表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/18

第9回放送【ヴァラール魔法学院、海洋魔法学実習室について】

キクガ「こんにちは、素敵なお昼休みをお過ごしでしょうか。今回も『らぢお♪がやがや冥府』は現世の話題をお届けします」



オルトレイ「むぐむぐ、呵責開発課のオルトレイ・エイクトベルと」



アッシュ「ずるずる、獄卒課のアッシュ・ヴォルスラムと」



リアム「もちもち、リアム・アナスタシスです」



アイザック「もぐもぐ、もう開き直るがアイザック・クラウンだ。今宵もよろしく頼むぞ」



キクガ「食べながら喋らない」



オルトレイ「そうは言ってもな、キクガよ。全員昼飯の最中にこのラジオ番組の存在に気がついたのだぞ。慌てて放送室に集合したのはお前もご存知だろう」



キクガ「よく見なさい、私も現に食べながらやっている訳だが?」



リアム「キクガさん、つまりそれは自分のことを棚に上げているって言うんだよね?」



キクガ「私はあくまで『口の中にものが入った状態で喋るな』という意味合いで言った訳だが」



オルトレイ「ところで今回の現世の話題は一体何をするんだ。学院長室でも紹介するか?」



キクガ「それはさすがに個人情報保護の観点から撮影は出来なかったが、今回もまたヴァラール魔法学院の設備紹介な訳だが」



アッシュ「またか」



アイザック「仕方があるまいよ」



キクガ「それでは今回の話題はこちらな訳だが」





現世の話題:ヴァラール魔法学院、海洋魔法学実習室について





キクガ「こちらを今回は紹介していこうと思う訳だが」



オルトレイ「ほう、海洋魔法学実習室とな。海洋魔法学まで学べるとは、やはりヴァラール魔法学院は魔法に特化した学院だけあるな」



アッシュ「お、魔法博士が食いついたぞ」



リアム「海の魔法? 津波でも起こすの?」



アイザック「海洋魔法というのは魔法の大まかな括りのことを示すのだよ。海に関連する魔法だとも。人魚の歌などが代表例だ」



オルトレイ「お、知っているなら今回はアイザックに説明をお願いしようかな。いやぁ、楽が出来る楽が出来るもぐもぐ」



アイザック「吾輩、それぐらいしか知らんよ。他に何かあったっけ?」



オルトレイ「こいつ使えねえな」



アッシュ「仕方ないだろ、演劇系に必要な魔法しか学んでこなかったんだぞ。サーカスの団長なんだから」



アイザック「他人を楽しませる為の魔法ならいくらでも学ぶのだがなぁ」



リアム「意味ないねもちもち」



キクガ「オルト、それからリアム君。食べながら喋らない」



オルトレイ「ふぁい」



リアム「んむ」



キクガ「さて、今回も事前にオルトが写真を加工してくれた訳だが。人魚が写りたがらないということだったが」



オルトレイ「まあ、神秘的で夢いっぱいの種族だということが分かったということでオレの自信作だ」



キクガ「それではまずは写真の公開から」





挿絵(By みてみん)





オルトレイ「間違えた」



キクガ「オルト?」



オルトレイ「こっちだ、こっち。これがそう」



アッシュ「テメェの倅が写ってたような」



リアム「しかも水着だったね」



アイザック「海洋魔法学実習室の取材ついでに娘の写真も撮影ということかね。いやー、仲のいい親子だ」



オルトレイ「いやこれはファンクラブの何でもない」



キクガ「何か言いかけたが」



リアム「ファンクラブ?」



オルトレイ「人間の記憶って殴れば飛ぶっけ?」



アイザック「拳を構えたぞ、この暴力魔法使い」



オルトレイ「気を取り直して海洋魔法学実習室の写真だ。これだぁ!!」





挿絵(By みてみん)





