第7回放送【ヴァラール魔法学院、ノーマンズダイナーについて】
オルトレイ「諸君、いい昼休みをお過ごしか!?」
アッシュ「うるせえ」
オルトレイ「おっと、すまんな」
キクガ「こんにちは、職員の皆様。素敵な昼休みをお過ごしでしょうか。今回も『らぢお♪がやがや冥府』は現世の情報をお届けしていきます」
オルトレイ「そして毎度お馴染みの司会進行役は呵責開発課課長のオルトレイ・エイクトベルと、冥王裁判課課長のアズマ・キクガ」
アッシュ「獄卒課課長のアッシュ・ヴォルスラムと」
リアム「深淵刑場勤務のリアム・アナスタシスと」
アイザック「渡守担当、オリバー・トムソンでお送りするぞ」
アッシュ「今、偽情報が入りましたので訂正するぞ。本当の名前はアイザック・クラウンだ。間違えないように」
キクガ「いい加減に本名を使うようにしなさい」
アイザック「何故だ!?」
オルトレイ「お前はもう芸能人ではないからだな。渡守としての自覚をちゃんと持つようにしろよ」
リアム「いつまで偽名に縋ってるの?」
アイザック「リアム君の言葉が最も切れ味のあるものだがね、教育は誰がしているのだろうか?」
キクガ「私だが」
アイザック「納得した。そりゃそうなる」
キクガ「どういう意味かね」
アイザック「冥王第一補佐官殿はよく口が回るし頭の回転も早い。悪口を学ぶにはもってこいな人物だ。誇りたまえよ」
キクガ「アイゼルネ君に言いつけてやろう。明日、地上に行く仕事があるのでそのついでに」
アイザック「あーッ、今のは小鳥の囀りだとも気にするな!!」
オルトレイ「キクガに言葉で敵うと言ったら息子ぐらいだろう。いい加減に学べ、愚かな渡守。頭の回転が早いと次の行動も早いものだ」
アイザック「変に立ち向かわないようにしよう……まあ意見などないが……」
リアム「ていうか狭いんだけど」
アッシュ「アム坊が俺の脇腹に顔を埋めてくるんだけど、そこまで狭いか?」
リアム「ふかふか」
アッシュ「埋めてえだけか? 埋めてえだけだな、おい?」
アイザック「ふかふかのワンちゃんが隣にいて、リアム殿は羨ましい限りだな〜」
オルトレイ「何だ、お誕生日席がそんなに気に食わないか? そこは1番の特等席だぞ、目立つぞ」
キクガ「気に入らないのかね?」
アイザック「圧をかけてくるのやめないかね? 吾輩、繊細な心の持ち主なのだよ」
オルトレイ「じゃあ余計なことを言うなや」
キクガ「そろそろいい加減に本題に入りたいところな訳だが」
オルトレイ「そういや、またヴァラール魔法学院のレストラン特集だったか。あと何店舗あるんだ」
アッシュ「4店舗だろ? もう終わるだろ」
キクガ「ご名答な訳だが。今回でヴァラール魔法学院のレストラン特集は終了となる。最後はノーマンズダイナーという場所な訳だが」
現世の話題:ヴァラール魔法学院、ノーマンズダイナーについて
オルトレイ「確か、ここはハンバーガーなどが有名だったな。ジャンキーなものもオレ好みだ、最後のトリを飾るのに相応しい」
アッシュ「あと大きな飯が多いんだろ。ハンバーガー1個取っても規格外だって聞いたぞ。いいよな、でかい飯ってのは」
リアム「食べ応えがあるね」
アイザック「ふむ、わんぱくであるのはいいことだ」
キクガ「そんなノーマンズダイナーの写真はこちらな訳だが。ちゃんと商材に使えるようにとオルトが加工した」
オルトレイ「背景は見ての通りだが、ここは座席数が少なくてな」
リアム「お洒落だね」
アイザック「雰囲気があって大変よろしい」
アッシュ「腹減ってきたな」
オルトレイ「店を食う気か?」
キクガ「それでは店に関する説明も添えようではないか」
ヴァラール魔法学院併設レストラン『ノーマンズダイナー』
