冒険者ギルドへ
冒険者ギルドに向かう途中でもすれ違いざまに見られてはいたが、ギルドに入るとその場に留まる分、より多く好奇の視線を向けられる。
初めて訪れる場所はいつもこの珍しい見た目で注目を浴びるがいちいち気にしても仕方が無いし、見られるだけで実害は特にないので気にしないようにしている。
私たちは依頼が貼り付けてあるボードに向かう。
ちなみに簡単な雑用など街の人達からの依頼が貼ってあるジョブボード、街付近の危険な魔物の討伐や犯罪者捜索及び捕縛のような危険が伴うギルドからの依頼が貼ってあるギルドボードの2種類がある。
私たちが見ているのは街の人たちからの依頼がまとめてあるジョブボードだ。
「どれにしよっか」
「簡単なの」
「この果物屋さんのお店番とかどうかな」
「嫌だ、人が沢山来る」
「ソフィ人と話すの苦手だもんね。大丈夫だよ、お客さんの相手は全部私がするから!」
「アイリだけが働いてることになるからダメ」
「えー、別にいいのに」
それじゃあ私を起こしてギルドまで連れてきた意味が無いだろう。
「じゃあこれはどう?ペットのフェザーラットを探してくださいってやつ。報酬結構高いよ」
「一週間で見つかる?」
「この辺じゃ結構珍しい生き物だし見つかるんじゃないかな」
「見つけられなかったら最悪、見つかるまで野宿だよ」
「うーん、そうだね。とりあえず早めに宿代とか稼がないといけない今はやめとこうか」
そもそも珍しいとはいえ、フェザーラットは手のひらサイズの羽根が生えたネズミなので結構大きいこの街では探すのはかなり苦労するだろう。
「店番はソフィが嫌がるし、探し物系の仕事は今は余裕が無いから無理。そうなると私たちが受けれる依頼は……この薬草畑のお手伝いしかないね」
「手伝いって何やるの」
「ちょっと待ってね、……育った薬草の採取と雑草取り……そんな嫌そうな目で見ないでよ」
「ねえアイリ、なんで私はライセンス試験受けたらダメなの?私も合格すればそれなりに報酬の高い依頼も受けれるようになるよ」
ギルドボードの依頼は報酬が高いものが多い。
しかし命の危険が伴うので依頼を受けるにはギルドの試験を合格すると貰えるライセンスが必要なのだ。
アイリは持っているのだけど私は試験を受けさせて貰えないので持っていない。
なので契約書だけ書けば受けることの出来る簡単な依頼しかこなすことが出来ない。
「ソフィが危ない目に合うお仕事はダメ」
「でもアイリは時々受けてるよね」
「それはほんとにどうしようも無い時だけだから、普段は受けてないから!」
「私が受けたらダメな理由になってない」
「ダメったらダメなのー!」
尻尾をバタバタと大きく揺らしながら建物中に響くくらい大声で叫ぶ。
本日二度目の耳塞ぎを実行する。
「わかった、わかったから叫ばないで……耳が痛い……」
「あ、ごめんね……」
大きく動いていた尻尾がだらんと下がる。
周りを見ると何だ何だと人集りが出来そうになっていた。
見た目で目立っていたのに更に注目を集めてしまった。
「アイリ、人が集まる前に受付に行こう」
「そ、そうだね」
依頼書を取り大急ぎで依頼書を持って受付へ走る。
私はそれについて行く際、横目に見ていたギルドボードの方で気になる依頼を見つける。
(密猟及び魔物違法売買組織の捜索?)
報酬はギルドとの相談とは書いてあるが明確な金額が書かれておらず、それどころか依頼の名目だけしか書かれていない。
大した情報もないのにどう探せばいいのだろうとか考えたがそもそも受ける権利が無いので無駄だと思い考えるのをやめた。
いつか目を盗んでライセンス試験受けてやる。
「お姉さんこれお願いします!」
アイリが依頼書を叩きつけた。
受付のお姉さんが二重の意味で驚いている気がする。
「えっと、街外れのウルマーさんからの依頼ね。薬草畑の手入れと収穫のお手伝いだけど大丈夫?」
「大丈夫です!」
「元気な返事ありがとう。二人で受けるのかしら?そうなると報酬は半分ずつになるけど大丈夫?」
「大丈夫です!」
「はい」
「わかったわ。じゃあ二人ともこの書類に名前を書いてね」
契約書に名前を書きこれで正式に依頼を受けることになる。
これで後はギルドからサインされた依頼書をウルマーさんの所へ持っていけばいい。
「じゃあ二人とも気をつけてね」
「ありがとうございます!」
「ありがとう」
受付のお姉さんにお礼を伝えギルドを後にした。
「結局草むしり……」