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魔獸の主人 ~強さよりも可愛さ重視の命がけ子守り日記~  作者: ゅぇ
1章 ~家族との出会い旅立ち編~
10/12

10、プレイヤー二人組vsヒヨコ裏技

 走れっ!

 アバラが折れてるとか気のせいだ!

 とにかく走って走って走り抜け!

 もう少しで洞窟を抜けるぞっ!


『五時の方角、距離300m先に山彦やまびこさんと黒雪くろゆきさん確認!』

「おっけぇ!」


 まぶしい!?

 ……だから何だよ!?

 まぶしくたって走るだけだろ!

 目の前に見える森に突っ込め! 

 スピードをあげろ!

 腕に卵二個抱えてるけど割れそうかもなんて考えるな!

 ヒヨコを抱えてひたすら走れぇーっ!


『……御主人様マスター……この感覚は?』

「なんだ?」

『感じませんか? 腹部の痛みがやわらいでいくのを……』

「え?」


 あれ?

 言われてみれば……

 なんかさっきに比べて痛くないというか……

 ドンドン痛くなくなってくような……

 ん?

 なんで分かったんだ?


「痛みがなくなってくのはうれしいが……なんで白玉しらたまが分かるんだ?」

運命共同デスタンコモンはすべてを共にするんですよ? 御主人様マスターの受けた痛みや苦しみも私達に伝わっていました……』

「ちょっとまってくれ! なら、あいつらは俺と同じ位に体がしんどいのに薬草を探しに出てたってのか?」

『そうですね――』

「――なんでそれを先に言わないんだよ!!」

『……御主人様マスター?』


 くそっ……

 俺の認識が甘かった……

 てっきりあいつらの感情や痛みが伝わってくるだけだと思い込んでいた。

 でもちょっと考えたら分かったコトだよな?

 俺からの感情や痛みがあいつらに伝わる可能性があるなんて簡単に気が付けたはずなのに……


「……お前達だって相当に体がしんどかったはずだよな? どうして薬草を取りに行かせたりしたんだよ!」

『あの子達が私の言うコトを聞くと思いますか?』

「それは……でも、止めるべきだったろ?」

『逆の立場でしたら御主人様マスターは薬草を取りにいかずにジッとしていますか? 止めますか?』

「くっ……そうだけどさ……」

『そのような思いをしたくないのならば……ご自分の体を大事にして下さい! 無茶をしないで下さい! もう一人ではないんですよ?』


 ……その通りだ。

 家族を守りたいなら……

 俺自身も守らなきゃ意味がないんだ!

 俺だけが頑張ったってこいつらも辛い思いをしてしまう。

 全部一緒に乗り越えるしかない!!


「俺が悪かったよ……」

『言葉ではなく態度でしめしてくださいね』

「手厳しい奴」


 怒ってくれる人間なんかいなかった。

 俺のコトを思って注意してくれる……

 なんか怒られてるのにうれしいな。



 ボォン、ボォンッ、ボンボンボボォォーンッ……



 この音!?

 爆発する音!?


「今の音はなんの音だ!?」

山彦やまびこさんに魔法による攻撃がくわえられています!』

「くそぉぉおぉっ!!」

『落ち着いて下さい! 私達が何も感じないというコトは無事な証拠です!』

「そうだな……」


 落ち着け自分!

 あと少しで現場につくんだから!

 にしてもデカい木が多くて思うように進めない……



 ゴォン、ドンドンッ、ゴォオン、ゴォンボンボン、ドドドドドォォーンッ……



 音が強くなってる!?

 間に合え!

 頼むから無事でいてくれ! 


御主人様マスター! 山彦やまびこさんの傍に三人の人間がいるのを確認しました!』

「そいつらが攻撃してるのか!?」


 三人か……

 絶対にボコボコにしてやる!


『一人の人間が山彦やまびこさんを庇っていると推測されます! 残りの二人には攻撃意思があるのは間違いありません! この先を曲がれば見えます!』


 状況がいまいちわからないけど……

 二人は死刑確定だな!

 この邪魔な木さえこえれば見えるはず……



 ドゴォン、ドゴォン、ドゴドゴドゴッドゴォォオン!!

 パキィーン……



 見えた!

 飛び交う炎の玉に大量の煙……

 割れて消えていく光のような破片……

 そして……

 その真ん中にいるのは女の子か?


 いた!!

 女の子の腕に山彦やまびこがいる!


