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フラグがたたない!  作者: カンザキ
サブシナリオも大切らしい
23/27

サブキャラクターの夢

 放課後になると、俺はある場所に呼び出されていた。

 昼休みに梓にメッセージで買い物に誘われる。

 その待ち合わせ場所が、街のゲームショップであり、梓のバイト先。

 看板には「アソビバ」と書いてある。

 昔からのゲームショップだが、トレーディングカードや品揃えも良さそうで、人も入っているように感じる。

 店の前でとりあえず五分前に待っていると、歩いてくる梓の姿が見えてくる。

「お待たせ」

「学校から一緒に来たら良かったんじゃないか?」

 わざわざ、遠くのゲーム屋で待ち合わせというのも不自然だった。

「ああ…それは和彦は誤解されたらマズい子がいるんだろうなって思ったから、気を遣ってあげたんだよ」

「な、なんだよ、それ」

「今度、デートするんだって?」

「え…」

 まさか、梓に星音とのことがバレているとは…。

「星音、楽しそうに話していたよ」

「そ、そうか…」

 星音が楽しそうにしていたって言葉に、意外と俺も安心している。

 ツンデレな反応ばかりで、本心が読みにくいので実際のところはどう思っているのか不安だった。

「だから、友だちとして遊ぶんだったら、誤解しないようにしないとね」

 流石、サポートキャラクターだけあって、色々と気が利く。

「デートいつだっけ?」

「明後日だよ」

「そうか…明後日か」

 不思議と彼女は寂しそうな顔をする。

「どうしたんだ?」

「ううん、明後日は星音とクレープでも食べに行こうと思ったのに寂しいな〜って思っただけだよ」

 何か誤魔化されたような気もする。

「でも、そういうことなら、私はいつでも全面協力するよ」

「ああ、助かるよ」

「任せておいて」

 そう言いながら、店内に入っていくので後に続く。

「なあ、ここに何をしに来たんだ?」

「ああ、そう言えば言っていなかったね」

 申し訳なさそうにしながら、彼女は笑いながらこう続ける。

「一緒にやるゲームを選ぼうと思って」


 ◇


 そこからゲームショップで一緒にプレイできそうなアクションゲームを買って、俺の自宅に行って二人でプレイした。

 途中から亜美も入って三人でプレイすることになり、気づけば家族で梓と遊んでいた。

 そのままの流れで、梓は俺の家で食事をしていくことになった。

 そして、家も近いということもあり、食後もゆっくりするために俺の部屋にいるわけなんだが…。

 相手が梓だといえ、女の子と二人きりで自室にいるのは星音以外では初めてで緊張する。

 別に疾しいことがあるわけではないが、もう夜も遅いので何故かドキドキしてしまう。

「ねえ、和彦?」

「な、な、なんだよ?」

 明らかに動揺してしまう。

 三十を超えているのに、女子高校生相手に何を緊張しているんだ?

 俺の部屋に座っている制服姿の相手をどう見ればいいんだ?