名門魔法学校に併設された4店舗あるレストランのうちの1つ。店は地下――地中存在する。ハンバーガーや肉増しサンドイッチ、砂糖たっぷりのドーナツなど腹持ちがよく食べ盛りの男子生徒には非常に高い人気を誇る。併設されたレストランの中で最も規模が小さく席数も少ないが、回転率が高いので並べばすぐに入店可能。
中でも生徒たちに人気を博しているのが、店独特に設けたチャレンジメニューの存在。巨大すぎるハンバーガー、通称『ビッグビッグ・ノーマンズ』は卒業までに多くの男子生徒が挑戦するも涙を飲んできたチャレンジメニューである。チャレンジメニューではなくても他の食事も基本的に大きい。
キクガ「わんぱくなお店な訳だが」
オルトレイ「チャレンジメニューとな。これは大変興味があるぞ、オレもぜひ挑戦したいところだ」
アッシュ「余裕だな」
リアム「うん」
アイザック「うちのわんぱく2名が準備運動を始めたぞ」
アッシュ「伊達に先祖が暴食の狼を名乗ってねえんだよ」
リアム「英雄の時はあんまり食べてこなかったからね。いっぱい食べるよ、ぼくは」
キクガ「そんな2人の為に、今回も料理の写真を提供する訳だが」
キクガ「これらは実際に、ノーマンズダイナーで売られている2つの商品な訳だが。『ノーマンズバーガー』と『スノウシュガードーナツ』というらしい」
オルトレイ「実地調査が必要だな!!」
アッシュ「一緒に行ってやってもいいぞ」
リアム「うん、ぼくも行くよ」
アイザック「やはりわんぱくだなぁ。涎が凄まじいのだがね」
キクガ「それにしても、店が地下に存在するのかね。これはわざわざ明記することでも?」
オルトレイ「ノーマンズと名乗っているだろう。店主はノーム、いわゆる土の妖精だろう」
キクガ「そのような説明をしていないのに、よく分かったな」
オルトレイ「オレのような優秀な魔法使いになると、そこまで分かってしまうのだよ。店名と店のある位置は割と関係することが多いからな」
アッシュ「そういや今までの店名も店の位置とだいぶ似てたよな」
リアム「カフェ・ド・アンジュは空に浮いてるんだったよね」
アイザック「ダイニング・ビーステッドは地上にあったなぁ」
キクガ「そしてマリンスノウ・ラウンジは深海、つまり海」
オルトレイ「陸海空どころか地下も制覇するとはやるなぁ!!」
キクガ「全方位を制覇するとは、何か意図があるのだろうか?」
オルトレイ「魔法的に見て、陸海空は重要だからな。それぞれを固めることで他国から侵害されるのを防いでいるのだろう。ヴァラール魔法学院はどこの国にも属さない、完全な独立国家だからな。3方面のいずれから他国の魔の手が伸びてもおかしくない」
アッシュ「地上は獣人や人間のいる場所として長らく語られてきたし、海は人魚の独壇場。天空は天使様がいるときた。さらに地下には土の妖精ノームがいる。入り込む余地はまるでないな」
アイザック「ああ、聞いたことがあるぞ。国を作るなら攻め込む余地を与えない為に陸海空を制する種族を味方につけるといいとな。レティシア王国なんかは内陸地だから海なんぞないが、それでも陸地と空を制する種族に加護はお願いしているみたいだが」
リアム「何か急に全員して長々と語り始めたんだけど」
キクガ「怖いな、逆に」
オルトレイ「お前が聞いたんだろう!?」
キクガ「てっきり長々と語るのはオルトだけだと思ったのだが」
アッシュ「そこはちゃんと学んだよ。何せこっちは獣人、陸地に関する加護を与える側だからな」
アイザック「一応、これでも魔法使いなのでな。学ぶとも」
キクガ「私もある程度は学んでおいた方がいいのだろうか」
オルトレイ「学んでおいた方が損はないな。あとで教科書でも送ってやろう」
キクガ「助かる訳だが」