 あの離れた所にいる杖をもったギンギラギンのセンスなし外人野郎が魔法を使った奴だな。

 真っ黒な恰好をしたあの今時風な野郎もきっと――


 ――速い!?

 一瞬で移動しやがった……

 おい!?

 どうしてその黒い剣を振りかぶるんだ!?

 山彦やまびこにあたっちまうじゃねぇか!!



「やめろぉぉおーっ!!」



 この距離じゃ叫ぶ位しかできねぇ……


 でも剣の動きが止まった!

 ギンギラ外人野郎まで手を止めてやがる!

 動きが止まった今がチャンスだ!!


「おい……」

「お前は何者だ……?」


 お前らなんかに名乗るつもりはない!

 おっ!

 女の子もこっちに気付いたな……


「お願い助けてっ!!」


 待ってろ!

 すぐに助けてやるからな!



「「「変態だぁあーっ!!」」」



 なっ!?

 なんだよ三人してハモリやがって!


「キャァアッーッ!」


 え?

 女の子が顔をふせた!?

 なんで!?


 ……あっ!

 俺って今……


 素っ裸だわ。


 でもそんなの気にしてる暇なし!

 男の裸なんてへるモノなんか一切ないわ!

 赤の他人にどう思われようが知るか!


「おい! そこの黒い奴! 俺の山彦やまびこから離れろ!」


「なんだ君は? ゲームの中で変態行為とは恥を知るがいい!」

「うぇぇ~、男の裸ってマジ気持ち悪りぃ~……」


 間違いない……

 あいつらは敵だ!


白玉しらたま! このゲームはPK行為は許されているのか?」

『これはゲームではありません! 相手を傷つけるべきではありませんが……死なない程度ならアリでしょう!』

「よっしゃ! よくいった!」


「何? その白いヒヨコ? マジうける! ぎゃははははっ……」

「まさか君は魔獣操士モンスターテイマーなんてマイナー職業についたんじゃ? あはははは……これは傑作だよ……くっくっくっ……」

「ぎゃははっ、お前ってば笑いすぎだろ……ぷーっ、ぎゃはははっ! よりにもよってヒヨコって……」

「あはは……そうか、このラッコも君のなんだな? ふぅ、なら君にも罰をうけてもらおうじゃないか?」

「ぷーっ! ラッコとヒヨコって傑作じゃん! ちょっと手加減してやってよぉ~」

「君には装備が一つもない。見るからに女っぽくて弱そうなのは心から同情するよ……」

「ザコだよザコ。チビだし……変態だし……ぎゃはは……ん? でも……顔可愛くね?」

「やめろ気持ち悪い! オカマもいけるのかお前は?」

「ん~……無理! だって顔可愛くても体が男じゃ遊べないじゃ~ん」


 なんだこいつら?

 多分だけど同じゲームモニターだよな?

 喧嘩うってるよね?

 PK上等だよね?

 やってやろうじゃん……



 パタパタパタ



 え?

 白玉しらたま


「やべぇ! あのヒヨコ飛んでるよ? ぎゃはははははっ」


白玉しらたまっ! 下がれ!」

『いいえ、ここはどうやら御主人様マスターの出番はまだのようです』


 いやいやいや!

 いくら白玉しらたま先生とはいえ戦えないでしょ!?


「ココは俺が――」

『――私を信じて下さい』


 ……うん。

 本当はこの手でボッコボコにしてやりたかったけど……

 まずは白玉しらたまのお手並み拝見しましょうか。


「どうすんの? あのヒヨコ焼き鳥にしちゃ~う?」

「まて! アレは捕まえた方がいいだろう……」

「珍しいぃ~。魔獣モンスター撲滅主義者なのにどうしたの?」

「とにかく……アレは捕獲しよう!」

「了解~」


 あぁぁあぁ……

 見てるだけってなんか落ち着かないよ。

 どんどんあいつら近づいてくるけど、どうする気なんだ?


『分析完了』


「な? なっ? あのヒヨコなんか言ってるぜ?」

「お前は油断するな! 盾がない今は庇ってはやれないからな」


『確かに、今のあなたは戦闘力が65%も落ちていますから気を付けた方がよさそうですよ? ……田中太郎さん』


 え?

 太郎?


「ち、ちが、違う! 僕の名前はヒカルだ!」

「え? お前……太郎って名前なの!? ぎゃはははっ、マジかよ?」

「違う! 違う! アレがデタラメをいっているだけであって――」


『――田中太郎さんの精神、肉体、知力の数値はよくも悪くも普通です。体験に関しては悪い方でしょうか? 総合的能力を数値化すれば平均以下ですね』


「平均以下っておいおいおい」

「黙れぇえーっ!」



 パタパタパタ



「降りて来い! この卑怯者め!」


 うわぁ……

 白玉しらたまが今からやるコト分かっちゃったよ。

 コレってまさに心理攻撃だろ?

