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魔獸の主人 ~強さよりも可愛さ重視の命がけ子守り日記~  作者: ゅぇ
1章 ~家族との出会い旅立ち編~
6/12

6、動き出したゴーレムvsパンダ

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ



 なんとも素晴らしき重低音。

 あきらかに巨大ロボットが動き出そうとしております。

 そう石像じゃない、あいつはロボットだよ!

 後ろ姿だけでわかるから!!

 腕組んで仁王立ちしてる所もそうなんだけど……

 フォルムがそもそもヤヴァイ!

 あきらかに……

 マジ〇ガーZにくりそつなんですけどっ!!

 ちょっと運営さん?

 似せるにしてもやりすぎじゃないか!?

 はっ!

 この部屋が無駄に広いのもあのロボットを試運転する為ってコトか!?



 ゴンゴンゴンゴン!



 山彦やまびこさんもやめてぇぇえぇ!

 あいつ……

 怖いもの知らなさ過ぎ!


「コラッ! 山彦やまびこっ! 怪我する前に戻ってこい!」

『……御主人様マスター……この状況どういうコトですか?』

「あれ? 白玉しらたまさん起きちゃった? ちゃんと休んでないと――」

『――こんな状況で寝れるわけないでしょ!』



 パタパタパタ



「えぇぇえっ!? 白玉しらたま飛べるの!?」

『飛べないと……こんな小さな体でどうやって移動するんですか?』

「でもヒヨコなのに?」

『今は言い争いをしてる場合ではありません。今動き出そうとしているのはガーディアンゴーレム。アレはダンジョンの隠し部屋を守る門番として配置されています。この隠し部屋から出るまでは絶対に動き出すコトはないはずですよ! まさかっ……』

「まってまって! ほら、あのロボット後ろ姿だろ? まだこの部屋から出てないというか出口さえ見つけてないからね」

『出口はガーディアンゴーレムの足元にありますが……』

「本当だ!」


 少しづつ揺れているロボットの奥には出口らしきモノがあるっちゃあるけど……


「……白玉しらたま先生! 質問です! どうやってあそこから出るんでしょうか?」

『見た通りです。ガーディアンゴーレムの股の間を通ってこの隠し部屋から出るのが正解です』

「やっぱりか……」


 ロボットが無駄に仁王立ちしてるわけないもんね。


『本当にこの部屋から出たわけではないのなら……どうしてガーディアンゴーレムは動き出そうとしているのでしょうか? よっぽどのコトがない限りは封印がとけるわけもありませんし……』



 ドキッ



「あの……よっぽどのコトって?」

『あんな巨大な石像に向けて攻撃するなんてバカなコトは誰もするはずはありませんよね?』



 ゴンゴンゴンッ!



「そうだねぇ、あはははは、誰も普通はしないよねぇ? あはははは……」

『ちょっと! あのリズムラッコはまさか……御主人様マスターの!?』

「えーっ、あーっ……うん、山彦やまびこっていうんだ」

『まさか!? どうやって卵を割ったんですか!? いえ、それよりも聞きたいのは山彦やまびこさんと運命共同デスタンコモンしたなんてことないですよね!?』

「え? したけど?」

『何考えてるんですかっ! 早く山彦やまびこさんを下ろして逃げなくては!』

「さっきからそうしようとしてるんだけど下りてきてくれなくて……」



 ゴゴゴゴッ、ギシッギギギギギシッ……



 あぁっ……

 マジ〇ガーZ覚醒したっぽいよ。

 振り向きましたからっ!!


