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第3回放送【ヴァラール魔法学院、植物園について】

キクガ「皆さん、素敵なお昼休みをお過ごしでしょうか。今日も『らぢお♪がやがや冥府』のお時間がやってまいりました」



オルトレイ「今回の司会進行役はこのオレ、オルトレイ・エイクトベルと」



リアム「リアム・アナスタシスでお送りします」



キクガ「オルトは毎度お馴染みだが、リアム君は今回が初めてかね」



リアム「うん、頑張るよ」



オルトレイ「うーむ、アッシュが有休消化でなければなぁ」



キクガ「有休消化は職員の権利な訳だが。ただ、本人も非常に残念そうにしていた訳だが」



リアム「代わりに任されてきたんだよ」



オルトレイ「まあ、仕方があるまい。あいつがいない分、盛大に盛り上げてやろうではないか。このオレがな、このオレが!!」



リアム「2回言った」



キクガ「大事なことだから、という訳だろう」



リアム「それで、これ何すればいいの? ぼく、あまり喋るの上手じゃないんだけど」



オルトレイ「話題を提供するから相槌でも打ってろ」



リアム「分かった」



キクガ「それでいいのかね……」



オルトレイ「ほれ、キクガよ。とっとと話題提供、話題提供」



キクガ「それでは今回の話題はこちらな訳だが」





現世の話題:ヴァラール魔法学院、植物園について





キクガ「前回、前々回同様にヴァラール魔法学院の設備を紹介していく訳だが」



オルトレイ「ほほう、植物園とな。興味はあるぞ」



リアム「植物園?」



キクガ「植物園とは多数の植物が展示されている施設な訳だが。リアム君、ハルア君に案内してもらったことは?」



リアム「そういえば、やたらお花がいっぱい咲いた天国のように綺麗な場所を案内してくれたな」



キクガ「そこが植物園な訳だが」



リアム「なるほど」



オルトレイ「植物園も知らんとは、世界の為に戦っていた英雄様は違うな」



リアム「そうでもない」



キクガ「オルト、意地悪なことを言うな」



オルトレイ「若いからって可愛こぶればいいと思ってこいつ」



リアム「何かごめん」



オルトレイ「謝るな、虚しくなるわ」



キクガ「これ以上は収集がつかなくなるので、先に植物園の写真を提供しよう。こちらだ」





挿絵(By みてみん)





リアム「うん、こんな感じだった」



オルトレイ「やはり相変わらず綺麗なものよな。多数の植物は心を癒してくれる」



キクガ「それでは植物園の説明に移る訳だが」





ヴァラール魔法学院、植物園

名門魔法学校の敷地内にある魔法植物を生育などに使用されている施設。巨大な温室内は植物が育つのに最適な気候が維持されており、また寒冷地域や乾燥地帯で育つ魔法植物も存在することから各区域ごとに細分化されている。その種類は2000種を超える。

絶滅危惧指定の魔法植物や劇毒指定されている魔法植物も多く育てられており、そう言った区画には専門の知識と資格を取得する必要がある。現在の管理者は八雲夕凪だが、植物の管理を実質的に担っているのは保健医のリリアンティア・ブリッツオール。