 上空で安全な所から言いたい放題って……

 仲間ながらもえげつねぇ!


『見た目を重視する為に山田太郎さんが優先して取得したのは暗黒魔具セット。暗黒兜、暗黒鎧、暗黒靴、暗黒手袋、暗黒石、暗黒盾、暗黒剣……この七つを揃えて装備すれば全ステータスに補正が加わり戦闘力が65%も増大します』


 へぇー。

 そんな装備あったんだ……

 欲しくないけどね。


「ふん。この暗黒装備の恐ろしさが分かっているのなら降参して――」


『――ですが、一つでも欠けてしまえば魔具として効果を失ってしまう三流品の低ランク魔具です。山田太郎さんの数値ではこのレベルが精一杯だったんでしょうね』


「なんだとっ!?」


『まぁ、暗黒魔具セットの重たいという欠点を俊足力クリールヴィテスのスキルで補っている所だけは評価できますが……』


 なるほど……

 あの凄いスピードでの移動もスキルだったのか。


『それ以外のスキルは基本的なモノばかりで誉めれる所はありません。取得する為の数値が足りなかったんでしょうか……職業もただの戦士ですから。見るからに弱そうなコトを心から同情致します!』


 わぉ。

 白玉しらたま先生かっこぃぃ!


「……アレを今すぐ魔法で撃ち落とせぇえぇぇぇえっ!!」


 効果抜群だな。

 でもさすがに魔法は危なくないか!?


白玉しらたまっ!」

『……大丈夫です』


 ……分かったよ。

 お前の気持ち。

 最後まで見守ってやる!

 

「はいはいはい。捕獲とか言ってたくせに……焼き鳥になっても俺を恨むなよ~。火よ、炎よ――」


『――ずいぶんと痩せられたんですね? 佐藤勇気さん』


 痩せられた?

 どういうコトだ?


「は、は? はぁ!? なっ、なんの、なんのコトか……」

「佐藤勇気? お前、日本人なのか? フィリップだって――」

「――そうさ! 俺はアメリカ生まれのアメリカ育ちで……父親も母親も……」

「そんなのどうでもいい! 早く魔法で撃ち落として黙らせればいいだけだ!」

「……火よ! 炎よ! 火炎よ! 狂い弾け飛びやがれっ! 火炎弾丸終式ブリュレバルマキシマムっ!」


 しまった!!

 避けろ白玉しらたまっ!!



 ドドドドドドドドドドドドドドドド……



 嘘だろ!?

 なんて量の火の玉だよ!?

 これじゃぁ白玉しらたまが……


 ……?


 あれ?

 俺がなんともないってコトは……


「ぎゃははははははっ! どうだ? 見たか俺の力をさ~」

「やりすぎだぞ……と言いたい所だが今回はよくやったよ」

「だろ? 俺の魔法があれば……え? 嘘だ? 嘘だ!?」

「まさか……」



 パタパタパタパタ



 煙がなくなくなっていくと、しっかりと元気そうな姿が見える……

 かすり傷一つなし。

 よくよく考えれば、攻撃を分析して逃げ道確保なんて得意分野でしたよねぇ。

 白玉しらたま先生流石です!!


『ゴホゴホッ……煙を吸わせるという意味であれば素晴らしい魔法ですね』


「なんでだよぉおぉーっ!!」

「もう一度やるんだ! 二度もまぐれは続かない!」


『何度やっても同じですよ? 佐藤勇気さんの装備には何一つ魔力が通っていません。職業が火炎魔導士なのに装備補正で魔力も精神力も何もを上げてないのであれば……ただのザコですよ?』


 惚れそうです!!

 いや、もう惚れましたっ!!


 しかしまぁ……

 あんなギンギラギンなのに見かけだおしだったとは。


「魔力がない? こんな銀色づくしの派手な装備なのに……」

「うるせぇ!」


『装備はすべて銀色に塗っただけの粗悪品。魔法も火炎弾丸ブリュレバルしか取得していません。なぜなら残りの数値をすべて使って変換したモノは――』


「――黙れぇえぇぇーっ!!」


『……申し訳ありません。私としたコトが話し過ぎてしまいましたね。体重100キロ越えだった自分を変えたくてスタイルをスリムボディにかえ、髪を金髪に染め、瞳を青にかえて、目鼻口の位置も修正されコトは黙っておきましょう』


 ひぃぃいーっ!

