三人目 正井信吾の場合・・・兄弟
三人目あと四人
三人目 正井信吾の場合
俺は、明日に迫った芳樹の誕生日の買出しに行っていた。芳樹と一緒に。
今日はたまたま大学が凄く早く終わったのだ。珍しく。だから、一緒に。
芳樹は小学二年生。今年の誕生日プレゼントは、伝説戦隊レジェンジャーのレジェンドロボを買ってあげた。
今、ちょうどその帰り。俺が芳樹と一緒にいた最後の時間。
「ねえ兄ちゃん。」
俺の弟が俺の手を引く。十字路で、横断歩道を渡ろうとする。点滅しているのを知った俺は、急いで手を引いて、弟を引っ張り、歩いていく。
「ねえ。兄ちゃん。昨日学校でね、」
俺の手を握りながら、弟の、芳樹は、昨日あったことを話してくれる。
相槌を打ちながら、信号を気にして急いで渡る。
「兄ちゃんっ!」
弟が、こっちに走ってくる白バイを見つけて、俺に教える。
俺は必死に芳樹を守ろうと、芳樹の体を突き飛ばす。
ガンッ・・・・・。
芳樹が道路に当たった音と、俺が白バイに当たって存在が消えた音の一部が俺に、すべてが芳樹に聞こえただろう。
芳樹は、これから親と元気に生きてくれるだろうか。俺という存在を忘れて。
俺という兄がいたことを忘れて。
俺は・・・・・・芳樹にプレゼントを渡せなかった。
兄として、最後の最後で。
それから、しばらくたった。
「芳樹・・・・。ご飯よ。芳樹。」
芳樹は、兄との共同部屋だった部屋で、芳樹は体育座りで体が震えている。
「う・・・うう・・・・。」
芳樹は、暗い部屋で、暗い心で、目をつぶっていた。
すぐ後ろにある二段ベッドの下には、もう二度と、ぬくもりが戻ることはない。上の・・・芳樹のところだけだ・・・。
部屋の芳樹のエリアではない場所にはもう、誰も入る事も、ものが増える事もない。
永遠にそのままだ。
「で、今日の蘇生者は。」今日のカロンは、少し顔が右に傾き、怒っている。仮面で見えないが、左の頬が赤くはれている。
「正井信吾。私の・・・・学級生です。」
カロンは、顔をピクンッと動かした。
「ほう。蘇生はやめるか。」
仮面の中でカロンは怒っていた。
「何でですか?」
メリアが声を荒くしていった。
「恋人である君が、なぜか頬を赤らめて、彼の肉体を眺めているからだよ、これが恋人の反応というものなんだろう。だから・・・・嫉妬といったか、それをしている。」
カロンはどれだけ気まぐれなんだ・・・・・。どれだけ自己中心的なんだ・・・・。
メリアは、手がいつの間にか拳の形で震えているのに気が付き、元に戻した。
「蘇生開始。」
メリアは、カロンがそっぽを向いて嫉妬、いじけているときを見計らって釦を押した。本当に釦だった。
「あ・・・メイア。やっぱり君と彼はそういう関係が・・・・・何処まで進展しているんだ。何処まで私に隠した行動まで・・・ムギュン。」
カロンらしからぬ語尾で終わった。
メリアがパロを投げつけたからだ。パロはキュイーンといって、メリアから遠ざかって言ったのだった。
芳樹・・・・。
芳樹・・・・。
芳樹・・・・。
芳樹・・・・。
芳樹・・・・。
「そんなに弟が大切ですか。」
黒服で、仮面の怪しい男が、俺を呼ぶ。
「そろそろ冬です。その格好は寒いでしょう。ほら。この毛糸の下着を着用しなさい。ぽかぽかですよ。それとも熊さんより機関車のほうが良かったかい。」
「普通のでいいんでください。」
さむいのは裸だからか。
「さあ。弟に会いに行きなさい。」
扉は開かれたらしい。
芳樹・・・・。
部屋は、何も変わっていない。
「兄ちゃん、ただいまぁー。」
芳樹が・・・・まだこれから何が起こるかまったく知らない芳樹が、部屋に入ってきた。
「今日は、買い物に行くんでしょう。ねね、僕、頴娃吏に行きたいな。」
俺は、何も考えず、前回と同じものを同じ順番にとって、芳樹と出た。
「ねえ。兄ちゃん。今日学校でね、」
ああ。もう終わるんだ。
俺は、目をつぶった。
芳樹を必死に抱きしめる。
もう、あの交差点まで来た。
「そうだ。」
俺は、自分で思った。芳樹を抱きかかえながら。
「ここを、とおらなきゃいい。あと一回、待てばいいんだ。」
俺は、芳樹と長くいることが出来る方法を知って、うれしくなった。
「芳樹、もうすぐ赤になるからここでまとうな。」
芳樹は素直にうなずく。
一回待った。
あの白バイは、俺をひき殺した白バイは来ない。
二回待っても来ない。
俺は気が付いた。
あの白バイは絶対に俺が来るまでこないと。
「芳樹、別の道で行こうか。」
裏道で行こうとした。
「芳樹、今日は何のケーキかな。」
芳樹と、自分はこのままいれると思い、にこりと笑って、芳樹と裏道を歩いていた。
カロンはその死人を見ていた。
「ふん。そのまま自分がのうのうと生きていられるとでも思ったのか・・・・。死人が生きるという事はこの世界の理屈を覆してしまう。そんな事、このカロンがさせないぞ。せめて後二分、最愛の弟と、過ごすがいい。永遠に会えなくなるのだから。カロンは貴様を生かしておくほど甘くはないのだ。」
カロンはグラスを叩きつけた。
俺の視界には、自動車が。右には、弟一人分のくぼみ。
俺は再び死んだ。
「弟はそれほど大事か。」
男が聞く。
「自分だけ、生き返れると思うなよ。死には逆らうな。」
「大事だ。」
「我も作ろうと思うぞ。」
カロンが連れてきたのは猫だった。
弟を何だと思っているんだ。
これから更に五月蠅くなる。
・・・・あと四人・・・・
歩派j氏wやんせあhqこういvうぉえrxこfんはおいえうぃほrんdぅんくぃお
日本語訳
カロンの骨、あと四話で終わったら、カロンだけの本編をするらしいデー。