周囲は薄暗い。その中を会長と一緒に寮に向かって歩いて行く。


『あ、見て見て!結城会長だよ!いつ見ても素敵!』


『こっち向いて下さらないかなぁ』


うー。いつもの事だけど、会長がモテている。


やっぱり会長と一緒だと目立つな。副会長時の俺もそうだけど、今の姿だともしかして俺、結構やばいのでは?


『あれ?隣の…』


『あんな子学園にいたっけ?』


『ちょっと、格好良くない?』


『え?どっちかというと可愛い、じゃない?』


『絵になるー』


なんかざわざわしてる。声が混ざり合ってうまく拾えなかった。俺の事話してたのかな。絶対そうだよね?制裁の話し合いだったりしたら怖いんだけど。


「おい」


「わっ」


急にぐいっと腕を引かれた。思わず会長の胸にダイブする。


「!?」


『きゃ~っ!』


「っ~…!」


うわ、やばい。顔が熱い。


慌てて会長から離れる。

何故か周りの生徒たちがうっとりとした表情をしているけど、それ所ではない。


「急になんですか!?」


取り合えず落ち着こう。暗くてよかった。顔が赤いの気付かれてないよね?


「は?てめぇが話し掛けておいて黙り込むからだろうが」


「っ…あ。そ、そうでしたね、すみません。…その、手を」


「手?」


「もう逃げませんので離してください…です」


そうだ。さっきはそれが気になって声を掛けたんだった。ここまで会長と手を繋いできちゃったよ俺。まぁ繋ぐというか掴まれて、だけど。それでも恥ずかしすぎる。


「…チッ、仕方ねぇ「あっー!!!」…あ゛あ゛?」


会長がそっと手を離した瞬間。校舎側から会長の声に被さって大きな声がした。なんか聞き覚えがあるぞ。


「比呂じゃん!!」


「楓か」


はい、やっぱり転校生でした。相変わらず声が大きい。風紀委員長には一週間謹慎って言われてたけど、あの時の態度からして守ってないねこれ。


『あのオタクまた!』


『この前、会長様んとこの親衛隊に呼び出されたんでしょ?』


『それなのにまだ付きまとってるなんて図々しい奴!』


転校生の登場で、周りの空気が一気に不穏になった。自分に向けられてる訳じゃないのにこれはちょっと嫌だな、と思う。


基本的に俺は、親衛隊の子達は嫌いじゃない。過激な制裁は駄目だと思うけど、彼らは一生懸命だからだ。親衛隊対象に対してのあの可愛い顔が、嫉妬で歪む所はやっぱりあまり見たくないものだ。


「比呂っ!今までどこで何してたんだよ!俺探してたんだぞ!!」


「あ?悪ぃな。ちょっと野暮用だ。楓には関係ねぇ事だし言う必要はねぇだろ」


「なっ!友達に隠し事はいけないんだぞ!」


「?」


あれ。転校生ってば、数日の間になんか変わった?


髪と眼鏡でよく見えないけど、何処と無く会長に上目使いで話しているように見える。声もなんかちょっと甘いっていうか。転校生って、こんなにも媚びた感じのする子だったっけ。


「!」


って、ちょっと!?なんか近くない!?

なんで腕にぎゅっと抱き着いてるの!?