『どうするんですかっ!?』

「どうしよう……ちなみに勝てる可能性とかある?」

『あるわけありません! スライムが魔王を倒しにいくようなモノですよっ!』

「わかりやすい例えありがとう」


 やはり絶望的状況みたいですな。

 でもまぁ、山彦やまびこを置いてくわけにもいかないし……

 なんとかあいつを保護して逃げ切るしかないって事か。


『まさか……御主人様マスターやる気ですか!?』

「仕方ないだろ? 逃げたって山彦やまびこを助けなきゃ運命共同デスタンコモンで俺も死んじゃうってコトだろ?」

『そうですけどっ……はぁ、本当にあなたという人は何をいっても無駄ですよね』

白玉しらたまはそこの御剣みつるぎと、ここにいる黒雪くろゆきを連れて逃げてくれるか? ココは俺が――」

『――お断りします。先程のお言葉を借りるならば私と御主人様マスター運命共同デスタンコモンなのですから私だけが逃げた所で死ぬだけです』

「……そうだな、一緒にやるかっ!」

『そちらで腕にしがみつかれている黒雪くろゆきさんも同じ気持ちみたいですよ?』

「むぅっ!」

『そうか……落ちないようにしがみついてろよ』


 御剣みつるぎが無言で俺の前に進み出る。

 きっとこいつも戦う気なんだ……

 だが、御剣みつるぎだけは戦わせるわけにはいかない。


御剣みつるぎ、聞いてくれるか? お前には大事な任務を頼みたい。その手に持っている卵を守ってやって欲しいんだ。御剣みつるぎにしかまかせれないから……」


 じっと俺を見つめてくる。

 何か言いたそうなのは分かる。

 だが引くわけにもいかない……

 今のこの状況で、卵を安全な場所に運べるのはきっと御剣みつるぎしかいない。



 クルッ、チョコチョコチョコッ



 御剣みつるぎは卵を持って暗闇の奥へと消えていく。

 これで卵は大丈夫。


『一番戦闘力のあるユーカリナイトがいないなんて……』

「勝負に勝つのが目的じゃないんだ。あの鎖を全部よけたみたいに攻撃をよけきって山彦やまびこを救出すりゃいいだけなんだから……簡単だろ?」

御主人様マスターはバカなのか度胸があるのか判断に迷います』

「大丈夫だって! 見るからにあいつトロそうだしな」



 ズドォーンッ、ズドォーンッ……



 動き出したガーディアンゴーレムは予想通りの鈍足。

 おそらくパンチ一発で昇天するのは間違いないが……

 当たらなければいいだけでしょ?



 ヴォォオンッ!



 強烈な右フック!

 体を左にひねり身を乗り出しながら避ける。

 思ったより速い!?

 とはいえ……

 避けきれないスピードじゃないな。



 ヴゥオォオン、ドゴゴォオーンッ!



 地面に向けての左ストレートパンチ!

 後ろに体を引いて避けれたはずだが……



 ピシッ、バシッ



「いててっ、思わぬ攻撃だな……」

『大丈夫ですか!?』

「あぁ、飛んでくる破片に要注意だな」


 地面を貫通したパンチにより、割れた破片や風圧が容赦なく俺に降りかかる。

 動けなくなるダメージではないが、数が多すぎて避けきる事もできそうにない……

 近づかずにチマチマやるしかないな。


「俺がアレをひきつけるから、白玉しらたま山彦やまびこを救出できるか?」

『私ヒヨコですよ? 山彦やまびこさんを運ぶ程の力はなさそうです……』

「突き飛ばしてくれるだけでいい! 俺がアレの後ろに回り込んだ時に山彦やまびこを落としてくれれば拾って逃げるから!」

『わかりました』



 パタパタパタパタ



 空飛ぶヒヨコ可愛すぎっ!

 さて、白玉しらたまに意識がいかないようにひきつけるには……

 攻撃するのが手っ取り早いか?


「おい! この巨大ロボ野郎! くらえ!」


 俺は拾った石をガーディアンゴーレムに向けて全力で投げつける。



 コンッ



 ぶふっ……

 結構全力で投げたのに音が軽い。

 だけど直接攻撃なんかもっとありえないわけだしやるっきゃねぇ。


「塵も積もれば山となるっ!」



 コンッ、コンコン、ゴンッ



 きかないのは百も承知で連続投石攻撃。

 適度に距離を保ちつつ、意識を引きつつ隙をつく。

 白玉しらたまが配置につけばわざと近づいて攻撃を誘おう。

 大振りのパンチ出して態勢を崩した時がチャンスだ!



 ヴヴヴヴヴヴッ……



 なんだこの音?

 でもまぁ、ある程度の距離は保っているし何をされてもココでは当たるわけが――


『――御主人様マスターっ! 右手に異常な熱を感知!』


 異常な熱?

 まさかっ!?



 ヴォォオーンッ……ズゴォオォオンッ!!!


