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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第0話「自己紹介は必要ですか?」
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02・生徒会

「たっだいまぁ☆あれぇ?永代先輩ひとりですかぁ?」


「…ただ、いま」


「只今戻りました」


「ハルハル~今戻ったよォ」


ぞろぞろと元気良く入室してくる。彼らを上から順番に紹介していくとしよう。


まず、一番にキャピキャピと入って来た彼は、一見美少女と見違ってしまう程に可愛らしい顔立ちをしている生徒会補佐の緒方真輝(おがたまき)。後輩で一年生だ。そして次に、喋りがたどたどしい青年が書記の久山陽介(くやまようすけ)。修ちゃん曰く“ワンコ”らしい。俺達と同年の二年生。で、残りの二人が俺が転校生の案内役をお願いした双子の小向空(こむかいそら)(りく)。お兄ちゃんの空が会計補佐で弟の陸が書記補佐だ。二人共一年生で、顔はそっくりだけど雰囲気は全く違う。空は大人しめで口調も丁寧だけど、陸は少しチャラ付いている。先輩である俺達の事も渾名で呼んで来るくらいにはチャラ付いている。


「おかえり。残念ながら僕ひとりではないよ。会計の悪魔が給湯室にいる」


そして、これが学園内での俺のキャラだ。常に無表情に近く、口調も冷たいので氷の優等生などと呼ばれている。会計の修ちゃんとは犬猿の仲設定だ。


「う、うわわわわぁ☆相変わらず仲悪そうですね先輩方…」


「僕としてはこれでも仲良くしてやっているつもりだけど?」


「ハルハル、それってば全然そうは見えないよォ」


「言葉に刺を感じますしね」


「フン、そんな事より。空と陸、転校生の案内役ご苦労だったね。本当は僕が行ければ良かったのだけれど」


「うーうん!俺すっげぇ楽しかったから良いよォ!むしろ案内役で良かった!みたいなァ」


「陸の言う通りです。俺も久々に楽しかったです」


「…へぇ」


そう簡単に他人へ心を開かない空が思い出すように微笑んだ。これは何かあったかな。でも俺としては聞く程には興味が湧かなかったので話しはここまでにした。


「あ!クッキーだぁ☆」


「俺これ知ってるゥ!ラウンドグシャーってやつ!」


いや、名前間違ってるから。

早速休憩スペースのテーブルに置かれた差し入れに気付いたらしい緒方と小向兄弟は、キラキラと目を輝かせ嬉しそうにそちらに行ってしまった。ラングドシャ結構好評みたいで良かった。


「永代、転校生、何?」


後輩達の様子に内心和んでいた俺に久山がおずおずと片言のように聞いてくる。


「ああ、実は朝一に僕だけ理事長室に呼ばれてね。転校生が来ると急遽知らされたんだ。生徒会から一人案内役をと頼まれたんだが、僕はちょっと他の用事で忙しかったから代わりに空と陸にお願いしたんだ。急だしこんな季節外れな転校生だ、噂はすぐに回ってくると思うよ」


「ん…そ…ありがと」


「どう致しまして。もっと詳しく知りたいのなら、直接会った空と陸に聞いてみるといいよ」


「ん…聞いてみる」


眼鏡を押し上げて告げると、久山は素直に双子の元に歩いて行った。うん、良きかな良きかな。ちなみにラングドシャは久山にも好評のようだった。


「永代ぉおお!!」


突然、明るい会話のBGMと和やかな空気をぶち壊したのはそんな怒声だった。まるで借金取りのヤクザが乗り込んできたかのような勢いで扉が開き、さっきまで楽しそうに喋っていた後輩達が思わず固まってしまっている。俺はその原因である人物を一瞥すると、パソコンに視線を戻した。


「おッめぇを呼ンでんだよ、永代!」


ドスドスと足音を立てるようにして、一直線にこちらにやって来る。そして人の机に苛立った様子で乱暴に手を着いてきた。


「…はぁ。そんな大きな声を出さなくても聞こえているんだけど?」


「だったら返事しろ!」


「そのまま用件を言えば良かったじゃないか」


「俺様に呼ばれたら必ず返事するのがこの学園の…いや、この世のルールなんだよ!」


「あー…はいはい、ワカリマシタ。何様俺様結城様。何か私めにご用でしょうか?…これでいいか?」


「っバカにしてんだろッ!!」


はい。ご紹介しよう。

来て早々ご立腹な様子で俺に対して俺様態度のこのお方こそ、生徒会の大黒柱にして学園内では理事長の次くらいに偉いとされている、結城比呂(ゆうきひろ)生徒会長様だ。それ拍手拍手。


「何やら騒がしいですねぇ。…おや、猿の縄張り争いの如くキーキー煩いと思えば、生徒会長様でしたか。いつの間にお戻りに?」


ガミガミと突っかかってくる会長をどう静めようかと考えている間に、給湯室にこもっていた筈の修ちゃんが会長の背後に笑顔で立っていた。流石だ。演技中の修ちゃんは爽やか笑顔なのに黒さを見せつけてくる。


「ゔ…誰が猿だ」


ガクンと項垂れる会長も修ちゃんには弱いと思う。俺も冷酷とか言われる事あるけど、悪魔には勝てませんわ。毒舌内容とか言葉のレパートリーの多い修ちゃんとの演技での言い合いでは、俺も手加減してもらってるし。


「で、結局君は僕に何を言いたかったんだ?」


「…くそっ。そうだよ、永代てめぇ。仕事する時は生徒会室にいろっていつも言ってんだろうが。毎度毎度気づくといなくなりやがって…それでも副会長かよ」


「フン、外部に漏れてはいけないものは持ち出していないし、ここでは煩く突っかかってくる誰かさんがいて集中できないんだよ。それくらい察してくれてると思っていたんだけど、君に期待した僕が馬鹿だったみたいだね」


「こ、こんの…」


「…ま。これからは気をつけるさ」


「……あ?」


「なんだい、その顔は。別に君の言葉に従う訳じゃないから。勘違いするなよ。どうせ文化祭も近いし、今後は場所を移動する余裕さえなくなるくらいに忙しくなるだろうからね。生徒会役員全員が揃わないとできないような案件も発生してくると思うから仕方なくだよ」


「…ッチ!分かってンなら良いんだよ。ふんっ」


俺の言葉に会長はドスッと自分の椅子に座った。


「今のってぇ、流行りのツンデレ☆ってやつかなぁ?」


「でも今の副会長の表情に一切のデレも感じられませんでしたけど…」


「目、冷たかった…」


「ツンドラって感じィ」


テーブルの方から四人のそんな会話が聞こえてきたけど、俺は聞かなかった事にした。


それよりも修ちゃんがトリップしているような気がする。どこに萌えを見出したのかは知らないけど、俺と会長で変な妄想だけはやめてね?


その後、全員で協力して仕事に取り組み終わらせた。ワイワイおしゃべりしながら帰り支度を始める。テーブルを片付ける際、会長が空の皿に気づき、ハッとしてショックを受けているような様子が印象的だった。鍵を閉める会長の背中がなんだか哀愁漂っていてみんな不思議そうだ。


個性豊かなメンバー。仕事は楽ではないけれど、それなりに楽しくやっていた。


そう。

これが俺たちの日常だったのにーーーー。

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