オルトレイ「どうだ、美しかろう。この雄大な青さがまた素晴らしいのだ」



キクガ「先程のユフィーリア君の写真は?」



オルトレイ「人間の記憶って首を切り飛ばせば消えるかな」



アッシュ「キクガ、それ以上は言うな。何ならあの写真、懐に大事にしまい込んだから」



リアム「あれって頼んだら撮らせてもらったの?」



アイザック「リアム殿、それ以上は黙りたまえよ。本気で殺されかねない」



オルトレイ「はい、海洋魔法学実習室の説明!! キクガ!!」



キクガ「仕方があるまい。では説明から」





ヴァラール魔法学院、海洋魔法学実習室

名門魔法学校にある『海洋魔法学』の魔法を学ぶ為の教室。見た目は暗い部屋の中に穴が空いているだけだが、穴の中に飛び込むと海に繋がっている。一種の転移魔法であることが推測される。

人魚やその他の魚類などが生息しており、自然そのままの生態系が確立されている。海の状態は非常に綺麗でゴミなどは存在しないのは、定期的に用務員やこの分野を学ぶ生徒たちがゴミ拾いをしているから。





キクガ「用務員、つまりユフィーリア君たちがまともに仕事をしているという訳だが」



オルトレイ「常から仕事をしていないからな、あの阿呆娘ども」



アッシュ「海洋魔法学って結局何なんだよ」



オルトレイ「海に関連する魔法と言えよう。種類が多いから細分化すると面倒だが、代表的なものをいくつか挙げておいたぞ」





渦潮魔法:渦潮を作り出す魔法。潮の流れを変えることが出来るもので、有害な魚類が人間の漁の領域に及ばないようにする為に必要となる。


人魚声楽魔法:人魚が有する歌声を再現する魔法。講師となるのが本物の人魚が多いので、この分野に一応は属している。


変身魔法:魚類限定。魚に変身した際の筋肉の動かし方などを学ぶ。


魔法動物生態調査:水棲生物限定。魚類の生態を調査する分野。


深淵専攻:海溝などを調査する分野。自分の身体にかかる水圧を魔法で調整したり、海溝の底を調査したり、光源魔法で照らしてみたりなどサバイバル知識を身に付けたいならこの分野がお勧め。





オルトレイ「なお、深淵専攻は聞いた話になるが5学年からの受講可能となるようだ。要するにそれだけ危険度が高い」



リアム「海の底まで行けるの?」



オルトレイ「空気飴という海底でも会話が出来るし地上のように息が出来る不思議な飴を服用しても、水圧が身体にかかるのは否めないからな。海洋魔法学実習室では基本的に『泳ぐ』ことが必要とされるし」



アッシュ「これ、泳げなかったらどうなる?」



オルトレイ「空気飴を服用しているから溺れることはないが、まず地上に戻れないな。諦めて海底で暮らせ」



アイザック「そんな殺生な」



キクガ「それは、地上まで引っ張り上げてもらわねばならないな」



オルトレイ「一応、人気のある分野を紹介したが何か興味のあるものは?」



リアム「はい」



オルトレイ「お、積極的だな」



リアム「クラーケンはいるの?」



オルトレイ「いるぞ」



アッシュ「いるぞ」



アイザック「いるのか!?」



キクガ「いるのかね?」



オルトレイ「オレとしてはアッシュが同意してきたのが驚きだがな。何で知ってんだ」



アッシュ「クラーケンは冬の海で見かけるって聞いてな。たまたま海の近くに家を移したことがあって、そこで海でも狩りをしたもんだよ。でけえ蛸が狩れたな」



オルトレイ「なるほど。オレの時は巨大な烏賊だったな。食べる部分が多いが、解体するのにちと手間取ってな」



リアム「ぼくも倒したことあるよ」



オルトレイ「英雄譚で語られていたな。そういやそうだったか」



リアム「でも食べたことなかったな。食べればよかった」



キクガ「そもそも、クラーケンを食べるというのが驚きな訳だが。美味しいのかね?」



アッシュ「美味かったぞ。ただ、やっぱり肉の方が好きだけどな」



オルトレイ「それは調理方法が乾燥させて長持ちさせることに特化した移動の狩猟民族たるお前たちは、まあ碌な調理方法をしなかっただろう。せいぜい焼いたぐらいではないか?」