 

『……そんなっ!? 手を飛ばす攻撃があるなんて!? 御主人様マスター! 大丈夫ですかっ!? 私の声が聞こえますかっ!? ……煙が酷くて……どこにいるのか……』



 ゴホッゴホッ



御主人様マスターっ!』

「すっげぇ土煙だな……危なかったっ……まさかのロケッ〇パンチか!?」


 さすがは見た目がマジ〇ガーZなだけあるな……

 運営の悪意しか感じません。

 なんとか前に飛び出し回転受け身で避けきることはできたが……

 気が付くのが後一歩でも遅れていたならペシャンコになる所だったぞ!?


『魔力を感じない攻撃で判断が遅れてしまいました……本当に申し訳ありません』

「いやいや、今がチャンスだぞ! 今ので右手がなくなってるだろ? つまり同じ要領で左手もなくしてしまえば……」

『あの……黒雪くろゆきさんはどこに?』

「そりゃ俺の腕にしがみついて……ないっ!? 黒雪くろゆきっ!?」


 しまった!?

 回転受け身の時にどこかで落ちたか!?


「むぅむぅむぅ……」

「いたっ!」


 良かった。

 少し離れてしまってはいるが怪我はなさそうだ。


 

 ヴヴヴヴヴヴッ……



 この音は!?

 まさかの左手!?

 しかも狙ってる方向は……

 黒雪くろゆきじゃねぇかっ!?


「やめろぉーっ! 狙うなら俺に――」



 ――ヴォォオンッ、ズウゥウウンッ!!!



「そんな……黒雪くろゆきぃぃいぃいっ!!」


 間に合わなかった……

 俺が落としたせいで……

 せっかくできた俺の家族なのに……

 守ってやることも俺はできないのかよっ!!


黒雪くろゆき……ごめん……」

御主人様マスター! しっかりしてください! 私達が生きているのならば運命共同デスタンコモンで繋がっている黒雪くろゆきさんも生きてるんです!』

「そうか……」


 洞窟の薄暗さに、土煙のせいでよくは見えない……

 慌てて走り出す。

 黒雪くろゆきが生きているなら弱っているかもしれない。

 すぐにでも助けだして……


「むぅっ!」

「え?」


 黒雪くろゆきは無事だった。

 ロケッ〇パンチを真正面にうけて……

 それをしっかりと受け止め、軽々と持ち上げていた。

 え?

 言葉の通りですけど?

 黒雪くろゆきは自分の十倍以上はあるであろう左手ロケット○ンチを、真正面からしっかりと受けとめたようで……

 足元を見ればロケット○ンチに押されて引きずられたであろう黒雪くろゆきが踏ん張った生々しい引きずり跡が残っている。

 

黒雪くろゆきっ!」

「むぅ~」



 ポィッ、ズドォオォーン!



 俺の姿を見て喜んだ黒雪くろゆきは、軽々と巨大ロボットの腕を投げ飛ばし俺の元に駆け寄ってくる。

 そんな簡単に投げれるモノじゃないはずなんだけど……

 まさかの黒雪くろゆき最強伝説?


『このハズレパンダーは大当たりですよっ!』

「えっ? ハズレなのにあたりなの?」

『こんなコトありえないはずないのですが……そもそもハズレパンダーとは四種の形状にあてはまっていないが為にハズレとされています』

「そういえばイメージで何匹か見たかも。」


 体のバランスが悪くて見た目がまったく可愛くないから無視したけどね。


『頭発達のヘッドパンダー、腕発達のパンチパンダー、足発達のキックパンダー、爪発達のチョップパンダー。それぞれ発達した部分こそが武器なのです』

「いやいや、体の一部分がそれぞれデカくなりすぎで気持ち悪いよ。黒雪くろゆきはまるまるしてて文句なしの可愛さ!」

『だからこそ、発達部分がない能力ちからを持たないハズレパンダーと呼ばれているのです。パンダーは発達している部分にこそ、得意とする格闘スキルを取得している魔獣モンスターなのですから』

「なら黒雪くろゆきはスキルがないのか?」

『いえ、それがなぜか黒雪くろゆきさんは怪力体フォルスコールを使えるようです!』

怪力体フォルスコール?」

『すいません説明は後にしましょう! 身を隠す為の土煙がなくなってきました! ガーディアンゴーレムの足音を補足……おそらく接近してきます!」

「そういえば戦闘中だったな」



 ズゥン、ズゥン、ズゥン、



『両腕がなくなり攻撃手段は減ったようですが……運動効率が35%上がっています! 両腕分だけの重みがなくなってスピードがあがったようです!』



 ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン



 確かに足がさっきよりかなり軽快なのが分かる。

 おそらく攻撃手段は蹴り、頭突き、体当たりって所か?



