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フラグがたたない!  作者: カンザキ
ラブ・ゲームは突然に。
5/27

現実はゲームと違います

 まずは現状の整理をするべきだろう。

 俺は授業中にスマホに届いている田中からのメッセージに目を通す。

 簡単に言うとルールはこうだ。


 ・キスなど接触行為だけではなく、言葉で気持ちを伝え合わなければクリアにならない

 ・正式に恋人であるとお互いが認識できなければならない

 ・期間限定の恋人関係は認められない

 ・両思いで付き合わなければならない

 ・相手に別の恋人がいる場合は、すべての恋人と別れた後にクリアになる

 ・期限の延長はゲームマスターの承認があれば可能とする

 ・条件やルールはゲームマスターであれば自由に変更ができるが、クリア不可能な条件は設定できない

(原文ママ)


 ゲームマスターっていうのは、あの田中のことか…。

 自由にルール変更できるって、ゲームシステムとして破綻していないか?

 簡単に理解しやすく説明してくれたおかげで省略することも、言い方を変更することも必要なかった。

 それにしても困ったことに、神宮寺を怒らせてしまったので絶望的だ。

 そのため、星音を攻略するのがいいかもしれない。

 他にもヒロインがいるが、出会える条件がランダムだったり、複雑すぎて他のヒロインの攻略を諦めないといけなかったり、夏休み以降に出会えるのでタイムリミットまで短い場合だったりと短期間の攻略に適していない。

 現時点で攻略を進められるのは、星音と神宮寺、それともう一人だけだ。

 もう一人は攻略難易度も高いので、必然的に星音ルートを目指すべきだろう。

 俺には全キャラの攻略データが頭の中にインストールされている。

 だから、今から何が起こるかが予測できるだけだ。

 これってチートではないか?

 ふふふ、勝った!

 田中の悔しがる姿を見たくなってきた。

 よし、そうと決まれば急いで行動だ。

 俺にはもう次の攻略のための行動パターンがシミュレーションできているのだ!


 ◇


 放課後、俺は行動を開始する。

 確かゲームでは、初日は部活が休みの星音を誘って、二人きりで下校するってイベントが発生するはずだ。

 そして、俺は放課後になると星音の席を真っ直ぐ目指す。

 誰とも会話していない…よし、ナチュラルに声をかけよう。

「星音、帰らないか?」

 完璧にゲームと同じセリフだ。

 この後の彼女の反応は、「ちょっと待っていて」だったはずだ。

 我ながら覚えすぎていて怖い。

「あ、ごめん…今日はオフだから部活の友達とクレープ食べにいく約束しているんだ」

「へ?」

 何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?

「今日、昼に約束したんだ…ごめんね」

 昼休み?

 そういえば…このイベントは昼休みに、星音と放課後に買い物に行く約束をすることで発生するはず。

 そして、俺は昼休みは田中に呼び出されていて…っく。

「ごめんね、また明日」

 俺が悔やんでいるのを放っておくように、星音は教室を出ていく。

「おい!」と、呼びかけた言葉が宙を切る。

 その場にはフラれた俺が立ち尽くしていた。

 しかし、ここで時間を使いすぎるわけにはいかない。

 ヒロインは一人ではないのだ。

 ゲームと同じ行動をするのであれば時間との勝負になる。

 俺は急いで生徒会室の前に向かった。

 この時間ならまだ間に合う!

「あら、あなたは…」

 生徒会室の前で神宮寺と遭遇する。

 そう、ここは主人公が謝罪に来たが相手も謝罪をして、誠実な相手だと評価してもらえるイベントが発生するはずだ。

「神宮寺さん」

「……」

 初手の反応からゲームと違う!

 しかし、ここは軌道修正をするしかない。

「あの時は、本当にごめん!」

「え?」

「慌てて、思ってもいないことばかり言ってしまって…神宮寺さんを傷つけてしまって、凄く後悔しているんだ」

「こ、後悔……そうですか」

 深々と頭を下げて謝った効果か、どことなく声が柔らかくなる。

 これが社会人を十年以上やって磨いたテクニック、「悪くなくても勢いで謝っておけば丸く収まる」だ!

 怒りをぶつける前に、自ら非を認め謝罪をしてくる相手を無下にできないという心理的戦略の一つだ。

「私も…」

「この人、誰?」

 言葉を遮るように失礼な物言いをする女子が横から割り込んでくる。

「美穂」

 神宮寺が呼んだ名前で、ゲーム内のキャラの一人が思い浮かぶ。

 秋瀬美穂(あきせみほ)、神宮寺の信者兼、親友にして生徒会書記をしている堅物優等生の一人だ。

 基本的に男子を毛嫌いしているので、神宮寺奏慧ルートでは障害になり続けた。

 このシーンでは、神宮寺が俺を庇ってくれたはずだが…。

「ああ、この人は…」

「ああ、昼休みに奏慧にわざとぶつかって来て怪我させようとした、当たり屋の一年生ですわね」

「………」

 神宮寺は黙って俯いて、否定も肯定もフォローもしてくれなかった。

 現段階での好感度が最低だからな。

「あなた……サイテーですよね」

「いや、あれは…」

「さっき、あなたも非を認めたじゃありませんか」

 神宮寺が俺の態度を冷たく見る。

「それは…」

 こいつ、ゲームの中より性格悪くなってないか?

「サイテーなんですから非難されて当然じゃありませんか?」

 秋瀬が神経を逆撫でするようにクスクス笑う。

 こいつ、邪魔しやがって…。

「もう、いいですか?」

「え?」

 秋瀬は俺を無視して、神宮寺と一緒に生徒会室に入ろうとする。

「あなたは謝罪に来たのでしょ?」

「えっと…もう少し…話を…と思いまして…」

 正解だけど、これだけで終わるのは予想してなかった。

「奏慧はあなたに話すことはありません」

「美穂」

 秋瀬の対応が失礼だと思ってか、神宮寺が彼女を宥めるようにする。

「奏慧も、こんな不良と関わっていたら生徒会に悪影響を及ぼすかもしれないから、相手しないのが一番なのよ」

 そう言って、秋瀬は生徒会室の中に神宮寺の背中を押して入れようとする。

「ちょっと、俺は謝ったのに…」

「あなたの罪悪感を薄くするための会話に付き合っている時間などないわ。 お引き取りください」

 神宮寺に呼びかける時間を与えないように、ピシャッと強い音を響かせて秋瀬がドアを閉める。

 生徒会室のドアを目の前にして俺は立ち尽くしてしまう。

「っく…こっちもダメか」

 今日攻略できるヒロインがいないと判断して、学校を退却することにした。


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