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兵隊さん達に届けた思い

アタシは今壮大な作戦中である。

とは言ってもたいした事をしようとしている訳ではない。

でも結果的に人が集まりはじめている。

作戦成功は間違いないだろう。


何をしたかと言うと。

「助けてあげてください。クラウディアさんがピンチです。昨日の野営地に居ます。お願いします。助けてあげてください」

と伝えただけである。

ただその場から叫んだりしたら真っ黒集団にも聞こえてしまうから細工はしてあるけどね。

音というものは空気が振動することで伝わるのである。

それを利用する事にしたのだ。

一番簡単なのは真空の壁とか防音壁とかの振動を伝えない壁を作ることだが、防音壁とか作ったら目立つし、真空の壁なんて出来るか分からないし、音は回り込む波の性質も持っているから多少遮断したところで聞こえてしまうだろう。

そこで考えたのが、音の振動を遠くに伝えると言う現代知識だ。

細かい理論は知らなくても魔道具はそれを自動で補ってくれる。

そうでなければ、光の魔道具なんぞ出来るわけがない。

必要なのはどんな現象で何が起きるのかを知っていることだけ。

暴論かもしれないけど実際そうとしか思えないからそれに乗っかるだけ。


まず兵隊さんが何処に行ったのか確認するためにクレーターの天辺に移動した。

少なくとも夜が明けてから出発したのだろうからまだ近くに居ると考えたのだ。予想通り、5キロ程先に森の奥に向かって移動している集団を発見できた。

直接行って話しをすることも考えたがアタシのことを説明したり、なんでクラウさんのことを知っているのか説明したり、兵隊さんがクラウさんを探しているのをなんで知っているのか説明したり。

とにかく説明しなければならないのは面倒だし、基本はやっぱり関わりたくないのが心情だ。

なので『拡声』の魔道具を作り遠距離の相手に声を届けた。

原理は至って単純だが凧である。

木の枠を作り、包帯を貼り付けて凧上げ開始。あとは蜘蛛糸を5キロ伸ばし魔力を通してそこから糸電話の要領で声を届けただけである。


ここからでは聞こえないので、ちゃんとに声が伝わったか分からない。

だがこれなら真っ黒集団にも聞こえていないだろう。


散開していた集団が進軍を止めて集合してきている。

ここでダメ押しに

「助けてあげてください。クラウディアさんがピンチです。昨日の野営地に居ます。お願いします。助けてあげてください。栄光ある勇者たち」と伝えると。

進軍するときとは違ってかなり早いペースで兵隊さんは戻りはじめた。森の中で動ける最大の速度を出しているのだろうか。

5キロ程度だしこのペースなら30分も掛からないかもしれない。

アタシは凧を戻して潜伏スキルを使い忍び足で場所を移してから真っ黒集団を観察する。

ちょうど真上の位置だ。

真っ黒集団は忙しなく動き回っている。何をしようとしているのだろう。

何か塊を一ヵ所に集めて火をつけた。薪かな。なら昼御飯でも作るのかな?ってあれは家の扉じゃないか。

壊した挙げ句にバラバラにして薪にするなんて。

なんて自分勝手な連中だ。

でものんびり昼御飯を食べるのなら好都合である。

今からならご飯を食べている最中に兵隊さんが到着する。

壊した家の弁償はして貰えないだろうけど、貴族誘拐の罪で捕まってしまえ。

そんなことを思っていたら、昼御飯の準備ではないらしい。

食材らしき物がないからだ。有るのはぐるぐる巻きのクラウさんだけだ。ってまさか。

真っ黒集団はクラウさんの前で何やら祈りを捧げはじめた。祈りの動きからしても気味が悪い。

そして気を失っているのか薬で動けなくされているのか分からないが、身動き一つしないクラウさんを4人で持ち上げて火に近付くと赤く燃えていた火が突然黒く燃えはじめた。

煙ではなく確かに黒い炎である。

黒い炎なんて元の世界でもアニメでしか見たことがない。

不吉な予感と言うか、この流れだと最悪な妄想しか考えられない。

後先考えずに水魔法を最大で使った。気味の悪い火を消すためである。

最大なのは中途半端に水を出したところで火を消すどころか、そもそも当たるとは思えないからだ。

なにせアタシの魔法はお尻からしか出ないのだから狙いなんてつけられるわけがないのである。

アタシはとにかく当たれと念じながらお尻を上下左右と円を描くように振り回す。

後ろを向いているので、もしかしたらまったく見当違いの方向に水を出している可能性もあるが、

水の出る勢いが強いので下手に振り向く事も出来ず確認できない。

3分程で水魔法を止めてから振り返る。

火が消えていますようにと祈りながら。

はたして、黒い炎は消えていた。

そして真っ黒集団はクラウさんも含めて方々に散っていた。まるで鉄砲水に押し流されていったかのように。

元の世界でも起こっていたゲリラ豪雨でも3分で人が流される程の雨は降らない事を考えると。

もしかしたらやり過ぎたのかもしれない。

そんなことよりクラウさんは大丈夫かしら。

真っ黒集団めクラウさんを見捨てるとはなんて悪いやつだ。

自分のしでかしたことを棚上げして真っ黒集団に文句を言っているマッキーであった。



「クラウさんには後で謝らなくちゃ」

反省はしているようである。


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