34.新メンバーを交えて
「お待たせぇー!」
「おう。何食いたいんだ?」
少し上を見て考えるような素振りをした後に。
「んー……お寿司!」
勢いよく言い放った。
「お前、最初から寿司に行く気だったな?」
「そんなことないない! 行こう!」
腕を組んで歩き出す。
ギルドを出ると大通りを進む。
腕の感触が気になってしまう。
少し小さいが柔らかいものが当たっているのだ。
うぅん。煩悩退散。
『ねっ? 女ったらしでしょ?』
「前からああいう感じなんですか?」
『そんなつもりはなさそうなんだけど、羨ましい展開になってんのさ』
「えぇ。羨ましいですね」
あいつら好き放題いいやがってぇ。
「あっ、感覚共有まだ生きてましたね」
『そうだねぇ。でもさ、これ面白いね』
「ですねぇ」
くっそぉ。
煩悩退散。煩悩退散。
「ねぇ。意識しちゃってるの?」
「し、してねえ!」
『プププッ。意識しちゃってるのに』
「正直に言えないんですねぇ」
好き放題いいやがって。
後で覚えてろよ。
お前ら自腹な。
『なんにも聞こえないね?』
「いやー静かですねぇ」
『ピューピュー』
とっさに唇を尖らせて口笛を吹き出した蘇芳。
お前誤魔化し方下手すぎんだよ!
「ブッ!」
蘇芳の誤魔化しに笑ってしまった一斗。
「ホントに……ブッ……下手すぎる……クップッ」
「ねぇ? なんか後ろの2人笑ってない?」
「いや、気のせいじゃないか?」
「そうかなぁ。あっ! あそこのお寿司屋さんにしよう?」
「お前……また高級そうなところを……良いけどよぉ」
指定された所はいかにも老舗という感じの店であった。
「良いでしょ?」
首をコテンと傾げて聞いてくる。
これは勝てん。
「いいよ。入るぞ」
ガラガラガラ
「いらっしゃい」
これまた堅物そうな中年の男性が大将であった。
「4人ですけど、良いですか?」
「こちらの座敷へどうぞ」
感じの良さそうな雰囲気の女性が案内してくれた。
4人で座る。
ゆっくり出来るから座敷で良かったな。
『ホントだよね。いい店だね』
「ですよねぇ」
蘇芳と一斗が話しているのを聞いて茜が怪訝な顔をしてみている。
「ねぇ、あの二人なんで会話出来てるの? 蘇芳ちゃんって、翔真としか話せないんじゃないの?」
「あぁ。新しい能力が発現してな。それのおかげなんだ」
「ふぅーん。私も話せないの?」
うっ。
でも、感覚共有使ったら心の声まで聞かれてしまう。
「ん? あ、あぁ。パーティーメンバーにしか出来ないみたいなんだよなぁ。変な能力だよな? はははっ」
「そうなんだ。一斗さん良いなぁ」
すごく羨ましそうな潤んだ目で一斗を見ている茜。
「そ、そんな目で見ないでくださいよぉ!」
慌ててこちらを見てくる。
助けを求めているようだ。
「まぁ、まず注文するの決めよう」
「私決まってるんだ! 特上寿司10種盛り! これが食べてみたかったんだぁ!」
こいつこの前もだったけど遠慮って言葉を知らねぇな。
俺をヒモかなんかだと思ってんのか?
「じゃあ、俺もそれにするかな。2人もそれでいいか?」
『いいよ。あと、日本酒!』
「いいですよ。自分もお酒もらおうかな」
手を挙げて席に案内してくれた女性を呼ぶ。
「すみませーん。特上寿司10種盛りを4つと、日本酒ください。あっ、お猪口4つでお願いします」
「はい。かしこまりましたぁ」
店員さんが奥に消える。
「ねぇ、私も日本酒なのぉ?」
「ん? 嫌だったか?」
「嫌じゃないけど、酔っ払っちゃうかもぉ」
上目遣いでこちらにしなだれかかってくる。
柔らかいものがまた腕に当たってくる。
こいつわざとやって楽しんでるな?
