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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第1話「これが王道ってヤツですか?」
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11・信じられない言葉

「ん、津村…」


反応したのは北嶋君だった。という事はやはり、タジとは北嶋君の事か。


「キタジマの中の二文字を取ってタジだ。どうだ格好良いだろう」


「誰も聞いてないよ」


なんとなく予想出来たし。新さんは、人に渾名を付けたがるだけでなく、すぐその説明もしたがるよね。


「…ここ、管理人室か」


北嶋君が山下君の支えからも外れて、ちょっとよろめきながら部屋を見回す。こっちの部屋には入った事がなかったみたいだ。


「ああ、タジは向こうの部屋でしか行動しないからな。それにここを利用するのはシロ達位なもんだし、鍵も渡してねぇから知らなくて当然か。お前達は非常通路を通ってこの部屋に入ってきたんだよ」


「非常通路?外に非常階段があるのは見た事あるのですが、通路というものもあったんですね…」


「ん?あれ、お前さんは…?」


「え」


新さんや。北嶋君には気付いたのに、すぐ近くにいた山下君には気付かなかったのか。俺は少し呆れながらも紹介する。


「新さん、彼は北嶋君と同じ一年生の山下君だよ」


「悪い悪い。タジに隠れて見えなかったわ。下の名前は?」


え?下の名前?

という顔で山下君を見ると、彼はハッとしたように背筋を伸ばした。


「山下悟ですっ」


「山下悟な。悟…悟…さと…。うん、よし!じゃあ、渾名はサッチーだな!」


え!?なんで??

“サ”しか合ってないよ???


新さんは満足そうに、ニカッと良い笑顔を向けてきた。うん。この人のセンスに突っ込んではいけないよな。


「さ、サッチー…」


山下君も苦い顔で、口許がヒクヒクしていた。ドンマイ。


「えっと、この管理人室はね。さっき扉がいっぱいあるのを見たと思うんだけど、実はそれぞれ、部屋や廊下に繋がってたり、各階の非常通路に繋がっているんだよ」


微妙な空気を変えるように、俺はちゃっちゃか説明を始めた。


ちなみに、この寮には非常階段が二つ存在する。外に繋がっている非常階段と、寮内にある内非常階段だ。非常通路が繋がっているのは内非常階段の方。


外の非常階段は上級階とも繋がっているけれど、普段は通れないように鍵が掛かっている。上から逃げてくる時には簡単に開けられるようになっている鍵だ。


まぁどちらにしても、実際には建物自体が丈夫な上に自炊する生徒は少ないし、そもそもIHだから、使われる機会は全くないんだけどね。


一年に一度、避難訓練もちゃんと実施されているけど、その時は外の非常階段で行われるから、内非常階段や通路は、生徒会や風紀のメンバーでさえも知らなかったりする。俺と修ちゃんも去年の末位に発見したばかりだ。新さん達にも、よくぞ見つけられたな。と褒められた。合鍵はその時の賞品としてくれたものだ。


「それで本当は、その非常通路と階段から部屋に戻してあげようと思ってたんだ」


必要はなくなったけどね。


「さぁ目的地には着いたし案内は終了!って事で、俺はもう行くから」


「えっ」


左手をひらりと振って、俺は非常通路に繋がるドアに振り返る。


「あ、そういえば。最近カミ見ないけど元気にしてるか?」


「いつも通り、良い仮面被ってるよー」


新さんの問いに、にやりと笑って答えながらドアを開く。山下君が、俺はどうすれば?って顔をしてたけど、北嶋君と一緒に泊まっちゃえば良いんじゃないかな。


「とりあえずタジはそこ座れ。傷の手当てするぞ」


そんな声を最後に、俺は管理人室から出た。そして、内非常階段を上がりながら携帯を取り出し、とある人物にメッセージを送る。


『秀君、校舎裏の連中、注意』


俺の元同室は風紀委員だったりする。しかも只の風紀委員じゃない。副委員長様だ。一年生時は役職に就いても必ず二人部屋と決まっていたから一緒だったけれど、二年生に上がった途端、お互い生徒会と風紀の役員で一人部屋に分かれてしまった。彼には去年、色々とお世話になったものだ。


『秀君はやめれと何度言ったら…』


『ま、了解。ありがとな』


返信はすぐに来た。それに目を通すと、今度は修ちゃんとのトーク画面を開く。気付かぬうちにメッセージが来てたみたいだ。


結局ドーナツもなくなったし、帰ったらどうしようか。もう寝ちゃおうかな。なんて。そんな事を考えながら文字を追っていると。


「…は?」


いくつかに分かれたメッセージの一番下。


『会長が王道君に落ちた…かも』


そんな信じられない言葉が目に入った。

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