 ギュッ



 すり寄っている黒雪くろゆきを強く抱きしめる。

 今度は絶対に離れないぞ。

 おそらくあのスピードでしかけてくるなら体当たりが頭突きとみたり!

 なら俺ができる事は……


御主人様マスターの脚力をもってすれば余裕で走って逃げきれます。ココは体制を立て直して……ってなぜかまえているのですか!?』

「あのロボット野郎によじ登って山彦やまびこをかっさらう!」

『無理です! どう考えても成功するはずありません!』

「ゲームの世界なんだから多少の無理はなんとかなるだろ?」

『ここは本当の異世界なんですよ!』

「っていう設定だろ? 分かってるって!」

『全然分かってないじゃないですか! これはゲームの世界ではなく、って……もうすぐそこまで来てますよ!!』

「ダテに修羅場はくぐってきてないって……」


 たかが全力で走った所で、所詮はマジ○ガーZパクったぽんこつロボット!

 こちとら現実世界で何度も生身で車と対決してきたんだからな!

 信号無視してきたスポーツカー……

 居眠り運転のトラック……

 飲酒運転の高級車……

 思い出すだけで事故に巻き込まれた回数が十桁は超えるんですけど!?

 どいつもこいつも問答無用で俺を殺す気で突っ込んできやがって!

 おかげで、ヒビ、骨折、複雑骨折、解放骨折、粉砕骨折……

 ありとあらゆる怪我をさせて頂きましたとも……

 それでもこの命があるのは……

 俺の根性の方が強いからなんだよっ!!


御主人様マスターっ!?』



 ガッ、バァンッ



 よしっ!

 のれた!!

 走ってくるあいつの右足を踏み台にして……

 あいつの体の出っ張りに右手をかけて勢いを殺さずに受け身をとる!!

 そして左手にいる白玉しらたま黒雪くろゆきは絶対に守る!!

 


 ゴギンッ



 ぐっ……

 アバラに衝撃が……

 経験からして折れたっぽいけど動けないレベルじゃない!


「腰のあたりになんとか捕まれたぞっ! 山彦やまびこは今どこにいる?」

『凄いです御主人様マスター! まさかそこまでの運動性能を持って……』

「話しは後だ! しがみついてるのもやっとなんだよ!」

『まだ頭上にいます! 私がよじ登って一緒に落としますので受け止めてください!』

「頼む!」


 腕がなくなったおかげでこいつは俺に攻撃はできない!

 足の速さも俺が上なら……

 山彦やまびこを受け止めたら即離れて、あの出口まで逃げれば俺の勝ちだな!



 ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン



御主人様マスターっ、離れて下さい!』

「今更離れるわけねぇだろ!」

『壁に接近中です!!』

「まさかっ……!?」


 ポンコツロボットを舐めすぎていた……

 絶対に知能がないと思っていたのに……

 こいつ、最初から俺を壁でつぶすつもりだったな!

 今飛び降りたらまた最初からやりなおしか?

 このアバラの怪我でさっきと同じコトができるのか?

 出来るわけねぇ!!


白玉しらたまっ! 急げっ!」

『私の運動性能で計算すれば着弾まで三秒程時間が足りていません!!』

「つべこべ言わずにいけっ!」


 頭ではヤヴァイことは分かってる……

 でもココであきらめるわけにはいかないだろ?



 ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン、ズゥン



 凄い勢いで壁が迫ってくるのがわかる……

 なんとかして衝撃を和らげる方法を……

 なんとかナイスアイデアを……


 あれ?


 おりてこい閃きの神様!!

 頼みますっ!!

 コナ○くぅーん!!

 金○一のじっちゃん助けてぇーっ!!

 なんでもいいから……



 って、思いつかねぇえぇえーっ!!!



御主人様マスターぁあーっ!!』

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