第10回放送【学生都市『イストラ』について】
キクガ「皆さんこんにちは、本日も『らぢお♪がやがや冥府』のお時間です。今回も現世の話題をお届けしようと思います」
オルトレイ「もちろんこのオレ、世界でおよそ2番目に優しく優秀な魔法使いであるオルトレイ・エイクトベルと」
アッシュ「アッシュ・ヴォルスラムと」
リアム「リアム・アナスタシスと」
アイザック「アイザック・クラウンでお送りするぞ」
オルトレイ「今回からはヴァラール魔法学院の敷地内を飛び出して、各国を紹介していくのだな? いやぁ、滾るな!!」
アイザック「各国の文化などは任せてくれたまえよ。これでも全国津々浦々を巡っていたのだ、多少の知識は持ち合わせているとも」
キクガ「なるほど、頼りになる訳だが。では早速この話題を提示しようではないか」
現世の話題:学生都市『イストラ』について
キクガ「最初の国は学生都市『イストラ』な訳だが。ヴァラール魔法学院の最も近い場所に位置する街で、主にヴァラール魔法学院の学生や教職員が利用するので学生都市と名付けられたのだとか」
オルトレイ「名門魔法学校の生徒や教職員が利用するとなれば、店主どもも鼻が高いだろうな。何せあの七魔法王より直々に魔法の手解きを受けた優秀な金の卵どもだ、太客は今からでも確保しておきたいだろうよ」
キクガ「なるほど、そういう考えもあるのかね」
アイザック「まあ、学生主体となっている街ならばそう考えるのも無理はないと思うがね。今から伝手を作っておき、店の状況次第で売り込みをかけるとか」
アッシュ「商売人ってのは頭がよくなきゃいけねえな」
リアム「そうなると、アイザックさんは結構凄かったんだね」
アイザック「吾輩、客を呼び込むことと伝手を作ることに関しては長けているが管理をするのがとんとダメなのだよ。だからそこは妻に任せていた」
キクガ「君のところのお嫁さん、かなり細かな管理をしていたらしいが」
アイザック「当時から助かっていたとも」
リアム「ところでイストラって何があるの?」
キクガ「まずは説明、それから写真を公開しようかね。オルト、イストラの説明を頼む訳だが」
オルトレイ「今回はアイザックにやらせたらいいんじゃないのか」
アイザック「頭のいい君に出番を譲るとも」
オルトレイ「まーた自信がないからオレに押し付けてきたな。全く懲りない馬鹿野郎だ。仕方がないので説明をしてやろう」
学生都市『イストラ』
ヴァラール魔法学院のすぐ近くにある学生を主体とした都市部。学生用の勉強道具や文房具、魔石、食料品、日用雑貨まで多岐に渡って流通している。基本的に取り扱う商品は学生価格が多く、ヴァラール魔法学院の関係者であることを示すもの(学生証や教員免許など)を見せることで価格がさらに割引になる店もある。
近くに名門魔法学校があるということで観光客が多い。最近ではヴァラール魔法学院を人気の観光地にしようという動きが見られ、フォトスポットなんてものも作る始末である。
かつては亡国『ギャナビア軍帝国』によって侵略の憂き目に遭いかけたが、レティシア王国を筆頭とした連合軍によって救出された。元々はただの農村だったが、村が発展していくに連れて建物が増えて都市部と呼ばれるような規模となった。
特産品は小麦。特にパンが美味しいらしく、イストラのパン屋は他国のパン屋と比べると若干店舗数が多い。またヴァラール魔法学院の購買部にも商品を卸しているのだとか。
オルトレイ「国だからな、一応は増やしてみたぞ説明文」
キクガ「大変分かりやすい説明を感謝する」
オルトレイ「とはいえ、オレもちゃんと情報収集をした上での説明だ。些か骨は折れたぞ」
リアム「骨折したの?」
