ティアとの食事②
至らない部分もあると思いますが、がんばります。
指摘を下さると幸いです。
ティアに連れられてきたレストランはとてもおしゃれだった。石造りになっており、まるでおとぎ話の世界に紛れ込んだような雰囲気だった。テラス席には純白のパラソルが備え付けてあり、各々のテーブルに花が飾ってある。窓から中の内装が見えており、隅々まで作り込んであるのが見える。そこはシノが味わったことのない暖かさに包まれているようで少しうらやましく感じた。
「ここ一度は来たいと思ってたんです。座りましょう。」
そういうとティアはシノの手を引いた。
テーブルに着くとウェイトレスがメニューを運んできた。いわゆるカフェメニューからランチのセットやワイン、スイーツと幅広く種類があるようだ。
「どれにしますか、ラムの煮込みなんかが有名です。ライスプディングなんかも人気ですし、甘いものも食べたいです。迷っちゃいます。」
しゃべりながらメニューをめくるティアは心底楽しそうだった。ついティアにつられてシノもいろんな料理に目移りしてしまう。シノにとってもきちんとした店で食事をするのは久々のことだったから心躍っていた。
するとティアが伏目がちにこちらをみて恥ずかしそうに
「あの、ちょっと多めに頼んでもいいですか。ちょっともう来られないかもしれないですし。」
と聞いてきた。
「もちろん、でももう来られないってなんででしょう。近くだからまたくればいいのに。」
ティアは一瞬しまったといった顔をして歯切れ悪く
「あはは、なっなんでもないです……。さあっ、注文しましょう。」
とうやむやにしてしまった。
そして確かにティアはメインディッシュからデザートや飲み物とたくさん注文していた。
料理を待っていると、ティアがこちらを見つめて来た。事情により、他人との親しみが薄受かったシノにとってはなんだか不思議な感覚だった。旅に身を置くシノにはついあったばかりの相手と食事をすることはある。しかし行先も目的も違う旅人同士だ。助け合うことはあっても、お互いに一線を引いた関係だったし、各々の旅のためいつしか分かれるもので、友人のように接することはなかった。だからティアにここまで気を許せるのが新鮮なのだ。
他愛もないおしゃべりをしていると前菜が運ばれてきた。
「「いただきます!」」
噂に違わず出された料理はとてもおいしかった。とはいえあくまで前菜なのですぐにお皿は空になってしまう。
手持ち無沙汰で自然と目が合って微笑んでしまう。そんな時間がたまらなく愛おしく感じた。
とは言え見つめあっているのも気恥ずかしいので、何か話題はと思いシノは辺りを見回して、飾ってあった紫色の花を見つけた。
「きれいなシオンだね。」
「あら、お花に詳しいのですね。」
「薬師を名乗っているからね。ある程度の知識はあるよ。シオンには薬効成分があるから、たまにお世話になるんだ。」
「確か、花言葉は“私を忘れないで“です。」
ティアがそう言いながらシノを見つめる。
「“私を忘れないで”か。悲しい花言葉だね。」
「私には、明るい意味に聞こえます。たとえ、ともに生きれなくとも記憶の中では消えることはないと信じている。そんな気持ちが表れているように感じます。」
ティアはそう言いながら俯いた。
「なんだか、しんみりしちゃいましたね。せっかくの食事なんですから、楽しくですよね。」
ティアが顔を上げる。そして前菜のさらに残っていたパセリを取って、
「そういえば、パセリにも花言葉があるんですよ。白い花が咲くんです。えっと、あっいや、確か花言葉は“お祭り”です。ちょうど今の時期にぴったりです。」
と言って、笑った。しかしシノにはティアの笑顔が陰っているように見えた。
シノにとってパセリも薬効成分を含むため身近な草花だった。その時シノはもう一つのパセリの花言葉を思い浮かべていた。
”死の前兆”