06・風紀委員長と副委員長
「そこに隠れて何をしていた」
「!」
俺の姿を確認すると、委員長が冷静に聞いてくる。そして、その隣では副委員長がぎょっと目を見開いていた。
「ちょっと騒がしかったので何事かなぁっと、ただの野次馬ってやつですよ」
「お前、校則のネクタイはどうした」
「え?あ。何処でしょう…」
確か生徒会室で仕事してる時はつけていた。だからきっと出る時に外してそのまま生徒会室に忘れて来ちゃったのかも。
「きっと教室です」
まぁ正直に答える訳がないんだけど。
「何年だ」
「一年です」
これも嘘ですが。
副委員長が呆れた視線を向けてくる。
「その猫はなんだ?学生はペット禁止だぞ」
「俺のペットじゃないです。でも癒し友達ではありますね」
「はぁ…まぁ、いい。お前も風紀室に来てもらおうか」
えっ、何で?
俺はこれから生徒会室に戻らないといけないから遠慮したいんだけど。
「委員長」
「ん、どうした梅木」
そう思っていると今まで黙っていた副委員長が委員長に声を掛けた。
「今回だけは見逃してやってくれませんか?もう放課後ですし、ネクタイくらい良いでしょう。それに今は転校生と会長親衛隊の方を優先しなくては」
お、いいね!
そのまま説得をお願いします。
「妙に庇うじゃねぇか」
「…彼とは知り合いなんです」
委員長の疑問に副委員長は苦笑して答えた。彼は見た目が強面な不良みたいなのに、敬語だし真面目なのでギャップを感じる。修ちゃん曰く、そこが良い。らしい。
「梅木先輩、久し振り〜」
本当は秀君って呼んでいるのだけど、今は委員長の前だ。我慢我慢。
さて、もうお気付きかと思うけど。
この梅木秀吉は以前、内非常階段でメッセージのやり取りをした俺の元同室者だ。風紀の副委員長様で、俺と似た立場にいる。俺が生徒会の副会長で、秀君が風紀の副委員長。去年はお互いそんな役職につくなんて思ってもみなかったね。
「…おい梅木」
「はい」
「こいつがお前の知り合いだからって、俺がそれで許すと思っているのか?」
うわぁ。委員長、こわっ!
でも流石だ。風紀の長になるだけの強さと男らしさを持ち合わせているんだね。少し憧れるかもしれない。
「…委員長。そう、ですよね…」
「!」
あ、秀君少し落ち込んじゃった。これ言うと失礼だけど、秀君て結構ガラ悪い顔してるのに、すっごく友人想いで優しい青年なんだよね。俺は身を持ってそれを知っている。なんだか俺なんかの為に逆に申し訳なかったかな。
「…」
仕方ない。
風紀室に寄って行く位いいかな。修ちゃんだって許してくれる。
「あの…」
「っ…ま、まぁ?今回は確かに梅木の言うことにも一理あるかもしれねぇがなぁッ!」
「「へ?」」
て、あれ?
なんだろ。急に委員長の態度が激変した。なんだか焦っているような。さっきまでの強気オーラのお方は何処へ?
「委員長?」
「っ…う、梅木。今回はこいつを見逃してやっても良いぞ」
「ほ、本当ですか委員長!」
「っ……お、おう!」
キラキラとした瞳で見上げる秀君。そして、そんな秀君を見て、顔を若干赤らめる委員長。
ん?どういう展開?よく分からないんだけど。
俺は結局、風紀室には行かなくて済んだって事でいいのかな。
「あれ?どうかしましたか委員長。顔が赤いですけど…」
「!な、なんでもねぇぞっ。それより早く風紀室に戻ろうぜ!」
「?はい。…あ、ハルっち。またな」
「うん。ありがとね、秀君」
「その呼び方はやめろって」
さっさと行ってしまった委員長を、笑いながらも追い掛けて行く秀君を見送ってから、俺も生徒会室に戻る事にする。
ずっと足元で甘えていたバニラをひと撫ですると、手を振ってそのまま校舎に入っていく。バニラも自分は校舎に入っては行けないと分かっているらしく、仲間の元へ素直に戻っていった。
+++
「お、ハル。やっと戻って来たか」
「うん。遅くなってごめんね。皆、まだ来てないの?」
髪型を整えたりして生徒会室に戻って来ると、なんと放課後だというのに未だに修ちゃんしかいなかった。見た目腹黒会計だけど普通に砕けた口調で話し掛けてくる。俺も自分の席に行き、机の上に放置されていたネクタイを身につけながら返事を返す。
「あー…。一度みんな来たんだけどな?なんか王道君が会長の親衛隊に呼び出されたって平ぼ…じゃねぇや。山下君て覚えてるか?王道君の隣の席って事で懐かれちまった脇役受け…じゃなくて親友。彼が慌てて言いに来てさ。キタコレ呼び出し!とか思って校舎裏見に行こうとしたら、今度は乱闘起こして親衛隊の子達と風紀室に連れてかれたって情報が入ってきてな。あいつら慌てて風紀室に行っちまった」
「へぇ…」
山下君て本当良い子だね。結構転校生に迷惑掛けられているのに。
「それで、修ちゃんは風紀室に行かなくて良かったの?そういうのを見るのが好きなんでしょ?」
いつも萌えーって見てるのに。
「あ?何言ってんだよ。俺はお前が戻ってくるのを待ってたんだよ」
「え?」
思わず、こてんと首を傾げる。すると修ちゃんが急に真顔になった。
「会長×ハル、恋人設定。ハルは不思議そうに首を傾げて会長を見上げた。身長差のある二人。それは必然的に上目遣いになる。会長は思わず唾を飲み込み、少し強引にハルを引き寄せ、唇に齧り付くようにっ…て、しゃぁあっ!萌える!!」
いきなり何!?
怖いよ!?
「修ちゃん!?」
「っと悪い。違う次元に行ってた」
違う“次元”??
「俺がお前を待っていたのは正直、副会長のお前が混ざった方が面白そうだったからだな」
「しゅ、修ちゃん…」
「と、言う事で」
にやりと笑い。
「一緒に風紀室行かねぇ?」
「…」
えー…どうしようかな。俺さっき秀君と会って別れてきたばかりなんだよね。
「…行かないのか?」
「だって俺、特に行く理由が…」
「また会長と王道君の距離が縮んでたらどうしような」
「修ちゃん早く行こう」
「ハル…!」
なんか親指立てられた。