オルトレイ「どこが骨折している風に見えるのだ。五体満足の超健康体だぞ、オレは」
リアム「骨が折れたって言うから」
アッシュ「アム坊、言葉もちゃんと勉強しような」
アイザック「純粋である」
キクガ「そこが彼のいいところなのだが」
リアム「褒められてる? 照れちゃうな」
オルトレイ「なお、一貫して無表情である」
リアム「これでも恥ずかしいんだけどな」
オルトレイ「恥ずかしさを見せろや」
アッシュ「眉ひとつ動かしてねえんだよ」
アイザック「滅多に笑わないしなぁ。まあ、やり甲斐はある」
キクガ「さて、そんなイストラの写真がこちらな訳だが」
キクガ「商店街の写真な訳だが」
アッシュ「学生中心って言われている割には栄えてるな」
オルトレイ「こんなものだろう。近場に名門魔法学校があれば観光客が自然と訪れ、さらに金まで落としてくれるのであれば街並みも栄えるだろうよ」
リアム「そういうもの?」
オルトレイ「おいアイザック、そこら辺はどうなんだ? お前の意見も聞いておきたい」
アイザック「では意見を述べさせてもらおうかね。観光地化できる部分があれば街は発展するとも。イストラには近場に世界で唯一無二の魔法使い・魔女専門の名門魔法学校がある、内部に足を踏み入れは出来ずとも外側だけでも見たいと望む人物は多かろう」
オルトレイ「やはりそういうものか」
アイザック「加えて学生主体となっている街であるのは、観光客を呼ぶ要素がヴァラール魔法学院に依存しているからだろうな。ヴァラール魔法学院ありきで観光の収入が成り立ち、イストラの生活も成り立つ。贔屓目に見るのは当然のことだと思いたまえよ」
オルトレイ「さすが世界中を巡る人気の移動式サーカス団の団長だな。妙に現実味のある説明が大変タメになる」
キクガ「やはりその辺りは意識していたのかね?」
アイザック「観光地があろうとなかろうと、我々が客を呼び込めば失敗することはなかったのでな。吾輩、これでも客引きは団員の中で秀でていたのだよ」
リアム「今ってそれをやると犯罪じゃなかったっけ?」
アイザック「そんなに乱暴なことはしておらんよ。言葉巧みに上手いことサーカスのテントに引っ張り込めれば、あとは演者たちの腕前次第だとも」
アッシュ「ていうか、このギャナビア軍帝国って何だよ。話は変わって悪いんだけどよ」
オルトレイ「それに関してはオレの出番だな。ちなみにアイザックよ、ギャナビア軍帝国まで興行に出かけたことは?」
アイザック「恐ろしくて、とてもとても。吾輩が抱える大事な演者の仲間たちを乱暴に扱う訳にもいかんのだよ」
オルトレイ「このように、アイザックが警戒心を抱いて近づこうともしないのが『ギャナビア軍帝国』だな。戦争大好きで軍関係の人間が豊かで、労働者階級の人間から多額の税金を搾り取り、さらにそれで他国に戦争を仕掛けるというクソみたいな国だったのだよ」
リアム「あ、何となく知ってるかも。あったよね」
アッシュ「そっちの方まで移動したこたァねえからな。北を移動していたとはいえ、あそこら辺は山が多かったし」
オルトレイ「そのギャナビア軍帝国の近くにあったのがイストラだ。当時はただの農村だったようだが、女子供は連れ攫われるし殺人は横行するし軍人どもは我が物顔で闊歩するしで大変だったそうな。特産品である小麦の輸出も叶わんぐらいにな」
アイザック「それを助ける為に、レティシア王国を筆頭とした連合軍が戦争で圧倒的な勝利を収めたのだよ。あの時の救世主っぷりは素晴らしいな」
キクガ「現在でもそのような国が残っていたら、七魔法王の出番だった訳だが。主にユフィーリア君が」
オルトレイ「国を滅ぼすことになるのか、オレの娘が。それはそれで見てみたい。武器を持たせれば右に出る者なしと言わしめた『エイクトベル家』の御業、とくと見よ」