アッシュ「よく分かったな、その通りだ」



オルトレイ「戯け、クラーケンの美味い食い方を知らんとは」



アイザック「巨大な海産物に美味しい食べ方があるとは聞いたことがない。あれはそもそもどのような料理に適しているのかね?」



オルトレイ「油でカラッと揚げるのだ。アヒージョにすると酒が進む進む」



アイザック「それはいいな。ぜひともご相伴に預かりたいところだがね?」



オルトレイ「クラーケンを獲ってきてから言え」



アッシュ「分かった」



オルトレイ「そっちが了承しちゃった」



リアム「ぼくも行くよ、アッシュさん」



キクガ「頑丈な鎖は必要かね?」



オルトレイ「キクガ、冥府天縛の職権濫用はよくない。あと何でそんなに乗り気なんだそこの脳筋代表格」



アッシュ「食ってみてえ」



リアム「食べたい」



オルトレイ「そんな真っ直ぐな要求をされたら答えるしかないだろう」



キクガ「オルト、ところでもう1つ気になるものがある訳だが」



オルトレイ「殊勝な考えだな。何だ?」



キクガ「深淵専攻とは?」



オルトレイ「サバイバル知識を全振りにした危険地域の踏破だな。水圧を魔法で調整、光源を確保、襲いくる海棲生物を蹴散らし研究成果を持ち帰るという勉強だ。応用力が必要となり、この分野を学んでいると危険地域での魔法の研究や情報収集で役立つのだ」



アッシュ「これ話を聞いていると面白そうだよな」



オルトレイ「ちなみにこの資格で『危険領域踏破者』というものがあるのだがな、世界でも100人未満しか資格を保有していないが」



キクガ「ほう、随分と努力した訳だが」



オルトレイ「ウチの娘とアッシュの倅、ついでにアム坊の倅が取得しているようだ」



リアム「え、うちの息子って凄いの?」



アッシュ「あいつ何してんだ」



オルトレイ「しかもキクガよ、お前のところの倅も中級の免許を最近取得したようだ。『楽しい』とイキイキしていたぞ」



キクガ「ショウ、成長したな……」



アイザック「吾輩の愛しき娘は?」



オルトレイ「お前のところの倅は『身体が洗えない領域に行くのが嫌』ということで取得はしていないようだな」



アイザック「アイゼルネ、お父さんは君が懸命な判断をしたと思っているぞ。その調子で生きていたまえ」



オルトレイ「いいなー、オレも取得したい。オレの時代は危険地域なんて資格など取得しないでも潜りたい放題だったのに」



アッシュ「テメェのような危険を顧みない阿呆が増えたから資格取得制にしたんだろ絶対」



オルトレイ「何だとやるのか」



アッシュ「そいや」



オルトレイ「前触れなく殴るな暴力狼!?」



キクガ「さて、今回の『らぢお♪がやがや冥府』はここまで。次回の放送ではついにヴァラール魔法学院の外に出ることとしようではないか」



オルトレイ「やっとか。長かった」



リアム「丁寧にやってたからね」



アッシュ「いい加減に飽きたんだよな。次はようやく外の世界か」



アイザック「新鮮な気分で挑もうではないか」



キクガ「それでは午後の仕事も頑張りましょう。また次回」



リアム「オルトさん、最初の娘さんの写真」



オルトレイ「黙らないとその口を引きちぎるぞ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やましゅーさん、こんばんは!! 新作、今回も楽しく読ませていただきました!! >現世の話題:ヴァラール魔法学院、海洋魔法学実習室について この章のお話もすごく好きです!!穴の中に飛び込…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