 鬼だ……

 悪魔じゃ……

 あんなのバラされたら俺なら立ち直れないわ。


「くそ、くそ、くそくそくそ……」

「許すものか……絶対に正義の裁きをうけさせてやる……」


 うわぁーっ……

 あの二人、目が血走ってますよ?



 パタパタパタ



 え?

 俺の所に戻ってきてるみたいだけど……


『ふぅ。スッキリしました』

「おーぃ、白玉しらたま先生? 敵を挑発しただけで倒せていませんが?」

『いえ。私の目的は山彦やまびこさんと彼女を避難させるコトでしたから』

「へ?」


 あれ?

 あれれ?

 そういえばいつの間にか女の子も山彦やまびこもいなくなってる!?


『彼らの注意をひいた状態で、伝心テレパシーで隠れるように指示しておきました』


 え!?

 優秀すぎるわ。


『これで思う存分に暴れてよい環境が整いました』

「暴れてよいって……俺を止めないのか?」

『あの程度のレベルでは御主人様マスターに攻撃をあてるコトはできません』

「なんだかんだで……怒ってる?」

『当たり前です! 私達の御主人様マスターをバカにしたんですよ? 殺さない程度にコテンパにしてきてください!』


 白玉しらたまは冷静で大人っぽいと思ってたけど……

 子供っぽい所もあるんだな。

 まぁ、期待に応えますけどね。


「さて、そこのお二人さんはどうする? 俺的には可哀想になってきたからさ、逃げ出すってなら見逃してもいいんだけど?」


「ふざけるなぁーっ!!」

「僕達の秘密を知ったんだ……五体満足で帰れるとは思うなよっ!!」


 そうこなくっちゃ!

 言っとくけど……

 喧嘩にはかなり自信あるよ俺?


 部活の先輩十人に合宿所の風呂場で襲われた時も……

 駅前でヤクザに囲まれて逃げ場なくなった時も……

 毎日のようにカツアゲしてくる奴らも、痴漢してくる奴らも、全部全部……

 この腕っぷしでブチのめしてきたんだからな!!


「きやがれ!!」



 シュパッ、シュパパパパッ



 え?

 今なんか通らなかった?

 目の錯覚じゃないのなら……

 カッコいいコアラさんを見たような?



 ガシャン、ガラガラガラッ

 パラッ、パララララッ



「うわぁあああぁぁあっ!! 僕の、僕の鎧がぁぁああぁぁっ!!」

「俺の服がぁあぁぁーっ!!」


 黒い鎧もギンギラギンの服も全部細切れになって崩れ落ちちゃいました。

 それはそれは見事な腕前。

 あっという間に素っ裸な男の出来上がり!


「よぉ、お二人さん……変態の世界へようこそ」


「僕の、僕の、僕のそ、そ、そう、装備……」

「見るなぁあぁあーっ!」


 素っ裸の男三人なんてシュールな絵だが……

 こうなれば勝負は武力じゃない!

 アレの大きさだな……


「ふっ……勝ったな……」


「「うわぁぁあぁっ!! 覚えとけぉぉおーっ!!」」


 ぷぷーっ。

 素っ裸になった位で逃げだしてやんの!

 男なら正々堂々してろっての!!


「むぅ~!」

黒雪くろゆき!」


 離れた草陰から顔を出すパンダとか超可愛い。

 でも良かった。

 どこにも見当たらないから気になってたけど……

 御剣みつるぎと一緒だったんだな。



 シュンッ



 そして御剣みつるぎさんイケメンすぎだろ?

 ビーム○ーベルを消す後ろ姿って映画のポスターになる奴だよね?

 しかも、体を傷つけずに服や鎧を一瞬でコマ切れって……

 ハイスペックすぎ!

 そりゃ漫画とかでは見たコトあったけど、現実で見れるなんて思ってもなかったし。


『どうやら黒雪くろゆきさんが御剣みつるぎさんを探して連れてきたようですね』

「やっぱりそうなんだ」

「むぅっ」


 怪力持ちであんなに強いのに……

 助けを呼びにいくあたりが黒雪くろゆきらしいかも。


 ……ふぅ。

 でもこれで、なんとかトラブル解決かな?

 まぁ……

 一言だけ言うならば……



 見せ場とられたぁぁああぁぁあっ!! 

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