次の日
意外と見てくださってる方々いてうれしい限りです。
初心者ですががんばります。
風呂から上がるとティアが家の前に待っていた。先ほど招待を断ったせいか家の中には招かれなかった。
つい気になっていたことを訪ねた。
「お風呂、本当にありがとうございました。もしかして一緒に住まれている方がおられるのですか?」
シノは複数人用の建物なら同居人がいると思ったが、家の中にティア以外の人気を感じなかったのだ。もちろん今は業務中で留守にしているのかもしれないが。複数人がともに住んでいるときの独特な名残というか雰囲気が感じられなかったのだ。
「おひとりでここに住まれているのですか。」
「ええ、去年までは同居人がいたのですが……。」
そういったティアはとても沈んだ面持ちに見えた。
会話も途切れてしまったので
「お風呂本当にありがとうございました。この恩はいつか必ずお返しします。」
とお礼を言った。するとティアは虚を突かれたように顔を上げると、
「ええ、いつか必ず助けてくださいね。どうかお気をつけて。」
そういうとティアは家の中に入ってしまった。
シノは、町の外の森にいた。シノは建物に入れない以上街の中にいる意味はなく、野宿できそうな場所を探していたのだ。目的の露天風呂には入れたのだが、シノはもう少しこの街にいることにした。ティアへのお礼をしたいというのもあったがもう少しどうもティアの言葉が気にかかっていたのだった。
「ティアの最後の言葉、いつか必ず助けてください…か。」
いくら何でも初対面の人間にそんなことを言うだろうか。何か助けてほしいことがあるのではないだろうか。そういった考えが頭から離れなかった。
次の日シノは柳の樹皮をはがして煎じ、薬を作っていた。ティアへのお礼の薬を作っていたのだ。シノは薬師を名乗って旅しているため薬についてはある程度知識を持っている。柳は解熱や鎮痛に優れた薬になるのだ。液体の薬になりかさばるため多くは作れなかったが一人暮らしであるならば十分な量になると考えた。また昼頃にティアを訪ねることにした。
シノがティアを訪ねてティアの働く旅館を訪れると、ちょうどティアが出てきたところだった。
「こんにちは、ティアさん。」
シノが声をかける。
「あ、シノさんこんにちは。」
「あの、昨日のお礼がしたくて、今から時間大丈夫ですか。」
「大丈夫ですよ。それとティアと呼んでください。」
「では私のこともシノと呼んでください。あのこれ、柳の樹皮を煎じたものです。熱を下げたり痛みを抑えたりするのに使えます。すみませんこんなものしか用意できなくて良かったらぜひ。」
「気になさらなくて良かったのに。こんなに沢山ありがとうございます。」
シノにはそういって笑うティアが一瞬泣いているように見えた。
このままではティアとの関係が終わってしまう。そう考えたシノは無意識に、
「ティア、この後一緒に食事でもいかがですか。」
そう言った後でシノは後悔していた。シノは建物の中に入れない。だから食事をとれる場所が自然と限られてくる。自分から誘っておいて自分が入れないレストランにティアが行きたいと言ったら断るしかないのだ。それに出会ったばかりでいきなり食事に誘うというのも失礼に当たると思いなおし、
「いえ、急な話ですし断っていただいても」
と言い終わる前にティアが
「ぜひ、喜んで」
と了承してしまった。