アイザック「特にヴァラール魔法学院は優秀な魔女や魔法使いを輩出する名門魔法学校。国家の内部に吸収すれば国益にも繋がるだろうしなぁ」
リアム「そういう面倒なものもあるの? 世界って面倒だね」
オルトレイ「というか、人間が面倒なんだろうよ。狡賢いし」
リアム「オルトさんみたいに?」
オルトレイ「喧しい」
キクガ「ノームと言えば土の妖精だが、そうなるとシルフやサラマンダーなどもいるのかね?」
オルトレイ「いるぞ」
アッシュ「いるな」
リアム「それはぼくでも答えられるよ。いる」
アイザック「いるとも」
キクガ「全員から即答された。しかもリアム君まで」
オルトレイ「仕方があるまい。この世界で2番目に優しい魔法使いであるこのオレが答えてやろうではないか」
キクガ「頼もしい」
アッシュ「よッ、このラジオ番組の頭脳派」
リアム「さすがだね」
アイザック「今回も見せてほしいものだ、その知識人ぷりを」
オルトレイ「野次馬がうるさいが、まあ説明してやろう。こちらのフリップをどどんと公開だ」
ノーム:土の妖精。土壌の浄化、または作物の成長を促す加護を与える。地中深くに潜っていることが多く、大人になっても子供と見紛うほどの背丈しかない。ずんぐりむっくりした体型と濃い髭が特徴。
シルフ:風の妖精。風を司り、雲を運んできたり天候に影響を与えたりする。天候を司る妖精と仲がいい。尖った耳はエルフのようだが、似て非なる存在ではある。
サラマンダー:火の妖精。炎を司り、暖炉などに住み着くとされている。見た目は橙色の鱗を持つ燃える蜥蜴。火のあるところには大体いると考えた方がよく、活発で好戦的。火事はサラマンダーが起こした気まぐれとか言われる。
ウンディーネ:水の妖精。水を司り、水のある場所に住み着くとされる。綺麗な水であれば多く集まってくるが、汚い水には近寄らない潔癖症タイプ。水の側にいると呼ばれる場合があるが、あれはウンディーネか人魚の仕業と見た方がいい。
キクガ「ほう、分かりやすい」
オルトレイ「分かりやすくまとめた。ノーマンズダイナーに関してはノームだけを覚えておけば間違いはない」
キクガ「なるほど、了解した」
オルトレイ「まあ、この妖精ってのは気まぐれだからな。義理堅いのはノームぐらいだろう。ウンディーネはプライドが高いし、サラマンダーは暴走待ったなしだしな」
アッシュ「テメェ、よく妖精とやり合ってたよな」
オルトレイ「うん、やり合った。そりゃあ喧嘩ぐらいするだろう、あいつらは悪戯好きだから虫籠にでも入れて振り回してやった方がちょうどいいのだ」
キクガ「似たようなことをユフィーリア君がやっていたな」
リアム「血は争えないって奴」
アイザック「可憐な妖精に対してそのような乱暴なことが出来るものか。彼らは吾輩の演技をたまに見にきて絶賛してくれるのだよ」
オルトレイ「あれ馬鹿にされてるぞ」
アッシュ「鼻で笑われてるぞ、あれ」
アイザック「今度、粘着する罠でも仕掛けてみようか。誰かしら釣れるかもしれんな」
リアム「妖精さんをベタベタにしてどうする気なの、この鬼畜」
アイザック「鬼畜ではない。当然の報いなのだよ」
キクガ「話が盛り上がっているところ悪いが、そろそろお時間な訳だが」
アッシュ「次もヴァラール魔法学院の設備か? レストラン?」
キクガ「次は購買部を予定している訳だが」
オルトレイ「まだ続くんかーい」
アッシュ「いい加減にヴァラール魔法学院を卒業しろ」
リアム「いつまで続くの?」
アイザック「このラジオ番組が終わるまでか?」
キクガ「あちこちからぶーぶー文句が聞こえてくるが知らない訳だが。さて諸君、午後の仕事も頑張りましょう。『らぢお♪がやがや冥府』終わりです。また次回」