「っ…」


「あ!誰だお前!」


「へ?」


軽くショックを受けていると、転校生が俺を指差してきた。思わず間抜けな声が出る。


「お、俺?」


「お前以外に誰がいんだよ!」


わお。転校生と初めての、素での会話だ。


「周りにたくさん人いるし」


「周りなんて関係ねぇだろ!俺はお前に話し掛けてんだよっ!」


「えー…」


俺以外に誰がいるか聞かれたから答えただけなのに…。転校生てちゃんと人の話聞いてるのかな。


「もしかしてお前、比呂の友達か!?名前は!?」


「えー…」


「俺は一年の二堂楓!楓でいいぜ!」


「えー…」


「お前も見たとこ一年だよな?寮の部屋番号教えろよ!仕方ねぇから俺も友達になってやるよ!」


「えー…」


「お前さっきから『えー』しか言わないな!俺が折角話し掛けてやってんだからちゃんと返せよ!」


「うわぁ…」


転校生、マシンガンが過ぎる。あと上から目線じゃない?途中からまともに聞くのやめてしまったよ。


「楓、こいつはシロ。最近会ったばっかの生意気な後輩だ」


「…」


“生意気な後輩”か…。

会長にとって今の俺はそういう存在なんだな。


「シロ!?それ苗字か?名前なのか!?フルネームはなんて言うんだよ!比呂に紹介させてないで自己紹介くらいしろよ!」


「シが苗字でロが名前で良いよ」


「なっ、ふざけんな!俺を馬鹿にしてんのか!!」


「ん~?」


ちょっとしちゃったかも。


「んーってなんだよ!そういう態度が駄目っ……て、比呂それなんだ?」


「!」


えー…。

今さっきまで俺に怒っていたかと思ったら、転校生の意識はいつのまにか会長の手元に移っていた。一度、転校生の思考回路が見てみたい。


「あっ隠すなよ!その袋、何が入ってんだ!?」


「…」


会長の手元。

すなわち、俺が会長にあげた、お土産のプリンの事だね。


「なんでも良いだろ」


「なんだよ!教えてくれても良いだろ!」


会長が転校生と目を合わせないようにしている。俺も最近気付いたばっかだけど、もしかして会長ってば、自分が甘党なの隠してるつもりなのかな。


「おっ!プリンじゃん!しかもこんなにいっぱい!もしかして俺にくれるつもりで!?」


「「は?」」


珍しく会長と声が重なった。


「俺が甘い物好きっていつから気付いてたんだ!?比呂は甘いの苦手そうなのにわざわざ俺の為にこんなサプライズ…ありがとな!」


「っ…!」


「あ」


転校生は一人嬉しそうに、会長からプリンの入った袋を奪い取った。


その瞬間、会長がはっと、焦ったようなショックを受けたような表情をした。俺はそんな表情の変化に、つい転校生に対して殺意を覚えた。


「ねぇ、転校生君」


気付くと転校生に話し掛けていた。

自分の発した声が思った以上に冷たくて、少し驚く。周りには他の生徒達もいるし、気を付けなきゃ。


一度小さく息を吐いて、転校生を見下ろす。意識して笑顔で。


「それね、俺が先輩にあげたんだよ」


目は見えないけど、眼鏡の奥を真っ直ぐ見つめるようにして転校生に言う。しかし、彼には意味のない事だった。


「転校生君ってなんだよ!俺達友達だろ!そんな呼び方やめろよな!」


「あはは、あのねー…」


少しは話を聞いほしい。あと、俺はいつ君と友達になったんだ。


「俺の事は楓って呼べよ!さっきそう言っただろ!」


「えっ?あー…わかったわかった。それでね、カナデ君」


「ちげぇよっ!楓だって!!」


「はいはいごめんね、イエデ君」


「ッ楓だって言ってんだろ!!謝れ!!」


「…ごめんねって言ったよ?」


もう名前の話は良いでしょ。それよりも会長にあげたプリンの件で言わせてほしい。


会長、さっきから黙ったままだから。そいで転校生の手元のプリン、ガン見してるから。


「シロ!友達なのに名前も覚えられないなんて、お前最低だな!!つか、それわざとじゃねぇの!?」


「あー…」


転校生の大きな声に、なんか頭がズキズキしてきたよ。そして、まじごめん。たぶんここまでして名前覚えないのは、わざとというか、覚えたくないからなのかも。


「!」


そんな時、パッと頭に名案が浮かんだ。これで名前についての話題を終わらせられる。


「ねぇねぇ!友達ならあだ名を付けても良いよね?だから君の事はこれから『王道君』って呼ぶよ!」


「はぁ!?オウドウ!?」


「うん、王道君。転校生君って呼び名が嫌ならこれしかないね!いつも修ちゃんがそう呼んでるし、俺も覚えやすい」


うんうん、良い案だと思う。

修ちゃんよ、ありがとう。


「待てよ!なんでオウドウなんだよ!どういう意味だ!?あと、修ちゃんって誰だよ!?」


「え?修ちゃんの事知らないとか…」


生徒会室でよく会ってたじゃない…って、あれは悪魔バージョンだった。


「知る訳ないだろ!誰だよ修ちゃんって!シロの友達か!?紹介しろよな!」


「えー。そもそも修ちゃんを知らないとか、おっくれってるー。修ちゃんはすごい男だよ。格好良いし、最近は何に関しても萌やしてるし萌えてるから」


「は!?燃やす?燃えてる!?」


「喧嘩も強いし、学園ではいつも仮面被ってて本当にすごいんだから」


通じないのは分かってるけど、いつも秘密にしてる分、つい修ちゃんの自慢話をしてしまった。


「学園で仮面なんて被ってんのか!?可笑しな奴だな!それ違反だろ?」


「え?違うでしょ」


風紀を取り締まる、風紀委員に誘われたくらいだし。ていうか転校生、違反とかそういうのに関しては君に言われたくはないと思う。


「兎に角!転校生君の事はこれから王道君って呼びます。はい決定!反論は認めませーん」


「なっ…!」


「それにね王道君。“王道”ってすっごく格好良い渾名ベスト10に入るくらい人気な渾名なんだよ?」


「…へ?格好良い?」


「うん。だって王様の王が入ってるんだよ?王様のように、下の者…つまり周りの人間を正しい道へと導くような人間。それが王道なんだよ。…それとも転校生君の方が良かった?」


正直なんか転校生の相手がだんだん面倒臭くなってきたんだ。今すっごい適当な事言ってる。


「いや!王道君で良いぞ!格好良い渾名付けてくれてありがとな!シロ、お前意外と良い奴だな!」


わぉ。まじで信じちゃった?

君が良いなら良いけど。


「じゃあ、王道君。俺の話聞いてくれる?」


「ん!?なんだよ話って!」


ほんと元気だね。大分俺も気持ちが落ち着いてきた。周りの生徒達に目を向ける。


何となく、へらっと笑い掛けると、きゃあっと嬉しそうにされた。


あれ?俺って意外と素でも大丈夫そう。


「だからね、王道君が今持ってるプリンなんだけど」


「は!?これは俺が比呂にもらったんだ!あげないぞ!?」


「…ううん。だからね、そのプリンは俺が先輩にあげたものなんだよ」


今度こそちゃんと聞いてほしいな。


「は!?何言ってんだシロ!」


「だから、俺が先輩に」


「シロも比呂の親衛隊の仲間だったのか!?」


「「は?」」


あ、会長が復活した。そしてまた声が重なる。


「やめろよシロ!比呂は甘いものが苦手なんだ!それなのに“無理矢理”押し付けるなんて最低だ!」


「いや、楓…俺は別に」


会長ファイト!

転校生に会長の事を知られたくはないけど、今回ばかりは人質(プリン)の為に頑張って。


しかし、俺の想いと会長の気持ちは転校生に伝わる事はなかった。


「比呂、安心しろよなっ!俺が代わりに食べてやるから!」


転校生はそう言って、ガサガサと袋の中を漁り始めた。

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