くそぉ。
煩悩退散!
「酔っ払ったら家まで運んでやるから大丈夫だ。蘇芳が」
『ちょっ! なんで僕!? 巻き込まないでよ!』
「えぇー!? 私蘇芳ちゃんじゃなくて翔真に運んで欲しい!」
駄々をこねる茜。
コイツどうしようかな。
とも思っていると、救いの女神が来た。
「お待ちどうさまでーす」
「おっ! 寿司が来たぞぉ!」
「わっ! 美味しそうね!」
バッと離れてお寿司に集中しだした。
あぁ、良かった。
とりあえず食おう。
ひとつ取って口に運ぶ。
パクッ
口に広がる磯の香りと魚の旨み。
「んーー! 美味い!」
「美味しいわね! 翔真、ありがと!」
元気にいい笑顔でお礼を言ってくる。
コイツは笑顔が似合うな。
この前までは笑ってなかったからな。
ホント、変わってくれて良かったわ。
「翔真さん、良い人ですね」
『うーん。基本的にはね』
心の声も筒抜けであった。
『日本酒飲もうっと』
4つのお猪口に日本酒を注ぐ。
それぞれの人の前に置いてくれた。
「蘇芳、サンキュー」
コクッと少し口に含む。
甘めのお酒のようだが、サラッとしている。
「うん。飲みやすい」
『美味しいねぇ。僕、これ好きだな』
「自分も好きですね。あんまり飲みすぎないようにしないと」
「私も好きだけど、ホントに酔っちゃいそう」
「あんまり飲むなよ?」
「何でよぉ」
口を尖らせながら抗議してくる。
「なんか暑くなってきたわねぇ」
そういいながら首もとの服をパタパタ開いたり閉じたりしている。
おいぃ。
見えるって。
山が2つ。
『翔真! 自重しなさい!』
「な、何がだよ」
「翔真さん、往生際が悪いですよ?」
「わ、悪かったよ」
茜とは違う方向を見ながら飲み食いする。
「そういえば、一斗さん。なんで、翔真のパーティーに入れてもらおうって思ったの?」
急に茜が話し出した。
「最初はギルドだ見たんだ。弱いって馬鹿にされてた。それを見て自分を見ているようで心が苦しかった……でも、その次の行動はそいつの頭を掴んで壁に叩きつけた。強い。そう思ったんだ」
「ふぅーん。それでなんだ?」
「後は、路地裏に連れていかれた時も見てたんだ」
「何よそれ? いつの話してるのよ?」
「んー? 昨日だっけ?」
「はい。昨日です。凄い多い人数相手に素手でバッタバッタと倒して……帰りにラーメン屋入るの見て、居ても立っても居られなくて声掛けました」
「そんな事があったのねぇ。翔真、あんた少し喧嘩するのやめないと活動できる解放者減っちゃうんだからね?」
「そんな事言ったって絡んでくるやつが悪いだろ?」
「でも、翔真が強すぎてみんな大怪我じゃない? 少し手加減してよねって話」
「まぁ、そうだな。気をつけるわ」
「よろしい」
ニコッと微笑んでくる。
くそっ。
可愛いじゃねぇか。
『今のは仕方ない。たしかに可愛かった』
「ですね」
「ん? 何? 三人して無言で分かりあってるの? 気持ち悪っ!」
「まぁ、そうなるよな。仕方ない」
頬を膨らませて少し怒ってしまったようだ。
「なんか私だけ仲間外れ」
「そんな事ないって! ほら、飲むか?」
「むー。グビッ」
とりあえず飲ませてみたが。
あんまり飲ませると酔うな。
そろそろ送っていくか。
「よしっ! 茜、明日もあるだろ? 送っていくから帰るぞ」
「えぇー!? まだいいじゃん!」
「いやいや、寝ちまったら送り先知らないし」
「むー。わかったわよぉ」
「すみません。お会計!」
「あいよ! どうもねぇ」
会計を済ませると店を出る。
「「「ご馳走様でした!」」」
出ると茜を先頭に三人がついて行く。
この日は無事に何事もなく茜の住むアパートに着いたのであった。
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