リアム「きっと『めんどくせ』で凍らせるんじゃないかな」
アイザック「目に浮かぶな」
オルトレイ「娘〜、お前こんなこと言われてんぞ〜!!」
キクガ「話は変わるが、イストラはパンが有名とのことだが本当かね? 記憶の限りではそれほど目立つようにパン屋はないように思える訳だが」
オルトレイ「おいおい、キクガよ。世の中には擬態しているパン屋もあるのだ。何か明らかにパン屋じゃなさそうな見た目をしていてもパン屋だとかな。そういう場所は大体美味い」
キクガ「普通に売ればいいのに」
リアム「何でそうしないの?」
オルトレイ「店主が面倒臭がるからという理由と、あとキッチンカースタイルが挙げられるな」
アッシュ「たまに移動販売のパン屋はあるよな。レティシア王国じゃよく見かけたような気がする」
アイザック「キッチンカースタイルはいいものだ。何せ毎度パンが変わるから、出会ったら運命と思って大量に購入してしまうのだよ。これは店側の戦略だと吾輩は推察するがね」
キクガ「確かに戦略的には考えられそうな訳だが」
オルトレイ「店主が面倒臭がるタイプの時は、パンは美味いのだが働きたくない性格なのだろうな。作る技術はあっても売る技術がないから、店の経営がとんでもないことになる。大体そういう場所は経営顧問が導入されている場合が多いがな」
アッシュ「パン食べたくなってきたな」
リアム「オルトさん、パンない?」
オルトレイ「そんな都合よくパンを持っていると思うなよ。スコーンでいいか?」
アッシュ「あるんかい」
リアム「ダメ元で聞いて良かったな」
オルトレイ「ちなみにイストラのパン屋で有名なものはドライフルーツを使用した『ファティマ』という種類のパンだ。バゲットに散りばめられたフルーツと相性がいいのだ、これが」
キクガ「美味しそうな訳だが」
アイザック「吾輩のお勧めはイチジクを使用したファティマだ。イチジクの甘さとバゲットの歯応えが抜群の相性なのだよ。ぜひとも食べてくれたまえ」
リアム「そういえば、ヴァラール魔法学院にもたまに来るみたいだね。移動式のパン屋」
キクガ「あるみたいな訳だが。チョコレート好きの為のパン屋とジャム好きの為のパン屋と惣菜のパン屋が」
アッシュ「何だか混沌とした雰囲気を感じるのは俺だけか?」
キクガ「いいや。私も初めてジャム好きの為のパン屋がヴァラール魔法学院を訪れた時に購入した訳だが、トーストにジャムがついてきただけな訳だが」
オルトレイ「もっと捻れ」
キクガ「いや、ジャムの方が捻りが効きすぎてもう……」
リアム「どんなジャムが出てきたの?」
キクガ「私は普通に苺ジャムにした訳だが、その、ショウが『ハエジャム』とか選んでいて……あとハルア君も『クモジャム』とか選んでいた訳だが……」
オルトレイ「ああ、ハエジャムは虫のジャムではないぞ。ベルゼブブベリーと呼ばれる木苺の1種で、ジャムにすると美味いのだ。名前が長いから『蝿の王』から取ってハエジャムと呼ぶのだ」
キクガ「ネーミングセンスを考えてほしい訳だが」
オルトレイ「クモジャムも、アラクネスイートという品種のパイナップルだ。非常に糖度が高くて美味しい」
リアム「食べたことあるよ。美味しかった」
アッシュ「糖度が高いものって高級な印象があるけど、アラクネスイートは育ちやすいから安価なんだよな。食ったことある」
アイザック「ジャムにして大量消費とはセンスがいいな」
キクガ「ネーミングセンスは皆無な訳だが」
オルトレイ「そんなこんなでお時間だな!!」
キクガ「午後の勤務も頑張りましょう。『らぢお♪がやがや冥府』でした」
リアム「次はどこの国?」
アッシュ「さあな、楽しみにしてろよ」
アイザック「さらばであるぞ〜」