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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第2話「恋のライバルってヤツですか?」
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04・居ぬ間の出来事

再生された映像には部屋の隅から撮ったであろう休憩スペースが映っていた。生徒会メンバーと転校生とそのお友達二人がソファーに座っている。


『あっ、修二先輩ありがと!』


そこに修ちゃんが、お茶を乗せたおぼんを持って現れる。真ん中のテーブルに置き、みんなに配っていく。転校生が唯一お礼を言うが、誰かが手伝ったりとかはない。


『どういたしまして…楓君』


この部屋にいる人数分のお茶を一人で用意するのは大変だ。それでも修ちゃんはそれを感じさせないいつもの笑みを浮かべていて、さすがだなって思う。ただ、一瞬王道君とか言いそうになったなとは気付いた。


『…今度…俺、淹れる』


と、そこで久山が何故かそんな発言を。修ちゃんが転校生にお礼を言われているのを見たからかな。


『あ、駄目ぇ!今度は俺が淹れるのぉ!久山先輩はいつも通り寝てていいからね☆』


『む…。俺、いつもは…寝て、ない…』


緒方と久山が可愛らしい喧嘩を始めた。そんな事競い合うくらいなら、最初から修ちゃんを手伝ってあげたら良かったんじゃないかな。


イケメン二人は気まずそうに大人しくしており、小向兄弟はその喧嘩に参加する事なく、仲良くお喋りしながらお菓子を食べていて、俺はそのお菓子がなんなのか一瞬意識がそちらに向いた。それでも、修ちゃんが空いている席に座ったなっと思った瞬間、


『ああっだからもう!しつけぇって言ってんだろ!!このバ会長が!!』


いきなり転校生が大声を出した。驚きにみんなの視線が転校生と会長に向く。もちろん、俺も。


『なんだとバ楓が。お前がさっさと吐けば俺もしつこくはしねぇんだよ』


そのまま転校生と会長の言い争いが始まる。


『だ、だからそれはっ…!いや、てかさっきから俺の事勝手に名前で呼ぶなよな!』


「今日の、お前が言うなスレはここですか?」


思わず画面に向かって突っ込んだ。


「それな」


修ちゃんがすぐに同意してくれる。


『あ?俺が名前を呼んでやるなんて滅多にないんだぜ、有り難く思えよな』


会長は会長で俺様発言だなぁ。


『いい加減知ってる事吐けよ。そうやって勿体ぶるのは、俺に構ってほしいからか?』


揶揄うようにそう言って、ソファーの上で距離をつめ、顎に手を伸ばす会長。あっと思っても映像相手には何も出来ず。


『ふざけんなっ!!』


『わ!?』


『楓ちゃん!?』


『会長!』


モニターの映像がズームバックされる。テーブルの上のものが飛び散り、ソファーが大きくズレ、机の上の書類やらも散乱していた。


今、転校生は会長を殴り飛ばしたのだ。


「…」


「ハル、落ち着け。これは映像だ」


分かってる。俺はちらりと修ちゃんを見てから再びモニターに視線を戻した。


『ホント、自己中な男だな!それでも良いとこの坊っちゃんかよ!そんな態度、社会に出たら通用しねぇんだからな!」


説教が始まった。でも自己中は転校生にも少し当て嵌まると思う。


会長が殴られた頬に触れながら転校生を見上げる。やり返さず、怒鳴りもせず黙って聞いている姿は珍しい。


『あんたみたいな奴に探されて、会いたいと思う人間なんていねぇよ!その黄金って奴だってな、あんたに見つかりたくないから姿を現さないんだろ!」


『!』


あ…。今、転校生は言っちゃいけない事を言ってしまったのかもしれない。


『楓ちゃ…!』


『楓…っ』


『…っ』


ブレイクメンバーが少しだけ焦った声を出した。会長は俯き、顔が見えない。


『なんだよ皆!そうだ、お前らもこいつに…って、え?…あっ」


改めて見た会長の姿に転校生は固まる。そして自分が会長の地雷のようなものを踏んだ事に気づいたようだ。


『ば…会長?』


『やっぱり…そうなのか』


『っ…え?』


ぼそりと呟かれる言葉。どこか弱々しく、普段の会長とは全く違う。


『あいつも、俺に探されたくないって思っているのか』


『…っ』


『あいつとは…黄金とは実際、親しくはない。…だけど俺は、あいつに…』


会長が顔を上げる。今までに見た事がない表情。こんな、切なそうな表情をする人だったのか。俺は、こんな会長、見たくなかったかもしれない。


『やっぱり、あいつは俺を避けているんだな』


『!ぁ…ち、違う!!』


『!?』


『今のは違う!今のは、あんたがその、しつこいから、ちょっとムカついて…。だから別に避けてるとか、そんな事ない!と思う』


『二堂…?』


会長が怪訝な顔をしつつ立ち上がる。


『ここにいる生徒会のみんなってすっげぇ良い奴じゃん。そいつらをまとめているのが会長のあんただろ?つまり、あんたも根は良い奴って事だ。そんなあんたを避けるとか、そんな事ある訳ねぇじゃん!』


発言がコロリと変わった。でも、ブレイクメンバーは転校生のその言葉に感動したようだ。


『『『楓…』』』


『楓ちゃん…』


『きっと近いうちにひょっこり現れると俺は思うぜ!』


転校生に画面がズームアップする。口元で笑みを浮かべているのがよく分かる。


『悪かったな会長!俺あんたの事、なんも知らねぇのにひでぇ事言って!』


『!…いや』


画面が会長に移った。


なんだか、いつもの会長じゃない。


すぐに画面が二分割されて、会長と転校生が同時に映る。


『会長!仲直りしようぜ。俺は二堂楓!楓って呼べよな』


『ああ、俺は結城比呂だ。お前には俺の名を呼ぶ事を許してやるよ』


『おまっ!またそんな発言っ…』


文句を言おうとした転校生が息を呑む。

同時に俺も画面に釘付けになった。


再び会長がフォーカスされたそれ。


会長が微笑んでいた。優しい笑顔だった。

どうしようもなく魅かれ、見惚れてしまう程に。


「と、いう感じのやり取りがあったんだよ」


その声にはっとする。いつの間にかノートパソコンは閉じられていた。


「あ、ありがとう、修ちゃん」


とりあえずお礼を言う。今の映像を見て、結果的に考えが全然まとまらなかった。何も考えられないともいえる。会長と転校生の距離が縮んだ理由。こんなやり取りがあったのかって理解はした。でもなんだろう。どうしたらいいのか分からなくなった。


「ごめん、俺、ちょっと混乱しているというか…」


「会長の笑顔にやられたか」


「そ、それもあるけどぉ!!」


「あとはまぁ、展開を受け入れられないのかもな」


「それがわかんない…」


「このやり取りがあったって、それが全てじゃねぇぞ。だから、ゆっくり考えな」


「…うぅう…はい」


「なぁ、ハル?」


修ちゃんの優しい声に顔を上げる。


「俺は、お前を応援してんだからな」


「!」


修ちゃんは俺を立ち直らせる天才かな。

その言葉だけで、力強く、心が落ち着いた。


「さて、春斗君。ここに先程見た会長のレア笑顔をプリントしたものがあるのだが…」


「ください」


起こってしまった事は仕方がない。これから先の事を考えよう。

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