リアム「保健医が何してるの?」



キクガ「言ってやるな。彼女は趣味と実益を兼ねて、植物園を維持してくれている訳だが」



オルトレイ「魔法植物がいくつあると思っているんだ。説明にもあったが2000種を超えるのだぞ」



キクガ「彼女はどんな魔法植物でも完璧に維持してしまうほど素晴らしい才能を持っている訳だが。いわゆる緑の手の持ち主な訳だが」



リアム「あの子の手、緑色だったっけ」



キクガ「たとえ話だ」



オルトレイ「それにしても劇毒指定から絶滅危惧種まで存在しているとは恐れ入るな。世界中の魔法植物研究者がこぞって押しかけてきそうだ」



キクガ「実際、そのような研究者がいるから学院の関係者以外に入れないようにしているらしい」



オルトレイ「おるんかーい。全く、魔法使いというのはこれだから」



リアム「オルトさんも魔法使いだよね?」



オルトレイ「オレをそこらの雑魚と一緒にすな、戯けが」



キクガ「ところで、劇毒指定されている魔法植物とは一体どのようなものを示すのかね?」



オルトレイ「おっと、そこでオレに話題を振ってくるか。いいだろう答えてやろう」



リアム「大丈夫?」



オルトレイ「お前、オレのことを誰だと思っている? いつも調子に乗ってやらかすような魔法使いだと思っているのであれば大間違いだぞ」



リアム「ぼくよりもおじさんだから、記憶力に問題があるかと思って」



オルトレイ「キクガ、こいつを殴らせてくれ」



キクガ「待ちなさい、オルト。暴力行使はよくない」



オルトレイ「お前だってよくお暴力を使うだろうに」



キクガ「時間が限られているのだから、早く魔法植物の説明をしなさい」



オルトレイ「仕方あるまい。劇毒指定の魔法植物だったな、代表的なものはマンドラゴラだな」



リアム「抜くと叫ぶあれ?」



オルトレイ「抜いたことあるのか?」



リアム「ないよ。だって絶叫を聞いたら死んじゃうんでしょ。ハルアと違って、ぼくは簡単に死んじゃうからね」



オルトレイ「悲しくなることを言うな」



キクガ「マンドラゴラ……」



リアム「キクガさん、どうしたの? 体調悪い?」



オルトレイ「いや、そいつの場合は単に悪しき記憶が蘇っただけだろう」



キクガ「あの真っ赤っか魔女……」



リアム「本当だ」



オルトレイ「まあこいつの事情は無視して話してやろう。マンドラゴラの毒性は食ったらまず血を吐くところからだな。消化器官系にダメージを与えてくるのだ。次いで下痢が止まらなくなり、下血になり、最後には全身の穴という穴から血を吹き出して死ぬという恐ろしい結末が待っている」



リアム「あれ、でもマンドラゴラって薬にもなるよね?」



オルトレイ「よく知っているな、その通りだ。マンドラゴラはそのまま食えばオレが先程説明したような事態に陥るが、80度以上のお湯で茹でてから絞ったり粉末状にすり潰したりするのだ。こうすることで魔法薬の材料にも使える」



キクガ「決してクッキーに混ぜたり、紅茶に調味料代わりとして投入したりはしないかね?」



オルトレイ「何それ手の込んだ自殺?」



リアム「うわ」



オルトレイ「キクガ、見てみろ。見るからに英雄様がドン引きしておるぞ」



キクガ「その感性は大切な訳だが。大事にしなさい」



リアム「キクガさんの言葉、何か身近で起きたような口ぶりだったけど」



キクガ「黙秘する」



オルトレイ「あの劇薬作成のルージュ・ロックハート嬢がやらかしたんだな。オレは何も言わん、言っても聞かん類だあの魔女は」



キクガ「他にも劇毒指定の魔法植物はあるかね?」



オルトレイ「あるとも。代表例をまとめてみたぞ、どどん」





ドライアド:木の幹から女が突き出したような見た目の魔法植物。樹液が猛毒で、口に含むと幻覚症状に見舞われる。魔力汚染も確認されるから、口に含めば二度と魔法は使えなくなる。


ホウオウスイレン:燃え盛る蓮の花の見た目をした魔法植物。触れると火傷をする、匂いを嗅げば嘔吐し、やがて全身が燃え上がって死に至る。猛毒というより危険物。


スベギュラ:薔薇の中に口が埋め込まれた魔法植物。言葉を聞くと発狂し、手折れば植物の液体で皮膚を溶かす。


サクラオトギリ:桜によく似た魔法植物。桃色の小さな花弁は触れれば全身に痒みを発症させ、絞って飲むと全身に真っ赤な斑点が浮かび上がる。やがて全身が痺れてきて死に至る。





