3.能力の可能性
「おぉーーーー!」
そこに広がっていたのは、キラキラとした壁である。
このキラキラとしている所はピッケルで採掘すると鉱石が取れるのだ。
それを武器に加工する。
それが、一般的な解放者の基本となっていた。
その基本的なことを翔真はすっ飛ばしているのだ。
「よーっし! 鉱石取るぞぉ!」
カァーーーンッ
カァーーーンッ
カァーーーンッ
ボロボロと落ちてくるのはキラキラした石だ。
それが、鉱石である。
「おぉーー! いっぱいあるな!」
しばらく採掘していると鉱石で一杯になってしまった。
「げっ……これどうしよ」
『僕がしまおうか?』
「おっ!? 蘇芳、しまえるのか? なら頼む!」
『オッケー!』
鉱石の下にブラックホールのようなものが出現する。
シュルンと吸収する。
「蘇芳、すごいな! 異空間魔法も使えるのか!?」
『うん。すごい?』
「おぉ! すごいぞ!」
照れたように頭を搔く蘇芳。
魔物が照れている姿は不思議な光景である。
探索を続ける2人は下の階層に続きそうな坂を見つけた。
「ここから下に行けるんだな?」
『そうじゃないかな。僕が先頭で行くよ』
前に出る蘇芳。
「そうか? サンキューな」
慎重に下に降りる蘇芳。
その後ろを太刀を構えながらいく。
今度は森に囲まれた草原に出た。
「なんかひろ────」
『シッ!!』
ズガァァァン
一瞬黒い影が過ぎったと思ったら吹っ飛んで行った。
『翔真! 周りを警戒して! 囲まれてる!』
「お、おう!」
周りを黒い狼のような生き物が囲む。
「なんだ!? コイツらは!?」
『コイツらはブラックウルフだね。そんなに強くないけど、素早いからウザイよ!』
ジリジリと輪を縮めてくる。
横に太刀を居合のように構える。
ダッ!
1匹が蘇芳の方に迫る。
と思いきや、急に方向転換をしてこちらに迫ってきた。
やっべ!
「おらぁぁ!」
ズバッ!
頭から真っ二つになるブラックウルフ。
なんとかなったな。
『翔真! まだまだ来るよ!』
「おう!」
次々と時間差で襲ってくるブラックウルフ。
右!
左!
ひだ……り!
なんとか捌けてっけど、これは疲れるな。
最後のやつとかフェイント掛けてきやがった。
残り少なくなってきたブラックウルフは最後の攻撃に出てきた。
一斉に襲いかかってきたのだ。
一気にきやがった!
じゃあ、一気に片付けるのみ!
身体が勝手に動いた。
太刀を大きく後ろに振りかぶる。
「蘇芳! 跳べっ!」
ダンッ
飛んだ瞬間。
「回……転…………斬り!」
一回転した遠心力をのせて斬撃を放つ。
ズバァァァァンッ
斬撃が円状に飛び、残りのブラックウルフを真っ二つにした。
斬撃は尚も飛んでいき森の木々も真っ二つになる。
「ふぅぅぅ。なんかすげぇな。身体が勝手に動いた」
『なんか今の、僕の技みたいだったよ?』
「そうなのか? テイマーの能力のおかげなんかなぁ。魔物の使える技まで使えるとか?」
この疑問に答えられる者はこの世界に居ないだろう。
なぜなら、テイマーは戦えない職業として研究さえされていないのだから。
翔真がテイマーの可能性を広げる第一人者になる事だろう。
『そうかもね! だとしたら、僕達最強だね!』
「ハッハッハァァァ! ダンジョン攻略しまくって金をガッポガッポ頂くぞぉぉ!」
金持ちになりたい欲望がダダ漏れの翔真。
誰も見ていないからいいが、見られていたら不審者だと思われていたことであろう。
草原には見渡す限り何も無いようだ。
「何もねぇなぁ。森の中を探してみるか」
翔真の斬撃で見通しの良くなった森の中を進む。
たまに斬撃にやられたであろう魔物が転がっているが、気にしない気にしない。
進んだ先に洞窟があった。
「おっ! お宝の予感!」
駆け足で入っていく。
『あっ! 待って翔真!』
グニッ
「あぁ? なんだ?」
「グルルルルルァァァァァ」
「うおおおぉ!」
慌てて外に逃げ出す。
追ってきた魔物は巨大な熊であった。
『やっぱり! ムーングリズリーか!』
「なにそ……おわっ!」
ズドォォンッ
翔真のすぐ横をムーングリズリーが巨大な爪で打ち付ける。
「あっぶねぇ!」
『ソイツ、攻撃力はあるから気をつけて! ただ、動きは遅いからよく見て!』
「お、おう。よく見る……」
少し距離を取りジィィィッと観察する。
「グルルゥァァァ」
大きく手を振りかぶってノシノシと近づいてくる。
よく見てよく見て。
来た!
ドゴォォンッ
攻撃をサイドステップで避け、腕を切り付ける。
シュッ
切り傷を付けたが、ムーングリズリーの腕の筋肉に阻まれ、浅い。
「かってぇなぁ!」
腕はこんなに硬ぇけど、どっかに弱点はある筈だ。
そのまま通り抜けざまに足を切り付ける。
ザシュッ
さっきよりは通った!
けどやっぱりあせぇ!
首を狙うしかねぇか!?
「グガァァァァ!」
切りつけられたことに苛立ったのだろう。
両腕をブンブンと振り回して暴れている。
振りかぶった時が隙になってる。
一瞬で間合いに入り、斬るしかない。
太刀を振りかぶり体制を低くし、前傾に構える。
「ふぅぅぅぅぅ…………」
ムーングリズリーの動きに集中する。
腕をぶん回し、再び腕を振りかぶった。
今だ!
ドンッ
周りの景色が一瞬にして通り過ぎる。
ムーングリズリーの姿が目の前にある。
首筋が徐々に近づいてきた。
腕はまだ振りかぶったままだ。
間に合え!
遂に間合いに入った。
「ぅらぁぁぁぁぁ!」
スパァァァンッ
太刀を振り抜いた状態で何とか着地する。
ズザザザァァァァ
勢いで数メートル地面を滑り、停止する。
後ろをゆっくりと振り返る。
ムーングリズリーは振りかぶった腕をズンッと振り下ろした。
手応えはあったが、ダメだったか!?
首に赤い線が入り、ズズッと頭がズレる。
ドサッ
頭が落ちて動かなくなった。
切られたことに気づかず、腕を振り下ろしたようだ。
「はぁぁぁ。なんとか倒せたぜぇ」
見ていた蘇芳が近づいてきた。
『翔真凄いじゃない! いい動きだったよ? とても今まで戦ったことが無かったとは思えないよ!』
「そうか? サンキュー!」
自分でも不思議だった。
訓練はしてたが、こんなに実践的に戦ったりしたことは無い。
なぜ、こんなに戦えるのか。
ステータスが蘇芳のおかげで高いというのもあるとは思う。
しかし、それだけでは説明できないような動きが出来ている気がするのだ。
「なぁ、この洞窟やっぱりなんかあるんじゃねぇかな?」
ムーングリズリーがいた洞窟の奥に行ってみる。
すると、キラキラと壁が光っており、その先には階段が下へと続いていた。
「よっしゃ! また鉱石が取れる! そして、階段も発見とはラッキーだな」
『また僕が異空間に入れてあげるよ』
「あぁ。頼む」
翔真はせっせと鉱石を採掘する。
それが、終わると下の階層へ降りていくのだった。
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