 目のやり場にも困ってしまう。

「星音とデートするんだよね?」

「あ、ああ」

 また、その話か。

「でも、和彦が星音狙いか…私は神宮寺先輩狙いかと思っていたけど」

「そ、そうか?」

 バレバレだった。

 ここで、両方狙っているなんて口が裂けても言えない。

「でも、和彦って彼女欲しかったんだ?」

「え、そうだな…意外か?」

「意外っていうか、和彦って誰かに恋をしないと思っていた」

「え?」

 まるで、その言葉はゲームの主人公ではなく俺自身に投げかけられているように感じられた。

「最近の和彦って相手の心に決定的な一歩を踏み込まないところあるから、他人のことに興味があるのか疑問だったんだ」

「俺が冷たい人間だって聞こえるけど…」

「ごめん、そういうことじゃなくて、達観しているというか、一歩引いて見ているというか…」

 梓の指摘はもっともだ。

 この世界において、俺はあくまで異物だと思っている。

 客観的にどうやって攻略するべきかだけ考えている。

「でも、この前はびっくりした」

「この前?」

「秋瀬先輩を連れてきたとき」

「あ、ああ…」

 あれは本当に、らしくないなと自分でも思う。

 あそこは神宮寺のやりたいようにやらせて、秋瀬を後で説得するのが神宮寺ルートに入るための最良の選択だと思っていた。

 そう思っていたのに…。

「あれで和彦って本当は優しいんだなって思えた」

「優しい?」

「そう、あの時に二人の問題にわざわざ首をつっこむ必要なんてなかったんじゃない?」

「まあな」

「でも、そうしなかった…何で?」

 梓は俺に顔を近づけて聞いてくる。

 その綺麗な瞳が俺に嘘をつくなと語りかけているようだった。

「あの二人が、あのままだと俺が嫌だっただけ…だよ」

「ふふふ、そういうところが優しいって言ったんだよ」

 全然分からない。

 しかし、彼女は座り直して満足そうに笑みを浮かべている。

 この話は自分でも説明できないことが多いので、あまり深く話さないほうがいいだろう。

「お前はどうしてゲームショップで働いているんだ?」

「それ、昨日も言った」

「ゲームが好きだってやつだろう?」

「うん」

「好きだからってバイトにする理由にならないだろう…プレイするだけなら、効率のいいバイトをしてゲームをプレイする時間を増やした方がいい」

 気にはなっていた。

 ゲームショップに行って繁盛はしていたが、時給や待遇が特別良いわけでもない。

 ゲームをプレイするだけなら、今の時代ではネットでのダウンロードが主流になっている。

 パッケージのゲームショップを選んでいる理由が他にあるんだと思った。

「意外と鋭いね」

「夜遅くなっていたのも働いていたわけじゃなくて、ゲームやゲーム売り場を見ていたっていうのだって、どっちかというと売る側か…」

「作る側の発想だって?」

「そ、そうだ…」

 言葉を奪って、彼女は嬉しそうにする。

「私、ゲームデザイナーになりたいんだ」

 ゲームデザイナーとは一般的なデザイナーではなく、ゲームの企画をする人のことを言う。

 しかし、彼女の夢にしては意外だと思わされた。

「意外だなって顔をしているね」

「あ、ああ…」

「私だって、自分のしてみたいこと…やりたいことがあるんだ」

「何でゲームデザイナーなんだ?」

 ゲームデザイナーという単語が出てくる時点で、彼女は割とゲーム業界のことを勉強しているのだろう。

 エンジニア、キャラクターデザイン、シナリオライターとか分かりやすい職業のほうが、高校生が目指す夢としてイメージできる。

 しかし、彼女はゲームデザイナーという職業を目指すと言っている。

「それは、私は作りたいゲームがあるからよ」

「作りたいゲーム?」

 彼女の顔が真剣な顔になっていることに気づく。

 今までの笑って誤魔化すような表情ではなく、真剣に自分の本音を口にしている人間の表情だ。

「それは…」

 コンコン。

 彼女の言葉を遮るようにドアがノックされる。

 俺らは見つめ合い、彼女はその続きを言わないと決めた顔をする。

 コンコン。

 もう一度、ノックされる。

 亜美か?

「亜美か?」

「いるなら、返事くらいしなさいよ」

 とドアを開けながら、新しい来訪者が入ってくる。

 星音だった。

「ほ、星音」

「あ、梓…」

 どちらもお互いが、この部屋にいるとは思わなかったのだろう。

 固まってしまっている。

 後ろめたいことはないのだが、何故か罪悪感が生まれていく。

「あんた、梓を家に連れ込んで何をしているのだ?」

「いや、誤解だよ」

「そうよ、星音…ゲームして遊ぼうってなっただけ」

 俺と梓で必死になって話すが、何故か下手な言い訳をしているみたいだ。

「ふ〜ん、別にいいけど…」

 拗ねたように星音は口を尖らせる。

「ほ、星音こそ、こんな時間にどうしたの?」

 梓の切り返しに、今度は星音も慌てる。

「べ、別に…このバカに明後日のことを確認しに…」

 話していて途中で墓穴を掘ったことに気づいたらしい。

 そんなことで、わざわざ家に訪れている時点で当たり前に家に来ていることがバレてしまう。

「このバカに勉強でも教えてやっているのよ…ね?」

 最後の「ね」を言いながら俺を目で威圧して同意を求めるのをやめてほしい。

 特に星音も後ろめたいことがないのに、言い訳っぽくなっている。

「そ、そうなんだ…だったら、私はお邪魔だから帰るね」

 そう言って、梓は気を利かすように、急いで荷物を整理して立ち上がる。

 そして、「じゃあね」と言って、俺らの反応を無視して部屋から出ていく。

「いや、梓…」

 星音の言葉は閉ざされたドアにしか届かなかった。

 追いかけて送ろうとも考えたが、今の星音を部屋に一人にもできないので迷う。

「あんたのせいで、梓に誤解されちゃったでしょうが!」

 理不尽な怒りをぶつけられる。

「梓が夜道を一人で危ないから、送っていきなさいよ! 気が利かないわね!」

 と、部屋を追い出される。

 でも、急いで帰る梓には追いつかず、道中で「家に無事に帰れたよ」と連絡がきた。


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