オルトレイ「分かりやすい毒性を持つのがこいつらだろうな。どれもヴァラール魔法学院の植物園にて管理されている」



リアム「そしてたまにクッキーや紅茶に加工されると」



キクガ「…………あの魔女いつか冥府の法廷に立たせてやる」



リアム「恨み節が凄まじい」



オルトレイ「キクガ、そろそろ帰ってこい。いつまでルージュ・ロックハート嬢に恨みを募らせているつもりだ」



キクガ「今後も募らせていく訳だが」



オルトレイ「いい加減にせいよ。恨んで人間の性格が変わるならこの世に呪術は存在してねえのよ」



リアム「その理屈は本当に正しい?」



オルトレイ「喧しい。ほれ、次は絶滅危惧指定の魔法植物を紹介するぞ。お前、オレにあらかじめフリップを書かせたことをよもや忘れてはいないだろうな」



リアム「そんなもの書かされていたんだね」



オルトレイ「魔法植物に疎いアム坊は出来ないだろうがな」



キクガ「喧嘩をしない。何でいちいち喧嘩腰なんだ、オルト」



オルトレイ「この前、オレが呵責開発課の部屋に置いてあったおやつのチョコレートを残らず食いやがったのだ」



リアム「謝ったよ」



オルトレイ「ごめんの一言で済んだら冥府はいらねえのよ。許してやる条件を提示したろう」



リアム「それはやだ」



キクガ「何かね?」



リアム「オルトさんが全力で女装させろって」



オルトレイ「娘がせっかく作ってくれたチョコレートだったんだぞ……1粒ずつ大事に食べていたというのに……」



キクガ「あとでやらせる訳だが」



リアム「敵が増えた」



キクガ「リアム君、無断で他人のものを食べるのはよくない」



リアム「ちくしょう、過去の自分を恨みたい」



オルトレイ「さて、冗談はこのぐらいにしておいて」



キクガ「冗談?」



オルトレイ「冗談に決まっているだろう。オレとアム坊の喧嘩漫才、いかがかな?」



リアム「打ち合わせはしたよ」



キクガ「心臓に悪い訳だが。同僚同士がギスギスした関係になったらどうやって修復しようかと」



オルトレイ「まあ娘手製のチョコレートを食ったのは事実だがな」



キクガ「何と」



オルトレイ「ただ、オレが女装だけで済ますことはない。きちんとやり返したさ、こいつが大事に取っておいているハルアからもらったお菓子を残さず食ってやったわ」



リアム「それで殴り合いの喧嘩をして、最終的に肩組んで深淵刑場の罪人を轢き潰して友情を確かめたんだよ。あの時はわくわくしたね」



キクガ「どうしてそんなことに」



リアム「あれ、それが常識じゃないの? 殴り合った末に『ふッ、やるじゃねえか』『お前もな』みたいなやり取りをすると仲が深まるって聞いたよ」



オルトレイ「神々に愛された英雄と戦闘狂一族のガチンコ殴り合いは冥府総督府に衝撃をもたらしたぞ」



キクガ「一体誰からの入れ知恵かね」



リアム「ショウ君」



キクガ「どうして」



オルトレイ「まあおそらく、元の世界でお友達とやらにお勧めされた小説だか漫画だかにあったんだろうな。悪いことではないだろう、お前のところの倅はハルアの坊主と殴りあって友情を確かめるような真似はしないし」



キクガ「かくいう私も殴り合いの喧嘩はしたことはあるが」



リアム「じゃあ何も言わないであげてよ」



オルトレイ「気を取り直して、絶滅危惧指定の魔法植物を紹介するぞ。どどんと、こちらだ」





インフィニティローズ:奇跡の青い薔薇とされる世界で200本しか存在しない薔薇。綺麗な青色が特徴。花弁は万病を治す魔法薬に使用されるが、代用できることが分かった為に観賞用としてそのままにされている。


雪桜:極東地域の限られた場所にしか存在しない樹木。まるで雪が降るように綺麗な花弁がはらはらと散るので、その絶景は『生涯見るべき絶景100選』に選ばれるほど。ヴァラール魔法学院の植物園にある桜の木は接木によるもの。


天使の祈り:逆さに咲く百合の花。高地でしか咲かない為にそう名前がつけられた。真っ白な花弁は天使の羽のようであり、花弁は寿命を伸ばす為の魔法薬にも使われる。


龍鬼灯:龍の鱗のような模様が特徴的な鬼灯。龍帝国の奥地にしか存在しない魔法薬。枯れる際は燃え尽きることから『線香鬼灯』とも呼ばれている。また、実をつけている期間が非常に短いので、あまりお目にかかれない。





オルトレイ「オレが思うに、綺麗どころばかりを集めてみたぞ」



キクガ「確かに綺麗な訳だが。青い薔薇とかあるのかね」



オルトレイ「あるぞ。まさに奇跡のような花なのだ、あの薔薇は」



リアム「花冠とか作ったら映えそう」



オルトレイ「作るな」



キクガ「おっと、話し込んでしまった訳だが。今回の『らぢお♪がやがや冥府』はここまで」



リアム「またね」



オルトレイ「次回も聞いてくれよな!!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] やましゅーさん、おはようございます!! 新作、今回も楽しく読ませていただきました!! 植物園のご紹介、とても楽しく読ませていただきました!!植物園の管理人であるはずの八雲夕凪さんの紹介が…
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