依頼者の元へ
受付のお姉さんから貰った地図を頼りにウルマーさんの家へ向かう。ちなみに地図を持っているのはアイリなのだが何故か後ろを歩いてる。
「この街結構広いから向かうだけでも一苦労だね」
「なんでこの人が多い場所を通らなきゃ行けないの……」
「仕方ないよ、こっちが一番早く着くんだから」
今通ってる商店街はイーリムの街の東の方に位置する。大通りと違い道はあまり広いとは言い難い。
大通りは馬車が六台ほど並んでも問題ない道に人が歩くための道まである広さに対して、この商店街の道は人が通る道も含めて三台並ぶのがやっとの広さだ。
そんな道が買い物客や商人たちで賑わってるのだから人が多いと感じるのも仕方ないだろう。
「尻尾が立ってる……可愛いぃ」
まさか後ろを歩いてる理由はそんなくだらない事のためだろうか。
そんな恍惚とした表情で眺めてないで早く歩いて欲しい。一刻も早くこの場所から抜け出したい。
「いいから早く行こう」
「待ってよー」
少し早めに歩くと後ろからアイリが小走りで追いかけてくる。私は地図を持ってないので前を歩いて欲しいのだけど。
それから歩き続けて数十分程で私たちは特に迷うことも東門近くにあるウルマーさんの家へとたどり着いた。
「ウルマーさんこんにちはー!依頼を受けて来ました!」
アイリがドアを叩きながら元気よく呼びかけると「はーい、ちょっと待っておくれ」と家の中から足音が聞こえてくる。
出てきたのは初老を迎えたくらいの優しそうな目をしたちょび髭のおじさんだった。
「おや、可愛いお嬢さんたちだね。人のように見えたけどその耳と尻尾、もしや獣人かい?」
「違うよ、私たちもどっちかわかんないの!あ、はいこれギルドから」
ウルマーさんは少しの間渡した書類に目を通し、確認を終え私たちに詳細を伝えてくる。
「ふむ、何か複雑な事情があるのかな。まぁいいさ、書類しっかりと確認したよ。畑は街の外にあるから明日、東門の広場の所で日が昇って来たくらいの時間に待ってるね。そこからは案内するよ」
「わかりました!」
思いもしてなかった時間の指定で気が遠くなってしまう。
それでは明るくなる前に起きなければならないじゃないか。
「そうだ、お昼ご飯は持ってこなくていいからね。私の方で用意しておくよ」
「ほんとですか?やったー!良かったねソフィ」
「あ、うん、よかったね?」
「なんで疑問形なのさ」
睡眠時間の事で頭がいっぱいで話を聞いてなかった。
「仲がいいね、それじゃあ明日はよろしくね二人とも」
「はーい!」
「はい」
依頼を受けた後の簡単なやり取りを終わらせ商店街を避けるため遠回りしながら宿へ戻る。
「明日はこの街で朝が苦手なソフィにとって一番辛い日かもね」
「うん、帰ったらすぐ眠る」
「大丈夫だよ、わたしがちゃんと起こしてあげるから」
「今日みたいなことにならない?」
「今から堪能しとくから大丈夫!」
「私が大丈夫じゃない……」
それから宿に着くまでずっとアイリに抱きつかれながら歩いた。