死後と転生
目を覚ますと、俺はいつの間にか、どこまでも続く白い大地にいた。見上げると、天井がどこかも分からないくらい真っ暗で、星の一つも見えない。
「死後の世界ってやつか?」
別に驚きはしない。天国や地獄、あるいは転生といった死後どうなるか、考えたことはある。でも、、そんなことを考えるくらいなら今を懸命に生きるために出来ることを考えた方が何倍もいいに決まってる。
「へぇ…、なかなかいい考え方だね、それ。」
心臓が口から飛び出そうになるのを寸前で抑える。全くの無音から急に声がすれば、誰だって驚く。
「ハハハ、心臓バクバクしてるじゃん。大丈夫かい?」
妙に響いた声を出すその少年は、一つの汚れもない真っ白な服を着ているせいで、輪郭が分かりづらかった。髪も目も肌も全てが白く、気を抜くとすぐに見失ってしまいそうだ。
ここがもし本当に死後の世界なら、この少年は死神かもしくは俺と同じ…
「前の方が正解だね。僕は君たちの言う神様ってところかな。」
凄いでしょ、と言わんばかりに胸を張る。
「早速で悪いけど、君、転生してみない?」
「転生?」
「そっ。どんな世界に転生してもいいよー?魔法や魔術のある世界でも、竜みたいな架空の生物がいる世界でも……。」
「なら、元の世界にしてくれ。」
即答する。迷いはない。
「約束したんだ。もしも来世でまた会えたら、もう一度一緒に幸せになろうって。彼女をもう一度幸せにすると。彼女は俺よりも先に逝ってしまったけど、彼女も転生したのなら、必ず俺のいた世界に決めるはずだ。」
「転生したら記憶はなくなるよ?」
「それでもいい。」
「もっと素晴らしい世界もあるんだよ?」
「俺には元の世界が一番だ。」
「……君の言うその彼女が他の世界に行くとは考えないのかい?」
「当たり前だ。」
間髪入れずに答える。すると少年は呆れたようにため息をつく。
「やれやれ、君ならそう言うと思ったよ。」
真っ白な地面に黒い穴が開く。そこから見えるのは紛れもない地球だった。
「さあ、行っておいで。君の大好きな人の元へ。」
俺はその穴に飛び込み、光の粒となって消えていく。
「……君たちはいつもそうだ。前も、その前も、ここに来るたびずっと君たち二人はお互いに繋がって、信頼して、愛し合っていた。」
目をつむり、思い返す。
「あーあ、人間っていいなー。」
お読みいただいて、ありがとうございました。
気分転換に思いついたものをそのまま書いてみました。良ければ他の作品もお読みいただけると嬉しいです。